「ザックさん」

世界一周686日目(5/16)

 

 

昨日の再会

を祝う酒のせいで具合が悪かった。

いつもなら公園の清掃員が来る前に起きて撤収するのだが、
今日は怒られるのを覚悟でそのまま寝続けた。

 

 

ここはアメリカ、西海岸の上の方にある
オレゴン州、ポートランド

僕が訪れたいと思っていた町だ。

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正直昨日の一日だけではまだ、
ポートランドのどこが魅力的なのか全くわからなかった。

期間限定でここに住むことを決めたゆうこは
最低でも一週間滞在しないとポートランドの魅力はわからない
そう言っていた。

ニューヨークからすっ飛ばして来たんだ。
ひとつの町に一週間いるのも面白いかもしれない。

 

 

11時になってようやく撤収作業を始めた。

テントを畳み終えて、向こうの方から
清掃員を乗せたトラックがやって来るのが見えた。危なかった。

 

 

バックパックを背負ってみたものの、体はまだまだ本調子じゃない。

たかだかソーダとビールを一杯ずつでこうなってしまうんだから、
僕がどれだけお酒に弱いかがお分かりいただけるだろう。

それでも、お酒を飲むのは嫌いじゃない。
自分の適量は知っているつもりでいるが、
楽しいとついつい飲んでしまうのだ。

ヨロヨロとマクドナルドまで行き、コーヒーを注文した。

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オレゴン州では消費税がかかない。コーヒーの値段も違う。
1ドルのコーヒーなんて久しぶりにあったような気がした。

安いコーヒーの味だ。
だけど、その一杯のコーヒーが弱った胃に
じんわり染み込んで行くのが分かった。

 

 

 

 

 

そこで一時間ほど作業をしていると
ゆうこから連絡が入った。

「ランチに行かない?」とポートランダー
(ポートランドに住む人をこう呼ぶ)みたいな呼び出し方をする。

僕は弱った消化器官のせいもあり、
できることならマクドナルドに居座り続けて
グダグダと作業をしてたかった。

だが、積極的に動いて行かなければポートランドの魅力は
見えて来ないだろう。
自分から動かないと新しいことは見えて来ないのは
もう分かり切ったことだ。

僕は呼び出し先のACE HOTELまで歩いて向かった。

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ACE

HOTELは通常のホテルに比べると
宿泊料金が低めに設定されており、
そこに併設されるこらまたお洒落なカフェは若者たちが集うらしい。

何か会議でも行われそうなホテルのロビーには
ゆうこの他に日本人とアメリカ人の男がいた。

 

 

簡単に自己紹介を済ませる。

日本人の名前はトシ。ゆうこと同じ語学学校に通っているらしい。

そして肩幅の広いいアメリカ人はザックと言った。

すぐにザックが重度のお喋りだということが分かった。

「それじゃあそれろそろランチにでも行こうか」
と席を立っても彼はフルスピードで喋り続ける。

それも単なるお喋りではないのだ。

 

 

コイツはかなり頭がいい。

話している内容は政治だったり科学だったり、
大好きな日本のアニメの監督だったりするのだ。

その知識量とネイティヴのスピードについて行けず、
僕は思わず

「いや、ごめん、
なんて言ってるかぜんっぜんわかんねー」

と日本語で返す始末。

僕は英語についていけなくなると日本語を喋る癖があるのだ。

 

 

 

 

ランチ先は日本料理屋の
しげぞう」という場所だった。

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店内に入ると「いらっしゃーい!」と従業員たちが口を揃える。
こういうサービスを聞くと日本を思い出す。
僕もフリーター時代は何千回とこの言葉を口にして来た。

席に着くとまず大きなグラスに入った水が運ばれてくる。
これも日本ならではではないだろうか?

世界中を旅して来たけど、
水はほとんどセフルサービスか注文しないと出て来ないことが多い。

まぁ、僕が働いた串焼きやはお酒を飲んでもらわないと
利益が出ないから、水は注文されないと出さなかったけどね。
居酒屋ですし。

僕はほとんど食欲がなかったが、
とりあえずメニューを眺めた。

そこには日本を恋しがらせるのに十分なだけの固有名詞が並んでいた。

 

 

ラーメン、寿司、おにぎり…。ごくり…。

 

値段もそこそこに高い。
いや、外食するとどこでだってこのくらいしてしまう。

そして僕が頼んだのは
「ジャパニーズ・シーザーサラダ」だった。

海外の日本料理屋に入ってまでサラダを頼むなんて…。
だが、僕には野菜が不足しているのだ。

 

 

語学学校の生徒二人はこんな昼間っからビールを注文していた。

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ゆうことトシは朝の8時から13時まで授業があるようだ。
その後の時間は人に酔っては個別にクラスを取れるそうなのだが、
今のところ彼らは自分たちの時間もしっかり取っている。

そもそも語学だけ勉強したくて、二人はここを選んだわけじゃない。
ポートランドに惹かれてここにやって来たのだ。

こうして色々なお店に足を運んでみるのも
ポートランドの楽しみ方のひとつなのではないだろうか?

