「金髪の教師(仮)に会いに」

世界一周605日目(2/24)

 

 

深夜4時

にアラームがなった。

荷物をまとめて忘れ物がないかチェックする。

 

 

よし大丈夫だ!行こう。

(ってやっているのに、速乾タオル忘れちまったよい..)

 

 

 

ここはタンザニア、ムワンザ

目指すは首都のダルエスサラーム

噂によると、
ナイロビ並に治安が悪いとか、

行ってみた人によると
「全然そんなことなかったよ。むしろ人も親切でよかったよ」
だったりとか。

 

 

できることなら避けて通りたい。

自ら危険地帯と言われる場所には行きたくはないのだが…。

 

 

僕には約束がある。

ちょっと予定を間違えて、二日ズレてしまった。
もしかしたら会えないかもしれない。

とりあえず行ってみよう。

 

 

 

 

 

バスターミナルまで行くと、
既に10人ほどの人間がバスを待っていた。

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中にはコンセントを使って
スマートフォンに充電している者もいたので、
僕もそれに習おうと思ったのだが、
どういうわけか、僕の変換プラグでは電気が届かないようだった。

朝メシ代わりといは言えないまでも、近くの露店でジュースを買った。

ペットボトル飲料で2000シリング(138yen)は高いなと思っていたが、
夜明け前だから仕方ないと、あまり深く考えずに買ってしまった。

瓶の330mlで500シリング(33yen)で買えるのだ。

ターミナルで待つ人に訊いたら、案の定二倍の値段で買わされていた。
やれやれ、朝から何におれを金を使っているんだ?

 

 

 

 

バスは数台やって来た。

僕はチケットを買った会社のバスに乗ろうとしたのだが、
なぜか、僕の乗るべきバスは違う会社のものだった。

よくわからん。こっちは別に騙されてたとかじゃないんだけどね。

 

 

僕が乗ったバスはかなり綺麗だった。

車内には電気が煌々と灯り、通路にはマットまで敷いてある。
いくらか座席が低い気がしたが、荷棚にもちゃんとギターが収まった。

残念だったのは僕の席が窓際ではなかったってことだ。

何食わぬ顔で窓際に座っていると、
そこに持ち主ならぬ”座り主”が
「そこ、私の席よ!」と自己主張をかましてきた。

 

 

 

 

 

 

ほぼほぼ

時間通りにバスは出発した。

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これからまるま一日以上かけてダルエスサラームまで移動する。

時間帯も早く、通路側では外の景色もよく見えない。
しかもこういう時に限ってたっぷり睡眠をとってある。
僕は一体どうすりゃいいんだ?

 

 

30分も走らないで、途中から乗り込んで来たおじさんがいた。

首からはスピーカーをぶらさげ、
スピーカーにはマイクが繋げられている。

何をしだすのかと思えば、
スワヒリ語で(たぶんそうだろう)ポソポソと演説を始め、
それが終ったかと思うと、
今度はスピーカーから流れる音楽に合わせて唄い始めた。

それも僕の斜め前方で。

 

 

なんでったって、こんな日の登る前から
おじさんの歌なんて訊かなくちゃいけないんだ??

だがおじさんは『こんな朝早くからすみませんねぇ』
とでも言うように声量は下げており、
誰かが機嫌がいい時に口ずさむくらいの大きさでしかなかった。

これで歌終った後に、
バスキングのようにお金を徴収するのかと思いきや、
曲が終るとどこかでバスを降りた。

な、なんだったんだ??!

