「これで会うのは五度目」

▷11月22日/チリ、ラ・フンタ〜コケイヤ

 

 

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6:30アラームが鳴った。

僕はハッと目を覚まし状態を起こした。

バスの時間まであと30分しかない。時間ギリギリの方が起きられる気がしなくもない。

アラームの音を聞いて隣のベッドで寝ていたフランス人のヨアンの体も寝返りを打つようにモソっと動いた。そして毛布をそのまま体に巻きつけた。二度寝モードに突入してやがる。

 

「おいっ‼︎」

僕は思わず日本語で声をかけた。

 

 

昨日の夜、僕は遅くまで作業をしていた。ヨアンの方が先にベッドに向かったのだが、彼が去り際に僕に言った言葉はこうだった。

「明日は出発が早いから、たぶん僕の方が先に起きて荷物をまとめて出て行くと思う」そんなそっけない言葉だった。

「君は夜更かしするようだけど、寝坊したって起こさないから。どうぞご勝手に」のようなニュアンスにも受け取れなくない。

 

 

 

荷物をまとめて宿を出ると、外は一面霧で覆われていた。20メートル先が見えないくらいの濃霧だった。

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自然とユアンが僕の先を歩き、僕がそれに続くようになった。

彼の歩く方はバスのやって来るオフィスの方向とは真逆の気がする。

僕自身が方向音痴なのを自覚しているので、オフィスのある場所に自信が持てないまま彼に続いた。

 

 

彼は50メートルほど宿を離れ、「あれ?バスが来る場所ってどこだっけ?」と言いだした。

まさか、僕より方向音痴のヤツに会うとは思わなかった。

 

 

 

 

 

オフィスの前に到着すると、すでにそこには二人のツーリストと二人の現地人がバスを待っていた。

ツーリストは僕たちのようなバックパックを背負い、服装もアウトドア仕様。速乾性のある動きやすそうなパンツを履いていた。

 

 

バスはまだ来ていなかった。僕は荷物を降ろし体を小刻みにゆするようにしてバスを待った。擦り切れて穴の空いたジーンズの膝から冷気が入ってくる。

昨日、ユアンはこのジーンズを見て「ファ、ファッショナブルだね」とコメントをした。価値が分からなければごみ同然のヴィンテージのジーンズ…。

 
バスは少し遅れてやって来た。こんな何も泣き場所でもバスはしっかりしたツーリスト向けのバスだった。

中に入ると見覚えのある顔があった。

 

 

 

 

マサトさんだ。

一体僕はこの旅の中で何回マサトさんに会っただろうか?

 

 

まず僕たちはイスラエルのエルサレムで出会った。

その時僕は新市街地の方でバスキングをしており、マサトさんは日本人の女のコを二人はべらせていた。

マサトさんのブログはにほんブログ村のランキングで10位圏内に入っていたので、僕からしてみたら彼は有名人のようなものだった。

たった10分にも満たないファーストコンタクトだった。

 

 

次に会ったのは、ヨルダンのペトラ遺跡のある町でのことだった。

僕たちはそこからエジプトまで一緒に旅をした。ダハブには一か月くらいいたし、カイロでは他の日本人と一緒にツアーに出かけたりもした。

 

 

そして三度目の再会は南アフリカでのことだった。

マサトさんのブログ繋がりでケープタウンにお住まい(だった)マユさん、エリオットの夫婦の部屋に居候されていただく機会に恵まれた。確かマサトさんは僕より先にいて、すでに三週間くらい居候していた気がする。

南アフリカのバスターミナルで別れる時、「次はメキシコですかね?」なんて言って別れた。

 

 

 

 

 

 

まさかまた会えることになるとは。

旅の中で再会できると、嬉しい気持ちになる。再会を祝うハグをして隣の席に腰を下ろした。

 

バスの中で僕は少し興奮気味にマサトさんとトークをしていた。

マサトさんはラ・フンタの町に、なんと一ヶ月もホームステイしていたというのだ。そこで家を建てていたというのだから驚きだ。

更にウケたのは、この一ヶ月間ほとんどテントで寝泊まりをしていたそうで、シャワーはなんと4回くらいしか浴びてないというのだ。かなりタフな毎日を過ごしていたように僕には思えた。

 

ちょっと前までモロッコで宿の管理人をしながら電子書籍の執筆に勤しんでいたかと思えば、次はスペインの巡礼の道を歩き、その直後にアタカマ・マラソンをチームで完走したというだけでも驚きなのに、

昨日までは何もないような町でボランティアとして家を建てていたなんて。

この人の面白いことへの探究心とチャレンジする心意気には毎回驚かされる。

 

 

