「君はシャンクス」

3月22日/日本、鳥取

 

 

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ハヤトは僕よりも早く起きていた。

僕はというと久しぶりの布団にいつまでも寝ていたかったが、彼に合わせて一日を始めることにした。

 

 

ここはハヤトの実家

日本家屋と現代風の家がくっついた二世帯住宅。けっこうでかい。

朝ごはんを食べるハヤトの横で、僕はコーヒーをすする。

朝は食欲が湧かない。別に体調が悪いとかそういうわけではないのだが、空腹感を感じないのだ。

 

 

一階のリビングに置かれたテーブル。その上に並ぶ朝ごはん。ハヤトと両親たちの何気ない会話。そういうささやかな朝のひとコマにどこか懐かしさのようなものを覚える。

 

そうか。僕は日本に帰ってきたんだな。

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この後行く日野町に流れる日野川です。

 

 

 

家を出る前にハヤトのお母さんはおにぎりを作ってくれた。
「出し巻き卵も食べてね」と小さな巾着袋にいれて僕に持たせてくれた。

ハヤトは出発前に実家の近くにある墓地へ先祖の墓参りに立ち寄った。後ろからハヤトのお母さんが小走りで僕たちのことを追いかけてくる。

 

ご先祖様の墓に線香を添える二人を見て、僕も「墓参りに行かなくちゃな」と考える。こうして世界一周を無事終えられたのも、どこかご先祖様のおかげのような気がするのだ。

最初はどうせ暇なんだ。時間を作って両親の実家のある埼玉県にでかけよう。

 

 

 

 

ハヤトの車が置いてある駐車場まではお母さんが車で送ってくれた。

ハヤトのお母さんはまだまだ現役として働かれているらしい。銀行員という職種柄つねになにかしらの資格を取らなければならないと言っていたが、どこで勉強するかというとスターバックスなのだそうだ。時にはオーラスを飾ってしまうとかいうんで、それがどこか可笑しかった。

また趣味が山登りらしく、月に一度は必ず米子の近くにある大山を登るらしい。 ハヤトには二人、妹と弟がいるらしいが、子供が一人立ちしたタイミングで山に登り始めたらしい。今は地元の登山サークルに所属しているらしい。

 

 

「どうして山に登ろうと思ったんですか?」

何回も訊かれたであろう、ありふれた質問をハヤトのお母さんにしてみる。

 

 

「そこに山があるから、かな?」

と、いたずらっぽくハヤトのお母さんは答えた。

「大変な思いをして、やっと山頂に辿りついた時の眺めは最高よ。それに、山を降りる時もきが抜けない。怪我なんかしても誰もだ助けてくれないからね。そして注意深く山を降りて行って、やっと下山した時に、私は感謝するの」

その言葉からはどこか哲学的なものを感じた。

 

そうして自宅から駐車場まで送ってもらうと、僕はハヤトの所有する車に乗り換え、日野町に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

西日本の旅のテーマは「暮らし」だ。

鳥取から上京し、有名アウトドア用品メーカーに就職したハヤト。そこから地域おこし協力隊として奥さんのユリと一緒にこの日野町までやってきた。ユリ(とも直接の面識はない)は現在出産で里帰りしているらしい。5月になったら息子のコウタくんと一緒にこの家に戻ってくるみたいだ。

「だから今は寂しいんだよぉ…」

なんて相棒がシャンクスと仰ぐ男は甘えた声を出している。シャンクスっていうかはヒッピーに近いかな?おれの中のイメージで。

 

 

ハヤトとの会話は僕にとっての勉強でもあった。

人は自分の知らないことを知っている。米子は彼の生まれ育った故郷であって、実家もあるが、それでも20分はなれた山間の町の古民家に移住し、そこで活動するハヤトはいったいどんなことを知っているのだろう?と僕は興味津々だった。

 

 

「おれって本あまり読まないんだよね。家にめっちゃ本あるけど、友達からオススメされたり、ジャケ買い(表紙のデザイン重視)で買ったりするから。勉強はそういうのに詳しいヤツと話して、日々自分の情報をアップデートしていくかな?」

