打ち上げ。焼肉。フジロック

 

 

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「東京に帰って来た」

 

 

なんて気持ちは全然なく、

「あぁ、これでいよいよフジロックも終わりだな」という寂しい気持ちを僕は感じていた。

ナイト班のメンバーは昨年から、
フジロックのすぐ後に“打ち上げ”をやっているらしく、
僕も今年は参加してみることにした。

内容は去年と同様に焼肉に行くらしい

 

 

 

 

 

僕はそこまで焼肉に行きたいとは思わなかった。

フジロックで飲食店をかたっぱしから攻めていたこともあって(たぶん8,000円分くらいは食べていたと思う)腹は全く減っていないわけだし、

そこには確執のあるTの姿があったし(ごめん笑)、

焼肉参加メンバーもあまり絡みのないヤツらが多かったからだ(というか、僕はけっこう一人になるので、他のメンバーと絡みが少ないのは当然)

 

それでも僕が焼肉に参加しようと思ったのは、

去年の打ち上げがクレイジーだったからだ

 

 

どこの店に行くかは、フジロック最終日に先に帰ったクロちゃんが場所を抑えてくれていた。サンクス!

クロちゃんは律儀にも僕たちのことを新宿まで迎えに来てくれたのだが、ボランティア活動中の彼の姿しかしらない僕は、ワイシャツとパンツ、そして手提げカバンというサラリーマンスタイルの彼を見て「誰だ??!」と思ってしまった。

サラリーマンの彼はそれほどまでの変容ぶりを見せていた。

 

僕たちはクロちゃんの後に続いて新宿の繁華街の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、仕事中マジ眠くて死にそうだったよ」

 

 

歩いている途中クロちゃんは言う。

あれだけ濃密な4日間を過ごしたのだ。日本に帰って来てすぐ仕事に身が入らないのも頷ける。気持ちの何割かは苗場に置いてきてしまっているの僕も同じだ。

 

僕の中では苗場と新宿で世界観がズレてしまっているのがわかった。街を歩く人々の姿が現実味を伴って認識できない。

そこを行き交う人々のほとんどはフォーマルな会社勤めに適した格好をし、あるいはそんなサラリーマンたちに狙いを絞った飲食店のユニフォームに身を包んだ人間か、もしくはキャバクラのキャッチか、いかがわしい店か何かに連れて行こうとする人間かといった具合だった。

誰もバックパックなんて背負ってないし、誰もアウトドアウェアに身を包んではいない。ここには突然の雨も降らなければ、ぬかるむ地面もない。川のせせらぎすら聞こえない。一体ここはどこなんだろう?

 

 

 

「とうとうバビロンに帰ってきちまったんだな..」

と誰かが漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焼肉屋は繁華街の中程にあった。

たぶん歌舞伎町。え?歌舞伎町?

僕は歌舞伎町には縁がない人間なので、新宿の土地勘がわからない。誰かの後にトコトコついていくだけだ。

今日が平日だっていうのに、歌舞伎町は賑わいを見せていた。ネオンが煌々と灯り、人々は各々に好き勝手なことを喚き散らしている。日本人ではないいかつい男たちの姿もよく見かける。

そんな歌舞伎町は「カオス」という言葉が似合う場所だった。

 

 

 

 

打ち上げに参加するメンバーは僕を含め10人以上がそこにはいた

人数の変動もあったので店には入れない可能性もあったが、席は確保することができた。僕たちはバックパックとともに狭い店内に自分たちを押し込むようにして進んでいった。

僕たちに用意された席は一番奥にあった。そこであればほかの客たちに迷惑がかからないであろうという店側の判断があったのかもしれない。

 

 

用意された部屋は荷物と共に収まるのには狭かった。

仕方がないので、僕たちは通路を挟んで部屋を分けることにした。店の備品置き場にバックパックを詰め込んだが、それも席に収まると窮屈な感じがした。これでは打ち上げの楽しさは30%ほどカットされてしまうだろう。まぁ、大人数で飲むと大体そうなるけどね。

僕は目の前に置いてあったおしぼりで手を拭いた。

 

 

 

 

 

 

 

『どうして僕は焼肉に来ちまったんだろうな?』

 

 

と僕は思った。

せっかくバイト日でお金がもらえたのに、どうしてみんなはそれをすぐに使ってしまうのだろう?

みんなお金に対してガードがゆるすぎやしないか?

楽しければいいのだろうか?

