文化祭二日前に
それも僕のバイトが終わって
いきつけのコインンドリーでWiFiをいじくっている時に、
ようやく、最終的な文化祭の見取り図がマサトさんから送られてきた。
入稿日は明日だという。
できたら翌朝10時までにデータを送ってほしいとクライアントは言うのだ。
つまりあと16時間以内に見取り図を仕上げなければならない。
もちろん僕だって寝る時間が必要だし、もちろん翌日も朝8時半からバイトだ。
ってことはーーーーー、、
寝れなくない???
いや、『時間が足りないです!』とか、そのようににいいわけしている暇などないのだ。
っていうか、入場無料、出店料無料の思いやり/優しさだけの循環で成り立たせようとしているイベントだからこそ、僕ができることは会場の見取り図を描くことしかできない。
たかが見取り図、されど見取り図。
こうなったら思いっきり「モード」に入るしかない。
なんのモードかっていうと、引きこもりモードだ。
「スイッチ」といってもいいかもしれないけど、
とりあえず、意識をひとつの作業に集中させなければならない。そう。レーザービームのように。
見取り図はこの前の打ち合わせの時にある程度仕上げた。あとは何点か修正するだけだ。
と思ったら、まさかの紙に落ちないインク汚れが付着。
あぁ!しまった!下書きを他の原稿用紙と一緒にしてたんだった!ケースの中で紙同士が擦れて汚れがついちゃったのだ!このクソ野郎!
そんなわけでもういっぺん見取り図を最初っから下書きしなおす始末。
そして出来あがった下書きを写真に撮ってそのままコインランドリーへ戻る。
なぜわざわざコインランドリーへ行かなくちゃならないのかっていうと、そこで無料のWiFiが手に入るから。ちなみに営業時間は朝6時から夜23時まで☆
この時点で夜の10時。
修正箇所はその場でFacebookのメッセンジャーの通話でやりとりして、ペン入れ許可をもらう。さぁ、こっからが勝負だぞ!
すぐさま家に戻り、そこからペン入れ、今回は製図用のペンも多様。
最近筆に迷いがなくなってきた。これはあれだ。居合道とかと同じなんじゃないかなと思う。話が長くなりそうなので、この辺で切り上げる。
一時間ちょっとでペン入れを終わらせ、今度は着色(カラー)
本来であれば、数点色を塗ればいいという話になっていたものの、
いざ色を塗ってみると、やっぱり全体的に、せめてキャラクターだけでも色を塗らないとダメだということに気づく。
ここで手を抜いたら、どうなるかはわかってる。
たぶん当日配布された自分のイラストを見て後悔するに決まっているのだ。『あぁ、なんでおれはもっとしっかり描かなかったのか?」って。
ここからは自己満足の世界だ。やるしかない。
カラーほど、時間がかかって孤独な作業はない。
たとえイラストそのものが小さな紙であったとしても、塗る箇所が多ければその分時間がかかる。色を選んで塗って、また別の色を選ぶ。その動作の繰り返し。
こういう時によく聞くのが町山智浩さんの映画評論だ。あれすっげー面白い。
そうこうしているうちに今日の作業時間が7時間を突破した。
僕は効率を上げるためにストップウォッチで作業時間の時間を計っているのだ。
ここまでくると、眠気もどこかにいってしまう。
そして、ようやくイラストが完成した。
短い時間、そして納期で仕上げた、その時点での僕のベストだった。
本来こういうものはPhotoshopとかIllustratorが使える人がやったほうがいいんじゃないかって思う時がよくある。そして自分にそのスキルがないことを悔やむ時もそれ以上にある。
でも、こうして自分に依頼してくれる人がいることは事実だ。
僕はそれに応えなければならない。
どこかのブロガーさんが言っていたけれど、
スキルがあることと、仕事を受注することは違うのだ。
どんなに絵が上手くかけてもそれが仕事につながらなければ意味がない。
むしろ仕事として他の誰かとつながり、自分の作品に価値を見出してもらうほうがよっぽどいい。それが漫画家を名乗る僕が持つことのできる社会との接点だ。
僕がこれからもっとやらなければいけないことは、自分の作品を発表し、それを「価値のあるもの」として誰かに届けることなのだ。
下手でもいい。現時点では満足できなくてもいい。その時のベストを尽くせ。スキルはその中で磨いていけ。
でも今回は特殊ケース。いや、絶対また他のことにつながるよ。短期的な視野でみるな。長いスパンで未来を見据えろ。
イラストができると、そのままセブンイレブンへGO!
僕の持っているスキャナーだと色味がはっきし出ないのだ。くそう。
深夜4時前でもコンビニが営業しているのはすごいことだと思う。この狂った効率優先の文化に僕は頭が上がらないぜ。
コンビニではおばちゃんたちが忙しそうに朝の品出しをしていた。
30円でJPEGでスキャンして、持ってきたパソコンをスキャナーの上に広げる。USBに保存したデータをデスクトップに保存して、マサトさんにメールで送付。
「はぁ..、終わった」
ささやかな自分へのご褒美としてメンチカツバーガーとカレーパンを買った。この際ケミカルとか言ってらんねえ。てか、美味いよ。
こんな夜遅く(?)にパンを買う僕におばちゃんが営業スマイル。
僕はー、
もう落ちそうだったよ。
空がだんだん明るくなっていく。
もうあと20時間もすれば5月13日がやってくるのだ。
僕は見取り図が印刷されるところをぼんやりと想像した。
今見ると、もっかい描きなおしたい気持ちがとめどない..。いつものこったね。
そしてーーーーー、
当日まさかの見取り図がネット配信になるとは
その時の僕には思いもよらなかった..。
や..、やあ、まぁ、描いた。その事実は揺るがないよっ!
コメントを残す