▷その時僕は心から踊れなかった

 

 

 

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5時過ぎ

に目覚めた。

二日目の野宿はかなり快適な目覚めだった。

テントの外に顔を出すと、海から気持ちのいい風が吹いてくる。

夏の明け方の空は好きだ。暑くもないし、かといって寒くもない。それが海辺だったらより一層そこでの滞在を心地よいものにしてくれる。

 

まだ時間も早かったので、二度寝でもしようかと考えたが、目は冴えてしまっていた。

空をぼんやりと眺めてから、僕はテントをたたんだ。

 

 

 

 

 

 

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8時にはゲストハウスの方へと向かった。

朝方の時間をつぶす場所がなかったのだ。

やっぱり勉強机がないと作業すらできないや。

僕は外に出る引きこもりみたいなものだ。なんかね、机に向かっていないと落ち着かないんだよね。

 

 

ゲストハウス「IZA 鎌倉」は清潔感のある一軒屋で、共有スペースにはバーまでもあった。

今まで世界中の安宿を渡り歩いてきたけれど、日本のゲストハウスに来たのはこれが初めてのことだった。

一体どんな人たちが泊まるのだろう?

 

まだ朝の時間では宿泊客の姿はほとんどなく、テーブル席では女のコが朝食を食べていた。日本人通しだとどこかプライベートな領域を意識する。

そんなことを考えつつも、僕もコーヒーをいっぱい注文し、テーブルにつくと、ノートにずっと絵を描いていた。昨日はほとんど絵を描けていなかったからだ。

歯磨きと一緒。可能な限り毎日手を動かすこと。

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三周年イベント

は12時過ぎからゆったりと始まった。

ゲストハウスの外には「ヤスダバーガー」のケータリング車が一台停まっていた。

その時には外はもうすっかり暑くなってしまっていた。

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イベントの参加者(というか、出店者たち)は外のテーブル席で各々巨大なハンバーガーにかぶりついていた。

うまそうな匂いが辺りにただよっていたが、僕は似顔絵で稼げるまでは我慢することにした。僕は絶望的に金欠だったのだ。じゃなかったら二日連続で野宿なんかしないよ。

 

 

 

 

日中はワークショップがメインだった。

中ではうちわに筆で文字書いたものを販売したり、占いをするブースまであった。

アミさんとアスカさんは苔玉のストラップを作るワークショップを開いていた。子供達が一生懸命テーブルで苔玉を作る姿はどこか微笑ましかった。

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僕はゲストハウスの受付で遠慮がちに似顔絵屋を始めたのだが、なかなかお客さんはこなかった。

お客さんと言っても、一見さんよりかは、遊びに来るのは出展者たちの知り合いや友達であることが多い。まぁ、どっちでも変わらないか。暇な僕はずっと絵を描いていた。

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オーダーがなかったとしても、絵を描いていれば練習になるし、宿のスタッフたちと話すのも楽しかった。

『時間が経って涼しくなってくればオーダーが入りやすいだろう』と楽観的にかまえていたのだが、それからも似顔絵のオーダーは入らなかった。

 

以前ここのゲストハウスのイベントで、本職の似顔絵師が来たこともあったそうだ。その人は今では「似顔絵四天王」の一人に数えられているらしい。

その話もあって、僕もここで似顔絵を描かせてもらうことになったのだが、本職と漫画家のそれじゃクオリティが違うんだろうな。

 

 

 

 

 

 

もやもやしているうちにライブの方が始まった。

一組目はピアニカのトリオだった。

そして前々から会いたいと思っていたバケツドラマーのマサとこの日初めて話しをした。

ライブのクオリティもハンパなかった。

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30分の短いライブだったが、そこに込められた熱量に僕は圧倒されてしまった。

そこから生み出される音やグルーヴはホームセンターやガソリンスタンドで手に入る塩化ビニール製の楽器やドラムの域をもはや越えてしまっていた。

狭い室内に強烈なDIYシンバルの音が鳴り響いた。

最初はそれになれるまでに少し時間がかかったが、リズムに乗っていくうちに、その金属音が気持ちよく感じられるようになってきた。

 

 

マサが言うには、「バケツドラムとディジュリドゥを演奏する人間はまだいない」らしい。

ドラムのスキルもさることながら、ディジュの演奏もテクニックが効いている。三ヶ月吹きこんだ僕なんかとは比べものにならないくらいだ。

 

 

その時僕は理解した。

 

 

『そうか。これが金を稼ぐってことか』

と。

 

 

僕はグルーヴに合わせて体を揺らせながらも、自分の活動のクオリティについての考え振り払えずにいた。

ジャンルは違えど、僕も旅をしている間は路上で稼いできたのだ。路上パフォーマーたちの成長と僕の辿る道は通ずるものがある。

 

 

マサは僕と同い歳だ。

だけど、僕は自分との差を感じずにはいられなかった。

それほど彼のライブは凄いものだった。

当然のようにチップボックスは千円札であふれた。僕もおもわずCDを買った。

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投げ銭の代わりに押し付け似顔絵!

 

 

 

その後話してみると、

マサはよく自分の活動について考えていた。常に進化をしようと思考錯誤し、リアルでも動き続ける。「まだ人のやっていないことにガンガン挑戦していく」という彼のスタンスは攻撃的だ。謙虚な姿勢を保ちながらもどんどん先へと進んで行く。

 

最近では新潟県松本市のアルプス公園で開催される「りんご音楽祭」の二次審査でも演奏するらしい。

「りんご音楽祭」といえば、メジャーなアーティストも参加したことのあるイベントだ。僕の好きなアーティストだったら青葉市子や水曜日のカンパネラとか。

うおい..、マジでこれに出るの?いや、まだ決まったわけじゃないけどさ。すげえ..。

 

 

 

 

マサと話した中で一番驚いたのは

「いずれアポロシアターで演奏してみたい」

というものだった。

バケツドラムから始めてどこまで行っちゃうの?と人に思わせたいのだと彼は言っていた。

 

7月の23日には自主企画でイベントも開催するみたいだ。

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なんだか最近上がったり下がったりだ。

でもわかってる。僕はやるしかないんだ。

 

ライブが終わったあと、僕は外でアミさんから一本タバコいただき、ゆっくりとそれを吹かした。

 

そうだよ。やるしかねえんだよ。

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今回誘ってくれたアミさん、そしてゲストハウスのオーナーのホリさん、暖かかく迎えてくださった皆さん、最後の最後にイラスト買ってくれたご家族(あれがなかったら帰れなかった!)

ほんとうにありがとうございました。

悔しい思いはしたけど、勉強になりました!

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翌日描いた絵。悔しさをバネに。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

「旅する漫画家」。世界一周後(2013-2016)、現在は海沿いの町に潜伏中。そろそろ旅がしたいぞ!