「最後のヒッチハイク」

3月25日/日本、鳥取

 

 

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ハヤトは

県庁に行く予定があったため、ありがたく鳥取市まで送ってもらうことにした。

そうじゃなかったらヒッチハイクで鳥取を目指していただろう。

 

 

 

朝10時に僕たちは「てご亭」を出発した。

車はあっという間に米子市を通り、そのまま街を抜けた。僕は改めて車の便利さを感じた。

高速道路まで出てしまえば、あとはほぼ一直線で米子から鳥取市まで道は続いていた。

 

 

 

 

 

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海岸線の気持ちの良い高速道路を走っている間、僕はいままでやってきたヒッチハイクを思い出した。

僕がヒッチハイクをした国のほとんどは先進国で、そのどこの国にもハイウェイがあった。

ある時には町から歩いていけるような場所にハイウェイの入り口があったり、またある時にはバスや電車を乗り継いでヒッチハイクのできる場所まで移動しなければならなかった。

 

 

よく、世界中でヒッチハイクをしたのだというと、「危なくなかった?」と訊かれることが多い。

もちろん100%の安全なんてないのだけれど、僕がヒッチハイクを実際にしてきた感想は

どこの国にも親切なドライバーはいる

ということだった。

 

 

ヒッチハイクは昔からあるカルチャーだけれども、ドライバーの『彼(彼女)を乗せていってあげよう』という親切心、良心に依るところが大きい。中には乗せてもらっただけでなく、ご馳走してくれたり、家に泊めてくれたり、お金をくれる人もいたくらいだ。

では、ヒッチハイカーは何ができるのかというと、あまり多くはない。

だからこそ、

僕はヒッチハイクを一種のエンターテイメント、もしくはパフォーマンスのひとつとして考えるようになった。

 

 

乗せてもらえなくてもいい。

路上で行き先を書いたボードを持ってバカみたいな笑顔を浮かべて親指を立てているヤツを見た人が家に帰って、家族や彼女、友達なんかに「今日どこそこで変なヤツを見かけたんだ」と話のネタにしてくれたらいいと思う。

また、車に乗せてもらった場合に、僕はなるべく、トークをしようと心がけていた。中には会話の弾まない人もいるけれど、その時はその時だ。

何度も書いてきたけれども、人は自分の知らないことを知っているし、話の中から発見や学びがあることだって多い。別に楽しく雑談で終わるのもまたありだ。

車を降りた最後に「面白いヤツを乗せたな」と思ってもらえることがベスト。

 

 

そして目的地に到着して車から降りた時、ヒッチハイカーにはある種の義務のようなものが生まれる。

それはいつか自分が他のヒッチハイカーを見つけた時に、同じように車に乗せてあげることだ。車を持っていないのであれば、どこかでこの受けた恩を次の人に渡して行くようにすればいい。

これはひとつの「ギフトエコノミー」の形と呼んでもいいかもしれない。

 

渡されたバトンは次の誰かへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食は

沿岸沿いにある洒落たレストランで食べることにした。

ハヤトはそこを通り過ぎるたびにいつも気になっていたらしい。

 

 

中に入ってみると、僕は驚いた。

そこは僕が旅の中で『こんな店が日本にもあったらいい』と思っていたような空間だったからだ。

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そこに日本的な要素はまったくなかった。

くだらないフランチャイズの宣伝だったり、どこの店でも共通してかかっているヒットソングだったり。そういう野暮ったいものが排除され、代わりに極力最低限の装飾でその店は成り立っていた。 木調にこだわり、そこでは海を見ながら食事をすることができた。

 

お店は50代中盤くらいのご夫婦によって運営されていた。

本棚に健康食を扱った本や、家具の本が置いてある。どの本もセンスがよかった。こういところからも、どんな人間がこの店をやっているのか想像することができる。

 

中には既に三人ほど客いた。

新聞を読んだり、日向で本を読むその身軽さから、彼らは地元の人間のようだった。自分の家の近くにこんな気分のいい店があったら通いたくなるよな。

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僕とハヤトはそれぞれランチを注文した。彼は定食を、僕はグラタンを頼んだ。

店の雰囲気がよければ、味もまた最高だった。

グラタンは、注意していなければ舌がやけどしそうなくらいに熱かった。こんなアツアツの状態で出してくれるなんて最高だ。冷えたグラタンほどテンションの下がるものはないからね。

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美味!

