「ヨハネスブルグの空港で」

世界一周640日目(3/31)

 

 

バスの窓

から眺めるヨハネスブルグの街は、
北斗の拳」と言うほど荒れ果てた場所ではなかったが、
大きな都市であることには変わりなく、交通量は多かった。

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バスは高架線の上を走る。

そこから見下ろす街並は曇り空という天候のせいもあってか
どこか陰鬱で、建物も窓ガラスが割れていたり、
レンガがむき出しになていたり、

『どうやってそこまで登ったのだろう?』
というような場所に落書きがしてあった。

見たところ治安はよくなそうだ。

 

 

 

バスターミナルはハウ・トレインという
空港に直接行く電車が停まる駅と隣接していた。

僕は助かったと胸を撫で下ろして、
街には一歩も出ずにそのまま駅構内に入った。

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ポーターと思われる男が僕に声をかけてきたので、
僕はどこで空港行きのチケットが買えるのかを訊ねた。

すると「おれについてこい!」と勝手に案内役を買って出るので、
「いやいや、場所だけ教えてくれればいいんですよ」と断った。

どこの国に行ってもチップ目当ての行動というのは通じるものがある。
彼の場合は分かりやすかった。

他にも個人的にチケットを売りつけようとするヤツもいて、
なんとなく僕はインドのことを思い出したのだ。

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ヨハネスブルグ・パーク・ステーションには
ちゃんとしたインフォメーションもあった。

そこで10秒もかからずにチケット売り場の場所を教えてもらった。

地下鉄への階段を降りて僕は空港までのチケットを買った。
値段は1500円ほど。手持ちのお金は残り千円くらいだ。
空港でコーヒーが二杯くらいは飲めるかもしれない。

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ハウ・トレインはとても綺麗なメトロだった。

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日本のものと比べても、
こっちの方が時代の先を行っているんじゃなうかってくらいだ。
きっと最近作られてた電車なのだろう。

入り口付近にバックパックを降ろし、
座席に着かずに外の壁かりをぼっと眺めていた。

途中から乗って来たキーボードを抱えたお兄さん
僕に話しかけて来てくれた。

僕の旅の話を面白がってくれ、
Facebookの連絡先を交換してそのお兄さんとも別れた。

たとえ治安の悪いと言われている場所であっても、
こういった出会いがあるのだ。

いつかはツーリストが安心して訪れることが
できるようになる日が来るのであろうか?

 

 

 

 

 

空港

のある駅に到着すると、僕は改札手前のトイレに入った。

盗難を恐れるあまり、僕はバックパックを背負っている時は
車いすのマークのトイレを使うようにしている。

トイレの中には空港のアナウンスが聞けるように、
天井にスピーカーが取り付けてあった。

アナウンスは英語で、聞き取りにくかった。

ただそれは
「不審者がここのトイレ使ったら罰則を受けます」
のように聞こえてならなかった。

うん。ちょっとね、ごめんなさいって気持だよ。
でも、荷物が多いのさ。許しておくれ。

 

 

 

 

 

さて、

ここからいよいよ空港泊が始まるわけだ。

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ビビりの僕は明日(しかも20時)に出発するのにもかかわらず、
前日にやって来るというビビリっぷりだった。

これならどんなことがあっても飛行機には乗れる…、ハズだ。

 

 

今回はLCCではなく、エティハド航空だったので、
チケットのプリントアウトが義務づけられていなかったように思えた。
僕はそれが不安だった。

いや、もっと遡ると、
自分がチケットをコンファーム(予約確定)したのかさえ
定かではなかった。

この旅の中で間違いなく飛行距離が長い移動だろう。
これでチケット買い直しとかになったら日本に帰ろうと思う。

僕は病的な強迫観念にとらわれていたが、
エティハド航空のオフィスに行き、自分のアカウントを確認してもらうと、
ちゃんとeチケット(らしきもの)まで発見してくれた。

 

 

 

 

僕にはまだ気になることがあった。

ポータブルバッテリーが
ついにオシャカになってしまったのだ。

 

 

というのもマユさんの家を出る際に、時間に慌てて
おもっくそポータブルバッテリーを落としてしまったからだ。

さっきハウ・トレインの中で充電しようと思ったら
ウンともスンとも言わないでやんのコンチクショゥッッッ!!!

 

 

僕は空港内でポータブルバッテリーを探したのだが、
どれもこれも値段が高く、そのくせ容量が

今まで使っていた10,000アンペア以下のものだった。
フルに充電した状態でiPhoneを4回はチャージできるシロモノで
Amazonで2千円くらいで買ったのだ

それがどうだろう?
ここで同じくらいの容量のものを買うには

一万円以上もするじゃないか!

バカ言ってんじゃないよ!

 

 

 

僕は諦めた。

カ、カナダで買えばあいいじゃぁないか。
何も無理してここで買う必要はない…。

そして、このふたつを片付けてようやく

「空港泊」という名の耐久レース

が始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

食糧は

ケープタウンで買い込んでおいたので、
ここで食事をとらなくても大丈夫そうだった。

それに思っていたほど物価も高くない。
ペットボトルのコーラであれば120円くらいで買うことができる。

となれば次に大事なのは作業ができる場所だ。
できることなら充電できる場所がベター!

