世界一周616日目(3/7)
どうやら
Wi-Fiが使えたのは初日だけだったようだ。
ここはマラウィ、ンカタン・ベイ。
泊まっている宿は”BIG BLUE”。
僕はそこにテントを立てている。
キャンプサイトのすぐ目の前には海のような巨大な湖があり、
朝も早くから木製の手漕ぎボートに乗った地元の人たちが見えた。
iPhoneはWi-Fiを探知しているのだが、
ちっともネットに接続できない。
宿のスタッフに訊ねてみても
「10分かそこら繋がらない時があるんだよ」
とそのことが日常茶飯事のように言うが、
その”10分”が一日に何度も訪れるのだ。
Wi-Fiが使えない時間の方が長いくらいだ。
自分が贅沢なことを言っているのは分かっている。
だが、僕はここにWi-Fiを求めてやって来たのだ。
ブログだって更新したいし、
連絡を取らなくちゃいけない人たちもいる。
外に出てバナナとクッキーを買うと、
あとは宿に戻って一日中漫画を描いていた。
『まるで合宿みたいだな…』
宿の外に一歩も出ずに漫画製作に打ち込む
今の自分を言い表すのであれば
「合宿」ということばが一番しっくりする。
ちっとも動かないWi-Fiにヤキモキしながら
YouTubeをラジオ代わりに聴いていた。
「合宿」という言葉は実はそこから出来てた言葉だ。
YES!僕は影響されやすい。
僕の中でひそかなブームである、
日本のスリーピース・バンド「SHISYAMO」がつい先日、
二枚目のアルバムをリリースしたことを知った。
日本にいたら渋谷のタワーレコードに買いに走っただろう。
後日見たタワーレコードのウィークリー・チャートでは
5位圏内に入っていたと思う。けっこう人気だ。
僕はYouTubeの公式映像を観ていた。
ギター/ボーカルの女のコの描いたイラストで語られる
ニューアルバムの楽曲紹介映像に始まり、
新メンバー加入の際の裏話なんてものまで僕は観ていた。
https://youtu.be/JanejzsIkr0
僕は興味が湧くとあれこれと深入りして調べてしまうタチなのだ
(そしてそのままグダグダと時間を過ごしてしまうのだ…)
新メンバーが加入したタイミングは毎年夏に大阪で行われる
「ラッシュボール」という野外音楽イベントが
きっかけだったようだ。
搬入の仕事でたまたま来ていた女のコが、
ベースとしてスカウトされたらしい。
僕はこのフェスに一度だけボランティアスタッフとして
参加したことがある。2010年だったかな?
ステージの横にあるブースで
ワークショップみたいなことをやっていた。
あぁ懐かしいな。
記憶として残っているのは
ステージに上がったアーティストたちよりも、
フェスが終った後の”残汁”(捨てられた飲食物の汁)を
他のボランティアスタッフと一緒にポリバケツに移す作業の方が
印象に残っていた。
あの一年。
僕はボランティアスタッフとして
日本中のフェスに行かせてもらった。
あれは僕の中での「旅」だった。
そして、あの一年で学んだことは当時の自分は気づいていなくても、
振り返ってみると大きかったことが分かる。
今の僕のライフスタイルに対する考えの
出発点でもあることは間違いない。
話をSISYAMOに戻そう。
(世界一周ブログ?!知ったことか!
僕の活動記録だっつーの!)
スカウトされた女のコは
演奏技術も追いついていなかったばかりか、
ワンマンライブが迫っていたため、
急遽どこかの山奥で合宿が行われたらしい。
その話はまるで青春映画のワンシーンのようで
聴いていてワクワクした。
(しかも合宿を終えた時点で、
合わせられるようになった曲は一曲もなかった
というオチまでついていた!)
それからワンマンライブの直前まで、
一日10時間スタジオに籠っていたらしい。
僕はついついそれらのイメージに脚色を加えて、
「スポ根青春ロードムービー」
みたいなのを脳内で作り上げてしまう。
そして、こうして漫画を描いている今の自分の状況も、
僕にとっては別の映画のワンシーンなのだ。
やっぱプロになるんだったら
そのくらいのがむしゃらさが必要だ。
うんうん。いいのいいの♪おれは。こうして描いていて。
時々彼女たちのような
僕のテンションを上げてくれる人たちが登場する。
それは成功者の美談のようにも聞こえる。
ずっと努力をしていても報われないヤツらなんて
ごまんといるだろう。
だけど、その泥臭い美談は僕を熱くしてくれる。
辛く、自分の進む道に自信が持てなくなった時も、
その美談が自分の気持を定めてくれる場合もある。
お前はこれでいいんだ。あとはやるしかないのだ、
とでも言うように。
テーブルで
黙々と絵を描いてる横では、
ドイツ人(だと思う)の若者三人が
ずぅ~~~~~~~~~っっっっと
トランプをしていた。
マジで信じられない。
インクレディブルだ!
いや、彼らが自分たちの時間を
どのように使おうと彼らの勝手ですけどね。
よくあれだけダラダラと時間を使えるなぁと僕は感心してしう。
自分だったらすぐに飽きて、
ゲームにつきあわなくちゃいけない時間苦痛に感じだろうから
(とか言っておいて一番はしゃぐのはおれなんだろうけどさ。
調子いいヤツなのだ僕は)
ドイツ三人組はやっとテーブルから離れたと思ったら、
湖に泳ぎに行き、そして帰ってきてまたトランプを興じる。
「おっひょっっう!!!」
「ビクッッッ!!!」
感極まった彼らの一人が突然叫びだすのには
度々驚かされたし、僕をイラつかせた。
16時を過ぎ、辺りが薄暗くなり始めると、
僕は外に夕食を取りにでかけた。
“H&M’s RESTAURANT”という名前の
ひっそとした食堂が僕の行きつけだ。
ここでは450クワチャ(119yen)で茹でた野菜が
たっぷりと炊きたてのご飯のセットが食べられる。
追加で150クワチャを支払えば茹でた豆もついてくる。
マラウィにしてはこの価格は少し高いのだが、
昼ご飯を食べない僕にとってはベストなエネルギー補給源だ♪
最近野菜が美味しく感じられるように
なってきたような気がする。
昔はあんなに野菜嫌いだったのに…。
歳をとるというのは不思議なことだと思う。
食堂の小さなモニターではDVDの映画が放映されていた。
台湾だか香港だか中国だかの映画のようだった。
僕は後半だけ観たのだが、その内容というのは
見かけは普通の人間だが正義のミュータントと、
筋肉ムキムキの悪のミュータントが戦う
という、勧善懲悪物の陳腐なものだった。
観ていても
『それはいくらなんでもねぇだろう?』
という
ツッコミどころが満載なのだ。
まず、なんでアジア圏でミュータントって設定なんだ???
アジア人が使うと(もちろん日本人でも)
かなりギャグ路線に行ってしまうと思うのは
僕だけだろうか?
俳優さんたちもよくこんな子供だましの映画に出られるなと、
別の意味で尊敬の念を送ってしまった。
いや、俳優や女優さんはどこの国でもそうなのかもしれない。
オファーが来たらその要求通りに演技する。
たとえ観ている方が思わず吹き出してしまうような話でも。
夕食を済ませると、
“peoples”というスーパーでクッキーと石鹸を買って宿に戻った。
相変わらず宿のWi-Fiは遅く、ちっとも作業が進まなかった。
まぁ、仕方ない。
仕方な…、
くっ…、おせぇ~~~…。
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