僕よりも断然物を知っているハヤトだが、彼なりの勉強法があるみたいだ。

 

 

ちなみにハヤトはDJもできる。昨日Coco TeaにはDJブースがあったが、そこにあった道具はハヤトの私物らしい。

 

「どこでDJやり始めたの?」

「高校までサッカーやってたんだけど、途中で辞めたんだよね。そこからだな。米子のクラブとか行くようになって、DJとかやる友達とも遊ぶようになって、おれもやるようになった。レーコードとかも高校から買いはじめたんだよ」

 

面白い。

地域おこし協力隊という名前だけ聞くと、正直真面目な方々が地域復興のためにあくせく働いているのかな?というイメージがあった。もちろんハヤトはちゃんと仕事をしているが、こういう遊びの幅が広い人もいるのだということが僕には新鮮だった。

 

 

ハヤトが日野町に移住してからの初年度の活動は、地域の人とのコミュニケーション、町の便利屋、豆腐づくりお手伝いなどをしていたらしい。

だが、いくら地元の人の役に立っても町を盛り上げることにはつながらないことに気づき、ワカモノに気軽に遊びにこれる場所づくりにかじを切ることにしたそうだ。一般社団法人里鳥を立ち上げ、そこでボランティアの受け入れやイベントを企画するようになった。

 

 

去年の9月には源流祭という地元のフェスを開き成功を収めたようだ。

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「日本仕事百貨」というサイトでハヤトのインタビューが掲載されている。興味のある人は是非読んでみて欲しい。自分でなんでも作ってしまうDIY精神を僕は感じた。

こういうDIY精神が僕は大好きだ。

そしてこれから僕が神奈川に戻った際、ハヤトのように自ら動いて自分の新しい生活を切り開いていかなければならない。

僕が旅にでる前は、何かしたいことがあっても、やらない理由ばかり生み出して、行動を起こさなかった。

それでは何も変わらないのだ。失敗してもいい。うまくいかなかったら修正すればいい。動かないことには生長はない。

 

 

いわばハヤトは僕のお手本なのだ。

単純に話を聞いていてもおもしろかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

日野町は

米子から車でわずか20 分ばかり走ったところにある小さな町で、ハヤトが住んでいるのは上菅駅の直ぐ近くだ。

駅以外にはコンビニやスーパーといったものはなく、そこに行く場合には車を利用しなければならない。

家の近くには畑があり、川が流れ、山に囲まれている。

 

 

 

一見何もないような場所だが、ここでハヤトは二年活動してきた。今年が3年目。地域おこし協力隊の最後の年だ。

家に着くとさっそく中をのぞかせてもらった。

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地区90年の古民家はこれから三人暮らしをするのにはちょっと広すぎるような気もする。基本木調で、小心地はいい。

居間が広々としており、その中心にぽつんと机が置いてある。そして部屋の隅には大量のレコード(なんと二千枚以上あるらしい!)とDJブースがあった。天井に吊るされたミラーボールに心の中でつっこむ。

 

 

家の畑で野菜を自家栽培しているのにも関心した。

ハヤトは忙しいので畑仕事が出来ない代わりに隣に住むおばあちゃんがここの畑の面倒を見ているらしい。大根や白菜、ほうれん草に小松菜。ネギまで生えている!ここは野菜天国か!

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「もう適当に使っていいから。おれは仕事があるから行くね。ごめんね。忙しくて一緒にいられなくてさ」

「全然気にしないで。おれも、テーブルさえあればどこでも漫画が描けるし、それに昨日買ったばかりの本もあるからね 」

「ならよかった♪」

ひととおり家の設備だけ教えてもらい、ハヤトは車に乗って仕事へと向かった。

 

 

 

 

一人になった僕はとりあえずやかんでお湯を沸かして白湯を作った。

それをすすったあと、自然光の入る場所へ机を移動させ、そこで漫画を描くことにした。

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電気スタンドがないときは自然光が頼り。

 

 

