「満点の星空に抱かれたい」

世界一周338日目(6/2)

 

ベッドが思いのほか
フカフカしていたので、

起きるのも遅かった。

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ここはグルジアの北部の山の中
メスティアにある宿、
ROZA guest houseだ。

一日の滞在で僕はここを
チェックアウトすることに決めている。

目指すは絶景があるというう
ウシュグリという村だ。

ウシュグリへ行くにはふたつの方法がある。

ひとつは車をチャーターして行く方法
調べてみたけどけっこう高いらしい。

もうひとつは3日かけて
ハイキングトレッキングして行く方法だ。

 

 

無論僕は後者を選んだ!!!

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だってそっちの方が面白そうっしょー!
何!!??キャンプしちゃうの???
そういうアドベンチャーにワクワクすんぞーーー!!!

 

 

 

宿に荷物を預かってもらい、
僕は遅めの10時過ぎに出発した。

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ロザさんは
「あっちの山に向かっていけばいいから。
空港までの道と間違えないようにね」
と注意してくれたのにもかかわらず、
出だしの30分は方向音痴っぷりを発揮して
正規のルートに進むことができない!

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出だしから体力消耗するなんて…。

いくら余分の物を宿においてきたからって、
バックパックを背負って
前にサブバッグをかけているんだもの…。

はぁ、はぁ。

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貴重品管理ということで
MacBook Proも壊れて役に立たない一眼レフも
ばっちしもってち待っている。

汗が額からしたたる。
風が吹くと長い髪が顔にまとわりついた。

おれはなんでったって
こんな髪を長く伸ばしているんだろう?

「旅人は髪が長い」

ってイメージが僕の中にあるけど、
これはうざったくてしょうがない。
時々メシ喰ってる時も口に入ってきやがる…。
マジで女のコって大変だよな…。はぁ…。

 

 

ウシュグリへと続く果てしなく
なだらかなコンクリートの一本道。

腕時計を見ると一時間が経過していた。

まだ歩けそうだーけど、
46kmってどのくらのもんなんだ…??!!

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実はひそかに

「ヒッチハイクできるんじゃないか」

と企んでいたのだが、
そのヒッチハイクする車がなかなか通らない。

親指を立てようにも
どこに向かってたてればいいのか分からない。

走行音を聞いて振り返ると、
どうみてもヒッチハイク
させてくれなさそうなトラック。

資材を積んだ場所に2人のお兄さんが乗っていた。

「がんばれよ~」とでも言うかのように
笑顔で僕に手を振る。

僕も汗でぐしょぐしょになった顔で
苦笑いしてお兄さんたちに手を振り返した。

 

 

そのすぐ後ろから2台のトラックが来た。

一台は僕のことなんかお構いなしに砂煙を巻き上げ、
排気ガスをぶっぱなして僕を抜去っていった。
くっそ乗用車は来ないのか??!!

思わせぶりに
速度を落とす2台目のトラック。

な、なんだ??

 

 

「ブロォォォ…」

トラックが完全に静止した瞬間、
僕は歓喜の声を上げてトラックへと
ダッシュした!
まさかトラックに乗せてもらえるなんて!

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「ウシュグリかい?」

「はい!!」

それ以上の行き先についての会話はなかった。

 

 

トラックの運転手、ラドゥさんは
「日本は車や電化製品が良い」だとか
日本について好印象のようだった。

こういう時、ジャパン・ブランドの
恩恵に僕は預かっている。

「いやいや、グルジアだって
ワインやごはんめちゃくちゃ美味いっすよ!
ワインは好きですか?」

「もちろん」

会話自体はそこまで弾んだものではなかったが、
気まずさは微塵もなかった。

窓を開けると風が入ってきて、
火照った僕の体を冷やしてくれた。

まさかこんな簡単に
ウシュグリ行きの車にありつけるなんて。

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コンクリートで舗装された道が
ならされた砂利道に変わった。

道路の半分しかコンクリートで舗装されていない。
まだ工事中のようだ。

トラックを止めて作業員のおっちゃんたちと
話をするラドゥさん。僕に向かって衝撃の一言を放つ。

 

 

「ストップだ」

 

 

「はい?」

なんのことか分かっていても聞いてしまう。
だって、ここまで2kmもきてないぜ???

