フジロック(バイト日)

 

 

 

 

「お〜〜〜い。こもう集合時間だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

はっ!!!

 

 

 

 

 

 

がばっと状態を起こした。

やばい!寝坊した!

 

 

 

 

 

全滅だった

僕以外のルームメイトも親切な誰かのおかげで目を覚まし、寝ぼけた脳みそを必死に揺らして自分が置かれている現状がどんなものなのか理解しようと努めているようだった。

 

僕は思った。

 

 

 

『早くしないとバスが出てしまう!

ヤバイ!パッキングしてない!!!』

 

 

 

 

 

布団だってシーツだって片付けていなかった。

なんでアラームならなかったんだ?iPadのアラームかけたよな?

いや、記憶の片隅で半分無意識に鳴ったアラームを「そっ」と切った記憶がある!

それより、なんで他のヤツは起きてないわけ?
あぁ!だから僕がしっかりしていなくちゃいけなかったのに!

どーすんだよ?これ?このままここに置いていかれたら?!

まぁーーー..、

その時はヒッチハイクでも夜行バスでも使って帰ればいいけど、

後でかなり怒られるだろうな…

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

起床から30秒ほどして、僕はパッキングをする手を止めた。

 

 

 

 

あれ?

 

「今って、バスで帰る時間だっけ?」

 

 

 

 

 

 

正直に言おう。

僕は混乱していたのだ。

今から向かうべくは、ボランティア活動が終わったあとの「バイト日」の労働

朝8時に明岳寮前に集合することになっていたのだが、僕(たち)はみんな揃って寝坊をかましたのだ。

 

 

 

 

Tは軽装でほとんど出発の準備を揃えていた。歯ブラシを持って洗面所に向かう姿を見て、僕もそれにならう。とりあえず歯は磨いておかなくちゃ!だって目覚めた時って口にうんこ(並みの雑菌)が入っているから!

冷たい水で顔を洗い、自分の歯ブラシでシャカシャカと歯を磨いた。

だんだんと頭が回るようになってきた。時計を見るとまだ8時03分だ。これならいける!致命的な遅刻じゃない。

 

歯磨きを済ませるとダッシュで部屋まで戻り、ビニール製のナップサックに適当に荷物を詰め込んで僕は外に出た。

 

 

外では他のスタッフたちが班ごとに並んでいたものの、そこには仕事が始まる前の特有のゆるさがあった。統括不在の特有のゆるさだ。

僕は安心して、先ほど僕たちを起こしにきてくれたりょーた(通称ぱぱ)に心からお礼を言った。あなたは命の恩人です、と。

 

 

 

 

 

3分ほどして統括がやって来た。

これから始まる「バイト日」の活動の簡単な説明をしたあと、ピラミッドガーデンに行きたい希望者を募った。

前年の経験談から語らせてもらえば、ピラミッドガーデンでの清掃は楽だ。

 

僕は去年はりょーた(彼は去年も参加していたのだ)と一緒にピラミッドガーデンのごみ箱のごみの分別&片付けをしたのだが、のんびりした仕事内容だった。

暇というわけでは決してないのだが、ピラミッドガーデンの特有のゆるさみたいなのがあって、どこか心地よい気分になれるのだ。

 

案外、他のみんなはピラミッドガーデンでの清掃が楽だということを知らない。

だから統括がピラミッドガーデンの志望者を募った時、僕は真っ先に手を挙げたのだが、周りには僕以外にも楽をしようとしているヤツらが10人以上はいた。

そこまでして楽がしたいのか?と尋ねられば、僕はそうではない。去年は甘い汁を吸わせてもらったので、今年は誰か他の人がそれを楽しめばいい。

そう思った僕はスッと手を引っ込めた。譲り合いの精神だ。

だが、

 

 

 

 

 

今年のピラミッドガーデンでの清掃が熾烈を極めたのを知ったのはあとになってからだった。

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あ〜〜〜…命拾いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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場内の清掃

