「僕は焦った。どちらかと言えばいい意味で」

1月13日/オーストラリア、メルボルン

 

 

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僕は濡れたままのテントを無理やりケースのつめて、バックパックを背負った。

セブンイレブンで朝の1ドルコーヒーを買い、時間を少しつぶした後時向かったのは「バイクポッド」という公共のシャワーだ。

 

スワントンストリートのスターバックスのすぐ横にシャワーのマークらしきものを見つけた。もしやと思って地下の駐車場まで降りていくと予想は的中。そこには自転車通勤者のためのシャワーが2台設置してあった。

シャワーはボタンひとつで開閉する仕組みになっており、コインを入れる場所は見当たらない。一台のシャワーの前には衣類が脱ぎ捨ててあった。

地下駐車場には管理人室のようなものがあるのだが、管理人と思わしき人物は部屋の中にあるモニターで映画を見ているか、スマートフォンをいじっているかだ。

僕はメルボルン滞在中に二回、このシャワーを使わせてもらったのだけど、何も言われることがなかった。たぶん、ホームレスが使ったって、あの管理人は気づかないんじゃないかな?

 

シャワーは一度扉が閉まると、10分以内に出なければならない仕組みになっていた。時間2分前になるとブザーが鳴り始めるのだ。そして時間が来ると自動的にドアは開いてしまう。

最初入った時はマジでビビったね。外から見たらコントみたいだったろうな。幸い誰もいなかったからよかったけどね。再び扉を閉めて思う存分使わせてもらった。いやさ、髪が長いと大変なんだよ。洗濯もしたいしね。おまけに水圧が弱いとくれば、そりゃもう、10分以内にシャワーを済ませるなんて無理だろう。

 

体をさっぱりさせ、僕はオフィスに向かった。

 

 

 

 
昨日マクドナルドで書いたキャラクターのデザインや絵コンテは8ページくらいの量でそこそこ分量だ。依頼人のバレットや同僚たちもいいリアクションをしてくれた。

クライアントのいる漫画というのは打ち合わせが必要だ。

そして最終的にはクライアント側の意見が尊重される。

バレットは「スター・ウォーズみたいなキャラクターを描いて欲しい」と僕に言った。

 

 

「ほら、敵役のアンクセンチュアーは、ジャバザハットみたいでさ!」

「…」

 

 

それはもはやスターウオーズなのではないだろうか?

 

 

 

 

僕は改めてキャラクターデザインからやりなおさなければならなかった。だが、こうしてクライアントの意向が知れただけでも、あぁこんな風に描けばいいのかとイメージが見えてくる。

壁の数は4枚

ある程度イメージが固まると僕は一枚目の壁に絵を描き始めた。

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15時なると、僕はまたスワントンストリートにバスキングをしにいくことにした。

人の数は多けれどレスポンスあいかわらず薄い。ワーホリでオーストラリアに来ているらしい、英語の全然喋れないトルコ人のヤツが人懐っこくからんできたくらいだ。

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とりあえずめっちゃ新日だった。僕もトルコのことは好きだ♪サジューク元気かな?

 

 

 

 

そんな時に一人の面白いヤツにあった

スキニージーンズを厚手の靴下の中に入れているという、個性的な着こなしをしていた。別に自転車に乗っているとかそういうわけじゃない。

ジュンというのが彼の名前で、ニュージーランド人と日本人のハーフだった。ただいま旅行中で、メルボルンにはクリスマスから滞在しているらしい。

 

ジュンは僕の漫画に興味を示してくれた。特に似顔絵のオーダーをするとかそういうわけじゃなかったんだけど、僕たちは路上に座ってぺちゃくちゃとお喋りをしていた。

 

 

僕の視界の端に日本人の女の子が入ってきた。台車に乗せて引きずっているのは、一見小ぶりなスーツケースに見えるがそれはスピーカーで、手にはハードケースに入れたギターを持ってる。

僕は彼女のことを以前見かけたことがあった。アンプとマイクを使った日本語の弾き語り。その時僕はコインを入れた。

そのコは僕たちに気がついていないようだった。僕は地面から「こんちわーーー!」と言いながら手を振ると、その子はようやく気がついた。

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その子(女子バスカー)はオーストラリアに三ヶ月滞在しているらしい。この次はタイに行くのだとか。ギターは日本からやっていたのかはわからないが、バスキングはオーストラリアから始めたと言っていた。現在は週170ドルの家を借りているらしい。

僕はメルボルンのバスキングのレスポンスの悪さに愚痴を言うと、彼女は「え?そうですか⁈」と意外そうに言った。彼女は1日70〜100ドル稼いでいるらしい。

彼女の使っているアンプは電池式で音が小さいため、音が反響する場所でやろうとしている最中だった。

「でも、ホームレスがいるからダメなんですよね。あの女の人、私にすごき敵対心を持っていて、食べ物とか投げつけてくるんですよ」彼女はそう嘆いた。

 

 

またしばらくすると、別の日本人が三人やってきた

彼らはみなバスカーでそれぞれアクセサリーを売ったり、絵を描いているらしい。ひとつの街でこんなにも日本人、それも路上パフォーマーを見たのは初めての経験だった。

彼女たちは和気あいあいと話し、ギターの女のコは本日がオーストラリアの最後のライブだそうで、別に場所へ行ってしまった。

 

 

 

