「ブタジラという町」

世界一周582日目(1/31)

 

 

どこか

名前も聞かないような小さな町に行ってみるのもいい。

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地図を拡大すると、
アディスバベバに戻る道の途中にあるウィルキテという町から、
細い道が次の目的地へのブタジラという町まで
繋がっていることに気がついた。

一応(頼りにならない)宿の人間にも訊いておいたのだが、
その道はミニバンが走っているとのことだった。

どうやらわざわざ首都のアディスアベバまで戻る必要はなさそうだ。

 

 

 

ここはエチオピア、ジンマ

 

 

日本にいた時から楽しみにしていた
「コーヒー農園を見学する」というミッションは

失敗に終ってしまった。

どこか排他的だったのだ。
よそ者の僕には仕方ないであろう。

そして手に入ったのは
サイズの合わない粗悪品のUSBプラグだった。
ぐすん…。

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正直に言うと、
僕はアディスアベバになんて戻りたくはなかった。
(アディス好きなみなさん、ごめんなさいね)

 

 

“値段の割には高い宿。ベッド・バグとは高確率でお友達。
汚物の詰まったトイレ。殺意を抱くほどに遅いWi-Fi。
胡散臭い自称ラスタマンたち。etc”

 

 

普通に過ごす分には特に危険な街ではないと思うけど、
あの怒号が飛び交うファニーなバスターミナルを
再び使いたくはなかった。一度あれを味わえば満足だ。

それなら時間がかかってもいいので、
他の町を経由して次の目的地に行こうと僕は考えた。

 

 

 

 

 

 

 

日の

昇る前の4時半には宿を出た。

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宿のすぐ目の前がバスターミナルなのがいい。

ゲートの前にはいつものように、
バスの長旅に備える人たちが開門を待っていた。

言ってしまえばこの時刻にここに集っている人たちは、
みな長距離を移動する旅人たちだ。

どこか親近感のようなものが湧かないでもない。
きっとここにいる何人かとは同じバスだろう。

 

 

バスターミナルの外にはミニバンが何台か停まっており、
アディス!アディス!と呼びかけている。
僕もそんな風にして声をかけられた。

ウィルキテという町までは
アディスアベバとルートが同じだったので、
ミニバンの値段を訊いてみると200ブルから150ブル。

逆方向のアディスアベバからここまで来るのに
かかったお金は普通のバスで120ブル(695yen)。

最初はふっかけてきているのかと思ったが、
近くにいた英語の喋れる男の子に訊いてみると、
どうやらあれらのミニバンは
「イリーガル(公式ではない)」らしい。

早く出発できるけど、その分割高ですよ?ということなのだろう。
お急ぎの方はミニバン・イリーガルへ!

 

 

 

僕は急ぐ旅でもなかったので、
バスターミナルが開くのを他の人たちと一緒に待った。

朝食代わりにゲート前で販売されている
砂糖入りの紅茶と味のないパサパサしたクッキーを食べた。

クッキーが少し残ってしまうと追加でコーヒーを頼んだ。

立て続けに
紅茶とコーヒーを飲む中国人(彼らの目にはそう移っている)
を見て、お店の女のコとおばちゃんはクスクスと笑った。

5時を過ぎるとゲートが開き、
ゾロゾロと人々がバスターミナルの中に入っていき、
バスの添乗員たちが行き先を叫び始めた。

 

 

 

 

 

僕はウィルキテまでのバスを探した。

 

 

「それならこっちだ!」
と連れて行かれたバスはなかなかに人口密度が高かった。

ただでさえ狭いのに、それよりも若干小さなバスだったのだ。

荷物を持ち込んで人が席に座れずに立っていると、
とてもじゃないが持ち込んだギターを置くスペースなんてない。
車内にある荷棚はギリギリギターがしまえる幅だった。

僕はギターが壊れないように繊細な注意を払ってギターを収納したのだが、
それを見ていたおっちゃんが要らぬ気を利かせて
「ふんっ!」と無理矢理ギターを棚に押し込んだ。

振り返り、得意げな笑みを僕に投げかける。

僕は苦笑いを浮かべた。

 

 

そのタイミングでこのバスはウィルキテで
僕を降ろしてくれないことが発覚した。

急いでバスを降りようと、ギターに手を延ばしたが、
ギターケースが棚にひっかかって抜けなくなってしまった。

僕は人の持ち物をぞんざいに扱うヤツが好きじゃない。

ケースの中に入っている厚みのある物を引き抜き、
なんとかギターの回収に成功した。

 

 

「おっさん!勘弁してくれよっ!」

軽く肩パンを
二三発くらわして、
僕はバスの外に飛び出た。

おっちゃんは

『なぜ私が殴られなくてはならないのだ??!!』

と少し驚いた顔をしていた。

 

 

楽器の扱いはセエンシティヴに。

万国共通じゃないか!おっちゃんのアホ!
ギターが壊れたら弁償させてやるんだから!

