「警察とチンピラは紙一重」

世界一周647日目(4/7)

 

 

7時半に

目覚めたのは、何も早起きしたかったからじゃない。

 

 

寒さで眠れなかったからだ。

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それなのに、僕は今日も元気だ。
声だってやられてさえいなかった。

やっぱりおれは馬鹿らしい。

いや、もっと素敵な名前で僕を読んで欲しい。

女のコだったら「おバカさん♪」って僕のこと蔑んでもらって
「ふふふふ♪」って優しく笑ってくれれば

僕はきっと鼻血を出して
卒倒することだろう!

ああ、そんな女のコ、
ここにはいないのが残念で仕方ねえっっ!

 

 

 

 

荷物をまとめて、テントをたたむ。

近くを通った犬連れのおじさんに
「グッモーニン!」と爽やかに挨拶しても、

ガン無視だった。

そうか…、僕はホームレスだったんだっけ。

涙腺がふるふると震えたけど、それは寒さのせいにすることにした。

お母さん、丈夫に生んでくれてありがとう。
この体はマジで旅向きの体だよ。

だって、一年九ヶ月旅して来たけど、
このかた一度も風邪引いたことねーもん。
インドで一回体調崩したくらいかな?

 

 

 

 

 

今日はモントリオールまで向かうことにした。

オタワからは来るまで二時間ほどの距離のようだ。
それならヒッチハイクも簡単だろう。

いつものように”hitichwiki”を参考にして、
どこでヒッチハイクをすればいいのか検討はつけておいた。

問題はその場所まで行くのに
どこからバスに乗ればいいのか分からないということだった。

一応Googleマップでも調べておいたのだが、
バスの乗り換えが余分にあったため、
僕は途中まで歩いて行くことに決めた。

ヒッチハイクのポイントまで一直線に伸びる道路まで出れば
バスは簡単に見つかるだろうと思ったのだ。

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元気よく歩き出したのはいいのだが、
ここ数日歩きっぱなしのため、足に疲労がたまっていた。

不可をかけすぎないように少しゆっくり歩く。

歩いていると体温が上がって来ていたアウターを脱いだ。
どうやら少しずつ温かくなって来ているようだった。
このまま寝れない日が続いたらどうしようと思っていたが、
これならキャンプでもしっかり睡眠がとれそうだ。

 

 

 

 

 

ヒッチハイクポイントは地味に遠かった。

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マップアプリを何度も確認して、
ようやくバスの発着所に辿り着いたのだが、
分かったことはバスは街に戻る方向のバスということだった。

 

 

発着所のベンチで一呼吸付き、停留所の前を横切る道路を渡った。

車二台分のスペースの一車線づつのノーマルな道路なのだが、
おかしなことに、歩道橋がついていた。

ここに信号か横断歩道を作ればいいのになぁと思いながら
その道路を横切ったわけなのだが、

 

 

向こうからやってきたパトカー
僕の後ろを通り過ぎたかと思うと、Uターンして戻って来た。

中から女性警官が顔を出した。

 

 

 

「パスポート見せて」

「は、はい… 。」

僕の格好が悪かったのか?そこまでホームレスに見えていたのか?

 

 

「あなた、あの標識が見えないの?」

「え?」

「ここはね、横断禁止なの」

「あ、す、すいません」

「罰金125ドル。払える?」

 

 

僕の血の気が一気にひくのが分かった。

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た、確かに!!!

 

 

 

「す、す、す、すいません!
そんなお金持ってないです!
初めてだったんです!許してください..!!」

ピリピリとした空気が流れ、
トランシーバーの向こうでは男性警官の声が聞こえる。

僕の目の前にいる女性警官はパスポートのデータを機械に打ち込んでいる。

パトカーの中にはデスクトップのような
パソコンが備え付けられていた。
なんだかハイテクなパトカーのように思える。

 

 

 

「あなた、一体何カ国旅してんの?」

「え?あ、50くらいですか?」

「へ~、タンザニアにも行ったの..」

そう女性警官は呟いたが、
そこから会話が発展するなんてことはなかった。

 

 

 

「あなた、昨日はどこに泊まったの?」

「YMCAです」

僕はとっさに嘘をついた。

野宿ですなんて言ったらさらに状況が
ややっこしくなることが予想できたからだ。

 

 