「ここまでしか行かないんだ。
悪いね。ここで降りてくれ」

「ハ、ハイッ!
アリガトウゴザイマシタ!!」

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深々と頭を下げてラドゥさんに
お礼を言って僕は再び歩きだす。

作業員のおっちゃんは
僕がウシュグリまで行くことを告げると、
無謀なチャレンジを賞賛するかの様に
「グッド・ラック」と言ってくれた。

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はぁ…。いい天気だぜ…。

 

 

 

それでも、ほんの少しだけ
座って休めたこともあり、
足取りはいくらか軽くなった。
坂道も終わり、平坦な道が続いている。

周りを囲む景色をかみしめるように
一歩ずつ歩く。川は道のすぐ横に流れ、
意識すると「ゴォォ…」と低くうなった。

 

 

後ろからやってきた2台のワゴン車。

工事中の道を車が走ると砂煙が舞った。

その先にある水たまりを避けるように
スピードを落として走る。

こんなところで止まってくれないだろうな。

二度連続でヒッチできるなんて思ってない。
僕は諦めて親指を立てることさえしなかった。

車の中の人と目が合うと、
僕はちょっぴり笑顔になって手を振った。

僕を追い越す2台のワゴン車。

そうだよな…。

 

 

 

「おーい!乗ってくかい?」

「あざっす!!!」

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うおぉぉぉぉ~~~!!!なんなんだい??!!
今日は!!!ほんとにツイてるぞ!

乗っていたのはイスラエル人の家族たち。

ラズィさんと奥さんのミリー、
そして息子さんのレゾ。
こんどこそウシュグリ行きの車だった。

ラズィさんは冗談が好きで
「自分と奥さんはグルジア人で
コイツはイスラエルの旅行者なんだよ」
と僕に説明した。

イスラエルの人の顔立ちなんて知らないから、
マジで信じたよ!

 

 

「ウシュグリまで
歩いて行くつもりだったのか?
マジでクレイジーだな!」

「ははは」

「おれたちが乗せてやらなかったら、
ずっと歩いてたんじゃないか?」

「マジでラッキーだと思います。
ほんとにありがとございます」

「じゃあ後で何かお礼をしてもらわなくちゃな♪」

いたずらっぽくラズィさんが言った。

 

 

ラズィさんは大の写真好きで、
自分の撮りたい被写体をを見つけると
しょっちゅう車を止めてはゴツい一眼レフで写真を撮った。

子供たちを見ては写真撮り、
奥さんはそのお返しに持っていた
棒つきのキャンディーを彼らに与えた。

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車が走る道を見ながら、
自分がこの道を歩くことになったかと思うとぞっとした。
まだまだ山道は続いていたからだ。

途中の宿泊予定地だった村もすっ飛ばし、
ひとつの塔の前で車は止まった。

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「この塔がなんだか知ってるかい?
これは恋人のために作られた塔なんだ。
一番下は家畜の食べ物。二階は牛。三階はチキン。
そして四階が恋人の部屋だったんだよ」

復讐の塔はメスティアや近くの村に
何個も会ったけど、ここだけぽつりと塔がある。

ロケーションが他のものと違っていた。
今思い返すとこの話も冗談だったのかもしれないな。

 

 

塔の前でガスコンロを出し、
ラズィさんたちはお湯を湧かし始めた。

ここでラズィさんがすっ転んでお湯をぶちまけ、
体を打つアクシデントがあったが、
家族の団欒の風景を見させてもらった。

僕はヒッチハイクのお返しに
奥さんのミリーさんの似顔絵をプレゼントした。

テーブルもなしで書いたから、
うん、できはよくないんだけど(←言い訳)
喜んでもらえて良かった。

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車は走り続けた。

もし歩いていたら、
今日はどこまで進めて、
どこで夜を明かすことになっただろうか?

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15時にはウシュグリの村に到着することができた。

三人はゲストハウスを探していたので、
僕はお礼を言って村の中で降ろしてもらった。
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「今日はどこに泊まるの?」

「や、全然考えてないっす。キャンプとか笑?」

 

そう。キャンプだ。

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こんな大自然の中でキャンプしたら
どんなに気持ちいいだろうか!
満点の星空に抱かれながら
ほんのちょっぴり寂しさをかみしめる…。

やるっきゃないでしょ!

