▷12月26日/ニュージーランド、ウェリントン
中心地の周りにはばかでかい公園が山ほどある。いや、むしろ「山がある」と言った方がいいだろう。
もし君がこの街で野宿するんなら中心地からほんの1kmちょっと歩けばいいだけだ。中心地にも公園はあることはあるんだけど、あまりに綺麗すぎるから、朝清掃員なんかに叩き起こされるのは請け合いだ。寝るのであればせめて中心地から離れるべきだ。
まぁ、と言っても今はクリスマス休暇中で街には人なんてほとんどいやしないんだけどさ。
テントの近くを人が通ることがあった。小さい子供が「お父さん、こんな場所で一体誰がキャンプしてるんだろうね」と言っていた。
僕は口笛でツイッターの真似をすると、呑気にiPhoneから”American Author”流しながら撤収をした。テントから音楽が流れてきたらなんだかご機嫌じゃないか。もし公園でそういうのを見かけたら『コイツ、なんてファンキーなヤツなんだ!』って思われるに決まってるよ。
だから僕は人目につくような時間になったらあえて音楽をかけるようにしている。それも周りに気を配ったくらいのさりげない音量でね。
僕はテントを片付けるとダウンタウンへと向かうことにした。汗をかかないようにゆっくりと歩く。僕もいっぱしのハイカーのなれたんじゃないかって思わなくもない。
ダウンタウンまで出るとすぐに僕はバーガーキングに入った。なんてったってバーガーキングのWi-Fiが一番早いからね。
注文をする前にトイレに入ることにした。ちょうど僕の入ったバーガーキングには個室トイレがあった。朝からトイレを使う人もいないので、僕は順番待ちを機にすることなく体を綺麗にすることができた。綺麗にってのはいつものタオルにちょっと石鹸水を含ませるあれだ。
トイレから出ると1.5NZドル(¥124)のコーヒーをすすりながら、iPadをテーブルの上に置いた、iPhoneと違ってコイツは楽にWi-Fiに繋いでくれる。やることと言ったら、最近始めたInstagram似顔絵のアップロードをしたり(アカウント”indianlion45″ っす)、ブログの更新をしたり、facebookを覗いたりするだけだ。
何かログを残しておくことは大事だと僕は思う。それにブログなんて二年も以上も続けてるわけだからね。やらないわけにはいかないんだよ。
窓から外を見ると人通りがあることに気がついた。どうやらクリスマスが終わって人が街に出てきたようだ。冬眠から覚めたクマみたいだ。
昼を過ぎた頃に僕はバーガーキングを抜け出し、外を歩いてみることにした。
メインストリートはようやく大きな町らしくなってきた。人が歩いているだけでこんなに活気があるものかと僕は少し感動したくらいだ。

それにバスカーの姿も見つけることができた。
ほとんどが音楽だったが、レベルは僕とあまり変わらない。めちゃくちゃ上手いヤツは一人もいなかった。
また、昨日は通りにいなかった物乞いも通りにはいた。中にはイヤホンをしながら段ボールを掲げているヤツもいれば、スマートフォンをいじりながらコインが入るのを待っているヤツもいたくらいだ。この街の物乞いはそこまで悲壮感がない。さすが治安のいいニュージーランドだ。
バスカーと物乞いは等間隔でポジショニングをしていた。メインストリートのどこでやってもバスキングができそうだった。まだクリスマス直後ということで車の通りも多くない。
僕はすぐにはバスキングを始めずに通りを歩いてみることにした。天気もいいので気分も晴れやかだ。
そんな中でついつい気が緩んでしまい、いつも以上に昼食を食べてしまった。3NZドル(¥249)のワッフルを胃に収めると、僕はバックパックを下ろしてバスキングの準備に取り掛かった。
街の感じはオークランドとよく似ている。人通りも活気も路上の感じもだ。
いきなり僕が路上で漫画を描き始めたもんだから、最初は街の人もチラ見して通り過ぎるだけだった。しばらくすると、興味を示してくれたカップルから似顔絵のオーダーが入った。

しょっぱなの似顔絵ってちょっと練習のところがあるよ。ペンタッチというか、似顔絵の構図の取り方とかなんかね。
それに今日は風が吹いていた。というかニュージーランドで風に吹かれなかったことなんてないいんじゃないかな?日によって風の強さは違うんだけど、いつもどこかしらで風が吹いていて、紙が飛ばされないように洗濯バサミとかで抑えてなくちゃいけない。
似顔絵を描いている紙が風に吹き上げられてペン先が紙に触れる。それも七割近く完成した似顔絵の「顔」の部分に変な線がついちまっている。
お客さんに謝って描き直しをさせてもらうのか、このまま知らんぷりして似顔絵を渡そうか、どうせ料金はお客さんが決めるシステムだからこのミスも含めての似顔絵にしちまうのか、僕はかなり迷った。あ、上の写真ね。
そこで思いついたのはミスを上手い具合に絵に取り込んでしまうということだった。それこそまさに髪が風になびいている絵に僕は修正したのだ。我ながらナイスアイディアだったと思うよ?

