フジロック最終日(更新日2017/09/10)

 

 

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ナイトシフトが終わりヘロヘロになって明岳寮までもどった。

コンビニのバイトはしたことがないけれど、コンビニの夜勤ってきっとこんなかんじなんだろうなと想像した。

ようは眠たかったのだ。

 

 

男子明岳寮まで戻り、そこから疲れた体を引きずって自分の部屋まで戻り、着替えとタオルを持ってなんとか風呂場までたどり着いた。

ありがたいことに明岳寮では昼間12時から14時をのぞいた時間、いつでも風呂に入ることができるのだ。

明岳寮ではアイプレッジ以外にも様々な人たちが利用している。フジロックの駐車場の案内をしている人なんて、よくシフト終わりに談話室でプカプカとタバコを吸いながら談笑していたりする。談話室に置いたある自販機でビールが安くで売られているのもありがたい。

ここはスタッフに優しい場所なのだ。

 

 

 

 

僕は朝の6時だか7時だか判別しない時間に風呂に入って、その日の疲れを癒した。

風呂から上がると「寝る前の一杯」ということで談話室でビールをちびちびと飲んでいた。

そこへ他のスタッフが数名やって来た。その中には同じ部屋に泊まっているオガの姿もあった。

彼は思い出したかのように僕に尋ねた。

 

「シミ、よかったら似顔絵描いてくれないかな?」

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

実際、僕は似顔絵を描く道具を苗場まで持って来ていた。

前回はフジロック内でバスキングというギャグをかました僕だが、去年のフジロックの思い出は何かと考えた時に

「バスキング(路上似顔絵)」

ということが大半を占めた。

最終日にはばっちし怒られた。

 

 

去年のフジロックに関して言うと、僕はボランティア仲間と一緒に遊んだという記憶がほとんどないのだ。

そのこともあって、僕は「今年こそはフジロックを遊ぼう!」というテーマを密かに立てていたのだが、孤独癖は相変わらずで、気づいたら一人になっていることが多かった。あはははは。

似顔絵の道具を持って来たのも、自分が漫画家を名乗っているからだ。意外と道具を持って来ていない時に「何か描いてよ!」とリクエストされることが多い。

 

 

 

 

同室のオガと話していて、「似顔絵を描いてよ!」という流れになった時、僕は「ん?まぁ、いいけど?」なんて顔をしたけれど、内心では嬉しかったのだ。結局僕ってヤツはそういうヤツなのだ。照れ屋というか、嬉しいくせに感情を表に出さないことをかっこいいと思うようなめんどくさいヤツなのだ。

 

反面、いつだって僕は「出先でちゃんと似顔絵を描けるだろうか?」という不安を持っている

むしろこっちの気持ちの方が大きい。

世界一周をしていた時も、世界中の路上で絵を描いてきたわけだけれど、それでも、一発目の似顔絵というのはうまく描けないものなのだ。

描く場所によってペンタッチはことなる。時には画板を引いて自分の膝の上で描くことだってある。

机や椅子の高さや素材が違う中で自分の線を描くには、それらの道具とシンクロするのに時間がかかるのだ。

描く以前からアップ(準備運動)をしていれば、ペンタッチはそこそこ戻っているけれど、その場でパッと描いてと言われると、僕はちょっと困ってしまう。果たしておれは自分のタッチで描くことができるのだろうか?と。

 

 

 

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僕は自分の部屋に入ると、似顔絵を描くための道具が入ったトートバッグを持って談話室まで戻った。

道具を一通りテーブルの上に並べて、いつも使っているクラフト紙に下書きを始めた。

自分ではいつもどおりに近いパフォーマンスができたつもりだったが、この日僕が描いた似顔絵はあまり似てなかった。

それをごまかすために背景の描き込み量を増やすのだけれど、それもどうもうまくいかない。

似顔絵ができる時のオガのリアクションを見ていると、だんだん苦しくなってくる。

それでも、なんとか一枚仕上げて額縁に入れるとオガに渡した。

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苦し紛れの一枚を描いてオガに渡すと、それを見た別のスタッフも僕に似顔絵の依頼をしてくれた。

