「あの時確かに音を浴びた」

世界一周791日目(8/29)

 

 

今宵は勝負!

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グアテマラのサンペドロ・ラ・ラグーナで行われると言う
「フルムーン・パーティ」

僕はそれに参加するために、
連日グダグダ過ごして時間をつぶしてきたのだ!

 

 

滞在6日目。宿代は追加で三日分払っておいた。

 

 

 

 

8時に起きたのはいいが、
なかなかベッドの上から抜け出すことができなかった。

支給されたブランケットが微妙に薄く、
深夜になると寒さで目を覚ますのだ。

ようやく明るくなって温かくなってきた時間帯が
一番寝やすい時間帯だ。

 

 

サブバッグを持って外に出ると、
日本人の女性とグアテマラ人の旦那さんが
ケーキとこんぶ茶を売っているのを見つけた。

どちらも眼鏡をかけており、顔の印象はどちらも似ていた。

値段はそれぞれ5ケツァール。

カフェに行く前だったが、
こういう機会があると僕は積極的に財布の紐をゆるめてしまう。

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この手作り感がいいですなぁ♪

 

 

 

お二人はここに8年くらい住んでいるようだった。
その隣りでは白髪の別の日本人の女性が
マヤっぽいデザインの服や布を売っていた。

僕が今夜フルムーン・パーティに行くのだと話すと、
「楽しんできてね!」と
何かを舌の上に乗せるようなしぐさをした。

 

 

 

カフェに行く前に、
昨日も飼ったパウンドケーキを今日も買い求めた。

おばちゃんも僕の顔を覚えていたようで、
わざわざトゥクトゥクに乗ってケーキを
取りに戻ってくれたくらいだった。

今日はシナモンロールとバナナ味のパウンドケーキ。
ふたつで15ケツァール。
やっぱ安くなると買っちゃうよね♪

 

 

 

 

そんのままカフェに向かってもよかったのだが、
僕はヤキトリ屋にも足を運んだ。

中では店主がオープンの準備をしていた。
開店までまだ時間があったので、
パウンドケーキをかじりながら時間をつぶした。

 

 

このヤキトリ屋が営業しているのは火曜日から土曜日。
明日(日曜)、明後日(月曜)は店はやっていない。

だからここで食べるのは今日がベストなのだ。

開店を待って注文したのは「親子丼」だ。

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あ〜〜〜…美味ぇ。

 

 

食べているとナッツ売りの子供たちが
売り物のナッツと交換で串焼きにありついていた。

店主は前回と同じように困ったような笑顔を浮かべながら
地元の子供たちの相手をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

腹を

膨らませてカフェに向かった。

 

 

今日はすぐに似顔絵のリクエストがかかった。
カフェのオーナーらしきお父さんとその娘さんのふたりだ。

シェラで買ったばかりサインペンの扱いにも慣れてきた。

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なんだか不服そうな顔してますけど、けっこう喜んでました(笑)

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まぁ、描く前に変顔したからそっちで描いたんすけど。

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この子は描く時にわざわざポニーテールほどいてた。おませさんめ!

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髪が斜線なのはベタの節約。ごめんね〜〜。

 

 

 

似顔絵が完成すると
お父さんは店にわざわざ貼り出してくれたのが嬉しかった。

このように描いた似顔絵の行く末を見れると
描いた甲斐があるように思える。

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いつものように漫画と日記を書いた。

今日はコーヒー農園見学のツアー客たちで店内が混んでいたため、
様子を見ながらテーブル席を使わざる得なかった。

作業もそこまではかどらず19時には宿に引き上げることにした。

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祭り

の始まる前はどこかソワソワする。

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大抵の場合、オープンぴったりの時間に行って、
盛り上がるまで居心地の悪さを覚えるのだ。

知り合いや友達がいるならいいが、今回は一人だ。
それならちょっと間を置いて会場に行った方がいい。

 

 

昨日手に入れたフライヤーには
「女子は12時までに来れば入場無料」と書かれていた。
パーティを盛り上げる撒き餌みたいなものだろう。

会場行きのボートが出発するのは21時からだが、
ボートも何本か出ているんだろう。

そう考えた僕は22時にボート乗り場へ行くことにした。

 

 