 

 

僕にとって、お金は酒を飲むために優先して使うものではない

家賃があり、生きるための食費があり、交通費があり、そして自分が漫画を描いていくための大事な資金でもある。(もちろんちょっとした娯楽費もある)

けど、それは大学生の時から比べれば(あの時もほとんどお金をもってなかったけど)大分質素になった。

 

「金がない」とは言いたくないが、余分な金がないのは確かだ。

だから僕がこのような場に来るにはそれなりの覚悟が要る。

よっぽどその場の楽しさが保証されていないと、僕は「飲み」に対してお金を払うことをしぶる。それならさっさと家に帰って絵を描いた方がいい。

 

 

今回、なぜそんな僕がナイト班の打ち上げに参加しようと思ったのかといえば、先にも書いたように、去年の打ち上げがめちゃくちゃ楽しそうだったからだ。

去年の打ち上げに参加した何人かが当時の様子を僕に語ったり、その時の写真や動画を見せてくれたりした。その場は間違いなく楽しそうだった。

 

動画の中では酔っ払ったヤツが大声で何かを叫んでいる。

みんなでオアシスの”Don’t look back in anger”を大合唱する映像を見た時、僕も一緒に歌いたい気分にさせられてしまっていた。

そういえば焼肉なんてここ久しく行ってない。タンパク質摂取しなきゃ。

話によると、あまりに騒ぎ立てるものだから、当時の参加者は何度も店員に注意を受けたが、それでも懲りずに大騒ぎを続けたらしい。出入り禁止になりかねい態度だったそうだ。そんなことが許されてしまうのはこの店がチェーン店であり、場所柄、きっと僕たち以外にも同じように肉を喰らいながら騒ぐ輩がたくさん要るからなんだろう。いちいち出禁にしていては拉致があかないのだと思う。

 

去年の打ち上げの話を聞くたびに、僕の胸は踊った。

なんだかフジロックが終わった後に別のイベントが行われるのだという気にすらなった。

 

 

 

 

 

だが、蓋を開けてみると当時のメンバーの半分はこの打ち上げには参加していなかった。

狭い部屋にぎゅうぎゅうに押し込められているせいもあるのか、参加メンバーにも覇気がない。みな疲れたそうな顔をしている。

 

 

まとめ役の人間もおらず、誰かが「そろそろなにかオーダーしない?」と言った。

別の誰かが備え付きの分厚いタブレットを使って適当に肉をオーダーしていった。

誰かが「私肉食べられないからサラダ!」と言った(なぜ来た??!!)。

 

運ばれて来た肉をトングで数枚とり、火が通った鉄板の上に置き、僕はジョッキのビールをちびちびと飲んだ。

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波乱の予兆は

「バンドマンの女」が店内に流れ始めだした頃に感じた。

というか、1時間もすれば僕はいい感じに酔っ払ってきて、なんだか楽しい気分になっていた。

ちらほら他のメンバーも顔を出し始め、店内には狂気のボルテージのようなものが徐々に溜まっていった。

 

その頃僕は別室でじゅんのすけが見せてくるクリトリック・リスの「バンドマンの女」のミュージックビデオを見てゲラゲラと笑っていた。

 

 

「この歌詞のバンドマンの男もすげークソなんすけど、
いや、女の方もクソだとは思いますよ?

でもね、この男、超いいこと言うんですよ。

『いつか芦屋に家建てたる!』とか。

 

うわぁ..!!!
それ、おれみたいじゃん!」

 

 

 

バーで働いていたこともあるじゅんのすけのトークスキルは超一流だった。

話に興味を持たせ、内容を30%ばかり盛り、引用やタメをうまい具合に入れて話を進めて行く。まるでラジオでも聞いているみたいにその場にいた僕たちは彼の話を楽しんでいた。

言うまでもなく、じゅんのすけは去年の打ち上げも参加していたメンバーの一人だった。

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じゅんのすけたちの登場だけでもやんややんやと賑やかになっていなのに

某国際大学の大学生たちが殴り込んで来た時は会場の熱量は一気に上がった。

一応彼らもフジロックで日中のボランティア活動をしていたのだ。

 

 

僕にとってこの日一番面白かったのはルイのマシンガントークだった。

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というか、僕はこんなに頭の良いヤツには久しぶりにあった。

フランス人のハーフというルイは祖父(フランス人)が有名な精神学者であるらしく、考えていることが哲学的でスピリチュアルでそしてアツかった。

何言ってるのか全然理解できないのに聞いていると楽しい気持ちになってしまう。

いや、実際、ルイの話の一部はとても面白かったのだ。

 

 

 

「僕に彼女がいるんですよ。

彼女、別に頭いいわけじゃ、決してないんですけど、すっげー僕のこと愛してくれるんですね。

 

『わたし、もし、あなたより先に死んじゃったとしても、蚊に生まれ変わってあなたを刺しにくるからね』

そう言ってくれるんですよ。

 

僕、、、、それ聞いて一晩じゅう泣いちゃいましたよ」

 

 

 

 

というルイの目には嘘ではなく本当に涙が浮かんでいた。

僕もアルコールでけっこう酔っ払ってはいたのだが、ルイの方もいい感じに酔っ払っていたのだ。

そんなロマンチック(?)な話が語られる一歩で、隣の部屋からは「バンドマンの女」のサビを誰かが歌う声が聞こえる。

 

 

まったく どうなってんだよ?楽しいじゃねえか?

