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「雑貨売れるといいね」
まおの運転する車の隣に座って僕はそう言った。
「もしかしたら売れないかもね」なんて冗談めかしてまおは言った。
「旅祭」
に僕たちの遊び仲間チーム「Drift」が出店するのにあたって僕には密かなテーマがあった。
「次の遊びにつながるような一日にする」
ことだ。
フェスが楽しいのはあたりまえ。一日が終わって「あ〜!楽しかった〜!」なんて小学一年生でも言えそうな感想で締めくくるつもりはない。
Driftの出店は僕にとって「真剣な遊び」だった。
会場のある
お台場「潮風公園」は想像していたよりも小さなものだった。フジロックでいうとピラミッドガーデンと同じくらいか、それより少し大きいくらいだ。
会場に着くと自分たちの出店スペースを探した。
僕たちが店を出すエリアは前が開けており、小さなステージに面した場所だった。
与えられたのは3メートル×3メートルのスペース。
「よし」
「ここにしよう♪」
車から雑貨や備品を運び出すと、まずはテントを立てた。
これは前回出店した目黒のクリエイターズ・マーケットの反省を活かしたのだ。前回は日差しのことなんて考えていなかったもんだからテントすらなかった。
出店中の日差しはなかなかにこたえる。夏場は特に。
他の出店者のほとんどが自前のテントを用意していた。
テントを立てると次にとりかかったのは装飾。
これはお店の世界観を伝えるのに一番大事な部分なのだが、正直にいうと僕はあまりこの装飾のセンスがない。
反対にDriftの仲間たちはいろんなフェスで活動してきただけあって、僕が何か指示することもなくテキパキとインプロビゼーション(即興)で雑貨を配置していった。
僕たちDriftには上下関係なんてものは存在しない。
世界を放浪して雑貨を仕入れてきたのは僕だけど、日本にいる仲間たちからも出資はしてもらったし、偉そうに振る舞うつもりはない。
みんな遊んでいるのだ。
やりたいからやる。楽しいからやるのだ。
今回参加するメンバーはシミ、まお、るりこ、いおりの合計4人。
ちなみに僕以外のメンバーはちゃんと会社勤めをしている。みんなこの日を休日にあててやってきてくれたのだ。サンクス!
ちょっと話はそれるけど、僕とまおは前日に2時間も寝ていなかった。
まおにいたっては前日の仕事終わりから、そのまま僕の家にやってきて雑貨を車に積み込み、会場の近くの住んでいたDriftの他の仲間であるふうたの家に泊まったのだ。
前日からけっこうなハードワークだった。それなのにほとんど眠くなかったのはフェスに出店することに対してアドレナリンが出ていたからだろう。
搬入から会場まで僕たちに与えられた時間は約2時間あった。
それまでには立派なブースができあがっていた。
「どんっ!」
今回一番大きな役割を果たしたのはなんといってもまおの作ってきたバナー(旗)だろう。
縄の中にパッチワークが施され、大きな文字で「Drift」と描かれている。横のお店と比べても目立っていたことは間違いない。
肝心の雑貨もいい感じにディスプレイすることができた。統一感のないチャンプルな感じが逆にお店のカラーを引き立てている。
できたばかりの店を見たとき、僕は自分たちがこれを作ったとは思えなかった。
それほどまでにできのいいブースだったのだ。
なんたってこれが二回目の出店なんだぜ?どんだけクオリティ上がってるの?って感じだ。
「自画自賛!」
旅祭がはじまってからは、ほとんど途切れなくお客さんたちが店に足を運んでくれた。
うお!モロッコのデカ布が売れた!それめっちゃいいやつ!タイダイだよ!
みんな世界各国の雑貨に興味深々だし、僕の話を面白おかしく聞いてくれる。お客さんとの距離も近い。なんだかみんな友達みたいに思えた。
考えてみたらそれもそのはず。
なんてったってここは「旅祭」なのだ。
旅に関心がある人がやってきて当然じゃないか。
マラウィで仕入れた布。何に使うのかなー?
スタッフの子たちもお買い物!
午前中
は曇りだったが、昼前から空は晴れてきてあっという間に真夏の日差しになった。
いおりとるりこは日陰で主に接客と会計担当。まおはせっせとディスプレイの試行錯誤を重ねていた。それで僕は外でお客さん相手に似顔絵を描くってな具合だ。
暑さでダウン..。
ローテーションで時々会場を見てまわったが、ガッツり遊ぶなんことはなかった。
“Caravan”と”水曜のカンパネラ”のライブを見たかったけれど、出店の方が忙しくて時間もとれなかった。
いや、店をやっている時間が楽しすぎた♪
僕には個人的に今日の出店でやりたいことがあった。
それは自分の漫画家としての宣伝だ。
だが、こちらは準備不足感が否めなかった。
以前僕の帰国に合わせてまおたちが作ってくれた冊子になった僕の漫画とクリアファイルに入れた生原稿のみ。名刺だって作っていない。一応申し訳程度に似顔絵を描く告知も出しておいた。
っていうか、お店に遊びにきてくれた人って、僕が漫画家だったことも知らなかったんじゃないかな?