三月下旬、山間、そして木造建築ということもあって中は寒かった。

僕はダウンジャケットを着て、膝にブランケットをかけると紙に漫画を描き始めた

ほんとうに旅に出てからずっと描いていたな。量も多くないし、飛躍的なレベルアップというわけにはいかなかったけれど、続けることは大事だと思う。もう6年も漫画を描いているわけだけれど、飽きがこないのには自分でも感心する。やっぱり絵を描くことが好きなんだろうな。

 

 

 

時間は思ったよりも早く過ぎていった。

適当なところで日記を描くことに切り替え、昨日買ったばかりの小説をちょこちょこ読んだ。

 

何もないのに、僕は満たされた空間にいた。

そうだ。これは近い将来する僕の移住の予行練習でもあるのだ。

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ハヤトんちの庭。

 

 

 

 

 

 

5時前にハヤトが帰ってきた。

僕たちは車に乗ると、近くのスーパーに食材を買いに向かった。今夜は僕が料理を振る舞うのだ!

意外だったのは日本の野菜はそこまで安くないということだった。産地や季節もあるのだろう。それにこんな小さな町のスーパーだ。輸送費もかかるのかもしれない。

僕は5品くらいピックアップした。トマトをふんだんに使いたかったが、パック詰めされたものしか売られてなかった。

 

 

一旦家に戻ると、ハヤトはまた仕事へ出かけて行った。

「夕飯は9時頃にできてるからね!」と、僕は彼女だか母親みたいなことを言う。あれ?

僕けっこういい主夫ができるんじゃないか?

ヒモじゃなくてさ!

 

 

 

 

夕飯の用意はハヤトが仕事から戻る一時間前から本格的に始めた。

日が沈む前に家の畑から小松菜を積んでおいた。

まぁ、料理って言っても、

切って煮るだけだ。

味付けは塩こしょうのみ!

まぁ、なんてシンプルなんでしょう!

アルゼンチンで生み出した、

その名も「スーパーベジタリアンフード」だ。

お肉は使いません。別に食べなくたっていいでしょ?

 

 

最初野菜を買った時は、二人分に少ないような気がしたが、実際調理してみるとそこそこの量になることがわかった。

刻んだ野菜を沸騰した鍋にぶちこむと、こんもりと積み上がる。まぁ、茹でればモウマンタイ!

 

ちょっと不便だったのが、二つあるコンロのうちのひとつが壊れていて使えないということだった。

 

まずは具沢山野菜スープを作り、それから土鍋で米を炊いた。やり方はハヤトから伝授してももらったので完璧だ。

1合に対して水200ml。土鍋の穴は垂直。沸騰したらとろ火で14分。20分蒸らす。

 

 

 

ハヤトが帰ってきたベストのタイミングで夕飯も完成した。

とは言ってもたった二品。

ご飯と野菜スープ。一応申し訳程度にスーパーで買っておいたキムチを並べておいた。ハヤトが缶ビールをくれる。それで贅沢じゃないか。僕も食が細いしね。

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これ晩御飯です。少ない?僕は別にこれで平気。

 

 

 

机に食膳を置くと、なんだかどこかの民泊にでも泊まっているような気分がした。

僕とハヤトはそこで音楽を聴きながら酒を飲み、そして語った。

 

 

 

「旅の最後にいい思い出ができたんじゃない?」

「いい旅のしめくくりだよ♪」

 

 

ほんとうに気持ちのいい夜だった。

 


2 件のコメント

  • 某串焼き屋のスタッフです。笑
    早くコンタクトを取らないと!と思いながらも日にちがたってしまいました。

    日本に帰ってきてからも素敵な旅をしてますね!
    羨ましい限りでニヤニヤしながら読ませていただきました。

    是非、お暇があるようでしたらリアルな話を直に聞かせていただきたいです!

    • >nakanoくん

      この前はどうも!
      ちょっとハカマイル貯めてました(詳細は後日!)

      そうですね。旅をすることで、どこでも旅気分を味わえるスキルが身についたんだと思います。毎日楽しいっすね。
      Facebookか何かで連絡取ってくれれば全然飲みにいきますよ♪
      でも、ちょっとカンパしてくれると、嬉しいかも。なんてね笑。

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