もちろんこれはバスキングとして似顔絵を描いているし、向こうもお金を払う気が満々なので、僕としてもなんとかいいものを仕上げようと思うのだけれど、ナイトシフト明けのぼやぼやした僕の脳みそのせいで、絵自体も同じようなぼやけた感じになってしまった。

 

 

 

 

僕は決して手を抜いているわけじゃない。

 

その時どんなにうまく描けた絵だと思っても、別の日に見れば「あぁ、おれはなんでこんな下手くそな絵を描いてしまったんだ???」と自分を責めたくなる。

だが、それは違う。

僕はその絵はその時の自分の100%の絵だったのだ。

フジロック4日目で、ナイトシフトでじわじわと体に疲れが溜まってきた状態で、おまけについ先ほど活動が終わって、今まさに寝ようとしているこのコンディションで描けた僕の100%の絵がこれなのだ。

ならいいではないか!これでこそライブパフォーマンスだと僕は思う。何も自分を責める必要なんてどこにもないのだ!

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この日、僕は寝る直前に三枚の似顔絵を仕上げた。

一枚目よりも二枚目、二枚目よりも三枚目の方がうまくなっていった。

自分でもいつものパフォーマンスは発揮できなかったので、料金に関してはみんなのおまかせにしておいた。それでも似顔絵を描いた三人は嬉しそうに僕にギャラを渡してくれた。お金がもらえるのは確かに嬉しいけれど、今回ばかりはちょっとだけ後ろめたい気持ちがないわけでもなかった。

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「…」

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「サッ..」

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「ゆうやだよ〜〜〜!」

 

 

 

 

 

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目覚めると12時を過ぎていた。

「あぁ、やってしまったな..」と僕は後悔した。

 

 

というのも、ボランティアスタッフとコアスタッフ(ボランティアをケアする側のスタッフ)のみんなで一緒にドラゴンドラに乗ろうという話になっていたのだ。

ほんのつい3時間ほど前の話だ。

てっきりこのままオールで起きているのかと思ったら、どここの誰が言い出したのかはわからないけれど、「じゃあ15分寝るわ!」と言い出したのを皮切りに、各々が各部屋に戻って仮眠をとりに帰って行った。

もちろん、僕も似顔絵をヘロヘロの状態で描いていたので、寝れるものなら眠りたかった。起きられるのかは心配だったが、きっとだれかが起こしてくれるはず。

そう期待を込めて横になったのだが、

 

 

 

 

 

現実はそう甘くなかった。

 

 

 

 

 

 

というか、徹夜明けで睡眠時間15分とかアホじゃないのか?

そんなことできっこないにきまっている。僕はできない。現にこうして寝過ごして「あぁ、やっちまったな」という想いを味わっている。

誰がドラゴンドラに乗るかだなんて把握もできていないし、誰がどの部屋に寝ているかも曖昧にしかわかってないので、まぁ、そりゃ起きられなかったらこうなるよね。

 

 

僕は念のため、iPaddでLINEの通知をチェックしてみた。

誰かが僕のことを呼んではいたものの、それは1時間前のことなわけで、僕が夢の世界にいた間に、みんなはドラゴンドラに乗りに出かけていってしまったようだ。

 

15分の睡眠というのはさすがに無理だったようだが、他のみんなが起きれたことが僕には驚きだった。

どうして世の中には、過度のワクワク感によって体を限界まで酷使できる人間がいるのだろうか?