「それで、どこへ行くつもりなの?」

「電車でモントリオールです」

「電車?
じゃあ別にここからじゃなくてもいいんじゃない?」

「いや、あの、友達がヒッチハイクがうまく行ったから、
試してみようかなって。
もしダメだったら電車を使おうって思ったんです」

「いい?ヒッチハイクは危険なのよ?
モントリオールも危ないの?あなた分かってるの?」

「…」

「まぁ、いいわ。
ヒッチハイクするかどうかはあなた次第だから」

「…」

「今回は”警告”だけにしておくわ」

「ほんとうにすみませんでした…」

 

 

 

警告を残してパトカーは去って行った。

僕が思ったのは
世の中の女性警官はみんな「S」だろうな
ということと、

僕にとって
警察とチンピラは紙一重

ってことだった。

節約のためにキャンプやらヒッチハイクをしているのに、
あやうくむしられるところだった。

バスを見つけるためにここまで歩いてきたのに、
罰金を払わされたんじゃたまったもんじゃないよ。

僕のテンションは一気に落ちていた。
こんなんで気持のいいヒッチハイクができるとは到底思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ

どこかでこの流れを断ち切る必要があった。

 

 

ひとまずバスに乗り、
ヒッチハイクポイントの近くまで行き、見つけた
Tim Horton’sというカナダの至る所にあるコーヒーチェーン店に行き、
コーヒーとクッキーを注文して一息つくことにした。

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朝出発したのに、時刻は11時半を過ぎていた。

「嫌なことが立て続けに起こる」

流れのようなものは存在すると思う。

だけど、どこかでその流れを変えることができるとも僕は考えている。

 

 

ヒッチハイク前のコーヒーブレイクは僕にとって必要だった。

コーヒーを飲んで一服すると、
僕は無理矢理にテンションを上げて
ヒッチハイクポイントへと向かった。

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30分ほどで一台のトラックが止まってくれた。

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運転手のレアルさんはどちらかと言えば無口な人だった。

最初は自己紹介も兼ねて、僕がペラペラと喋っていたのだが、
しばらくすると会話はなくなってしまった。

 

 

こういう時に僕はなんと言って
切り出せばいいのか分からなくなってしまう。

何か些細な話題を思いついたとする。
それを投げかけていいのか考える。
やっぱりこんなつまらない話題は振らないほうが
いいんじゃないかとストップがかかる。
いや、でも、会話の始まりなんてそんなもんだし…。

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「あ、あの、レアルさんに質問があるんですけど、
カナダの一番いいとこってなんですか?
ほら。 日本で言うと、今は桜の季節なんですよ。
満開の桜ってのはとても綺麗なんですよ?」

「別にカナダに住んでいるからって
カナダが好きなわけじゃねえよ。
一日中こうして働いて、それ以外の時間はビール飲んでるかだ」

 

「…」

 

 

別に嫌悪感とかそういうのではないのだが、
映画や小説にも出てきそうなベタなトラックの運転手

それがレアルさんだった。

 

 

レアルさんはトロントから出発し、
18時間もかけてケベック以北の町に向かう最中らしい。

車内はそんな長距離のドライブ用に座席の後ろはベッドになっていた。

掃除が行き届いているのか、中は綺麗で、
ふと助手席の上を見上げると猫のぬいぐるみが置いてあった。

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「長距離ドライブだと眠たくなりませんか?
僕すぐ眠くなっちゃうんですよね。
学生の時なんか事業中しょっちゅう眠ってましたよ」

「別に眠たくなんてならない。疲れたら音楽をかけるくらいだ」

「は、はぁ…」

 

 

会話がなくなってしまうと、僕は外の景色を見て時間を過ごした。

それでも眠たくなってしまうと(もちろん僕が)
サブバッグから手帳を引っ張りだし、日記を書くためのメモを残した。

 

 

 

 

ドライブから1時間半の場所にあるサービスエリアで
僕はトラックを降ろされた。
レアルさんの車はどうやらモントリオールまでは行かないみたいだった。

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僕はハイウェイの入り口でまた親指を立てることとなった。

 

 

しばらくするとパトカーが止まった

 

 

「ここから先は進入禁止だよ。分かっている?」

「大丈夫です!」

 

 

そこだけ声を大きくしてはっきし答える。
カナダの警察はちゃんと仕事していると僕は思う。

 

