▷ペルー、リマ
砂漠を抜けると街が始まり、街は徐々にバスを飲み込んでいった。
どこかよくわからないターミナルでおろされた。すぐにマップアプリを開いたが現在地を特定するのに時間がかかった。
その間に僕はトイレに行こうと思ったのだが、一度(っていうかこの旅で三度も)盗難に遭っているので、バックパックごとトイレに入った。それでも個室のドアがしまらなかったので、入り口の集金係の女性にバックパックを見ていてもらった。
一人旅をしていると『あぁ、ここに荷物を見ていてくれる人がいてくれたらなぁと思う南米に至っては特に。
宿まではローカルバスで行くことにした。宿までの行き方はホームページに丁寧に書かれていたので、あとは目当てのバスがどこに来るのか訊きまくればいいだけだった。
バスターミナルの外に出るとスモッグのような雲が空を覆っていた。まるで2月ごろのネパールのようだった。ごちゃごちゃして、少し砂っぽい感じはまさにイメージしていた南米だった。パスポートを失ったってのに僕は旅情を感じていた。

面白かったのがミニバスだ。ミニバスはスピードを落とさず突っ込んでくる。集金係係は行き先を書いたプレートを持っちながら、同時にその行き先も叫んでいることだった。
それならフロントガラス内側にもっと大きなのを置いておけばいいし、プレートなんて持たなくても行き先を叫べばこと足りると思うのは僕だけだろうか?
まぁ、そんなこと南米で気にかけるヤツなんて一人もいないんだろう。

首尾よくバスに乗り込むことはできたが、降りる場所を間違えてしまった。僕は目印を「Teatl Municipal」にしていたのだが、このシアターらしき施設は町中にチラホラ存在していたのだ。
警官に道を尋ねるとスマートフォンで住所を検索し、どこに宿があるのかを割り出してくれた。再びバスに乗り、僕は宿へと向かった。
宿のあるらしき場所にはでかでかと「SAUNA TOMODACHI」と書かれた看板があり、どう見てもそこに宿があるとは思えなかった。
スタッフらしきペルー人たちが手招くので施設に入ってみると、奥に大きな50メートルプールがあった。その脇にある階段を登り二階に宿の管理人室があった。
「お宿 桜子」
というのが、宿の名前だ。

名前の通り日本人宿で、僕はここに救いを求めに来たのだ。
オーナーのnasrukiさんは優しい方で僕は安心した。本気で僕のことを心配してくれた。
ドミトリーに荷物を置くと、もう何もする気が起きなくなってしまった。もう、今までのようにブログも書けない。
それはちょっと残念なことのように思えるが、自分が今この瞬間何をしてもいいんだという自由もそこには存在していた。
SNSで思いっきり時間をつぶしたり、ギターを弾いで大声で歌ったりした。もちろん漫画も描いた。そうだ。僕はまだ漫画を描く道具を失っていない。
「桜子」には僕以外に5人の宿泊客がいたが、みな一様にいい方たちだった。それも僕にとっては救いだった。
なんとかなるさ。なんとかなるよ。きっと。そう信じて今を生きよう。
焦ったって何も進まないもの。
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