「かつてのペニーボーダー」

 

 

かつて

僕はいっぱしのペニーボーダーだった

 

オーストラリア製のちっちゃなスケートボードは、街中で乗るのに最適なサイズで、それに乗って駅前を走る時は優越感を覚えたくらいだ。

僕が持っていたのはペニーボードがまだ日本に入ってきたばかりの頃の初期型で、ブルーのボディに赤いウィールのスーパーマンみたいな配色のペニーボードだった。僕はそれをガンガン使い込んでいった。

まだペニーボードが日本でブームになる前の話だ。

 

 

 

それまでスケートボードというものは僕の中ではハードルが高い乗り物だった。

確かに上手いヤツが乗っている姿はカッコいいのだが、あまり実用的ではない。

まず大きくてかさばるし、練習場所も限られててる。もちろん転ぶと痛いし、意外とコンクリートの上を走ってみると安定性がないのがわかる。それに走っている時の音だってうるさい。

だが、小型のペニーボードはチョイ乗りに最適で、音も静かだった。別にトリックなんてする必要がない気楽さが魅力的だった。

一度、まおのヤツの就職祝いにプレゼントしたこともあったくらいだ。

 

 

 

 

僕はそれを2年近く乗りまわして、

僕は愛用のペニーボードを今度は世界一周に持っていたのだが、分かったことは日本以外では全然乗れる場所がないということだった。

乗らないスケードボードをどこにでも持って行くのは実に愚かな行為だったと思う。

外国にはペニーボードに乗れるような場所なんて全然ないのだ。

発展途上国では野良犬がいるし、ヨーロッパでは石畳が続いている。どこの国も首都にいけばそれなりに整った道路があるんだけれど、それ以外の場所では単なる重りでしかない。それでも一年半くらいはペニーボードをバックパックに取り付けて旅をしていた。

 

だが、チェコを旅している時に愛用のペニーボードはあっけなく盗まれてしまった。

その時僕は確かに悔しい思いもしたのだが、同時に心のどこかではこうも思っていた。

『あぁ、やっと重たい荷物から解放されたぞ』

と。

ごめんねペニー。

 

 

ぶっちゃけてしまえば、旅をしている時にペニーボードが役に立つ機会なんて数えるほどしかない。自転車で旅をしている方がよっぽど便利だ。

それから帰国するまで、僕はペニーボードが必要だと感じたことは、たぶん一度もなかったと思う。

 

 

 

 

帰国してからも、それはあまり変わらなかった。

家にこもって漫画を描く時間の方が多かったし、どこかへ出かけたとしても歩いて向かうことが多かった。

体を動かすことにあまり抵抗がなかったのだ。

 

 

そうだ。僕は歩くことの方が断然多かったのだ。

旅をしている時は、しょっちゅう重たいバックパックを背負って歩き回ることが多かった。

町についたらまず宿探し。

宿に荷物を置いたら、次は散策。

長距離移動はバスや電車に乗ることが多かったけれど、駅やターミナルに行くまでに歩いていくことだってある。

翌朝ヒッチハイクをするために、夜の間に歩いて(節約のためだ)
ヒッチハイクポイントまで向かうことが多々あった。

二日間かけてチリから国境を抜けアルゼンチンまで歩いたこともあった。あれはいい経験だったな。

 

そうだ。そうだ。

今はペニーボードの話だったね。

 

 

日本に帰ってきた僕はすっかりペニーボードに乗らなくなってしまった。

正直ん言うとスケートボードに乗るのが怖かったのだ。

もう一年以上もブランクがあったわけだし、これでコケて骨折なんてしたら、病院に行かなければならない。ただでさえお金がないのに、そんなリスクをとることはできない。そう考えていたからだ。

一年漫画を描く生活をして(もちろん遊んでもいたけど)

こうして新生活が始まった今、

 

 

 

 

 

 

どういうわけだか、僕はまたスケートボードに乗っている。

image

続く。

 

 


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