もちろん今日だってボランティア活動があるのだ。ただでさえ睡眠時間を削って遊んでいるのに、僕だったら活動中に絶対眠くなるに決まっている。

 

 

 

そんなことを頭の中で考えながら、僕は洗面所で顔を洗って歯を磨き(もちろん自前の歯ブラシ)、のそのそと準備をすませると、とりあえず外に出ることにした。

今日も外ではフジロックだった。空一面には薄い雲が覆ってはいたものの、昨日一日中降り続いていた雨も上がり、夏特有のモワッとした湿気を含んだ空気がそこにはあった。なんだかフジロックらしい天気でもあった。

そして今日は誰がなんと言おうとフジロック最終日でもあるのだ。

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入場ゲートを抜けると、そのままふらりとオアシスエリアにあるボランティア本部へ向かった。

そこでは日中活動しているボランティアたちがちょうど集まっている最中だった。これから活動があるのか、お昼ご飯を食べるために集まってるのかはわからない。そこにはドラゴンドラに一緒に乗るはずだったメンバーの姿を誰一人として見つけることはできなかった。

僕はWiFi難民なので野外に来てしまったら、その時点で誰かと連絡を取り合うことができなくなってしまう。

心のどこかでは「もしかしたらみんな、僕のことを待っていてくれるんじゃないか?」という期待もあったが、僕一人を待つだけに1時間も何もしないで待っていてくれるわけもない。

 

 

僕は諦めて本部をあとにし、どこかの飲食店で何か食べることにした。

フジロックに来てから、これでもかというくらいに暴飲暴食を繰り返している僕がこの日一番はじめに選んだ食べ物はコーヒーとクレープだった。

時刻は昼下がり。「こんな時間から甘い物?」と思われる人もいるだろうが、あえていいたい

 

 

 

こんな時間だからこそクレープなのだ。

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まず第一に僕はコーヒーが飲みたかった。起きてから時間も経っていなかったので頭はボヤボヤしていた。いつもだったら、できるだけケチって、安いものを買おうとする僕だが、自販機で売っているようなインスタントコーヒーをわざわざフジロックに来てまで飲むのもちがう気がした。

どうせコーヒーを飲むのであればしっかりした豆を使った高いヤツがいい。できればそれにほんの少しだけミルクを入れて、コーヒーの苦味を味わいながらゆっくりと飲むのだ。

 

そんなコーヒーにマッチした食べ物といえば、それはクレープだろう。

いや、うそです。すみません。クレープなんて一年に一回食べるかどうかのレベルです。たまたまコーヒーを買うために並んでいたお店でクレープが売っていたからです。

列から離れていくお客さんが美味しそうにクレープを食べていたからです☆

 

 

 

 

 

 

12時過ぎのオアシスエリアちょうど昼ご飯を食べに来た来場者たちで埋め尽くされていた。ここひとつだけとってみても何かのイベントが開催されているような気さえする。

隣接するステージ・ブースであるレッドマーキーや岩盤ナイトからはまだ音が流れていないようだったが、グリーンエリアのステージからは音が流れてくるのが聞こえた。

 

 

僕の前には最終日だけフジロックに参加した女のコが二人ならんでいた

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女のコほそクレープの似合う生き物はいないだろう。それかもしくはオーストラリアのコアラあたりにクレープを持たせればけっこういい線行くのではないだろうか?

彼女たちはぺちゃくちゃと楽しそうにおしゃべりをしていた。「見たいバンドがあり過ぎてどれを見ればいいのかわからない!」だなんてフジロッカー特有の悩みを喋っていた。どうやら彼女たちは翌日から仕事があるらしく、夜行バスに乗って帰るみたいだ。

 

 

僕はどうだろう?何か特別見たいバンドはあるだろうか???

肩掛けのポーチからZカードを取り出してシフトまでのタイムテーブルを見てみたが、そこには何組かの名前を知ったアーティストがいたが、特別見たいようなアーティストはいなかった。そうだな。グリーンエリアのトリのビョークくが見れればいいかな?

