「青いヤツラ」

世界一周696日目(5/26)

 

 

なんと

フレッド・マイヤーで
セール品になったパンが売られている
のが分かった。

パン

 

 

それが昨日の夜のこと。

脳内新聞の一面を飾ってしまうようなホットな発見だった。

10個以上パンが入ってわずか2~3ドル。
これならここで暮らして行ける気がした。

 

 

現在ポートランド滞在12日目

 

 

 

もうそろそろ出発する時だと思う。僕の旅は続くのだ。

ここ意外にもサンフランシスコや
patagoniaの一号店のあるヴェンチュラ、
ロサンゼルスだって行きたい。
そしてそのままメキシコ、南米へ旅をして行く。

 

 

だからこそ、僕は気持ちよくこの町を離れたかった。

ロマンチストな僕は映画のような別れがしたかったのだ。

 

 

フレッドマイヤーの個室トイレで体を清潔に保っているだけあって、
臭いはほとんどしなくなった。

周りの人に冗談めかして訊いてみても、
「え?分からないけど」と言う。

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洗濯もちゃんとしてるよ。

 

 

 

フレッドマイヤーの二階席で一本日記を書いた後は
パウエルズ・ブックスへと足を運んだ。
レックスくんがいなくなってから二度目の来店だ。

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朝の時間帯は席にゆとりがあった。

店内にはティッシュを使って花を作る黒人のアーティストがいた。
彼の半径1メートル以内は彼の空間だった。

あの薄っぺらいティッシュを
ジャグリングでもするかのようにクルクルと回す。
チップボックスなんてものは存在しない。
完璧なる彼の世界だ。

 

 

あまりに見事だったので、
僕は1ドルを払い写真を撮らせてもらった。
朝から面白い人を見つけられた。

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注文したコーヒーに豆乳を注ぎ、
コンセントのあるテーブル席に着き、
僕は描きかかけの漫画を完成させた。

漫画はポートランドにいるうちに完成させたかった。

なぜならこれはこの街で暮らす
ゆうこへ向けたものだったからだ。

一瞬プレゼントしようかと思ったけど、

まぁ、いらねーだろうな。アイツ。

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このシリーズは見てて楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼前

になると僕はノードストームの前へ
バスキングをしに向かった。

天気はよかったが、今日はそこまでレスポンスがよくない。

 

 

14時を過ぎた頃に語学学校の終ったゆうこと
クラスメイトたちが見に来てくれてた。

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前回も会った自転車のフレーム職人のトシと、
エクアドルから来たというクリスチャンはお金を入れてくれた。
あざっす。

「おれは人前じゃ絶対に歌えないなぁ」
そうトシは言った。

まぁ、僕は単なるアホですからね。はははぁ..。

 

 

昨日の約束通り、
僕たちはドーナツ屋に行くことになった。

 

 

 

 

VOODOO DONUTS(ブードゥー・ドーナッツ)は
チャイナタウンの近くにあるドーナッツ屋で
見るからに「アメリカ的」な配色をしていた。

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外には若いホームレスが二人、
暑い日差しの中で気だるそうにボードを掲げている。

しばらくすると、店から女の人が出て来て、
ドーナッツが入った箱を差し出した。

ホームレスたちは棚からぼたもちが落ちて来たように嬉しがり、
ムシャムシャとドーナッツを食べていた。

ふーん。マジでみんな優しいんだなぁ。

 

 

けばけばしい内装と爆音で音楽は流れ、
店の外まで列が続いていた。

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ブードゥードーナッツは多きさの割には安い。
そして砂糖がたっぷりとまぶされたドーナツで
食べると歯がとろけてしまいそうだった。

 

 

「あ、私、そんなに食べないから」

と買ったドーナッツを分けてくれるゆうこ。

エクアドルに言ったら歯医者に必ず行こうと思う。
僕はお礼を言って分けてもらったドーナッツを食べた。

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うましっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり

ポートランドっていいわぁ。なんだかお酒飲みたいね」

西日は強かったが、夕方が始まろうとしていた。

 

 

「あ~、そろそろハッピーアワー始まるかもね」

「え?何ハッピーアワーって?土日だけじゃないの?」

トシがきょとんとした顔で訊ねる。

 

 

「え?ポートランドに住んでんのに知らないの?!
よし確かめに行こう!」

 

 

 

ハッピーアワー(タイムセールで時間帯によって酒が安く飲める)
を確かめに行くという建前で僕は今日もバーへと向かった。

足を運んだのは僕がポートランドにやってきた初日に
ゆうこに連れていってもらったバーだった。

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「あ、やべ、おれID忘れてきた。
あ、スイマセン。ID忘れちゃったんですけど…」

 

 