 

 

運ばれて来たのはラーメンや寿司だった。

僕はこんなにお上品に並んでいる寿司を日本で見たことがなかった。

清水家は毎回いつも寿司しか食べないので、
それは機械が握ったベルトコンベアーに乗って流れてくるそれか、
もしくは両親の実家に帰った時に時々頂く、
地元の寿司屋さんが握った寿司だ(こっちはそこそこ高いのだろう)。

肝心のシーザーサラダはチーズとレタスに
半熟卵が乗っているだけのものだった。

僕は内面かなりがっかりさせれたのだが、
黙ってそれをモシャモシャと咀嚼した。

 

 

 

会話の中心は未だにザックだった。

彼は美術大学でゲーム開発の勉強をしていたのだが、
大学の退屈さに中退。その後は自分で勉強を始めたらしい。

「その方が自分の学びたいことを学べるよ」
と言っていたのにはうなずける。僕は大学4年間で学んだことなど
ないに等しかったからだ。
なぜあの時間を有効に使えなかったのか悔やむ時がある。

 

 

日本のサブカルだけでなく、彼は演劇もやっているらしいかった。

会話の中で「ネイティヴ・スピーカーでも訛りがある」
ということを僕が話すと、彼はイギリス英語やカナダ英語の特徴を
見事に再現してみせた。

それも、その訛りのままぺちゃくちゃと喋り続けるのだ。

ザックが言うには、自分は常にナチュラルハイの状態らしい。
ビールを飲んでようやく普通の状態になれるとかなれないとか。

今回もゆうこさんにごちそうになり、僕たちは店を後にすることにした。

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「それじゃ

どうする?」

「いや、おれは特にやることないな」

「じゃあうちに来ない?」

ザックが誘う。

 

 

「シミは?」

「え…!?」

 

 

 

 

千載一遇のチャンスとはまさにこのこと

 

 

シャワーが浴びられる☆

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僕はこの申し出に乗ることにした。

ザックの家まではダウンタウンから
MAXtrainという路面電車に乗って行くことが出来る。
一日券であれば5ドル。

ここでザックは気前よく僕たちの切符を買ってくれた。
彼はあのNIKEに勤めているのだ
そして日本の永住ビザを取ろうと燃えるキレ者なのだ。

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ザックの家の周辺は
都市型キャンパーの聖地のようにも思えた。

静かだが、所得のある人々が住む様な住宅地。
テントが張れそうな芝生が至るところにある。

ザックの住むマンションにはプールがついていた。

僕はは「NIKEから割り当てられた場所なのか?」と訊ねると、
彼は「自分で見つけたんだよ」とさらりと言った。

 

 

彼の部屋はそこそこに散らかっていたが、
僕からしてみればそこは秘密基地のような臭いがした。

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棚には英訳された日本の漫画やDVDが収まっており、
なぜだかテレビが二台もある。

その理由を尋ねると、
「ゲーム用とテレビ用さ」とザックは言った。

 

 

 

 

夕飯の食糧を近くのスーパーまで買いに行った。

そこも大型スーパーが何軒も入った巨大な場所だった。

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家に帰ってしばらくすると
ザックの彼女のフランキーが帰ってきた。

僕が思ったのは
早めにシャワーを借りておくんだったということだった。

さりげなく「シャワー、借りていいかな?」とザックに訊ねた時の
フランキーの表情を僕は忘れないだろう。
いや、マジでゴメン。ちゃんと落ち毛拾ったから許してよ…。

 

 

夕食にごちそうになったのは
ポークステーキとマッシュドポテトだった。

泡立て器を使ったのか、マッシュドポテトは
今までに食べたことがないくらいにふわふわしていた。

ミディアムで焼かれたポークも美味!
あぁ、たまらないよ!これ!

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食後にコーヒー飲みながらベランダで
ザックからもらったアメリカン・スピリットを吹かした。

外は小雨が降り始め、そしてすぐに止んだ。

ひんやりとした空気が辺りを包む。

 

 

あ~、なんだか楽しいじゃねえかポートランド。

 

 

 

お礼を言って僕たち三人はザックの家を後にした。

フランキーちゃん、突然ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ダウンタウン

へ戻る電車の中、
ソマリアから出稼ぎに来たと言うオマというヤツと話した。

彼はここで三年、
長距離ドライバーとして働いているらしかった。

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「どう?こっちの方がいい暮らしだったりする?」

僕がそう訊ねると、オマは「ある意味ではね」と答えた。
それでもいつかはソマリアに戻って暮らしたいらしい。

物価がこちらとは違うだろうから、
余裕を持って暮らせるのではないだろうか?

治安も今では大分落ち着いたらしい。
今度アフリカに来た際には是非ソマリアに
遊びに来てくれそうオマは言った。

 

 

 

 

 

なぜだか、ポートランドには出会いがある。

そしてこの町では人と人との距離が近い気がする。
それもどこかほんわり温かい。
都会ほど急いてはおらず、この町にしかない不思議な距離感がある。

 

 

そしてシャワーを浴びた僕は
ワシントンパークへと帰って行った。

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ついいったーーー…。

 


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