 

 

 

 

 

 

いや、そんなことはない。

 

 

 

 

 

僕にはここに来た時から、死んでも観たいアーティストがいた。

それは今夜22時半からピラミットガーデンでライブをする予定の青葉市子だった。

 

青葉市子の存在は僕の世界一周と切っても切り離せない。

彼女の曲を聴くと、僕は旅をしていた時の特定の場面を鮮明に思い出すことができる。

そのひとつがスイスでの一場面だ

 

 

 

 

あの時僕は、スイスのズーリッチ(チューリッヒ)を旅していた

ヒッチハイクで他の街からたどり着き、野宿をしようとウロウロしていた時にあったトムヨークみたいな顔をしたDJの家にホームステイをすることになり、その翌日に一人の日本人と会ったのだ。

 

彼はアンディーウォーホルみたいな綺麗な白髪をしており、年齢は50後半にもなるというのに、その格好にはほとんど隙がなかった。とんでもなくお洒落だったのだ。

 

その日は流れで僕は彼の家に味噌汁を飲みに行くことになった。

彼の家もまた、しゃれた空間だった。

彼がかけてくれた音楽はワインに合うようなジャズばかりだったが、食後にかけてくれた音楽が青葉市子の曲だったのだ。

青葉市子の曲を初めて聴いた時、僕が思ったのは「こんなに日本語を美しく歌う人間がいたのか…!!」ということだった。

透明感のあるその歌声は、酔っ払った僕の心の奥深くを揺さぶった。

そんな僕を察してかウォーホルさんは言った

 

「すげーいい声だよな。

あ〜〜〜、、、

こんな女を抱けたら最高だろうな..」

と。

 

 

 

当時全盛期だったパーティというパーティで遊び尽くし、享楽という享楽を味わい、かつての妻はオーストリア人で彼女との間には娘がおり、スイス初のラーメン屋の創設者で現在海外に暮らしているアーティスティックな男が言うセリフだからこそ、その言葉には妙に説得力があった。

 

 

 

 

 

 

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クレープを食べ終えた僕は、
自分がこうして一人でいることを半ば受け入れていた。

こればっかりはしょうがない。きっと僕の性質みたいなものなんだと思う。

お酒に弱いだとか、肩こりが人一倍きついだとか、人の名前が覚えられないだとか、片付けができないだとか、ナメクジが死ぬほど苦手だとか、

その手の個人では克服することのできない先天的な性質みたなものだと思う。

そもそも、僕がもし群れてなくちゃ何もできないようなやつだったら、ひとり旅なんて到底できなかっただろうし、漫画なんて描けたもんじゃない。

人といればいただけ、「なんでおれはこんなにグダグダしているんだろう?一体この時間はなんだ?さっさと家帰って絵描きたい」なんて思うのだ。

 

物を創る人間には孤独はつきものだ。

だって、一人一人の発想の源泉から何かは生まれて来るんだから。

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ルーカス途中から上裸だよ。どんだけ見せたがりやねん。

 

そうして僕はオアシスエリアを後にし、ルーカス・グラハムのライブを見ながら、コーヒーをちびちび飲んでいた。

海外のアーティストたちを見ていて思うのは、音をほとんど外さないということだ。元々の音を知らないからかもしれないのだけれど、一流のボーカルというのはライブでもレコーディングでも、どうすれば自分の音が出せるのかを熟知している。

 

やっぱりプロのボーカルというのは、嫌というほど録音した自分の声を聞いているんだろうな。

骨伝導のせいで自分で発している声は、第三者が聞いているものとは異なる。他人に聴かせる音だからこそ、自分の出す音がどう届くのかを理解していなければならないのだ。

 

そう考えると、漫画家も自分の描いた絵が印刷された時にどう見えるのかを意識している点ではミュージシャンと似ているのではないだろうか?

この考えでいくと「レコーディング=印刷」ということになる。

僕の場合は完成した原稿用紙を見ると、なかなか上手くできていると思っても、それをスキャンしたり、されには何かに印刷したりすると、原稿用紙を見た時に伝わってくるものはだいぶ薄れてしまっていることに気がつく。

そうか。ミュージシャンも漫画家も共通点がなくはないんだね。

と勝手に納得しながらライブを観ていた。

雨は降っているのかやんでいるのかわからないような状態で、ステージ前には来場者たちがいるものの、空いているスペースがなくもなかった。

中にはポンチョを椅子にまでかけて、雨の中でライブが見れるような格好をしている強者の姿も見える。そういう人たちの姿を見ていると、膝とお腹の間にできたくぼみに水が溜まりそうだなと思わず考えてしまうのだけれど、実際のところどうなんだろうか?雨の中でライブを見るってのはなかなかキツイところがあるよね。