 

 

とりあえず僕はバックパックを背負ったまま
村を散策してみることにした。

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年期の入った家屋と復讐の塔。
牛が放し飼いにされている。遠くの方に雪山が見えた。

このロケーションに惹かれて
人々はウシュグリにやってくるのだろう。
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どこかでハチャプリは食べられない物かと、
たまたま見つけたゲストハウスでおばあちゃんに訊いてみた。

ギターに興味津々だったので、
披露するとおばあちゃんは僕に
パンとチーズをごちそうしてくれた。

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そのまま僕は村のはずれまで行った。

馬や牛がのんびりと草を食んでいる。

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僕は寝るのによさそうな場所を見つけて設営を始めた。

テントは持っていないので
ブルーシートとビニールひもを使って
なんとかテントっぽくしようと試みる。

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だが、谷から吹く風にによって
ブルシがおあられうまく設営することができきない。

てこずっているとはためくブルーシートに
牛が反応して設営場所まで僕を威嚇しに来やがった。

いつもはすっとろく、大人しい牛だが、
間近で見ると威圧感がある。てかあの角怖ぇよ…。

牛に睨まれ、僕は設営場所を代えざるえなかった。

ここには人は来ないけど、家畜が来るのか…。
ヤツらが来れない場所にしないとな…。

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近くにちょうど人ひとりがおさまる
絶妙なスペースを発見した。

岩が風よけになっている。
よし!ここにしようじゃないか!

ひとまずブルーシートを敷いて、
念のためパックセーフでバックパックを包むと、
僕はサブバッグだけ持って、
食料の調達に再び村に戻ることにした。

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ポツポツと雨が降り出す。

まぁ、すぐ止むっしょ….。

この時は僕の決意は固かった。

や、宿なんて泊まらないよ。
食事なしで10ドルなんて、高いじゃないか?

ここまでヒッチハイクで来たこともあり、
近くのカフェで観光地プライスの
ハチャプリとコーヒーを4ラリ(232yen)で注文したが、
単に高いだけの物だった。

冷めたハチャプリと外の雨樋から落ちる水の音は
どこか僕を陰鬱な気持ちにさせた。

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設営場所に戻った時には雨は止んでいた。

星空は見えないかもしれないけど、
まぁ外で寝るってのもいいじゃないか。

僕はブルシにたまった雨水を払うと、
横になってiPhoneのevernoteのアプリに
日記をつけて時間を過ごした。

19時を過ぎてもまだ空は明るい。
地図を見るともっと先に進めば湖があるようだった。

子供たちがトラックにぎっしり積まれて
楽しそうにしている。明日の朝イチで
行ってみるのもいいかもしれないな。

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また雨が降り出してきたので
僕はブルシを布団のように使い、雨をしのいだ。

ブルーシートと言えばホームレスの住居として有名だけど、
意外に防水性がある。なんだこれだったら
雨が降ってもへっちゃらじゃないか!

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バックパックとサブバッグは
レインカバーをかけている。

ギターは濡らしたくないので、
添い寝させるように僕の隣りに置いた。

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しだいに雨は
勢いを増した。

ブルーシートを打つ雨音が
だんだんと大きくなっていく。

だ、だいじょうぶ!浸水してないし、
待ってれば雨は止むさ!
山の天気なんてそんなもんだろう?

 

いつまでも雨はやまなかった。

心なしか服が湿ってきた気がする。

てか寒い!

僕は急いでシャツとフリースを着込んだ。
薄手のパンツの上からジーンズを重ね穿きした。

自分の見つけた設営場所と
ブルシの防水性を信じて僕は
そこから動かなかった。

気づいた時には辺りはすっかり暗くなっていた。

相棒からもらったKELTYのランタンライトは
雨のせいで電気がつかない。

頼みはiPhoneのLEDライトだけだ。
こんな雨の中で壊れやしないか心配だった。

 

ブルーシート越しに空が雷で光るのが分かる。
雨が弱まる気配はない。

 

『た、頼む!
マジで止んでくれ…!!!」

 

どうする???どこかに場所を移るか???

上体を起こし、ブルーシートから顔を出して
辺りを見渡したが、暗過ぎて何も見えない。

だ、ダメだ!ここから動けない!
ここで雨をしのぐしかない!

 

 

雨はそんな僕をあざ笑うかのように降り続いた。
僕はすぐにそこから離れる決断を
くだせなかった。辺りが暗過ぎたのだ。

そしてブルーシートについに限界が来たようだ。
完全な防水機能はもっていない。

どんどん湿ってくる。寝返りを打つと、
新しく体を置いたところがひんやりとした。

隣りにおいたギターケースがぐっしょりしている。

 

 

てか!パソコンとカメラ!

そうだ!僕は貴重品管理とか抜かして
ここに持って来てしまったのだ!

