世界一周596日目(2/15)
「おれ、
今日がウガンダ最後なんで、
明日どこか行きませんか?」
明日ルワンだに行くガクくんからそう提案された。
ここで申請したコンゴビザも無事に取れたようだ。
僕はずっと宿にいて絵を描いていたり、
他の作業をしていても生活が単調になてしまうので、
こういう提案は嬉しかった。
だが、翌日になってみると、
お互い特にこれと言って行きたい場所もなく、
「今日はまったりしましょうか~?」
と宿から出られなそうな雰囲気が漂っていた。
ここはウガンダ、カンパラ。
泊まっている宿の名前は
「バックパッカーズ・ホステル」
ここに唯一張ってあるテントは僕のものだ。
ウダウダしていてもつまらないので、とりあえず外に出た。
「おれと行くより
元カノと行ったほうがいいんじゃない?」
「いや、あまりにも一緒にいるとしつこいかなって」
「なるほど…」
さすが“元”がついているだけあって、
関係もいくらかドライだった。
僕たちはとりあえずミニバンに乗って
町の中心地まで向かった。
先日マサトさん、ユキさんと行った
お土産が売られているマーケットにガクくんを
連れて行ってみたのだが、店の半分は閉まっていた。
今日は日曜日だったのを思い出した。
雑貨が売られるマーケットは、
地方都市のシャッター街の一歩手前といった感じした。
前回は売られている物が酷似しているとは言え、
かろうじて活気があったのだが、
営業しているお店の数が半分になってしまうと、
もうどこか虚しささえ感じる。
それを助長するように、空は曇り空で、
今にも雨が降り出しそうだった。
「もう…
宿戻ります?」
結局僕とガクくんは何も買わずに、
店を冷やかしてマーケットを後にした。
僕たちは別のマーケットにも行ってみることにした。
ガクくんの元カノ情報だと、
アフリカ布が売られているマーケットがあるとかないとか。
何人かにマーケットの場所を訊いて
回っているうちに雨が降り出した。
僕たちは仕方なく、雑居ビルの二階にある
小さなレストランで雨宿りすることにした。
レストランからはバスターミナルが見えた。
ウガンダに来た初日に入ったレストランの
ひとつ隣りのレストランが今僕たちのいる場所だった。
通り雨のようだったが雨はどんどん勢いを増し、
やむ気配を見せなかった。
僕とガクくんはミルクティーをすすって、
ぼんやりとバスターミナルを眺めた。
カラフルな傘をさした人たち、
喧嘩っ早いスタッフたち、
食べ物を売る人たち。
いきなり降り出した雨とそれに右往左往する人たちの姿は
歌川広重の「大はしあたけの夕立」を僕に思い出させた。
ガクくんに「そんな感じしない?」と同意を求めたが、
ガクくんは「さあ?」と言った。
感性は人によって違うのは当然か。
「写真とか撮らないの?」
と僕はガクくんに尋ねた。
ガクくんの持つ一眼レフはかなりの大きさで、
値段も張ることが予想された。
写真に興味を持つガクくん、
本を読んで構図の勉強をしたりもしていた。
それにインスピレーションのようなものを大切にしているらしく、
気分が乗らないと撮らないということだった。
「じゃ、写真見せてよ」
「嫌だ」
「あっそ。ま、別にいいけど、さ」
写真を見せるのも、自分なりのポリシーがあるらしい。
ちゃんと編集して、ベストな状態じゃないと
人には写真を見せないそうだ。
なかなか雨が止まなかったので、僕はオムレツまで注文した。
量はそこまで多くはなかったが、
卵がふんわりとしていて薄味の美味しいオムレツだった。
適当に塩をふって食べると、
雨も悪くないかなという気分にさえなった。
小雨になったタイミングで僕たちは小さなレストランを後にした。
ミニバンで宿のあるメンゴ地区まで戻った。
テントは
雨ざらしになっていた。
あぁ、うん、雨が降り出したタイミングで分かってたけどね。
僕は今朝の曇り空を見て、
しっかりフライをかけておいたのだが、
テントの中には少し水たまりができていた。
ほとんど残っていない防水機能を突き破って
中に水が溜まってしまったのか。
テント本体のメッシュの部分から雨が吹き込んできたのか。
いずれにせよ、雨がしのげない場所では
テントを立てるのは避けた方がよさそうだった。
テントを立てた場所がほんのわずかに斜面だったので、
水たまりはバックパックを置いた足もとにできていた。
雨が中に入ってきた場合に備えて、
バックパックにはレインカバーを装着させており、
さらにひっくり返しておいたので、
バックパックがぐしょぐしょになることはなかった。