僕とジュンはまだしばらく話していた。ジュンはこんなにもバスキングで出会いがあることに感動していた。ちなみに彼はピアノとギターができるらしい。

しばらくすると、路上生活者のなりをしたおっちゃんが僕のすぐ真横でチョークを使って地面に絵を描き始めた。

同じストリートで同業者がやったら意味ねえだろ!と僕はツッコミを入れたくなったが、地元のパフォーマーはどこでも好きな場所でやっていいという権限を持っている。僕はジュンとのトークが面白かったので、あまり気にはしなかった。まぁレスポンスも薄いしね。

 

おっちゃんはしばらくすると、「調子はどうだい?」と僕たちに話しかけてきた。ジュンはもちろん英語がペラペラなのでフツーにおっちゃんと会話して、その要約を僕に日本語で伝えてくれる。

ジュンの話によるとおっちゃんはここで30年も地面にチョークで絵を描いているというのだ。おっちゃんはメルボルンのバスキングに関して実に様々なことを知っていた。

 

メルボルンでバスキングをするにはパーミットが必要だとか、どこがスポットだとか、もし地べたに座っていて、盲目の人がぶつかり怪我をさせてしまった場合、高額の慰謝料を支払わなければならないとかそんなだ。

他にも僕は区役所の人間が罰金のチケットを切るのだという話が怖くて今日はさっさとバスキングを切り上げることにした。

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ジュンはて旅にも興味を持っていた。

僕はどこか酒を飲みながら話したい気分だった。僕たちは先ほどの女の子のラストライブを見ようと、スワントンストリートを歩いて探した。

 

僕たちがギターの女のコを見つけた時、周りには日本人と中国人が数人いた。一人の日本人は一眼レフでずっと動画を取っていた。

そのうちの一人は金髪の18歳で自称「ラッパー」だった。膝の上のMacBookを乗せてFacebookを開いていた。彼はバスキングをやるためのパーミットを申請中だと言う。

金髪の彼は勢いがあった。特に実力とか凄みとかそういうオーラみたいなのは一切感じなかったんだけど、ポジティヴなことは間違いなかった。

「思ったら行動するんですよ!だからおれはオーストラリアに来たんです!」とか「I will be ラッパー!」とかそんなことを口にしていた。試合前の格闘家、もしくはコメディアンみたいな口調だった。

思えば、僕と彼とでは9歳も年齢が離れているのだ。自分が18歳の時のことを考える。そうだ。高校卒業後の一年はずっと予備校の自習室にいたな。

 

 

何かを成すことにおいて、年齢が若いことが至上だとは言えないだろう。

だが、若いということは、それだけでチャンスに恵まれているのだ。たとえば今目の前で歌っている女のコも、きっと22とかそこらだろう。彼女はミュージシャンではないと言ったが、それでも僕より稼いでいる。

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僕は焦った。どちらかと言えばいい意味で。

こんなところで日本人同士でつるんでいる場合じゃない。僕には僕の成すべきことがある。いいタイミングで仕事のオファーがもらえた。いいものを描こう。

 

 

ギターの女のコのライブが終わると、僕はジュンに声をかけた。Facebookの連絡先を教えようかと思ったのだが、彼は別にそんなことは必要ないと言った。

 

 

「大丈夫ですよ。世界は思ったほど広くないですし。またどこかで会いましょう♪」

 

ジュンはそう言った。

そうだね。また、どこかで。

 

 

 

僕はそのままスターバックスに直行し、閉店後はマクドナルドへハシゴして絵や日記を書いた。

 

 


6 件のコメント

  • Shimi, Glad to hear you are doing fine, family from Des Moines Iowa you stayed with. My son and his girlfriend are in Melbourne right now. Del Stevens

    • >Del Stevens

      Thanks sending message on my blog!
      This blog has timely!
      I’m so sorry I am not at Melbourne!

      I tried hitchhike in Australia;)

  • 初めまして。いつもブログを見させてもらっています!質問があるのですが僕も3月にニュージランドに1カ月半くらい旅に行こうと思っていましてシミさんと同じく野宿しながら時より宿に泊まったりして旅をしようと思っているのですが、テントはあった方がいいですか?

    • >ひとりさん

      テントはあった方がいいですよ!
      僕は安物(ドイツで6000円)の二人用のやつ使ってますが、ペグなしでも自立する四角錐みたいなテントがあれば快適っす(それはないか笑)あとは寝袋と空気枕かな?

      2月までが夏なのかな?夜中はちょこっと冷えると思うのでいい寝袋とブランケットあってもいいですね♪

      ふふふふふ。ニュージーランドは野宿する場所いっぱいですよ♪

      • ありがとうございます(^_^)6000円⁈めちゃくちゃ安いですね(笑)値段とコンパクトさ重視して購入しようと思います!

        ニュージランドには1日に四季があるって聞いてますが3月なら夜でもまだそんなに寒くないと勝手に思ってます(笑)

        シミさんのブログを参考にさせてもらいます^_^

        • >ひとりさん

          まぁ、安すぎても、すぐ壊れたりしますから、そこはお財布と要相談ってことで笑。
          僕もテントは何度も修理してるし、防水機能はほぼ失われてしまいました。
          いやぁ、雨が降ると悲惨ですなぁ!

          それではよい野宿ライフを!
          なるたけひっそりとした場所にテントを張ってくださいまし。
          何かトラブルに遭われても当社は責任を負えませんのでご了承ください。

          なんつって。

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