急いでサブバッグを開け、中身が濡れてないか確認する。
自分の手自体が雨で濡れて
体温を奪われてしまっているため、
中身が大丈夫なのかわからない。

レインカバーは
バックパック、サブバッグともども
雨でぐっしょりしている。

 

 

『ここから
撤退するしかない!!!』

 

 

決断は遅過ぎた。

野宿において雨がこんなに
厄介なものだったなんて、知ってたけど、
実際に体験するまでは現実味がなかった。

 

 

雨の中iPhoneのライトを頼りに
寝袋をブルーシートで風呂敷のように包んだ。

バックパックとサブバッグを背負い、
僕は元来た道をゆっくりと引き返し始めた。

重ね穿きしたnudie jeansは
前のボタンが閉められなかったため、
どんどんとズレ落ちて足枷のようになった。

道は動物の糞と泥でぐしょぐしょになっていたり、
大きなくぼみには泥水がたまっている。

それを気をつけながら村を目指した。

1メートル先しか見えない。
ライトの向こう側にはぼんやりと
建物のシルエットが浮かぶだけだ。

それをなんとか越えると
ようやく村の灯りが見えた。

時刻は24時。

 

 

 

 

 

 

 

転がり込んだのは
復讐の塔のひとつだった。

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今日の村の散策でひとつだけ
内部に入れる塔を見つけたのだ。

昼間は見るからに薄暗くて汚くて
入る気にすらならなかったけど、
この際、雨がしのげるだけで十分だ!

中には電灯なんてもちろんついてない。

昼間に牛が入ってきてしまったのか
中には糞が落ちていた。

僕が入ったフロアには家畜はいなかったが、
二階にいるのだろう。
「コツコツコツコツ…」と低い足音が
途切れることなく続いていた。

 

 

ひとまず足枷のようになっている
濡れたジーンズを脱ぎ、ブルーシートや寝袋を壁にかけた。
サブバッグの中身を取り出して地面において乾かした。

誰か入ってきやしないだろうか?

入り口から冷たい風が入ってくるので、
僕は扉を閉めてかんぬきをかけた。

雨風をしのげ、塔の内部は外に比べれば温度は上がったが、
濡れた体が体温を低下させるのが分かる。

KELTYのランタンライトは予備の電池に取り替えると、
まぶしいくらいに光を放った。

僕は持っていたLUCK STRIKEに火をつけて
ゆっくりと吸った。タバコがほんの少し僕の寒さを
まぎらわしてくれたが、一本吸い終わってしまうと、

また寒さがやって来た。

 

 

ほんとうに今回は決断をミスったのだ。
10ドルをケチったがために、
こんな悲惨な目にあうなんて…!!!

党の内部は汚さと狭さでとてもじゃないが、
横になって眠ることはできなかった。

部屋の隅でビニール袋を敷きそれに腰掛けた。

持っていたエマージェンシー・シートは
文字通り役に立った。

座ったままの体勢だと
どうしても隙間が出来てしまうが、
温度を外に逃さずにいてくれる。

ウトウトして膝の間に顔を埋めるように頭が下がっていく。
上体を起こすと体が痛んだ。これで眠るなんて無理だ。

ランタンライトを股に挟むと
電熱でじんわりと温かかった。
今はただただ時間が過ぎるのを待つのみだ。

日が昇ったら誰かに見つかる前にすぐにここから出よう…。

時間がとてつもなく長く感じた。

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4 件のコメント

  • 雨たいへんでしたね。でもリアリティーがあって臨場感メチャつたわってきます。(笑)

    • >じじいさん

      いやはや、あの時はほんとうに惨めな思いをしましたよ。
      それにしても誤字脱字が多すぎるナァ。読んでいて恥ずかしくなりました笑。

      • こんな色んな体験が今後のシミさんの大きなインスピレーションになるんでしょうね。
        僕も色々旅はしましたがシミさん見たいに漫画が書けて音楽もいけてって本当羨ましいです。普通に旅するだけじゃ触れ合えないひと達と出会ってますもんね。毎回愛読させてもらってますが、このリアリティあるストーリーが今後シミさんの連載冒険漫画か何かなるんですか? いずれにしても引き続き楽しみに見させて頂きますね。

        • >じじいさん

          いやいや。漫画家を名乗っている以上、旅をしているあとが大事っす。
          きっと電気代も支払えないような極貧を経験しないとダメな気がします。

          コメントありがとうございます。
          旅はいいですよね。自分の知らないものや人にガンガン出会えるから。
          僕のブログもそれのきっかけにんれれば幸いです。

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