「誰かと飲みたいときもあるさ」

世界一周762日目(7/31)

 

 

朝に

なってみるとドミトリーはなんて変哲もない
ただの男女混合ドミが分かった。

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ここに女だけ泊まっているなんてことはなく、
フツーに男も泊まっているし
(いや、昨日来た時は男が自分一人だと思ったのだ)、
日本人のカップルもいた。

 

 

8時に目を覚ますとそのまま朝食をいただいた。
食パンに二種類のジャム、バターにコーヒー、
それにスクランブルエッグが大きなタッパーに入っていた。

一人でキッチンのテーブルについてさっさと朝食を済ませると、
Wi-Fiの入るポジションへ移動し(キッチンではWi-Fiが入らないのだ)
うだうだと時間をつぶした。

 

 

ここにいるあと三日間はのんびり過ごそうと決めた。

MacBookのWi-Fiは完全に壊れてしまい、ブログの更新はできない。
調べものがあればiPhoneを使えばいい。
いつものように日記を書く。ただそれだけだ。

 

 

ここはメキシコ、オアハカ

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「焦ったってしょうがない」

そう思うと気持ちがずいぶん楽になった。

Wi-Fiが入らないのも作業効率を上げるひとつの環境要因だと思う。

この日はずっと日記を書いていた。

 

 

宿の連中はツアーだか待ち歩きに出かけてしまって、
この宿にはスタッフが数名と二匹の毛がフサフサした猫と、
ヨボヨボで目の充血した犬が三匹いる。

犬の方は呼ぶとやって来て体をすりつけてくる。

きっとここに泊まる宿泊客からひっきりなしに
撫でられているんだろうけど、
彼らはそれがまんざらでもない様子だった。

ただ臭いのが難点だった。
しばらく撫でてやると、自分の手が臭った。

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夕方になると

僕は空のギターケースを持って宿を出た。

 

 

昨日修理に出したアコースティックギター、
YAMAHA/F325D、

通称「ミツコ」

を取りに行くためだ。

 

 

修理に出したギター屋の近くは似たような店があったので、
何度か通り過ぎてしまった。

店員は昨日と同じお兄さんで僕のことを覚えていた。
店の裏から持ってきたギターを見た時に僕は驚いた。

それもとてつもなくいい意味で。

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ヒビの入ったネックは綺麗にグルーが塗込まれていたのだが、
グルーがはみ出たり、ネックが歪むなんてことは一切なかった。

元々のネックの色に合わせて
いくらか接着材も色を塗っているように思えた。
まさにプロフェッショナルの完璧な仕事っぷりだった。

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僕はお兄さんに「これでタコスでも買って」と
チップとして15ペソ(115yen)を差し出した。

ピックや弦のストックを買うとお兄さんは
ピックホルダーを僕におまけしてくれた。

これじゃあお金の差し引きがゼロじゃないかと僕は思ったが、
ささやかなサービスが嬉しかった。

お礼を言って僕は店を出た。

ツキが上向いてきたかもしれない。

 

 

 

 

「なんとかなるさ」

自分でそう呟くといくらか気持ちも前向きになれた。

 

 

ギターを回収し終えると雨が降り出した。

雨脚が強まってきたので、近くの駐車場の軒先に逃げ込んだ。

メキシコ人の夫婦がやって来て、抱き合っていた。

こういうのを見ると、どこか心が温まる。
愛し合っているのが目に見えて分かるからだ。

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雨が上がると
僕はさっそくバスキングに向かうことにした。

ソカロの近くに「Calle de Macedonia Alcala」という
車の通れない歩行者専用の通りがある。僕はそこに目をつけていた。

もちろんそこには
アコーディオン弾きや物乞いがいるのだが、その数は多くない。

 

 

教会の近くのバーの前で僕はギターを構えた。
声は響かないが、歌いやすい通りだった。

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レスポンスはよかった。

いつものように話しかけてくれる人もいる。

向かいのバーの二階席の窓は空いており、
テーブルに着いた二人の男性が手を降ってレスポンスをくれた。

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バカンスだそうです♪

 

 

 

しばらく歌うと、僕は場所を代えてみた。

暗くなるにつれてレスポンスは少なくなり、
結局最後には地元の見回り役的な人にストップをかけられた。
2人組の彼らは警察官には見えなかった。
身分を証明するIDカードを持っているだけだった。
「やるならソカロだよ」そう片方は教えてくれた。

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夜のソカロは昼間以上に盛り上がっていた。

出店や音楽が溢れ、教会の一角でピエロに扮した人が
マイクパフォーマンスのようなことをやっており、人垣がでてきていた。
スペイン語が分からないので
彼がどんなパフォーマンスをしているのかはよくわからない。
ただ時折、観客たちが「ワァーーーッ!」と完成を上げた。

 

 

ソカロは賑やか過ぎた。

アコースティックギターの音を響かせることのできる場所なんて
どこにも見当たらなかった。

 

 

仕方なしに人通りのある場所でギターを鳴らした。

無理矢理にテンションを上げていると、
チラホラと足を止めてくれる人がいた。

地元の若い子たちと写真撮影をすることはおなじみで、
こういう時に『あぁ、外で歌っていてよかったなぁ』と思うのだ。

ギターはコミュニケーション・ツールであることは間違いないだろう。

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この日のアガリは649ペソ(4,992yen)。
集計してみて自分でもビックリだった。

 

 

 

 

 

 