ポートランドで飲酒する場合、
IDの提示を求められることが多い。

ここにいる三人全て、
年齢的には酒を飲んでも全く問題ないのだが、
何を血迷ったかトシはわざわざ店員に自己申告をした。

IDを確認して酒を提供している店側としては
「悪いんだけど、売れない」と言わざる得ない。

まぁ、人にもよるんでしょうけどね。

 

 

 

 

だから僕たちは隣りの店へ行かねばならなかった。
こちらは僕が初日に二軒目に行ったバーだ(そして酔いつぶれて後で吐いた)

昨日の反省を活かし、今日は一杯までと決めた。

 

 

ゆうこと同じアップル・サイダーを注文してカウンター席に着いた。

店内にいるのは僕たち三人だけだった。

時刻は16時ということもあり、僕たちが一番始めの客だったのだ。

ハッピーアワーはこの店では行われてはいないようだったが、
僕としてはそんなことはどうだってよかった。

 

 

3.5ドルの大盛りのナチョスをついばみながら、
話した内容はトシを中心とした下ネタトーク。

 

 

「え??
「チンポ」?「チンコ」?

どっち?」

ゆうこが訊く。

 

 

「いや、「チンコ」じゃん?
チンポはなんか嫌らしい感じだよね」

「あ〜〜〜、分かるわ。それ」

「逆に「アソコ」とかボカして言っても
逆にいやらしいいよね」

「…」

 

 

今になって思うのだが、
我々男子がチンコだのチンポコなど言っても
対して何も感じないが、
逆の立場だといやらしさが増すような気がする。

その人の器量にもよるだろう。

下ネタ好きじゃなきゃ
女でさらっと「チンコ!」って言えないんじゃない?

 

 

そんな下ネタトークに輪をかけて、
僕はトイレで消臭剤をパンツにふりかけ、
皮膚(ってうかチンコ)がヒリヒリなるアクシデントに見舞われたりと、
三人での飲みもなかなかにご機嫌だった。

まぁ、後は楽しくバイバイできればいいだろう。

 

 

 

 

このタイミングで
僕は完成したばかりの漫画を二人にに見せた。

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酔っぱらったもあり、
二人はそこまで真面目に読んでくれない。

トシはまだ下ネタを言っている。

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この嬉しそうに下ネタを言うトシ。良い顔してます!

 

 

僕は
『読ませるタイミングを間違えたかな?』
と思った。

まぁ、期待していたレスポンスが帰ってこななんてことはあるさ。
それは僕も十分分かっている。

 

 

僕がそんなことを少し口にすると、
トシはいきなり真面目な感想を述べてくれた。

だけど、僕はそれを話半分に聞いていた。
「ううん。ありがと」くらいに。

 

 

僕は酒を一杯しか飲んでいなかったが、
隣りの二人は既に4杯目を胃袋へと流し込んでいる。

まったくなんでったって
そんなに酒を飲まなくちゃいけないんだか僕には理解できない。
摂取量に応じて何かハッピーな特典がつくのだろうか?

トシ酔っぱらうと会話を忘れてしまうと言っていたため、
急に真面目になったトシに冗談めかして
「説得力ないなぁ、それ。」と言った。

 

 

 

途端、トシは何かをしでかしてしまったように
僕に謝り始めた。

僕は傷ついてもいないし、
別に漫画を読んでその人がどんなことを感じるかなんて
その読み手次第だと思っている。

だから気にしてないと言うのに、
トシは「申し訳ない」と何回も口にした。

 

 

「なんでそんなに謝るんだよ?
気にしてないって。
おれの実力もまだまだなのは分かっているから」

「いや、違うんだ。
物を作る側の人間として、
その人の作った物に対しては尊敬を払うってのが
おれのルールだったんだよ。それを自分で破ったんだ。
だから自分に対しても申し訳なく思っているんだよ」

 

 

トシは日本で6年間、自転車フレーム職人として
下積み時代を送っていた。

給料も少なく、
日本の持つ独特の徒弟制度に疑問を感じていたそうだ。
10年待たなくては自分の仕事を持つことができないらしい。

最初は「始めたばかりの頃は給料がない、評価されなくて当然」
だと考えていたらしいのだが、
価値のある作品を作れる実力があるのに
見習いでいなければならない現状に葛藤を感じていた。

そしてトシは自分の作るものに対してはプライドを持っていた。

 

 

「ナメんなよ!」

トシは自分の作品で勝負してきたのだ。

 

 

 

彼がここにいるのは
ポートランドの自転車に魅力を感じたからだ。

語学学校が本来の目的じゃない。
今現在ひとつの職場に書類選考を受け付けてもらったらしい。

そう彼の口から聞いて、
僕はなぜ彼がこんなにも謝るのか理解ができた。
彼は自分に対しても謝っていたのだ。

 

 

トシが席をはずすと、
ゆうこは

「惚れそうになったわ..」

と言った。そこ?!