ギターケースだけがたっぷり水分を含んでいたが、
中のギターはあまり濡れていはいなかった。
僕は小雨の中、テントを移動させなければならなかった。
バックパックやギター、
その他の小物など中の物を先に屋根の下に移動し、
軽くなったテントをつまむようにして屋根の下まで移動させた。
ウガンダは三月から八月まで雨期になるそうだ。
なんと五ヶ月も雨期が続くらしい。
イギリスのようなしとしと降る雨というよりかは、
東南アジアの土砂ぶりに近い。
テント利用者にはなんとも迷惑な季節だ。
屋根の下に避難が完了すると、
僕はひとまずテントをたたんで中の水たまりを外に出した。
荷物を見ていなければならなかったので、
テントが乾いて、再び立てられるまでは
ここで待っていなければならなかった。
屋根の下にはカナダ人の兄弟が二人いた。
モントリオール出身らしく、彼らはフランス語を話した。
そうか。カナダには
そういう地区があるのだったな、と僕は思い出した。
いつものようにどこから来たのだとか、
どこを旅してきたのだとか、お互いの旅の話になった。
彼らは僕と同じく長期で旅をしているらしく、
1年6ヶ月も世界を旅していた。
驚くべきは彼らの旅のスタイルが
筋金入りの貧乏旅のスタイルで、
使ったお金も150万だと言う。
期間は一ヶ月しか違わないのに、20万円も僕より節約していた。
なんと中国からラオスまでヒッチハイクで向かったらしい。
僕もそれなりにヒッチハイクの経験があるけど、
まさか東南アジアでヒッチハイクするだなんて。
彼らもテント泊をしているとのことだった。
だが見たところキャンプサイトにはテントはない。
「あぁ、あれだよ?見る?」
そう言って見せてくれたのは
なんと二本の木にぶら下がった
ハンモックだった。
人一人が寝れてるのがやっとの大きさで、
持ち物もせいぜいサブバッグくらいしか入らないスペース。
バックパックはどうするの?と尋ねると
「外の木に鍵をつけて固定する」とのことだった。
これ、襲われたらひとたまりもないな。
そんな愉快なカナダ人の旅はもう少しで終るらしい。
ゴールはジンバブエなんだとか。
Facebookのアカウントを交換しておいた。
「モントリオールに来るなら泊めてやるぜ」
「ありがとう」
モントリオールに行くかどうかは分からないが、
なんだかカナダが楽しくなりそうな気がしてきた。
あんな拙い中学校英語で描いてる漫画なのに、
外国人が理解できるんだよなー。不思議。
雨はこの日は一日中雨が降っていた。
僕はテントが乾くと、屋根の下に再びテントを張った。
特に宿のスタッフからは何も言われることがなかったので、
明日からここで寝ることにしよう。
もうテントが水没するのは嫌だからさ。
シャワーを浴びると、バー特有の薄暗い照明の中、
テーブルについて作業していた。
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★世界一周ブログランキングに参戦しております。
沈没慣れとでも言いましょうか?
だんだん一日の時間の感覚が短くなってくるのです。
あれ?もうこんな時間か?ってな感じに。
ハンモックって軽くて楽しそうだけど、
旅には向かないんじゃないかな。そう思います(笑)
だってね、あれかなり無防備だよ?
襲われたらどーすのさ?
★Twitter「Indianlion45」
いつも楽しく拝見しています。
私ももっと若い時に、あなたのように
フルスロットルで行けばよかったと思います。
その思いがあるから、
楽しく拝見できるのだと感じております。
何事も、やっぱり行動した方が
良いのだと感じます。
>ナナさん
コメントありがとうございます。
僕は日本で生活されている方々を
「強い」と思ってます。
決められたルールをきちっと守って、暴動も起こさず、
環境も整っていて、クラクションも必要以上にならさない。
外に出てみると、日本人ってすごいなって思いますよ?
(当然ながら僕は除外してください笑)
それになにも僕のように一年以上も日本に帰らず
プラプラとしてるのが正しいとは思いませんが、
いつもと違ったことをするだけで、
僕たちの日常はいくらでもエキサイティングになるように思います。
ちょっと気になっていたラーメン屋さんに行ってみるとか(あ、不健康か)、
一度も行ったことのない県外に行ってみるとか(これやってみたいです!)、
行ったことのないイベント(コンサートなど)に行ってみるとか(クラシックとかバレエとか見たことないんですよね。僕)
旅の基本は「移動」だと思います♪