最初の似顔絵がいい感じの客寄せになってその次のオーダーも早い段階から受けうことができた。
途中からホームレスのおっさんが僕に段ボールの切れっぱしを渡して「これに似顔絵を描いてくれ」と僕にお願いしてきた。僕はできるだけ公平に絵を描きたかったので、そのおっさんの似顔絵も快く描いた。おっさんは何かモニョモニョ言ってその場から離れていった。
しばらくすると戻ってきて、何を言い出すかと思えば、「稼いだコインをいくらかおれにくれ」ということだった。
いくらなんでも、そこまでやってやる義理はない。おっさんはしつこく食いさがるもんだから、僕は笑顔で「警察呼びますよ?」と言った。するとおっさんは何て言ったと思う?
「ファックユー」
そう捨て台詞を残して去っていった。似顔絵描いてあげたのになんで罵られなくちゃいけないんだ⁈僕は思わず苦笑して肩をすくめた。

せめてもう少しくらし嬉しそうにしてくれ。
人通りが少なくなるのは割と早い段階だった。
日が傾き、日光が紙を照らすようになったので、僕は16時頃に場所を代えることにしたのだが、メインストリートも人通りは半分以下になっていた。漫画描いても、あまり注目は集められない。路上漫画は人通りがあってこそ映えるのだ。
そんな中で面白い人が足を止めてくれた。何が面白いって、乗っておる乗り物がセグウェイのハンドルがない車輪だけのバージョンだったからだ。あれ、けっつまずいたら前に吹っ飛ぶんじゃないかって思うよ。
アジア系のお兄さん、ジュリアンはスリムな長身で前髪をお洒落に流していた。似顔絵をオーダーしてくれたのだが、描く前から20ドルをスマートに渡してくれた。うん。金持ちそうな匂いのする素敵なお兄さんだったよ。

あれ日本で流行ってたらビビるな笑。
ジュリアンの似顔絵を仕上げると僕はバスキングを切り上げることにした。
今日のアガリは85NZドル(¥7,045)。まぁ、クリスマスの後だし、こんなものなのかな。オークランドだったら100ドルは越えてたろうけど、まぁ十分でしょ。
昨日も行ったバックパッカーズホステルで5ドルのマフィンとコーヒーのセットを注文し、寝るまでの時間を過ごした。
今日は寝場所を変えることにした。
最初にも書いたけど、ウェリントンの街には大きな公園が腐るほどあるのだ。それに、植物公園内にあるスポーツ施設で無料のホットシャワーが使えるという情報をゲットしたのだ。
最近、自分の臭いに違和感を覚えるようのなってきた。
ほ、ホームレスっぽい臭いがどこからかするのだ。臭いの元を確かめようと腕とかTシャツだとかえおクンクンするんだけど、どこは臭いか分からない。
ニュージーランドに来てから二週間以上一度も宿に泊まっていない。市民プールでシャワーを浴びたからと言っても、毎日じゃない。
僕は体を洗うことに飢えていた。
植物園は遠くはなかったが山の上にあったので、そこまで行くのにいくらか汗をかいてしまった。
さすがにスポーツ施設まで行く気力はなかったので、公園の真ん中ら辺に位置する場所でテントを立てることにした。
そんな山の上にあるような公園なので人通りはない。
まったく、ウェリントンはどこでだって寝れちゃうんだから。

そのセグウェイのタイヤだけverの乗り物ですが、ちょうど今日名古屋のLOFTの店内で乗り回してる人がいましたよ!笑
自分も初めて見たので驚いたのですが、公道OKなんですかね?笑
>じゃっきーさん
えっ!ついに日本でも⁉︎
セグウェイはハンドル付いてるからだ乗り物っぽいんですけど、
ハンドルないとなんだかシュールですよね。スピードもそんな出ないっぽいし、
段差とかけっつまずいたら前に吹っ飛びますよね。あれ笑。