 

 

何度か車が止まってくれたのだが、
目的地はモントリオール手前の町だった。

僕はそうやって二台の車を見送ったのだが、
三台目の車が止まってくれた時に、
とりあえず次の町まで行ってみることに決めた。

 

 

 

二台目のドライバーは北極に行く船の乗組員のお兄さんだった。

僕が日本人であることと、アマチュアの漫画家であることを知ると、
お兄さんは僕に興味を示してくれたようだった。
こうなると会話もいくらか弾む。

 

 

「おれの船にフィリピン人のヤツが乗っているよ」

「え?フィリピン人。
フィリピンと北極じゃ全然温度が違うじゃないですか!」

「ソイツはエンジンルームで働いているよ。
あそこは温かいからな」

「はははは」

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お兄さんは次の町のハイウェイの入り口にあるガソリンスタンドで
僕を降ろしてくれた。

近くには馬の絵の書いた道路標識がある。
周りも自然豊かで、そういったアクティヴィティが盛んなのかもしれない。

ハイウェイへ続く道は交差点になっており、
車が速度を落として進んで行った。

 

 

ハイウェイ直前にパトカーが止まっているのが分かった。
ベストなポジションでヒッチハイクができない。

 

 

僕はボードを掲げてヒッチハイクを再開したのだが、
車で30分ほどの距離なのにも関わらず、
なかなか車は止まってくれなかった。

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ガソリンスタンドの前には
レストランやコーヒーショップ、KUMONがあり、
そこに子供たちが自転車でやって来るのが見えた。
クモンってどこの会社の学習塾なんだろう?日本にもあったよね。

 

 

 

 

 

 

一時間ほどして車が止まってくれた。

中から小柄なマダムが出て来て、元気よく乗りなさい!
と僕に声をかけてくれた。
彼女の車は間違いなくモントリイオール行きだった。

ドライバーのナニさんはアルジェリア出身の人で、
いましがたポロをやってきたばかりだと言った。

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スパッツのようなものを穿いており、
そこに馬の毛(だろうか?)栗色の短い毛が付着していた。

後部座席には大きなフレンチプードルが乗っており、大人しくしていた。

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「乗馬って何がいいんですか?」

「馬はいいわよ。人間と心を通わせることができるの。
人の心に合わせて彼らも走ってくれるのよ。
私はね、発達障害の子供たちをサポートする仕事をしているの。
彼らを馬に乗せると、子供たちの心が回復するのよ♪
それに理数系の大学生は馬に乗るのが得意なの。
彼らって計算するでしょう?
だからかしら、すぐにコツを掴んじゃうのよね」

そうナニさんは楽しそうに
馬に乗ることの素晴らしさを僕に語ってくれた。

 

 

僕が冗談混じりに格安のファストフード店「PizaPiza」のことを話すと、
ナニさんは「この町にはピザピザはないかもね」と言って、
わざわざピザ屋の前に車を停め、僕に20ドルを渡そうとした。

僕は驚いて今のがバックパッカーの冗談であることを伝えた。
ナニさんはベジタリアンなのでピザは食べないらしい。

 

 

 

 

 

そして、ピザをごちそうしてもらう代わりに
僕が連れてこられたのは、ナニさんの自宅だった。

 

 

「安心しなさい。誘拐なんてしないから♪」

そう冗談めかしてナニさんが言う。
ここまで来たら僕ができることはドライバーさんを信じることしかない。

というか会った時点でナニさんのことは信じられたけどね。
そういう人とかしか僕は巡り会わないから。

 

 

ナニさんの自宅はモントリオールの街が一望できる
山の上にある高級住宅地の一角にあり、
中に入ると、そこは「城か!!??」と驚くほどの内装だった。

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すげえいい眺め。

 

 

ナニさんは水彩画もするらしく、
部屋にはナニさんの作品がいくつも飾ってあった。

中には何十万、ひょっとしたら百万は越えるんじゃないか
と思う絵画が飾ってある。
ナニさんの家はちょっとしたギャラリーでもあった。

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「それじゃあ、野菜が食べたかったのよね。
残り物でごめんなさいね」

そう言ってナニさんは隠し扉のような冷蔵庫から食材を取り出し、
レンジで温めて僕に食べさせてくれた。IMG_9562

 

 

 