僕はコンセントを探して空港内をプラプラ歩き始めた。

 

 

 

 

見つけた通行人の邪魔にならなさそうな
空港の端のほうにあるコンセントだったが、

あろうことか僕の持っている
コンセントの差し込み口を変換するプラグが
使えないではないか!

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南アフリカのソケットの形状は独自のものなのだ。
スーパーでも南アフリカ用のソケットに変換するものが
200円程度で売られていたのだが、
僕はお金をケチってそれを買わなかった。

仕組みはアイルランドやイギリスと同じで、
上部の穴が他の二点を開けるスイッチになっているのだ。
三角形をイメージして欲しい。

 

 

 

僕は充電できないものかとコンセントと格闘を繰り広げた。

微妙なスウィート・スポットで電気が通るのだが、
コンセントの差し込み口が広いために、変換プラグは固定されず、
安定した電気の供給ができないのだ。

エチオピアで買ったマルチタップには電球がついており、
コンセントに差し込むと点灯する仕組みだったので、
それで電気が通っているのか調べることができた。

僕はつっかえ棒をしたり、
紙をちぎって余分なスペースを埋めようとしたのだが、ダメだった。

 

 

ここで創意工夫は破れてしまうのか?

クリエイティヴで乗り切ることは不可能なのか…???

 

 

 

天啓が降りて来たのは諦めかけた時だった。

 

 

『そうだおれにはガムテープがあるじゃねえか!』

 

 

急いでバックパックのサイドからガムテープを取り出し、
変換プラグをうまいこと固定することに成功すると、
自分を褒め称えずにはいられなかった。

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おれ…天才じゃねえか?

 

 

 

 

そこで充電をしながらパソコンで日記を書いた。

こんなところに座り込んじゃうなんて、
まったく上品さに欠けるが、僕はホームレス系バックパッカーなので
そんなのお構いなしだ。

空港内には無料のWi-Fiが利用できたが、
30分という時間制限があり、ブログの更新なんてできやしない。

僕はこういう時に潔く諦めることにしている。
大事なのは書き残すことだからだ。

 

 

 

ずっと胡座をかいて座っていたので、体を伸ばす必要があった。

空港内をバックパックと一緒に歩き回った。

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あれ?なんか変な人いるね。

 

 

 

徐々に空港が自分の部屋の一部になりつつあった。
というか世界中に僕の作業部屋がある。そんな感覚だ。

トイレの場所、充電できる場所、作業机、Wi-Fiの有無、
レストランやカフェの場所、などなど。

自分のテリトリーが増えて行くと安心感も出てくる。

そんな風にして、空港内を探検した。

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僕は絵の描けそうなテーブルのあるカフェで
作業をすることにした。

カフェのスタッフたちは僕の絵にかなり興味をしめした。

みんな食い入るように僕の作業を見つめ、
みんな好意的な言葉をかけてくれた。

 

 

スタッフの一人に似顔絵を描くと、
彼は僕にWi-Fiのパスワードを教えてくれた。

外で絵を描いているとこんなこともあるのだ。
おかげでブログの更新をすることができた。

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23時に

店が閉まると、トイレに行って髪を洗った。

トイレは僕にとってシャワーでもある。体は洗うことはできないが、
頭であれば可能だ。

今回も車いすマークのトイレを使わせてもらい、
石鹸で頭を洗った。

そして寝床になりそうなベンチに戻るのであった。
そういうのはまるで銭湯のように思える。

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髪を乾かしながら、バックパックから食材を取り出し
簡単なサンドイッチを作った。

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気づいたことは

どう考えても僕は食糧を買い過ぎたということだった。

明日の20時までに何回食事をとるだろうか?

今はそんなに腹が減らない体だ。

クッキーやヒマワリの種は保存がきくけど、
アボガドやトマトなどの生ものは無理だ。
機内に持ち込めないことを僕はすっかり忘れていた。

 

 

 

遅めの晩ご飯を済ませると、あたりはしんと静まり帰っていた。

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誰もいない空港はどこか好きだ。

終園後の遊園地に入ってしまった。そんな感じだろう。

昼前はあんなに賑やかだったのに、
今ではだだっ広いフロアにポツポツと清掃員がいたり、
カフェのスタッフがみんなで集まって仕事後のお喋りをしていたりする。

誰も僕がここに寝泊まりすることに対して、
気にかけている様子を見せなかった。

 

 

どこからともなくホームレスと思わしきレンガを持った男性が
フラフラとやってきて、ベンチに座った。

僕はそんな彼を気にもとめないで、
うるさくない程度にギターの練習をした。
心地よくアコースティックギターの音が空港に響く。
なんだか贅沢な時間だった。

 

 

その後、誰もいないカフェのテーブルで
先ほどのWi-Fiを使って作業をした。

そろそろ眠ろうかと、手頃なベンチを探して横になったのだが、
ここがヨハネスブルグだといことを思い出した。

 

 

 

 

空港内は思っていた以上に安全だった。

だがそれで油断してまた荷物を全て失うようなヘマはしたくない。

バックパックとギターをベンチに固定して、
座ったままの姿勢で僕は目を閉じた。

 

 

 

そんなヨハネスブルグ、O・R・タンボ国際空港

 

 

BGMは古典ジャズに変わっていた。

ルイ・アームストロングやメロウなボーカルたちが
僕に子守唄を唄ってくれる。

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