「コーヒーとマフィンを過剰摂取」

世界一周654日目(4/14)

 

 

一体

何杯のコーヒーと

何個のマフィンを食べただろう?

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それくらい僕は
コーヒー豆から抽出された苦い液体をお湯で薄めたものと、
きっと遺伝子組み換えで作られた小麦粉からできた
化合物まみれのお菓子を、

これでもかと
胃にぶち込んでいた。

 

 

 

アフリカを旅していた時の方が
まだ健康的な食事を摂っていた気がする。

アメリカに入る前の情報収集をするとか言っておきながら、
いざそれに取りかかったのは、
朝の7時から8時のわずか一時間だった。

その間に店内に居座っている人間は僕だけになり、
夜からの古株はどこかへ消えて行き、
そして新しいめんどくさい客がマクドナルドにやってくるようになった。

 

 

まったく、
マクドナルドの懐の大きさにはつくづく感心するよ。

だって、ほとんど追い出されないもんな。

24時間も営業してくれている必要はないし、
体によくないもが大量生産されているってことは、

まぁ、映画なんかみたりして理解しているつもりだけど、

貧乏旅行者の僕にはマクドナルドの存在はなくてはならないものだ。

 

 

 

 

気づいたら隣りに座っていたギターを二本持ったおっちゃんは、
僕に話しかけたかと思うと、ペラペラペラペラ一方的に喋りだした。

話の内容はネイティヴ英語とその速度で断片的にしか分からなかった。
ケベック出身だとか、彼の父親が戦争に行ってどうのこうのだとかだ。

僕はその話にどう口を挟んでいいのかまるで検討がつかなかった。

そして彼の話しは湧き水のように滾々と淀みなく溢れ、
そして終る気配がなかった。

海外を旅していると、彼のようなほぼ一方的に
自分の言いたいことをまくしたてる人間がいる。主に欧米人。

彼はただ話を聞いてくれる「誰か」が欲しいのだと僕は考えた。
聞き手が彼らの話を理解している必要はない。
「聞き手」という体裁だけあればいいのだ。

 

 

僕は彼の話が終るのを辛抱強く待った。
僕が眠たそうにしていても、彼は気に留めもしなかった。

窓から差し込む照りつける朝日のせいもあり、
いい加減にマクドナルドから出て行きたかったので、
「もう行くね」と無理矢理会話を終了させた。

いや、会話ではなく
ジャイアニズムにまかせた彼のトークライブだったのかもしれない。
聴衆はもちろん僕一人だ。

 

 

 

ここはカナダ、トロント

明日の早朝に僕はここを発つ。向かう先はアメリカだ。

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入国審査は厳しいと聞いて、
わざわざグアテマラ行きの出国チケットまで買った。

だが、調べているうちに、
所持金をほとんどもたずに入国して
アホみたいな旅をする人たち(日本人)がいることも分かって来た。

彼らのおかげでいくらか楽観的になれた。
もうなるようにしかならないだろう。

 

 

 

 

マクドナルドを後にした僕が向かった先は
明日のGrey Houndのバスが出るターミナルだった。

バスターミナルはダウンタウンにある。

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バスターミナルのある建物のすぐ隣りには
日本人が経営するらしいチーズケーキを売る店があるのだが、
僕が見た限り、いつも並んでいる。

よっぽど美味しいのだろう。でも僕には縁がない。

30人以上いる列を横目に『並んでまでも食べたいのかよ』
と心の中で呟いてターミナルのある建物の中へと入っていった。

 

 

ここへ来た目的はチケットを入手することだった。

オンラインで予約確定した画面をスタッフに見せて
パスポートを提出すればおしまい。手続きとしては簡単。
やっぱり紙媒体だと「チケット」という感じがする。

 

 

ターミナルの地下でポロポロとギターの練習をしていると、
インド人っぽいおじさんが親指を立てて
1ドル分くらいの小銭を入れてくれた。

やっぱりアコースティックギターを弾くのは、
音がかき消されない静かで音が反響する場所だよなあと思う。

 

 

これに気をよくした僕は
ダウンタウンで一番人が集まる通りへ向かった。

ここで一回は路上演奏をしないと
ビビって逃げているみたいに思えたからだ。

 

 

先ほどマクドナルドで会った
お喋り野郎のおっちゃんから得られた唯一の有益な情報は、

ここの地下道でバスキングをすると罰金を喰らう

ということだった。

カナダ人のバスカーがそう言うのだ。
助言に従い、バスキングできそうな地上でやることにした。

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そこで僕は一時間だけバスキングをした。

朝の時間は交通量が少なく、
そこまで声を張り上げなくても唄えたのだが、
11時前になると車の量が増え、レスポンスも少なくなれば、
唄っている僕自身のテンションも下がった。

アガリは10ドル。メシが喰える。

 

 

 

『もしかしたらまだ
バスキングできる場所があるんじゃないか?』

 

 

と欲を出したことは認めよう。

その後僕は他にもいくつかの場所でバスキングを試みたが、
レスポンスはないに等しいものだった。

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歩いているうちに眠気が最高潮に達し、
僕はオフィス街のベンチでバックパックとギターを紐でベンチに固定すると、
そのままボタンシャツを顔にかけて少し睡眠を取った。