 

 

 

 

 

急いで僕はウィルキテ行きがどれかを訊いてまわったが
、案内されたのは結局ミニバンだった。

しかも値段が先ほどのイリーガルなやつと変わらなかった。
料金は150ブル(868yen)。

なんでアディスとの中間くらいにある道のりなのに、高いんだよ?
ミニバンだからか?!

 

 

ミニバンは決して乗り心地がいいわけではない。
むしろ定員オーバーまで乗客を詰め込むのでかなり窮屈だ。

(僕としては通常サイズのバスの方が
ゆったりしていて好きなのだが…)

それでもアディスアベバには戻りたくなかったので、
納得できないまま150ブルを支払った。

 

 

すぐに出発するのかと思いきや、
乗客で満ちるまでバスターミナルでグズグズしていた。

やっぱりミニバンの利点が理解できない…。

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ミニバン

が走っている間、僕はずっとまどろんでいた。

 

 

だいたいエチオピアの移動ではいつもそんな感じだ。

朝がアホみたいに早いので、
睡眠時間を減らす代わりに車の中で寝る。

決して良質な睡眠は取れない。

体を横にすることができないまま細切れの睡眠を取って、
バスが目的についた頃にはどこかすり減った気持になる。

 

 

 

そんな風にしてウィルキテに僕が到着したのは12時前だった。

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次の目的地はブタジラだ。

ここからだと距離もそう離れていないし、
昼過ぎでもミニバンが出ていた。

 

 

ウィルキテのバスターミナルに降り立った僕は
さっそくブタジラ行きを探した。

こう時に英語なんてほとんど使わない。

固有名詞さえ覚えていれば大概それでなんとかなってしまう。

それに少し付け加えるなら「ハウマッチ?」
もしくは「マネー(orその国の通貨の名前)

 

 

 

シミ:「ブタジラ?」

集金係:「ブタジラ!」

 

 

 

目当てのミニバンはすぐに見つかった。

だが、僕が車に駆け寄ると、
乗車率がマックスに達しているのが分かった。

乗客たちは
「もうあんたなんて乗るスペースないよ?」
という顔でこっちを見ている。

どこか僕の乗り込むスペースはないかとオタオタしているうちに、
ミニバンは僕を残してさっさと出発してしまった。

 

 

 

僕は仕方がないので別のミニバンを探した。

一台が行ってしまっても、別の一台が待っているのがいいとろだ。

(ただし、定員に満たないと出発はしないが…)

 

 

車はいつ出発するか全く見通しがついていなかったが、
焦る気持もなかった。

10ブルのチップを先払いして
バックパックを車の上に乗せてもらうと、僕はトイレを済ませ、
ペットボトルに入った1リットルの水を買って車に乗り込んだ。
僕が一番乗りだった。

ブタジラまでの値段は60ブル(347yen)。

 

 

 

乗客待ちのミニバンには軽食を売りにくる人たちがいる。

僕は5ブルのバナナ味のチューイングガムを買った。

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26歳になってから、なんとなく

「タバコは辞めよう」

という気持になった。

 

 

実を言うと、最近喉の調子がいいのだ。自分でも驚くくらいに。

泊まったシングルルームではいつも大声でシャウトしている。

それにアフリカに来てバスキングをしなくなってから、
なんだか新しいふつふつと新しいメロディーが生まれるようになった。

タバコを吸っているとやっぱり声が出なくなる。
というか吸っていない方が調子が良い。

そんな理由からタバコは吸わなくなった。

バナナ味のチューイングガムはその代わりのようなものだった。

吸ってなくても全然禁断症状とか出ないけどね。
僕はヘビースモーカーでもなかったからね。

 

 

 

 

 

1時間もしないで、
ブタジラ行きのミニバンは乗客が集まり、
車はバスターミナルを抜けた。

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相変わらずエチオピアの大地は広大で
道路脇にたっている藁葺きの小屋は、
まるで「三匹の子豚」に出てくる長男坊の家みたいだ。

壁は粘土質でいくらか丈夫そうに見え、
涼しそうでもあるが、オオカミが来たら
一発で吹き飛ばされしまうことだろう。
ここにはオオカミもいないけれども。

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ブタジラ

に到着したのは15時過ぎだった。

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客引きや、自称「荷下ろし」の
チップ狙いの人間たちが僕に群がる。