 

 

僕はおじさんに
『次は何が来るんだ?!』と期待していたために、
写真を撮るのをすっかり忘れてしまった。

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おじさんの歌が終った後は、
タンザニアン・ミュージック縛りだった。

スピーカーからはポップ・ミュージックが垂れ流され、
モニターからはそのミュージック・ビデオが延々と続いた。

運転手はかなりストックを持っているらしく、
一度たりとも映像が被ることがなかった。

画面の中ではピースフルなアフリカのポップスに合わせて、
アフリカ人たちが股をパタパタ開脚させて楽しそうに踊っている。

 

 

 

通路側の席からはすっきり外を見ることが出来なかったが、
タンザニアの景色からは自然豊かな印象を受けた。

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ケニアの悪路に比べると、タンザニアの道路は上品にさえ思えた。

あの嫌らしい隆起はないし、バスは滑るように道路を走る。

ハイウェイ脇は平らな草原や木々が続いている。
スーダンやケニアのあの荒れ地やそこに建つボロボロのバラック小屋は
なんだったのだと比べずにいられない。

そんな風景を横目に
ただぼおっと垂れ流しにされるMV(ミュージックビデオ)を眺めていた。

暇な時間をつぶすにはうってつけかもしれないなぁ。

 

 

 

 

 

 

そして

僕は今から会いに行く人のことを思い出す。

 

 

ウチダくんと出会ったのは
ネパールのカトマンズだった。

金髪の大学二年教育学部生は休学して、旅に出た。
彼が予定していた期間は1年三ヶ月くらいだったと思う。

ある時期から彼のFacebookの投稿は
アフリカの国々でいっぱいになった。

モロッコ出国を皮切りに、
あのエボラ出血熱でホットだった西アフリカ諸国を旅してまわり、
どこか国のどこかの川をカヌーで下り、
(そして電子機器を全て水没させ)

マラリアと栄養出張で一時帰国を挟みつつも、
再度アフリカにやってきた。

そんな

“生粋のアフリカ好き”
それがウチダくんだった。

 

 

 

今だから僕はアフリカを旅することが楽しめて来たが、
スーダンに入る前はアフリカなんぞに行く旅人たちの気持が
ちっとも理解できなかった。

金もかかるし、病気は怖いし、治安もよくない。衛生面だって悪い。

人は何を求めてアフリカを訪れるのだろうか?

ウチダくんがどうしてそこまでアフリカに惹かれるのか、
アフリカを旅することの魅力を僕は彼に訊いてみたかった。

 

 

 

 

 

バスはただひたすらダルエスサラームに向けて走った。

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時折バスが数分停車すると、外には物売りたちが群がった。
やはり窓際の方がいい。

となりのお姉さんはビリヤニのようなものを買って
ムシャムシャと食べていた。

 

 

僕が手に入れることができたのは、
通路を挟んで隣りの席に座っていたお兄さんが
代わりに買ってくれたポテトチップスと
車内販売の酸っぱいブドウだけだった。

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一応サブバッグの中には”On the Road”が入っているが、
バスの中ではどうも読書に集中することがきない。

だからMVを眺めるのに飽きると、音楽を聴くか、
くだらないことを考えていること以外にすることはなかった。

また日本語だったら、読書のしやすさも違うのかもしれないけど..。

あと、映画かなぁ..。

 

 

僕は日本でも観ることのできる映画や本を、
旅先にまで持ってくるのはどうかと思ったので、
ハードディスクにデータを入れるなんことはしてこなかった。

もちろん、宿でたまたまお会いした方がデータを
持ってるということはあったが、
どうしても僕はデータをもらう気にはならなかった。

 

 

だがさすがに、10時間の以上の移動になると、
できることが限られてくる。

もちろん、走行中の車の中ではまともな絵を描くことはおろか、
文字だって書くこともできない。

 

 

だから今のようなシチュエーションになると、
『やっぱり何か持って来た方がよかったな』と思うのだ。

キンドルのタブレットとか持って来てもよかったかなぁ…???

 

 

あまりの暇さに、終いには

斜め前方のお兄さんが
パソコンで見始めた海外ドラマを
盗み観る始末だ。

 

 

なぁ、わかるかい?
そのくらい暇なんだよ。

 

 

これで南米とかも同じ位、もしくはそれ以上に
移動に時間がかかるんだろ?
もうどうすりゃいいんだろうね?