そうだ。

僕に必要なのは、くだらないことをあれこれ考えるより、酒を飲んでうまいメシを食い、そして語らうことだったのだ。

なかなかリミッターがはずれないために、損得勘定みたいなことをしちゃうんだけどね。それが間違っているとは思わないけど。

 

この日、僕たちは例年通りオアシスの曲を熱唱し、そして店員から何度も注意を受けた。

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プライバシー保護の為、顔の一部にはモザイクが入っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

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店を出た頃には

僕は立って歩くのが精一杯なほどに酔っ払ってしまっていた。

すでに終電はなし。

酔っ払った国際大学生たちは、知らない外国人に絡んでいる。

酔っ払いどもが繰り広げるのわけのわからない光景が僕の目の前に広がっていた。

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一方、僕ができることといえば、動けるヤツの後に金魚のフンのようにくっついて歩き、自分の身を守ることしかできなかった。

僕にできる行動は以下のふたつだ。

 

 

A:仲間の姿を目で追う

B:それについて行く

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僕はアルコールの過剰摂取で記憶が飛ぶような人間ではない。

だが、体が動かない。理性がなんとか自分の現状を把握するのに努めようとして要る。必死で眠気を堪えるため、涙が滲む。

脳みそに急遽インプットされた命令はこうだ。

 

 

 

 

「自分の身を守るために、知り合いについてけ」

 

 

 

 

別に歌舞伎町で襲われる心配がなかったとしても、荷物がなくなったりだとか、朝起きたらゴミ捨て場がベッドになっていただなんてことが起こりかねない。

醜態はできる限りさらしたくない(今でも醜態を晒しているわけだけど)

もし、そのような場合になった時の、翌日の自分へのダメージと自己嫌悪のレベルは大体想像できる。イメージできるからこそ、そのような事態は避けなければならない。

自分の酔いがわずかながらに醒めていくのを確認し、そこから逆算してあとどれくらい時間が経てば動けるようになるのかを計算する。

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このコもそーとーキマっちゃってたけどね。

 

 

 

 

 

 

「シミさん、水飲みます?」

 

 

 

 

ルイがペットボトルの水を買って来てくれた。

こういう時に水が差し伸べられることはマジで助かる。

僕がお金を払おうとすると、「シミさん、大丈夫です!それより、荷物持ちますよ?おれ、体強いですから!」とルイは率先して僕のバックパックを持ってくれた。

 

 

モテる!!!

 

僕はありがたく水を頂戴した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我々

酔っ払い十数名が向かった先は新宿2番街にある大きな広場だった

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そこの一角に荷物を下ろすと、威勢のいいヤツらはウィスキーなどを瓶からラッパ飲みし、大声を出してそこらじゅうを走り周っていた。狂っているとしか言いようがない!

ダウンした奴らはコンクリートの地面の上でスヤスヤと健やかな寝息をたてていた。

僕はなんとか体制を整え、地面に座って、頭を不自然な方向に傾けながら、そんな光景を眺めていた。

その夜が、僕が今まで生きてきた中で最高に狂った夜だったのは間違い無いだろう。

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節度を持って飲み、それなりに騒ぎ、時には吐いてきた下戸の僕にとって、こんな飲みは初めてだった。

そう思わせてくれるのは一瞬一瞬を燃えるように生きる大学生たちの姿だった。

自分の身が擦り切れるような飲み方をしたって、彼らは厭わない。

そう。彼ら(彼女たち)は後のことなんて全く考えてないのだ。そして今を全力で遊んでいる。

そんな彼が英語がペラペラで頭がいいのだから関心せずにはいられない。

なんだか日本人的な飲み方じゃないな。さすが有名な国際大学に通い、常日頃からいろんな国や人種のヤツらと接している人間は違うよな。ぶっとんでる。

酒を飲んだ彼らの騒ぎっぷりは頭のねじがはずれてちゃってると言ってもいい。

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ラッコみたい。

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死屍累々。

 

 

 

なんとか動けるようになると、僕はディジュリドゥを響き渡らせた。

酔っ払って要ると口の筋肉が滑らかに動く。

そして、酔っているからこそのグルーヴというものがそこにはある。

 

 

狂った飲みは明け方まで続き、

空が白くなりだし、電車が動き始めたころになると、我々は駅で別れた。

 

 

フジロックを最後まで楽しんだのだ。

毎日がこんな感じだったらたまらないけど、

一年に一回くらいはこんな狂った日があってもいいと、その時僕は思った。

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「マジで来年もボランティアやってやっからな!」冗談抜きで彼女はそう言っていた。

 

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