こんな時間から外で寝ているなんてまるでホームレスじゃないか、
と自分でもそう思う。

 

 

1時間にも満たない睡眠から目を覚ますと
同じベンチに缶ビールを手にした本職のホームレスが座っていた。
あぁ、類は友を呼ぶってやつか…。

僕は懲りもせずにまたバスキングの場所を探して辺りをウロついたが、
バスキングに最適な場所は見つからなかった。

僕にはそういうのを見つける
嗅覚的なものが備わっていないんだろう。

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そしてだんだんとソワソワしてきた。

最近気をつけているのは、
自分がバスキングを糧に旅をしているわけじゃないと
意識することだった。

バスキングをすればいくらかのお金を得ることはできる。
旅の資金はもう限りなく少ないので、食費だけでも稼げれば、
その日一日にかかる出費は賄えてしまえたりもする。

移動はヒッチハイクがメインだし、
宿は都市型キャンプ生活(野宿)だからだ。

 

 

 

だが、僕はミュージシャンじゃない

漫画家だ。

 

 

 

そして旅が終盤にさしかかった今、
僕がすべきことは漫画を描くことだと考えるようになったからだ。

エジプトあたりから、極力毎日絵を描くようにしてきた。

プロでさえ二日描かないとペンタッチが鈍ると言っている。

「一日三日分」とはスポーツだけじゃなくて、
他の技術にも当てはまることだろう。

絵が描けないのであれば、文字を書く。
とりあえず手を動かすこと。

それは自分にとってとても大事なこと。

 

 

 

 

 

稼いだ10ドルそこらを手にして向かった先は、
やはりマクドナルドだった。

言っておくが、トロントには至る所に
マクドナルドスターバックスがある。
(って前にも書きましたよね)

スターバックスに至っては

『おいおい、いつからそんなに
コーヒーが好きになっちまったんだ?!』ってくらいだ。

カフェイン中毒もいいところ。
みんながテイクアウト用の紙コップ片手に道を歩いている。
あれはきっとファッションの一部なのだろう。

 

 

 

自分でもうんざりするのだが、
ここでも僕はコーヒーとマフィンを手にテーブルに座った。

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食生活が悲惨なことになっている。

この二つのどこに生きていくために必要な栄養が
含まれているのだろう?きっとカスみたいなもんだろうな。

それじゃあ僕を生かしているのは一体なんだ?
ラクダみたいにどこかに溜め込んだ栄養素を消費しているのであろうか?

 

 

 

そのままずっとコンセントのある席で作業をしていた。

自動ドアが開くと、そこから冷気が入って来た。

僕は思わずエティハド航空から頂いてきたブランケットを首に巻く。
これがいいのは薄手の割に保温性があるということだ。

そして、コーヒーがなくなってしばらくすると、
また同じ内容のものを注文した。

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21時を周ると僕と似た様なヤツらの姿を見かけるようになった。

大柄の男がコンセントを求めて僕のテーブルと同席した。

最初は僕に「1ドルくれないか?」と言ってきたのだが、
僕がどんなヤツかが分かると「あぁ、いいわ」とすぐに諦めた。

彼からはひどく特有な臭いを体から放っていた。
自分が気づいていないだけで、ひょっとしたら僕の体からも
似た様な臭いを放っているのではないか?と思うと不安になった。
ほんの少しだけどね。

 

 

 

隣りテーブルではつっぷして寝ているヤツがいた。
浪人生みたいに見えた。

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セキュリティがどこからともなく現れて、ソイツを小突いて起こした。

夜のトロントのマクドナルドにはセキュリティがいるらしかった。

それはここの治安が保たれているような気がして、
僕は安心して作業することができた。

 

 

 

 

4時を迎えて僕は外に出た。

紙幣以外は両替できないだろうと思い、
ちょっと奮発してセブンイレブンで千円近く食糧を買い込んでしまった。

ごく自然にマフィンに手が伸びた。
これは完全にマフィン中毒だと思う。

 

 

 

夜の町には誰もいなかった。

変なテンションになる。大声で唄いたい気分だ。

 

 

 

二時間後、僕はNY行きのバスの中にいる。

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2 件のコメント

  •  私も北米旅行中はマクドナルドに通いました。

    レンタカーの中で寝た後にトイレと洗顔とWi-Fi目的でしたが、朝マックを3日も食べたら飽きてしまいました。それでマクドナルドの駐車場に到着したらダッシュボードにロゴが入った紙コップを置いて客のフリをして他の店で食べたりしていました。マクドナルドは田舎の店はコーヒーのお代わりがセルフで無料だったり、電源も借りるのも楽でした。メキシコシティあたりまではWi-Fiも使えましたが、最近はもっと使える国が増えているかもですね。

    • >citydeさん

      先進国を旅するのには節約術は欠かせないですよね。
      僕のやってることはかなりアホですが…

      それにしても空カップはすごいですね。
      駐車だったらそんなにバレないだろうし。

      現在デンバーですが、このままポートランドを目指して
      北上します!

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