こんな映画でしか見たことのないような綺麗な部屋で
ワインまでごちそうになりながら野菜を貪っている今の現状が
僕には信じられなかった。

できることは背筋を伸ばして椅子に座ることくらいだった。

 

 

ご飯をごちそうになると、ナニさんは
僕をダウンタウンまで来るまで送ってくれた。

手みやげにバナナやオレンジ、チーズやサラミまで持たせてくれた。

お礼を言って頭を下げてナニさんの車を見送った。

 

そしてとうとう僕は
モントリオールの町に降り立ったのだ。

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当てもなく

僕はダウンタウンを歩き回った。

 

 

ここはフランス語と英語が話されるカナダの中でも
特別な地区ケベック州の最大の都市だ。

中国人も多く、歩いていると中国語が聞こえてきたりする。

アフリカを旅したと時はアジア人を見ると
「ション、シュー、ショゥ!」なんて中国語の真似をして
からかわれたことがあったけど、

実際に聞いて見ると、彼らの真似通りに聞こえることが分かった。

 

 

ここでも僕はどこかでバスキングができないものかと探したのだが、
ダウンタウンは車道に面しており、どこかしらは車が走っていた。

 

 

歩き回っているうちに、とうとう僕の足は限界を迎え
歩くたびに足首が痛んだ。

歩調もヨロヨロとおぼつかなくなり、坂道を登り切るのもやっとだった。

 

 

たまたま通りかかった通りで僕が発見したのは、
モントリオールの街のウォールペイントは
かなりレベルが高いということだった。

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僕が足を踏み入れた通りには、ブロックごとに大きな作品があり、
僕はひとつのブロックにさしかかるとiPhoneでそれらの作品を写真に収めた。

さきほどナニさんにご飯をごちそうになったばかりだったが、
僕はなぜだか、ご当地グルメのようなじゃがバターのようなものを食べ、
回復を図ると、またノロノロと歩き出した。

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日が沈むと外はかなり冷え込んだ。

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ブランケットをマフラー代わりにしているが。

露出している手がすぐにコチコチになり、
何度もギターを持つ手を代えて、空いた手をポケットに突っ込んだ。

街の端で僕が発見したのは

 

 

 

「イクゾー・ハウス」だった。

 

 

 

これは

ギターと小銭と世界地図

というブログを書いていたイクゾー君が
オーストラリアで寝床にしていた屋根付きの東屋のことで、

僕はすぐにここを今日の寝床にすることに決めた。

小高い丘の途中にあるイクゾーハウスは
誰もそんなところには好んで登るような場所ではなかった。
丘の中腹にはまだ雪が溶けずに残っていた。

 

 

 

僕が次に考えることは
寝るまでの時間をどう消化するかだった。

痛む足をひきずって
700mほど離れた場所にあるカフェを見てまわった。

スターバックスは高いのでパス。
24時間営業の”second cup”は人で埋まっているから無理。
となるとやはりTim Horton’sか…。

 

 

 

ティム・ホートンズではアジア人の店員が働いていた。

移民の国なので、誰がここに生まれた時から暮らしている人で、
誰が移住してきたのかは分からない。

ただ、僕は似た様な顔をする彼らにどこか親近感のようなものを抱いた。

コーヒーを注文してテーブル席に着いて24時まで僕は絵を描き、
日記までも使ってしまった。

もういいや。今日はよくやったよ。おれ。

 

 

 

 

アホみたいに寒い外に出ると、
今日も夜中に目が覚めることが分かった。

イクゾーハウスに近づいて分かったのは、
ハウスが東屋としての役割を果たしていないということだった。

床一面がはがれ、中の骨組みがむき出しになっていた。
屋根の下にテントを張ることさえできなかった。

 

 

しかたがないので、僕はその横にテントを張った。

今日は筒状のサバイバルシートの中に寝袋をごと入って眠ろうと思う。

地面からの冷えを少しでも遮断できるように
段ボールまで持って来たんだ。

 

これでいくらか眠れる…ハズ。

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キャンプ生活、なんだかんだで楽しんでいます(笑)

学んだことは
「寝袋は冬用のものを買えばよかった」
「テントは良い物を買えばよかった」
ということです。

アルミフレームなら折れずに済むのになぁ…、
いつポールが折れるのかビクビクしながら野宿しております。

 

 

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