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すげー頭(笑)

 

 

食後にコーヒーを飲むと、最後にはタバコを吸いたくなるのが喫煙者だ。

ふたりしてテーブルの上で巻きタバコを巻いていると、お店の奥さんが「ここは禁煙ですよ!」と言った。

もちろん分かってましたけどね。風の吹く外より、室内の方が巻きやすいんですよ。

 

 

お会計はハヤトがトイレに行っている間に僕が二人分を払った。

家に泊めてくれたお礼と、車に乗せてもらったお礼。

 

 

店の奥さんにお礼を言ってから外に出た。

店を出るときに、彼女はまだタバコについて僕たちに注意した。「タバコなんて吸っても何もいいことはないんですからね!」と、まるでジブリアニメに出てくるお節介なパン屋のおばさんみたいな感じだった。それはどこか温かみのある言葉でもあった。

 

 

 

 

 

店を後にすると僕たちは引き続き鳥取市へ向かって車を走らせた。

ここで話したことはどんなことだったか、もうあまり覚えていないけれど、会話はずっと続いていたような気がする。

 

 

旅の中で、僕は新しい人に会うことの大切さを知った。

僕たちは会って、話して、そして自分の中に何かを培っていくのだ。

生き方の指針を見出して行ったり、面白い話を聞いたり、時にはまた別の人とつながったり。

旅をしている間はそれが当たり前でもあったが、日本に帰ってからは積極的に自分で動いていかなければそういう出会いはないだろう。

人に会うことを止めてはならない。

外に出ていかなければ世界は閉じきったままだから。

 

 

 

 

駅前でハヤトとはハグをして別れた。

また今年の9月にも源流祭があるというので、予定があれば行くよ!と約束をした。

その場合はーーー…、ヒッチハイクかな笑?

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ハヤト、ありがとう。またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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東京行き

のバスの出発まで時間があった。

 

僕はミスタードーナッツに入ると、ドーナッツとコーヒーで時間を潰した。長居をする僕に店員さんがニコニコしながら「コーヒーのおかわりはいかがですか?」と訪ねてきてくれる。いやぁ、フツーは逆の立場なのにな。やっぱ、日本のサービスってすごいよな。

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出発の一時間前になると僕は店を出た。外は一気に気温が下がっており、冷たい風が吹いていた。

僕はダウンジャケットを羽織り、ジーンズのポケットに手を突っ込んだ。そして体をこわばらせながらバス乗り場がどこにあるのか確認しに向かった。確認が済むと、駅でトイレを済まし、改札前のベンチに座って本を読みながら時間をつぶした。

 

 

15分前に外に出る。

やっぱり都心に比べれば、外を出歩いている人の数は多はない。人が良すぎてもストレスが溜まるけど、人がいなさすぎても寂しい気持ちになる。

 

 

 

もうバスに乗ればほんとうに僕の旅は終わってしまう。

日本で生きて行かなければならない。

不安はいくつもあるけれども、僕はこの生き方を選んだのだ。やるしかないのだ。

 

 

 

っていうか、

僕ならできる。

 

 

そう自分を信じている。


4 件のコメント

  • おかえりなさいシミさん☆
    ・くだらないフランチャイズを営んでいる人
    ・非喫煙者
    の気持ちにも配慮いただけるとより気持ちよいですね(^_-)-☆

    • >excuseさん

      ちょっと言葉が悪かったですね。反省です。
      タバコもできる範囲で注意します。というかそろそろいい加減禁煙します!

  •  おお、帰国でしたか。お帰りなさい。

    熊本で被災者となって、最近は避難所に出かけてネットにアクセスする生活でしたので帰国されていたことに気づきませんでした。もう光回線も含め、すべてのライフラインが復旧しました。まだ避難所に寝泊りしている人たちはいますが、日本ですから不自由は少ないようです。

    先月は関西や関東をドライブしてきたのですが、今月は春秋航空のセール航空券が確保できれば来日予定のシンガポールの友人とレンタカーで東北へ行く予定です。その後はやはり春秋航空で6月に上海へ飛ぶことまでは決めています。本当は渡欧したいのですけどね…

    • >citydeさん

      お久しぶりです。
      熊本に変えられていたのですね。毎日のようにテレビやネットで熊本地震の情報が流れてくる中、
      一体、現地はどれほど元に戻っているのだろう?と思っていました。
      一通りのライフラインは元に戻ったのですね。それを聞いて安心しました。

      僕はと言うと、最近いろんなところに顔を出しているので、
      なかなかブログを更新する時間が作れなくって。

      Citydeさんはモンゴルや中国でお会いした時のように
      これからもフットワークを軽く色々な場所に行かれるのですね。
      僕はそろそろ本腰を入れて旅漫画を描こうと思います!

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