自転車
に乗るのなんて実に何年ぶりだろう?
何かの目的のために毎日乗るようになったのは実に浪人時代ぶりかもしれない。
高校時代は、自宅から俗に言う「ママチャリ」で学校まで通っていた。
ママチャリっていっても最初はけっこういいやつを買った。ブリジストン製のチェーンがゴムでできているやつだ。
それは一年くらい乗ったあと、駅の駐輪場に鍵をかけずに置いておいたら案の定、パクられてしまった。
それから次に乗ったのは、ダサイとしか言いようのない青くてしょっぱい自転車だった。
前にカゴの付いているやつ。中学生が乗ってそうなやつと言ってもいい。
特に僕は自転車にかっこよさを求めなかったのだ。「乗れりゃいいじゃん?」くらいにしか思わなかった。
登校にはエナメルバッグで通っていたので、バッグを肩にかけながら学校まで行くのは難しかった。教科書なんて学校の机の中に入れっぱなしだったし、入っているものといったら弁当と部活で使うユニフォームだけだったけどね。
話はそれるけど、僕の部活動の服もひどいもんだったな。
「着れりゃいいじゃん」ってくらいにしか思わなかった。高校生の僕に足りなかったのはそういうところの美意識だったのかもしれない。いっちょまえにワックスで髪とか立てたり、自分で服とか買ってたりしたけどね。それでも高校時代の僕はダサかった。
浪人時代でもその青い自転車は現役のままだった。
僕が自転車に求めることといったら、前にカゴがあって、徒歩よりも目的地に早くつければいいのだ。
僕は毎朝教科書の詰まったエナメルッグを自転車のカゴにぶちこんで(さすがに浪人生ともなれば教科書は持ち帰るようになったのだ)駅まで向かった。そこから隣町の代々木ゼミナールまで電車で行った。
意外と役に立っていたのだ。僕のダサくてサビサビの青い自転車。
大学になると、なぜだか自転車に乗ることが少なくなった。
なんだか自転車に乗る気分ではなかったのだ。駅付近の駐輪場もどんどん有料化していったってのもある。
青い自転車とはそこでお別れだった。もうそれっきり乗らなくなってしまった。
世界一周の資金を集めるためのバイト時代に使っていたのはもっぱらスケボーだ。
Penny Boardというちっさいスケートボードだ。よくよく思い出してみたら大学でも使ってたな。ありゃ便利だった。
そして約三年に及ぶ旅があり、
実家での一年の引きこもり時代があって、
そして今僕は自転車に乗る生活をしている。

自転車のことはよくわからなのだけど、乗っているのは
「PEUGEOT(プジョー)」
というメーカーのマウンテンバイクだ。
けっこういいやつらしい。
この自転車は名古屋でサラリーマンをやっている弟から譲ってもらった。
弟が中学生時代に買ったもので今はまったく使っていなかったのだ。(というかその頃の弟には僕にはない美意識があったということだ。いいの買ったんだなアイツ)
僕がその自転車を引っ張り出してきたときは、タイヤは空気が抜けふにゃふにゃになり、チェーンは錆びきっており、ハンドルは触ると「グチャ..」とした。
僕はそれを近所の自転車屋さんに持って行き一万円をかけてなんとか乗れる状態まで修理して、
そして今別の場所で使っているのだ。
だが、10年以上も放置された自転車はすぐにまた別の箇所が故障した。後輪タイヤもまるっと交換したし、ギアの一部も新品に取り替えた。
修理を重ねるたびに、自転車が新しくなっていくような気さえした。
自転車に乗ることが楽しいとさえ感じるようになっていた。
バイト先に向かう10分間。ロードバイクのスピードには勝てないけど、かつて弟のものであった自転車は今では僕の相棒でもあった。
今日、いつものようにバイト先までの最後の上り坂でギアを変えると
「バギャ…ッ!!!」
という音とともにギア付近のパーツがタイヤの内側に折れ曲がってしまった。
はぁ…。またかよ。
僕はバイト先の社員さん(僕と同い年)にお願いして、壊れた自転車を近所の自転車屋さんに持って行った。
修理屋さんがいうにはパーツを交換取り寄せないといけないらしい。修理費はパーツ代が2000円ちょっと。工賃も含めると5000円以内で収まるらしいが、別の箇所が壊れていた場合、修理費はもっとかかってしまう。
それを聞いて僕は思った。
「ひょっとして今までの修理費をトータルしたら新しい自転車が買えるんじゃね?」
と。
これは10年ちかく放置していた自転車の呪いか?
一体お前はいつになったらその力強さを体現してくれるのだ?
今のお前はママチャリ以下のモロさだぜ?
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