少し時間あると僕は手を動かしていた。
そうこうしている間にお客さんの一人が似顔絵のオーダーをくれた。そしてそこからがいいペースだった。
まおくんの粋な計らいで、客寄せのパフォーマンスとして外の椅子に座って似顔絵を書き出したら、台湾でやったバスキング並みに次から次へとオーダーが入るのにも驚いた。
似顔絵を描き始めたらさすがに接客にまでは手が回らない。
ベストスマイル!
こういうときに仲間がいてくれるのには本当に助けられた。まるでサッカーみたいなチームスポーツをやっているような感覚だ。
みんな雑貨をどこで仕入れたか背景となるストーリーを知っているし、ブログもだいたい読んでくれていた。雑貨ひとつひとつに仕入れた国がかかれた値札を貼り付けているので、それも円滑なコミュニケーションに一役買ってくれたみたいだ。
このディスプレイ。好き。
旅仲間たちも
旅祭の会場で見つけた。
エジプトのダハブで出会ったダイキさんとノリコさんご夫婦。
僕の兄貴的存在であるマサトさんの姿もそこにはあった。
「ぶ、ブログやっている人ですよね!」「はい♪そうですけど」「わ、わたしブログ読んでました!最近熊本行ってましたよね!」そんな感じでこの日10人以上に声をかけられたらしい。まじすげーな。マサトさん。
一緒にいた「竹灯り」のちかおさんと繋がれたのは僕にとってデカかったかもしれない。
もしかしたら仕事がもらえるかも。
いや、仕事くださいっっ(切実に)!!!
気づいたときには14時を回っていた。
『あと6時間も旅祭を楽しめるのか』と思っていたら、イベントが終わるまではあっという間だった。やっぱり楽しいことをしていると時間が経つのは早い。
いくつかの店にはライトが灯った。僕たちは電源(有料)を借りていなかったので、代わりにキャンドルを灯したり、ミラーボールにライトを当てたりして店を照らした。
客足が落ち着いたところで、予定より少し早めに撤収に入った。売り上げも前回の出店よりもよかった。
出店料やチケット代、当日車を停めていた駐車場代。その他の経費を抜くと、差額はほとんど残らないようなものだった。
もちろん出店者の中には黒字で帰る者がたくさんいることだろう。それがプロだ。赤字にならないように利益をトントンにするのがやっとの出店者もいるのかもしれない。宣伝目的で「旅祭」のような大きなイベントに出店する人たちもいるのだろう。
だけど僕たちが「旅する雑貨屋 Drift」を通して「旅祭」から得たのは何もお金だけじゃない。僕たちはそこからいろいろなことをここから学ぶことができたのだ。
実際に店をやってみて、出店者がいかに客の見えないところで努力しているのかがわかった。じゃなかったらすぐに店なんてつぶれてしまう。
そして今回僕が一番体感できたのは
遊びの質が上がっていたことだ。
雑貨を持ち帰ってくれたお客さんの顔を全てみることができたわけじゃないけど、それでもみんなが楽しそうにしてくれた。中には「普段どこで店を出しているんですか?」と訊いてくる人もいた。
それだけ僕たちの作ったDriftは存在感を放っているように思えた。
隣で出店していた曼荼羅(まんだら)を売るお姉さんからは「装飾がよかったわね」とお褒めの言葉をいただいた。
きっと僕一人だったら、どこかのちっぽけなフリーマーケットでレジャーシートの上に雑貨を並べて売るので精一杯だったろう。
ここまで雑貨ひとつひとつにストーリーをつけて、まるで友人に贈り物をするように雑貨をたくさんのひとに届けることができたのは、
そう。僕だけの力じゃない。
仲間がいたからできたことなのだ。
ここにいるだけのメンバーだけじゃない。事前に手伝ってくれたDriftの他のメンバーのトビーやふうたのサポートもある。
遠いどこか小さな国で、どこかのおばちゃんがせっせと作った手縫いの人形が旅する漫画家の僕に買われた。
そして今日、僕たちが作ったDriftを通して、お客さんの一人へと渡って行った。
きっとこにはいくつもストーリーが詰め込まれているに違いない。そして、またこれから新しいストーリーが紡がれていくのだろう。
“Story drift to you”
(ストーリーがあなたのもとへ流れ着く)
ドリフト・ウッド(流木)が海を漂い、どこかの砂浜に辿り着くように。
ポーチのお買い上げ!ありがとう〜!
ご来店いただいたみなさま、「旅祭」当日はほんとうにありがとうございました。もちろん似顔絵を描かせてくれた方々にも感謝の気持ちでいっぱいです!
またどこかでお会いしましょう!
最後に
僕の漫画が買えるのはこちらです♪
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