 

宿に戻ると、

ここに泊まっている唯一の日本人である
マコっちゃんが僕に声をかけてきた。

 

 

「あのお姉さんが
「チミ!チミ!」って呼んでますよ?」

 

 

昨日一緒に飲みに行ったフランス人のフローは僕を見つけると、
ハグをしてきた。既に酒に酔っていることが分かった。

今日はツアーに行ってきたらしいが、
メスカルの工場見学でしこたま試飲してきたそうだ。
別の村で今日買ったらしい毛織り物の服を着ていた。

 

 

時間も遅かったこともあり、宿は静かだった。
ここに泊まってる人たちはすぐにベッドに入ってしまうらしい。

僕とマコっちゃんとフローは外に飲みに出かけることになった。

 

 

 

マコちゃんのオススメの
安く酒の飲めるバーに我々は向かった。

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そこでは15ペソでビールが飲めた。

店内は薄暗く、少し熱気があり、
大音量でメキシカン・ミュージックがかかっていた。
そのため会話するためには相手の耳元で
大声を出さなければならなかった。

 

 

二階にあるテーブル席に着くと瓶ビールを注文し
「サルーーーッ!」と乾杯を上げた。

店の外からやって来たおつまみ様の豆をマコっちゃんは買った。
サルサソースがからんでビールによく合った。

 

 

地元のバーに行くのは面白い。

いきなり歌いだすヤツ、外国人なんてお構いなしに話しかけてくるヤツ、
店内で小便をしだすヤツ。

まぁ、そんな賑やかなバーだった。

スペイン語を話すマコっちゃんとフローを見ていて、
僕もスペイン語が話せたらなぁと羨ましく思った。

この時分かったのは
フローは28歳で幼稚園の先生をしている
ということだった。

 

 

 

「ねぇ、さっきから隣りのおじさんが
おれに何か取り憑いているみたいなこと言っているんだけど、
なんて言ってるのかなぁ?」

 

 

隣りにいたおじさんがジェスチャーも交えて
「お前の背中に何かが見える」と教えてくれた。
だがスペイン語が分からないのでマコっちゃんに翻訳してもらった。

 

 

「シミさんの背中には
亀がいるそうです!」

「へ?亀?」

「おっちゃんもしかしてドラゴン・ボールとか好きなの?」

「シィ~!シィ~!」

 

 

目のすわったおっちゃんがヘラヘラしながら言う。

おいおい、ビビらせんなよ。
これでもし「白衣を着た髪の長い女性がおぶさっている」
なんて言われたらどうしようかと思ったよ。

 

 

 

 

 

1時くらいになってバーを引き上げた。

外に出るとほろ酔いで体温の上がったからだを夜風が撫でる。
思わず腕を地面と水平に上げて風を感じた。

後ろではマコっちゃんとフローがスペイン語で話している。

 

 

「なんかフロー、最近失恋したみたいですよ?」

「あ~~、そーなんだ..」

「ほんとうにあなたたちと飲めてよかったわ!
他の男と飲みに行くといつも言い寄られるから
うんざりしてたのよ」

 

 

 

あ~~…、なるほどね。

うん。飲みたい時もあるよね。

だから飲みに誘ったのか。

っていうか嘘でも「ガールフレンドがいる」なんて言ったし、
もちろん僕にはヨーロピアンのお姉さんに言い寄る度胸はございませぬ。

 

 

 

それでもフローは楽しそうに見えた。

嫌なことなんて忘れちまうくらいに
一瞬一瞬を楽しんでいるみたいに。

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6 件のコメント

  • やっぱり、我々日本人からすると、外国人は人生を楽しんでいるように見えますよね。
    良い出会いができてよかったですね。

    • >gt400さん

      旅先で会う外国人だからかもしれませんが、
      彼らはどこか切迫した感じ、プレッシャーなんかを
      あまり抱えているようには見えないんですよね。
      まぁそう感じているのは僕だけかもしれませんが。

      ああいう考え方をもっと日本人が持っていても
      いいんじゃないかなぁと常日頃思っています。

  • 初めまして。
    次回の旅はオアハカから始める予定です。
    すでにチケット購入済みです。
    どうして、オアハカからと言いますと、
    30年ほど前のオアハカの思い出をたどるためです。
    オアハカも世界遺産になってから人気が出ました。
    泊まったソカロに面した2000円のホテルは取り壊されているようだし、
    変わったオアハカが楽しみです。

    読んでいて、思い出が戻ってきました。
    ありがとうございました。

    • >futenさん

      あぁ、一度訪れた場所を時間を空けて再び訪れる時の気持ち、
      たった4年でもインドを再び訪れた時に感じた気持ちに近いかもしれません。

      僕は観光熱心ではなく、むしろその逆でひとつの場所でのんびり過ごすのが
      多いのですが、ブログから懐かしがっていただけてこちらも嬉しく思います。

      futenさんも旅を楽しんでください♪

  • そのサイズのギター重くないんですか?移動の時は一緒に担ぐんですかね
    ハードケースとかだったら大変そう;;

    • >hjkさん

      コメント遅れました。スイマセンっっ…。

      ギターは重いです!!!

      ハードケースではなく、背負ってはいないですけど、
      いつも手で持ってますね。
      移動がラフな国だと壊れないかハラハラしますし、
      ぶっちゃけこれが四台目のギターです(笑)

      愛用のミツコちゃんが今宵も火を吹くぜ!

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