をする僕たちは再び入場ゲートをくぐり、一度オアシスエリアにあるボランティア本部へ向かった。

 

 

もちろん会場内には一人も客の姿はない。

そこにいるのはフジロックを作り上げた関係者たちの姿しかないのだ。

みな一様に撤収作業を続けている。そこには昨日まで続いていたフジロックの面影や熱量はほとんど残っていない。

 

 

 

僕が他のスタッフとやることになったのはオアシスエリアのごみの片付けだった

設置してあるごみ箱が最終的にどんな醜悪な姿になっているのかを知っている来場者はきっとほんの少ししかいないだろう。

そこには溢れんばかりのごみが溜まり、割り箸に至っては積もりすぎて、もはや一種のアート作品のようになっている。

こうなってしまったのは、昨日活動を終え、ごみ箱にボランティアスタッフが配置されなくなった後での出来事だ。誰かが一人でもいれば、そこまでごみ箱のごみが無秩序に氾濫することもなかった。

そこに人がいるかないかで変わってしまうのがフジロックのごみ箱なのだ。

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これを見た時には言葉を失ったよ。いや、逆にすごいよ!

 

 

 

オアシスエリアでは一箇所につき2面のごみ箱がある。

3人ほどのスタッフがごみ箱の中に入り、ごちゃごちゃになったごみを片付けていくのが僕たちの仕事だった。

「てみ」と呼ばれるプラスチック製の網目のないざるのようなものを持ち、一心不乱でごみをすくい取っては140リットルの大きなビニール袋に入れていく。

飲食ごみ特有のなんとも言えない香りがするが、そんなの活動を続けて入れば慣れてしまう。ごみそのものはフレッシュな状態なので、虫がわいていることもない。(でも好きか嫌いかで言ったら「嫌い」だ笑)

 

手や長靴はすぐに何かの汁で汚れてしまうが、そんなの帰って洗えば済むことだ。

仕事中に音楽が流れてこないことが残念だが、僕たちは手際よく溢れたごみをビニール袋に詰め込んでいった。

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オアシスエリアにある3箇所のごみ箱を手分けして片付けると、今度はレッドマーキーのごみ箱を片付けた。容量はどこも一緒だ。

そういえば、レッドマーキーのボランティアについてこんなエピソードがある。

 

 

その時、僕は別のごみ箱内で分別のナビゲートをしていた

シフトの時間が終わり、歩いて本部まで戻る途中、一人の外国人の女性に声をかけられた。

彼女は困った顔をして僕にこう尋ねた。

 

 

 

 

 

「ウェアー(Wehre)イズ(is)・
レッド(Read) ・マイ(My) キー(Key)?」

 

 

「は?」

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一瞬彼女が鍵を探しているのかと思った。

「ユア(your) キー(Key)?」と僕が尋ねると、彼女は「レッド・マイキー!」と強調した。特にレッドにアクセントを置いて。

「レッド」ってあれだろ?「リード(Read)」の過去形だろ?

え?どういうこと?「私の鍵を読んで」って?鍵探しているんじゃなかったの?

 

 

「だから、あれですよね?鍵を探してるんですよね?」そう僕が尋ねると、彼女は「コイツじゃ話にならん!」と判断し、プリプリして去っていった。

ややあって、僕は気づいた。

 

 

「あぁ、彼女はレッドマーキー(RED MARQUEE)を探していたのか」

と。

 

 

 

英語の発音と日本語の発音はやはり違う。

僕たちが何気なく口にしている、頭にイントネーションのある「レッドマーキー」も、外国人からしてみれば「レッド(ここで一瞬区切る)マイキー!」なのだ。なんだよ?マイキーって?マーキーじゃねえの?