 

 

 

 

「じゃぁ、

おれ、

帰るわ」

 

 

 

いきなりしょんぼりして席を立とうとするトシ。

こうなってしまった以上、
その場から潔く立ち去るのが彼のルールらしい。

僕とゆうこもトシに合わせて勘定を払った。

 
そして外に出るとそこにはトシの姿はなかった。

 

 

 

 

「ちょっと私探してくるわ!」

 

 

そう言って自転車に乗ってバーの周りをゆうこは探したが、
トシの姿はどこにもなかった。

 

 

「ちょっと!信じられない!
一言もなしに帰っちゃうなんて!
あ~、一気に嫌いになったわ!
私、学校で口き
かない!」

 

 

おいおい(笑)

 

 

「いや~、いいんじゃない?
トシにはトシのルールがあったんだよ。
おれも理解できた」

「え?シミはそれでいいわけ?
もう二度と会えないかもしれないんだよ?
私はこういうお別れの仕方納得できないだけど!」

「そりゃできたらちゃんとバイバイしたいけど…。
そんなもんなんじゃん?」

 

 

 

ひとまず僕とゆうこは
パウエルズ・ブックスへWi-Fiを広いに向かうことになった。

その途中のバス停でトシを発見したのだ。
時刻表のポールの下についた小さな腰掛けに
しょんぼりと座っていた。

 

 

 

「あ!いた~~~!
どうしていきなり帰っちゃたの!!?」

 

 

トシはなんで自分が怒られているのか分かっていない様子だった。
彼の中では先ほどのやりとりは完結されていたのだ。

 

 

「まぁ、さ、おれも明日にはポートランド出発するし、
もう会えないかもしれないじゃん?
おれもトシの気持ちよく分かったから、
ちゃんとバイバイしようぜ?」

「あぁ、そっちも頑張ってね」

トシと握手とハグをして別れた。

 

 

 

 

 

そして今度はゆうこが消えていた。

 

 

 

 

僕は一人残され、バス停でゆうこを待った。

30分待っても彼女は戻って来なかったので、
僕は仕方なしに一人でパウエルズ・ブックスに向かい、
フェスブックのメッセンジャーでゆうこに連絡を取った。

ヤツにも僕とトシのやり取りに対して
腑に落ちないところがあったのだろう。

「ごめんね」とメッセージを送り、
「ちゃんとバイバイしようぜ」と送った。

 

 

 

 

 

自分の道を歩む僕たちは時として
まっすぐで、不器用だ。

トシやゆうこだけじゃなくて、それは僕も同じ。

 

 

『旅なんてそんなもんだろう』

と明日ここを去ることができるけど、
それは僕にはできないことだった。

 

 

 

木更津キャッツアイでぶっさんが、
突然消えたうっちーに対して言う。

 

 

「うっちーどこ行った?
アイツ、ちゃんとおれたちにバイバイしたか?」

 

 

 

まさにそんな感じなのだ。

僕たちにとってのバイバイとは。

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6 件のコメント

    • >JOSAN

      前回の「恥」の話とも通ずるような気がします。

      ですが、僕の十代の頃は忘れ去りたいことで一杯です笑。
      同窓会とか行きたくないですね。
      過去は振り返らない。前に進んでいたいから。

      なんつって。

    • >ゆうこ

      この日記書く時にカフェで思わず笑ったよね。

      うん。女のコは無理に言わなくていいと思う。
      「下ネタキャラ」が定着しちゃったら嫌でしょう?

      ぷっ…(思い出し笑い)

  • はじめまして、GUSTAVE代表の鶴谷と申します
    ブログを拝見させて頂きお声を掛けさせて頂きました

    現在ブログやSNS等での記事でクライアント様の紹介を
    広告枠として販売するというサービスを行っております
    その上でブログで掲載頂ける方を探しておりご連絡させて頂きました

    詳細につきましては当サイトのトップページに概要を掲載させて頂いております
    ブログやSNSの流入数のランキングとしても無料で利用可能ですので
    もし宜しければ掲載を御検討頂ければ幸いです

    PS心の温まるお話しでしたね、やはり旅には人情がないとですね^^
    お気を付けて、よい旅を御送り下さい

    GUSTAVE
    http://gustave-buzz.com/

    • >gustaveさん

      お声掛けありがとうございます。

      今現在は旅をすることはもちろんのこと、
      ブログを書くことや制作活動で手一杯のため、
      ブログをマネタイズすることは検討にいれておりません。

      わざわざ僕のブログを読んでいただきありがとうございます。
      もし帰国後に機会がありましたら、その時はよろしくお願いします。

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