会場行きのボートはサンディエゴ・ドッグという場所から出ていたのだが、
どこがサンディエゴ・ドッグなのか分からなかった。

バー「サブライム」がある方だとばかり思っていたので、
そちらのデッキに足を運んだのだが、まさかの逆方向。
ここで思わぬタイムロスをすることになった。
(そう言ってもせいぜい20分くらいなのだが)

 

 

サンディエゴ・ドッグは僕が泊まっている宿のすぐ近くにある
寂れたボート乗り場だった。

他にもボート待ちの客がいると思ったら、
そこには観光客らしき人間は一人もいなかった。

地元の若者が寒そうに実を寄せ合ってモゴモゴと喋っているだけだった。

あれ?パーティは?

 

 

片言のスペイン語を駆使して、
いつ会場行きのボートが出るのか尋ねたのが、
いまいち話がはっきりしない。

「モーメント(あとちょっとさ)」と言うので待っていたのだが、
彼らは僕のことなんか放っぽいて
別々の目的地へとボートを走らせて行った。

一人残った僕は寂しく桟橋の上で大声で唄うくらいしかやることがなかった。
こういいう時に限って声の調子は絶好調だ。
だけど、今日は唄う時じゃないんだよ!

 

結局分かったのは、
船は深夜1時にならないとやって来ないということだった。

湖から吹き付けて来る風は肌寒かった。

ここに待機していても仕方がないので、僕は一旦宿に戻ることにした。

会場が盛り上がっているのを想像すると、
自分がここにいるのが馬鹿らしく思えた。

 

 

 

会場には400ケツァール(6,148yen)分の紙幣しか
持って行かないことにした。iPhoneは失くすといけないのでナシ!

視力が低い僕は眼鏡をかけていこうと思ったのだが、
踊っている最中に落として割ったりしたら大変だと、
すずらんテープをうまいこと切って結んで即席のメガネホルダーを作った。
ダサさは気にしない!

 

 

 

やっと1時15分前になり、僕は再び桟橋で船を待った。

向こうの方から陽気な声のするボートがやってきた。
そこにはアルゼンチン人女子二人、男一人と伊達男のメキシコ人、
オーストラリア人女子一人が乗っていた。

僕がソワソワしているのを見てオーストラリア人は
「大丈夫パーティは始まったばかりだから」と優しく諭した。

みな適度に酒を飲んでいるようで楽しそうだったが、
僕は前の方で寒さに震えながらTシャツの中に
すっぽりと腕を収納してずっと進行方向を見ていた。

 

 

 

 

15分くらいボートを走らせたところに会場があった。

入り江に隠れるようにしてひっそり立った小さな建物。
そこから音が漏れている。

もうそこが既に会場だった。
そこから山を登るわけでもないし、
100人以上参加者がいるようには到底思えなかった。

タカくんから聞いていた話と違う。会場が変わったのだろうか?

 

 

ボートを降りてすぐに入場料の50ケツァール(788yen)が徴収され、
腕にはオレンジ色のバンドが巻かれた。

船着き場から少し階段を昇ると、
そこにはむき出しのコンクリートの小屋みたいなのがあり、
狭い室内ではDJが曲を流し、10人くらいの欧米人が体を揺らしていた。

話に聞いていたのと全然違う。

奥の方には外に出る場所があり、外ではたき火が行われ、
その横でBBQセットをセッティングしているスタッフがいた。
まるでホームパーティのようだ。

盛り上がっていなことは一目瞭然だった。

 

 

たまたまそこに日本人が二人いた
一人は髪をポニーテールにして結わえた三十代くらいのお兄さん。
そしてもう一人は僕と同い年のヤツだった。

僕は言い訳するように言った

 

 

「前回行われたフルムーン・パーティが
盛り上がったと聞いてやってきたんですよ」

するとお兄さんはこう言った。

「前回はすごく盛り上がったんだよ!
まるでレイヴ全盛期の時みたいだったよ!
会場もでかかったしね。
でも今回はねぇ…、おれ今日は帰ろうかな?」

 

 

その言葉を聞いた僕は一気にテンションが下がった。

なんのためにここまでやって来たのか
分からなくなったくらいだった。

何人かはたき火の周りでまったりしている。
おれはこれを求めてサンペドロに来たんじゃないのに..。

 

 

だが!