それに僕が声をかけられたのはレッドマーキーのすぐそばだったのだ。あまりの近さに、まさか彼女がレッドマーキーを探しているだなんて思わない。

 

このあとも、同じような外国人に遭遇することがあったので、今度こそはスムーズに対応することができた。

 

そんなレッドマーキーの話。

 

 

 

 

 

 

 

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オアシスエリアが終わると、本部テントで休憩を挟んだ。

バイト日はいい撤収日和でもあった。

空はからっと晴れ上がり、日の下に出ているとすぐに汗をかいてしまう。

コアスタッフは僕たちのケアが彼らの仕事でもあるので、水分補給を促してくれた。ポカリとか作ってあると、マジでありがたいのですわ。

 

休憩後はハイエースで裏導線を通り、アバロンやヘブンのごみ箱を片付けていった。

どこのごみ箱もごみが溢れていたので、140リットルのごみ袋はすぐに取り替えなければならなかった。

 

 

 

確かに日本の来場者のマナーは海外のそれに比べれば大分マシかもしれない。

ただ、彼らのごみや環境問題に対しての意識もそれに比例しているかいわれれば、僕は首を傾げずにはいられない。

人がいない無人のごみ箱は分別もされていない場合が多いし、中にはペットボトルのラベルを剥がすのを嫌がる人間もいる。

きっとこういうのは集団心理が働くのだろう。

もし、これがきっちりかっちりした分別をやるような会場であれば、きっと周りの人間たちはそれに同調するはずだ。

だが、ごみの分別がルーズになった時、一気にそういう流れができてしまうに違いない。

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それに、ごみ箱の作りがいくらか混乱を招くデザインになっていることも、ごみ分別ができていないようにさせる原因の一端を担っているだろう。

フジロックのごみの分別はかなり大雑把で「燃えるごみ」と「燃えないごみ」がひとくくりにされてしまっている。多くの人たちはまずここで混乱するようだ。「え?一緒にしちゃっていいの?」と。

一応、ごみ箱には分別ごとの種類が書いた看板がかかっているのだが、その看板自体が見にくいのかもしれない。

僕も何も考えないでごみを捨てる、変なところに資源ごみを入れてしまうことがあったから。今年の話ね。

 

 

会場全体のごみ箱を片付けて、この日の僕たちの活動はおしまいとなった。

僕のフジロックはこれで終わったのだ。

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おつかれ〜〜〜!

 

 

 

 

 

最後、集合までの時間をフルに利用して、パッキングを済ませ、シャワーを浴び、食券を使って昼飯まで食べた。

駐車場にやってきたバスに乗り込み、今日の日当が入った封筒が渡されると、なんだかほっこりした気持ちになる。まぁ、お金もらうと誰だって嬉しいよね。

面白かったのが、スタッフの一人が二日酔いのため全然使い物にならなかったようで、日当が支払われなかった。仕事中は青白い顔をして死体のようになっていたらしい。彼も申し訳なさそうな顔をして背中を縮こめていた。

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時間になるとバスはゆっくりと走り出した。

横を見ると今年も軽トラックに乗ったコアスタッフたちがバスと並走して走りながら、こちらに手を振ってくれていた。

バスの中で「うわぁ〜〜!!」と嬉しそうな声が漏れるのが聞こえた。

初めてこれを見たときは、とても嬉しい気持ちになったのを覚えている。そしてそれはちょっと目減りしてしまったけれど、気持ち自体は変わらない。

誰かが誰かを見送るって、きっとそういうことなんだろうな。

 

 

 

 

たぶん、また来年も同じようにボランティアに参加するだろう。

絵も描き足りてないし、「来年こそは!」という気持ちもある。

 

きっと僕はまた夏が近づくとソワソワし始め。

神楽坂の倉庫で泊まり込みでごみ箱のペイントをし、

またこの地へやって来るのだろう。

 

 

 

 

 

僕はそう思いながら目を閉じた。

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ABOUTこの記事をかいた人

「旅する漫画家」を目指す、清水陽介(シミ:24歳)の世界一周ブログです。