 

最後までルーカス・グラハムのライブを観ていこうかとも思ったのだが、彼がとちゅから歌い出した曲はポップチューンからバラードの様なものへと変わっていった。それに神様がどうのこうのとか言われちゃうと(たぶんMCで言っていたと思う)、無宗教の僕はなんだか聴く気がなくなってきちゃって、結局は腰を上げてグリーンステージを後にすることになった。

 

だって、どんなにいい歌でも、「あぁ、神よ!」みたいなこと言われても分からないよ。それに今はそういう曲を聴く気分でもないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

グリーンステージを後にした僕はそのまま、ホワイトステージまで行き、本部にいるまおと少し話した。

「ほら、これ見てみろよ!」

 

というまおが示した先には、フレームの曲がったごみ箱があった。

昨日の夜に小沢健二がここでライブをやったのだが、ホワイトステージは入場規制がかかるのほどだったそうだ。

あまりの人の多さに、後ろにいた人たちはごみ箱に押される形になったらしい。

 

ごみ箱に押し潰されて「お兄さん!もう無理!無理だからっっ!」と悲痛な叫びをあげる来場者の声を聞き、彼はごみ箱裏にある資源を撤収し、最終的には来場者はごみ箱の中でライブを観たという。

ごみ箱のフレームは鉄でできているので、ちょっとやそっとじゃ曲がらない。

察するに、よっぽど人がここに集まったのだろう。

僕だったら、そこまでしてライブみたいとは思わないな。そんなんじゃライブも楽しめないよ。

 

まおは本部のスタッフとして活動しているため、ここでいつまでも話しているわけにはいかなかった。

僕は適当に話を切り上げてホワイトステージを後にした。

 

アバロンを抜けフィールド・オブ・ヘブンまで戻った時、僕はふらっと飲食店の前にヘブンの飲食店はどこも繁盛しているみたいで、どこの店にも列ができていた。

僕が並んだその店では豆腐ドーナッツの上にアイスが乗った「豆腐アイス」というネーミングセンスのかけらもないデザートが600円で売られていた。

値段はフェス価格だし、味もボリュームもそこそこなのだけど、僕は豆腐アイスがまた食べたくなってしまったのだ。アイスはあまり会場内で売られていない。アイスだけの金額は確か400円くりらいで、それなら200円出してドーナッツつけた方が若干お得なのだ。

 

僕は上の「ドリンク・デザートはこちら」という表示を見て列に並んだ。

列の先頭まで来て、オーダーをすると、店員の男が「並ぶのはここじゃないです!」と苛立ちを露骨に顔を出して言った。

 

 

いやいやいや、昨日も僕はここに並んだから!

隣にいたお会計のお姉さんがすかさずフォローに入って、オーダーを受け付けてくれたので、僕はそこで支払いを済ませ、釈然としない気持ちで豆腐アイスを待った。

 

ほんとうは僕の並んだ場所は間違っていたのかもしれない。

だが、店側のアナウンスの仕方にも問題があるのではないだろうか?支払場所と動線を確保したいのなら、そのように人を配備するべきだし、間違って並ばされたのは僕の方だ。

ここで講義してエネルギーも使いたくなかったし、「じゃあいいです!」と言ってオーダーをキャンセルするより、今は甘いものが食べたかった。

豆腐アイスを受け取ると僕は「もう二度とあの店行かねえ!」と心の中で固く誓ったのだ。いや、そう誓っても、また数日経ったら行っちゃうな。あぁ、よかった今日がフジロックの最終日で。

 

そんな気持ちで食べた豆腐アイスは、フツーの味だった。これならまだコンビニのアイスの方が美味しいなと僕は思った。

カウンターの向こう側では店員たちは目まぐるしく働いていた。

 

へ続く


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