入場料の50ケツァールは既に払ってしまった。
ここでどう出るかが勝負の分かれ道!

つまんねーこと考えてても仕方ねえ!

踊らにゃ損!損!

 

 

 

そうして僕は音に合わせて体を揺らし始めた。

時間が経つにつれDJのプレイも熱が入ってきたのが分かる。
踊っている客も徐々に増えて来た。
スピーカーが間近にあるので、音がダイレクトに体に刺さる。

「ノる」ことに意識を集中させると脳内麻薬が分泌されるのだろうか?

 

 

 

 

この時の僕は「音を浴びていた」。

 

 

 

あぁ、音ってこんなに気持ちがよかったんだな。

肌の浅黒いモジャモジャ頭の女のコがセクシーなダンスをしている。
ダンスクイーンだ。

彼女がいることによってこの場が盛り上がる。
僕がいるのはスピーカーの前だ。
ここが一番気持ちがいい。

誰にもこの場所は渡さない。
渡さないからにはすげぇダンスをキメなくちゃならねえ!
うがぁっっ!

 

 

サンダルを抜いで裸足でリズムを踏んだ。
DNAが太古の記憶を呼び起こす。

打ち込みの何パターンものリズムが体に刺さる。
「太陽と風のダンス」の中に書かれていることが
少し理解できた気がする。

いや、体感として理解できた。

 

 

なぜだか知らないが、この時自分の中に感じたのは

「和」のイメージだった。

自分が日本人であることを強く意識した。

 

 

途中に話したカリブ海のどこかの国の出身の
2mくらいある大きな黒人がいた。

ドレッドヘアに多きな手。優しい目をしていた。
まるで自然公園の大木のような男だった。

彼が言った「ウーヴ」という言葉は、
「力(パワー)」を意味するらしい。

どうしてそんな話になったのかは分からないが、
僕はその言葉を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

気がついたら空が白らんで朝が来ていた。

僕はぶっ通しで踊っていた。

室内は明るくなり、
周りで踊っているのはゲイやジャンキーたち。

そろそろ退き時だな。

 

 

疲れた体で外で立ちションをすると、ボートに戻った。

ボートにはマリファナを吸って目がトロンとしたグアテマラ人たちが
客たちが引き上げてくるのを待っていた。

『あぁ、大変だよな。
こんな夜通しばか騒ぎするおれたちにつき合わされて』

と同情せずにはいられない。

まぁ、月一ですし、
ドラッグが気軽に手に入るんならウィンウィンなのかな?

 

 

踊り疲れた他の客たちは呑気にひなたぼっこをしていた。

僕はひたすら一人で踊っていたので、特に誰と話すわけでもない。

ボートには僕以外の客は乗っていなかった。

しまった。もっと遅くてもよかったな…。

 

 

 

 

ボートはなかなか出発しなかった。

太陽はアティトラン湖の真上に登り、
雲海が山の中腹で境界線を作っていた。

僕はぼおんやりとボートの上から波のゆらぎを目で追った。

 

あぁ、世界ってこんなに綺麗だったんだな。
これだけ綺麗なものを見せられたら
「人生第二章の幕開け」って言えるよな。

 

 

 

やがてボートには人が集まり、
欧米人たちは軽いノリで口説き合っていた。

「なら、おれと寝ない手はないだろ?」
なんてどストレート過ぎる誘いを

女のコは「言ってる意味がわからねー!」
と突っぱねていたのが面白かった。

 

 

妖艶なダンスをしていた色黒の女のコは
まだ会場に残るみたいだ。

何人かの人間がその場に残り、
大半はサンペドロへと戻ることになった。

 

 

 

 

フルムーン・パーティをやり終えた人間同士の
仲間意識みたいなのを感じる。

ボートでは端正な顔立ちのゲイたちがまどろんでいた。

僕は船のヘリに手をかけて
アティトラン湖をぼんやりと眺めていた。

 

 

 

「世界一美しい湖」は確かにそこにはあった。

ここに訪れる朝を見ないことは、それは言えないだろう。
桟橋の上からじゃこの湖の美しさは分からないよ。

 

 

 

ボートが後ろへ送って行く波。

水しぶきが腕にかかる。

風が最高に気持ちがいい。

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