ハードディスク買おうかな?
あ、そんな余裕ないんだった…。

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ダルエス

サラームにバスが到着したのは
23時をまわってからだった。

マップアプリで確認すると、
宿のある場所までは8kmも離れていた。
これは一体どうすれば…?

 

 

ダルエスサラームのタクシー強盗の話は僕も訊いていた。
だからこんな夜遅くにタクシーになんて乗りたくはなかった。

だが、バスを降りた場所はとてもじゃないが、
ターミナルとは言えないような場所だった。

日中であればここから乗り合いの
「ポスト・バス」というバスで500シリング(33yen)で
宿のある場所まで行けるとのことだったが、
当然ながら今はポスト・バスは走ってない。

 

 

タクシーの運転手たちが僕に甘い誘惑をかけてくる。

さっきまでのバスに一緒に乗っていたお兄さんたちは
「タクシーに乗らなきゃ移動することはできないよ」
と言ってくる。

宿のある場所までは20000シリングという(1,308yen)だったが、
お兄さんたちが交渉してくれ15000シリング(981yen)まで
値下げすることができた。

 

 

タクシーの運転手はイスラム教徒が被るようなニット帽を被っており、
首からはIDカードのような者を下げていた
(というか偽装しようと思えば簡単にできるか…)

 

 

僕には選択肢がなかった。

ここで夜を明かすだんなんて想像もつかなかったし、
ここはこのタクシーが本物であることを信じるだけだ。

タクシーのおっちゃんとは簡単なお喋りをして、街まで向かった。

 

 

 

 

 

タマリン・ホテル
というのがウチダくんの泊まっているらしき宿だった。

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宿の外には警備らしきおっちゃんがおり、
こんな夜遅くでもチェックインすることができた。

空いているはダブルルームしかないらしい。
ううぇっ…、マジかよ?

だがまず一番最初に確かめなければならなかったのは、
まだウチダくんが泊まっているかということだった。

 

 

 

「日本人の友達が泊まっているはずなんだけど」

 

 

そう宿のおっちゃんに訊ねるが、
まったくおっちゃんは理解してくれようとしない。

なんとか宿泊客の帳簿をチェックしてくれるところまではやってくれたが、

「インド人なら泊まってるけど?」なんて言い出す始末だ。

 

 

僕は難しい英語は使っていない。
そんな英語が使えるほどペラペラでもない。

中学生でも話せそうな単語を組み合わせて

「my japanese friend stays here. can you check?」

くらいのことしか言っていない。
単語をぶつ切りにして
「日本人、友達、泊まってるでしょ?」
とも言っている。

 

 

おっちゃんも英語が少しなりとも喋れる。

彼に足りないのは想像力だろう。

 

 

 

結局自分で帳簿を確認した。

10秒もかからずにウチダくんの名前を見つけることができた。

 

 

そして彼はまだここに泊まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ!シミさ~ん!
もう来ないのかと思いましたよ」

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ウチダくんには悪いと思ったが、
レセプションまで呼んで来てもらった。

Facebookに投稿された写真でみるよりも、
どっぷりアフリカに漬かっている。
そんな印象を受けた。

 

 

もはやプリンを越し、毛先だけ染めたようになった金髪。
顎には長い髭を蓄え、

なにより、ヒョロっこい体が旅人感を演出している。

 

 

僕は無理言ってダブルルームをシェアしてもらうことにした。

ウチダくんは「全然いいっすよ」と
わざわざシングルルームからダブルルームに荷物を移動してくれた。

 

 

「いや~、明日出ちゃうとこだったんですよ」

「ああ、うん。ごめんね。
この前のメッセージに旅程が書いてあるの全然気がつかなくて。
それより、なんかすごいバックパック持ってるね?」

「ああ、これっすか?マラウィで買ったんですよ。
軍の払い下げのやつで。丈夫そうだなーって。
前のバックパックもうダメになっちゃって」

 