僕はずっと喋っていたかったが、マサトさんの目がすわっていたので、「それじゃあ続きはコケイヤで」と別の席へと移った。

イヤホンを装着し、お気に入りの”American Authors”の曲を聴いているうちに、気づけば眠ってしまっていた。

 

 

 

 

 

二時間くらい経った頃にどこかでバスが止まった。辺りには緑の森が広がり、頂きに雪を被った山々が見えた。南に向えば向かうほどますますパタゴニアが深まっていく気がした。

ペルーのリマにある日本人宿「桜子」で会った、リョウコさんという人が面白いことを言っていた。

 

 

「パタゴニアはいい人しか住めない」

そうリョウコさんは言っていた。

何をそんなバカなことをと思っていたが、この環境を見ればそれも理解できる気がする。

今が春のシーズンということもあり、景色を見ているだけでも幸せな気分になることができた。
“CARAVAN”の歌が窓の外を流れる景色ととてもよく合った。

 

『旅の終わりにふさわしいな..』

僕はそう思った。

 

 

 

 

 

13:00頃に僕たちはコケイヤの町に到着した。町はパタゴニアの中でも大きな規模でバスキングが出来そうだなと僕はすぐに思った。
バスターミナルを出ると宿を探すことになった。マサトさんと一緒にボランティアをしていたというアメリカ人のマック・ベイカーも一緒だ。

 

 

 

コケイヤの町にはいくつもホステルがあったが、どこも安くて10,000ペソを1,700円もしてしまう。

探せばもう少し安い宿もあるみたいだが、僕たちは居心地の良さを優先して雰囲気のいい宿にチェックインすることに決めた。

 

 

ここの宿も民宿のようで、建物自体は大きくはない。家のドアを開開けるとリビングで、部屋の角にはストーブが設置してある。

細長い階段を登ると、そこには客室が4部屋ほどあった。ドミトリーにはベッドが3台置いてある。

荷物を置いて一息つくと、宿のママさんがすかさずコーヒーを注いでくれた。一気な気分が落ち着いた。

 

 

 

僕はマサトさんと2時間ほど話をしていた。最近のお互いの旅の話から話題は徐々に日本に帰った後のやりたいことや、お金の話へ。

 

 

マサトさんは

「誰かの行動を後押しできるような、そんな活力を生み出すレストランがやりたい」

とアイデアをひとつ僕には聞かせてくれた。

マサトさんはベンチャー企業で物件のリノベーションをして働きまくった社会人時代があるだけに、僕はそのアイデアを少し意外に思った。

 

旅人には帰国後にカフェやレストランをやりたいという人間が多いように思える。だが、それが成功したという話はあまり聞かない。

やはりビジネスとして飲食店をやっていくのは大変に違いない。競争も激しいだろう。

 

僕がそんなことを口にすると、マサトさんは「考えてることのひとつにすぎないけどね」と言った。

そして「実現する!と思ったことしか考えないんだ」と言った。

そうだ。この人は中途半端な気持ちでは動かない。いつだって100%で旅を楽しんでいるし、常に誰かに何かを与えることを考えている。じゃなかったらアタカマ・マラソンなんて走れない。

 

 

 

 

 

 

トークがひと段落すると、僕たちはコケイヤの町を歩いてみることにした。

まさかパタゴニアに大好きなアウトドアメーカーのpatagoniaがあっただなんて驚きだ。

テンションの上がる僕を見て、スタッフさんは「店に来てこんなに喜んでる人を見たのは初めてだよね」と笑いながら言った。

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少し町を探索すると、僕はマサトさんたちと別れカフェに入った。もちろんここでも漫画を描く。

カフェ・コン・ラチェは275円もしたが、綺麗な層ができたクオリティの高いものコーヒーだった。

 

 

 

18:30になると僕は店を出た。まだこの時間でも空は明るい。夕方くらいだ。

日の沈むまで僕は通りでギターを構えた。レスポンスは多いというわけではないが、みんなニコニコしながらコインを入れてくれる。

 

 

そんな中で、ここに出稼ぎに来たというトゥンというヤツに会った。彼は1000ペソ札を入れてくれただけじゃなく、僕にビールをごちそうしてくれた。

なにやら「るろうに剣心」が好きらしく、ベタなアニソンも知っていた。

僕は疲れた喉に1/3ほどビールを流しそむと、似顔絵の道具をテーブルに広げた。

するとトゥンは「おれの顔よりもブルース・リーを描いて欲しい」と言いだした。

ふむ。オーケー。そういうご要望なら。

こっちも酔拳だ。酔った勢いにまかせて一枚仕上げると、トゥンはとても喜んでるくれた。

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宿に戻るとマサトさんとマックは僕の帰りを待っていてくれた。

今日の晩ごはんはトマトパスタ。

食後の皿洗いはもちろん僕がやった。

 

 


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