「文房具に湯水のごとく金をつかうのさ」

▷1月5日/ニュージーランド、クライストチャーチ

 

 

 

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とてもいい寝場所を発見した。

場所はボタニティ・ガーデンの一部みたいところで、近くに工事現場があり、電灯も少なく、もちろん人通りもない。夏のニュージーランドでも、夜中になると強く風が吹くんだけど、そさえなければ熟睡できるんじゃないかってくらいいい場所だ。

今こうして「ぐっすり眠れています」みたいに書いているけど、実際はそうじゃない。僕は夜中にちょいちょい目を覚ましている。寒さのせいだ。

どういうわけだか、サバイバルシートを使っても寒さを感じる。考えてみれば一年以上もこれを使っているわけだから、保温機能が低下しているのかもしれない。

そして今日も8時過ぎに目を覚ました。

 

 

 

僕は昨日のバスキングをしている時にお会いした日本人の方のお薦めする”Akaroa(アカロア)”という町に行ってみることにした。

その人が言うには美術館の前からバスに乗れるそうで、往復30ドルでチケットが買えるそうだ。僕はこういうきっかけを大事にしている。人は自分の知らないことを知っている。それはこの旅の中で気がついたことのひとつだ。

 

僕は教えてもらった通りの場所に行ってみた。そこにはバス停らしいものはなかったが、ツアー用のバスが止まるスペースのようなものがあった。イギリスの二階建てのバスみたいな町をめぐるツアーバスがメインのようだ。

そこでアカロア行きのバスの時刻が書かれた看板を見つけたのだが、どうやら雲行きがあやしい。僕は近くにあったツアーインフォメーションでアカロア行きのバスについて聞いてみることにした。

プレハブ小屋みたいな簡素なツアーオフィスには何組かの観光客の姿があった。それなりにクライストチャーチも観光地として人が訪れるようになってきたのだ。

僕は順番を待って、アカロア行きのバスが何時に出るのか尋ねてみた。

 

 

「えっと、アカロア行きのはーーーっと…、あら、次の便はは13:30ね。もしアカロアに行くのならバス会社に電話しないとダメよ」

アカロア行きのバスは本数が少なく、二社くらのバス会社しかなかった。しかも残っていたのは聞いていたよりも高い金額のチケット。それを知った時点で僕はアカロアに行く気は一気に消え失せてしまった。ヒッチハイクもやれないこともないだろうけど、ハイウェイもサイズが小さいので、アカロア行きを一発で捕まえられるかはわからない。っていうか、やっぱ気乗りしない。

 

 

「あはは、ちょっと考えますぅ」

そう言って僕はインフォメーションセンターを後にした。

 

 

 

 

そうだな。今日はもうゆっくりすることにしよう。バスキングもやり足りてない感じだし。

その前に僕は気になっていた画材屋さんに足を運んでみることにした。昨日の寝床を探している途中にその画材屋さんを見つけたのだ。

旅の中で僕は画材屋を見つけたら極力入るようにしている。ニュージーランドの物価は高くて、平気で日本の二、三倍の値段で画材が売られているんだけど、僕は文房具フェチでもあるんだ。店内をぶらぶらしているだけで幸せな気持ちになることができるのだ。

 

 

僕が来店すると、店員さんがニコニコして挨拶をしてくれた。僕はバックパックを置かせてもらうと、美術館を歩くようのゆっくりとした歩調で画材を眺めた。中には色彩を使った水彩画の道具や油絵の筆なんかが置いてって、紙なんか実に色んなサイズの紙が置いてあった。

もちろんペンだって何種類もあったんだけど、僕が欲しいペンは見当たらなかった。今欲しいのは筆ペンだ。こっちっでは「ブラシペン」という名称で売られている。この前オークランドのダイソーで買って以来、ああいうペンには出会っていない。ご存知の通り日本の文房具の品揃えとクオリティは世界一だ。

 

 