頼んでもいないのに、
こうわーわーとこられるのは、なかなかにうざったい。

タバコを吸わなくなってしまっからか、
ちょっとイライラすることも多くなった気がする。

とりわけギターに勝手に手を伸ばしてくるヤツには
「おい!止めろよ!」と大きな声を出して牽制する。

もうちょっとやんわり撃退してもいいのかもしれないが、
今はそうなってしまうのだ。

チップ狙いから「チン、チョン!」と
からかうことに転換した取り巻きをスタスタと切り抜け、
僕は宿を探しに出た。

 

 

 

 

エチオピアを旅してみて気がついたのは、
意外にどんな町にも宿があるということだった。

バスターミナルを出てすぐのところに
イスラム系のレストランがあり、
看板に「HOTEL」の文字が書かれていた。

僕はとりあえず値段を訊きにそのレストランに足を運んだ。

 

 

レストランのスタッフたちは突然やって来た外国人を
そこまで気にせず、パタパタと動きまわり、
パスポートの情報を記帳しお金を払い込むと部屋に案内してくれた。

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宿の部屋はレストランの裏手にあった。

平たい一階建ての建物で、4つ部屋に別れている。

一応中にはトイレとシャワーがついていたが、
蛇口からは水がでなかった。
トイレ/シャワーの中には、なぜか赤い豆電球が灯されており、
10分以上ここにいたら気がおかしくなってしまいそうな
狭い空間だった。

ここでは用を足すことが精一杯だなと、僕はそう思った。

でもそれは宿代が79ブル(457yen)だからだ。しょうがあるまい。
東南アジアやインドにも負けず劣らずの安宿っぷりだ。
(そしてなぜか持ち物を全部チェックさせられた)

 

 

荷物を置くと、僕はサブバッグだけ持って外に出た。

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え?!

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う、

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牛デカくね??!!

 

 

 

 

 

 

このブタジラという町には
なかなか嬉しくない評判が立っていた。

 

 

「女性の7割が
家庭内暴力を振るわれたと証言している」

 

 

と僕がブタジラについて調べると、
サーチエンジンの上の方にブタジラについて書かれた
記事が出て来た。

 

 

僕は最初、この町がもっと
ギスギスしているのだと思っていたが、

実際に来てみると、ここの町も外国人には
比較的にフレンドリーだし、みんなのんびりと一日を過ごしていた。

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使っているのはボロボロのiPhone4Sですが、
なかなかいい写真が撮れるとは思いません?

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みんないいキャラしてる!

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「チャイナ!」「おう!これがカンフーだぁぁ!」「ぎゃはは!」

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「オールウェイズ・ブタジラの夕日」

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ピンクのオーバーオールだって??!!ハイセンスだ!

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ポージングも秀逸。

 

 

 

 

 

 

夕食はインジェラに再チャレンジしてみた。

エチオピアでこれを食べるのは二度目だ。

泊まっている宿が経営しているレストランで
40ブル(232yen)ほどのものを注文してみた。

 

 

表記が英語ではなかったので、
何が出てくるかは分からなかったが、
出て来たものはマトンのインジェラだった。

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クレープ生地は相変わらず
ほのか酸味があるが、肉との相性はよかった。

初めてインジェラを完食できたのが、
自分でも驚きだった。

なんだよ!意外に美味いじゃねえか!

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食後のコーヒーを外の売店で飲んだ。

 

 

地元のおっちゃんたちと同じベンチに座って、
オーガニック・コーヒーをすする。

おっちゃんたちは「チャット」と呼ばれる、
タバコと似た様な効果が得られるらしい葉っぱを
くちゃくちゃと噛んでいる。

お前もどうだ?と勧められたが、
タバコはやめたんだよ、と丁寧に断った。

 

 

エチオピアにはそれほど多くもないがイスラム教徒もいるので、
夜になるとどこからかアザーンが聞こえた。

宿の自分の部屋に戻って、
ミネラルウォーターで歯磨きを済ませると、
ベッドの上に寝袋を敷いてそれに包まった。

 

 

 

なかなかいい町じゃないか。ブタジラ。

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アフリカってほんとうにWi-Fiが遅いのよね。うん。

だからのんびりやってます。旅は楽しいです。

ベッドバグ、多いけどね。

 
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2 件のコメント

  • シミ君、私はビザランの為に3ヶ月に1度ラオスに行きますが、この国のコーヒー園のコーヒーが意外と美味しいのです、濃い目の味でマジいけますよ。
    それとアジアではベトナムコーヒーが美味いですね、最近ではコーヒー豆の生産量も世界一だと聞きました。

    • >JOSANさん

      確かに!
      甘党の僕はベトナムコーヒー大好きでしたね。
      あのコンデンスミルクとブラックコーヒーの抜群の相性!
      ラオスはオーガニックの農園が多い印象がありましたが、コーヒーは
      あまり飲んでいなかったです。

      東南アジアはなぁ〜、ご飯が美味しいですよね。
      いや、宿も安いし交通費も安い!

      また行きたいです♪

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