 

ウチダくんは明日の10時に
友達のスペイン人とザンジバル島に向かうらしい。

それで日本に帰るのだとか。

 

 

「あれ?この前保険料が手に入ったから、
旅が続けられそうってツイートしてなかった?」

「あぁ、どっちにしろ
3月には帰る予定だったんですけどね。
えっと、昨日タクシー強盗に遭って
パソコンとかカメラとか
全部盗まれちゃったんですよ」

「マジで!!!???」

「いやぁ~、マジヘコみましたよ。
今だからこうしてられるけど、
盗まれたあとは何もする気になれませんでした」

 

 

そう爽やかな顔で言ってのけるウチダくんは、開き直っていた。

まだ保険が適用されているらしいが、
何度か保険を申請しているので、
戻ってくるかは分からないとのこと。

 

 

 

 

 

シャワーを浴びて、体をさっぱりさせると、僕たちは屋上に登った。

屋上には涼しい風が吹き抜け、
周りをタマリン・ホテルよりも高い建物が囲っている。

バスの中でたっぷり寝た僕に、
ウチダくんは僕のインタビューにつき合ってくれた。

 

 

 

 

ウチダくんがアフリカを旅先のメインに選んだ理由。

 

 

それは彼の

お父さんの
「冒険をしろ!」
という一言

に影響を受けたかららしい。

 

 

「だから西アフリカとか
中央アフリカだとコンゴとか行ったんですよね。
あれこそ最底辺の国ですよ。ほんとに何もないです。

家とか東アフリカよりもずっとボロボロだし、
衛生面も整ってないし、ネットももちろんない。
交通機関だって、乗り合いのタクシーですからね。
助手席に5人とか座りますよ?」

 

 

ウチダくんは楽しそうに
西アフリカの思い出を語って僕に聞かせてくれた。

 

 

「ウチダくんにさ、訊きたかったんだけど、
ウチダくんにとってアフリカ旅の魅力って何?」

「うーーん…、おれ、
でっぷりしたおばちゃんがカラフルな民族衣装着て
のっしのっし歩いているの見るのが好きなんですよ?
そういうのって分かります?」

「ごめん、全然分からない(笑)」

「やっぱり、実際に自分で行ったみないと、
その国に何があるかなんて分からないですよね?」

「うん。そうだね」

「これと言って特にアフリカを
旅する理由なんてなかったんです。
ただ見てみたかっただけ。ですかね?」

 

 

 

 

書籍やブログ、沢山の旅人たちが、訪れた場所の魅力、
旅そのもののを魅力を語っている。

当然彼からも旅の魅力が聞けると思っていたのだが、

 

 

そうか。語る言葉を持たなくても、それでいいのかもしれない。

 

 

 

ウチダくんは間違いなくアフリカの旅を楽しんでいる。

空が白ずむまで語り、僕たちは眠るらなかった。

そうしてまた、朝がやって来たのだ。

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ウチダくん、話を聞かせてくれてありがとう。

もう時間が経ったら、いくつかは話したことを忘れてしまったよ。

でもね、やっぱアフリカを旅してきた君の話が聞けてよかったよ。ありがとう。

今度は日本で会おう。

 
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2 件のコメント

  • シミさーん!!また登場させてくれてありがとうございます!!
    本当次までにめっちゃ魅力語れるようにするんでまた登場させてください!!笑

    • >ウチダくん

      いやいや。お礼だなんて。そんな♪
      こちらこそ、ダルエスサラームで話を聞かせてくれてありがとうね。

      たぶん、自分も旅を終えた後、
      日本でする活動がアクティヴになりそうな予感がするんだ。

      もちろん漫画も描くけど、またウチダくんの話聞きに行くから!
      アフリカ旅の魅力がどんな風に聞けるのか楽しみにしてるね♪

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