▷5年分の海

 

 

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に来たのは何年ぶりだろうなと僕は考えた。

東京に近い神奈川県のはしっこみたいな場所に住んでいる僕はめったなことでは海になんて行かない。そもそも行きたいと思わなかった。

 

 

別に海が嫌いというわけじゃない。

旅をしている時は海が見えると心が躍った。水平線を臨んで『あぁ、この先に日本があるんだ』なんてロマンチックな気持ちに浸るのが好きだった。

お気に入りはダハブの海。あそこには何もないけど、居心地のいいカフェがあって僕は一日中そこで過ごしていた。

波の音を聴きながら作業するのが好きなのだ。休憩がてらに海を見ながらタバコを吸うのもいい♪

あ、もうタバコやめたんだった。いまだに「もらいタバコオッケー・ルール」は適用されているので、どのたかタバコください(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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野宿

をすると睡眠時間が短くなるのは旅をしていても、日本にいても変わらなかった。

 

日の出前に目覚めると、僕はテントの外に顔を出した。

空一面には薄い雲がかかっていた。海から心地よい風が吹いてきていた。

 

そして横を見ると、こうたつとジャスティンの二人が雑魚寝のようにして砂浜の上に寝ていた。

ジャスティンのヤツはひどい有様だった。昨日の深夜に突如として開始された穴掘りはどうやら終わったようで、一応服を着てはいたが、どう見ても寒そうだった。

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これがその穴。シュールだ。

 

 

彼もあまり眠れていなかったようで、僕は見兼ねて彼をテントの中で寝かせてやった。「あったかいっスね..」と彼は言った。だろ?テントをなめちゃいけないよ。

僕たちはテントのフライを掛け布団のようにしてくるまった。だが、僕は再び寝付くことはできなかった。なぜだか野宿をすると、短時間で質の高い睡眠の質は高くなるのだ。

持ってきたエイミー。ベンダーの「私自身の見えない徴(しるし)」を読みながら、みんなが起きるまでの時間を過ごした。

つい最近見た「ツレがウツになりまして」で、宮崎あおいが「”休み”は休むことが仕事なんだよ」と言っていた。今日くらいは絵を描かずに一日過ごすのもありかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

ようやくみんなが起きてきたのは7時過ぎのことだった。

砂浜をならすためのブルドーザーが「さっさとどこか行け!」と言わんばかりに僕たちのまわりを行ったり来たりしてけど、操縦士は何も言ってこなかった。

 

 

ジャスティンのやつは急に貴重品を入れたバッグがないと言い始めた。

彼の数少ない荷物の一つ。「確か寝る前まではあったと思うんですけど、シミさんのテントに持ってくの忘れちゃいました」と言う。

三連休のど真ん中ということもあり、朝のビーチには人通りがあった。盗まれてしまったのだろうか?

 

 

ジャスティンとのり君はダメ元で警察署に向かった。その間に僕とこうたつは浜辺でタバコを吹かしながらぼ〜っとしたり、キャッチボールをしたりして時間をつぶした。

結局ジャスティンのバッグは警察署に届いていたとのことだった。

中入っていたのはiPhone 6SとiPod、そして免許証などが入った財布。中にあった現金300円だけがなくなっていたという。

どうやらバッグは置き引きにあったようだが、犯人の狙いは現金のみだったようだ。iPhoneは盗んでも足がつくし、iPodは犯人がもっといいものを持っていたんだろう。

バッグも警察に届けられたというよりかは、派出所のテーブルに置いてあったというのだ。きっと置き引きした人物も、中身のあまりの味気なさに可哀想に思ったんだろう。

 

 

朝からそんな些細なハプニングがあった。

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なんだかカエルダッシュのツバサさんに似ている..???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ノープラン

ほどグダグダするものはない。

 

 

こうたつに今日の予定を尋ねると、案の定「ない!」と言う。

もともと僕は海で泳ぐつもりなんてなかったから、水着なんて持ってきてなかった。

というか、海で泳ぐ気すらなかった。今日の予定も分かっていなかったから、野宿のあとはどこか落ち着ける場所で作業でもしようかと考えていたのだ。

 

 

 

 

その場の流れで、僕たちはテントを立てた場所から動くことはしなかった。

今更一人で自分勝手に行動するわけにも行かないので、僕はこうたつたちに付き合うことにしたのだがーーー、

 

 

 

何もやることのない夏の海ほどツラいものはない。

だんだんと日差しは照りつけ、ビーチは人で溢れかえり、スピーカーからは聞きたくもない音楽が垂れ流され、途中で挟まれるMCのスキルのなさと言ったら目(耳)も当てられないシロモノだった。頭上ではトンビがゆったりと旋回し、海に来た観光客たちの食べ物を狙っていた。

 

僕はテントの入り口を開けると、Tシャツだけ脱いで、下はジーンズに裸足といったかっこうで、ひたすら時間を潰した。

途中でこうたつたちが酒やつまみを分けてくれたからいくらかは気が紛れたけれど、僕はただただ海と向かい合っていただけなのだ。

そこに水着の女の子たちがいなかったら、僕は発狂していたことだろう。

 

 

その間に他のメンバーは海に入ったり出たりを繰り返して遊んでいた。

僕の中で、海は眺めるものなのだ。かっこつけてカフェのテラスでコーヒーをすすりながら波音を聴いていればそれでよかったのだ。

泳ぐとベトベトするし、塩っ辛いし、なんでお前らそんなに海で時間潰せるんだよ??

うん。確かに誘ってもらったことは感謝しているよ。だけど、スタンスが違うんだ。もう十分だよ。しばらくは海になんてこなくていい。

泳いでさえいないのに、僕は5年分くらい海を味わった気分になった。

 

 

 

そんな僕がわざわざ海で時間を過ごすことにした理由は、今日が連休であるということにあった。

もしかしたら似顔絵も売れるかもしれないと、椅子に座ってバスキングをしてみたものの、誰からも見向きもされなかった。

 

 

というか、海ってバスキングやる場所じゃなかった。

みんな海や砂浜で遊ぶから、人の流れというものがないのだ。

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誰か買って..。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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16時に

僕たちはようやく海から引き上げた。

 

 

ベトベトした体を引きずってみんなで藤沢にある銭湯に行き、そこで体をさっぱりさせた。鏡に映った僕はばっちり日に焼けていた。

それから藤沢駅周辺にある餃子屋でメシを食べた。

小さな店で20人も座れないようなこじんまりとした店だった、餃子の数が豊富で楽しめる場所だった。

僕は青リンゴハイを一杯飲んだだけで酔いが回ってしまい、後半はテーブルの上に突っ伏すようにして眠っていた。そうだ。朝からチビチビ飲んでたし、疲れもたまっていたんだろう。

 

 

 

 

こうたつたちとは藤沢駅で別れた。

 

 

そう。

僕は性懲りもなく

 

 

今日も野宿するつもりだったのだ。

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