そんな中で店内を三周くらいして手に取ったのは「Faber Castle」の極太ブラシペン。日本のそれように独特のかすれは出ない。他にもブラシペンはあったのだけど、値段がクソ高くって、とてもじゃないけど買えなかった。

ブラシペンのいいところは線の強弱がつけられるところだ。最近YouTubeで筆ペンを使うアーティストの動画を見ていて、日本人で似顔絵をやるんならやっぱりこれだなと思ったのだ。

僕が手に取ったそのブラシペンの値段は約9NZドル(¥746)。

 

「どうする?」と頭の中で作戦会議が開かれた。ペン一本でこの値段はやっぱり高い。それに筆ペンじゃなくてもサインペンだったら腐るほど持っている。

「面白い方へ!」頭の中でそんな言葉が浮かんだ。

僕はブラシペンをレジまで持って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻はちょうど12時をまわったところだった。僕はそのままリスタートモールへと歩いて向かった。

リスタートモールは多くの観光客の姿があった。コンテナが店の役割を果たしており、いいポジションにはすでにバスカーの姿があった。もちろん音楽系のやつだ。

 

僕ははやる気持ちを抑えるために、5ドルのラージサイズのコーヒーを買うと、そのバスカーからほんの10メートルくらい離れた場所にバックパックを下ろした。中から画材を取り出し、ブランケットを上にかける。やはり見た目は大事にだと思う。スケールそ使った立て看板とか、黒板なんかあったら超見栄えすると思うんだけど、僕はできる範囲で路上漫画家の作業場を装飾する。

続いて、ギターを取り出し、空になったギターケースを目の前に置いた。ページもなくなったスケッチブックには「僕はミュージシャンじゃありません。”旅する漫画家”です。あなたの顔を描きます。値段はあなた次第!」と英語で書いた看板を洗濯バサミで取り付けた。ちなみにその下のはInstagramのアカウント名が書いてある。アカウントは”indianlion45″。他にも路上で完成させた1ページ漫画もセッティングする。自分が何を描いているか伝えるためだ。

以前アフリカのマラウィで買った安物のマグカップもペン立てにすればいい感じに装飾品として引き立つ。そうそう。ボリビアのラパスでアンドレアからもらったビーバーの人形(通称「センパイ」)には紙がはためかないように紙をおさえてもらっている。

 

準備ができると、僕はコーヒーを口に含んで悠々とスケッチブックに漫画を描き始めた。昨日も今日もいい天気で、外にいるだけで気持ちが良かった。

 

 

 

 

すぐぐオーダーが入った。

みんな最初は僕がどんな似顔絵を描くのかあまり期待していないんだけど、値段も自分たちが決めていいし、まぁ、物試しにって感じでオーダーが入るわけだ。

買ったばかりの画材を使うのはどこかワクワクする。紙との相性、インクの伸び具合とか、それに合わせて絵の雰囲気も変わってくる。今日は筆ペンメインで似顔絵を描いた。

一発目のオーダーが入るとあとはノンストップだった。ほとんど漫画なんて描かずに、ひたすら似顔絵を書いていた。

 

 

今日似顔絵やって思ったのは、お客さんに座られてしまうと、ポージングが描きにくいということだった。いやさ、座ったままのポーズだと面白くないし、構図が取りにくいんだよな。いい練習にはなるけどね。僕は全体像を描くので、なるたけお客さんの全体像は見えていた方がいいんだ。

そこで僕が考えたのが、 「5ミニッツ・スタンディング」だ。お客さんにはひとまず5分間だけ立っていてもらう。下書きが済んだら好きに休んでてくださいって言うのだ。いや、これは効果的だったよ。

 

 

リスタートモールに誰もいなくなって、荷物を片付けたあと、トイレでアガリを数えてみると、そこには200ドルちょっとの紙幣があった。まさかクライストチャーチでニュージーランドのアガリ最高額叩き出すなんて思ってもみなかった。

 

 

今日の終わりはバスターミナルで充電をしながら時間をつぶすと、昨日と同じ場所にテントを張った。

うむ。ナイスだ!

 

 


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