「浮気なんてしたくないけど…」

世界一周662日目(4/22)

 

 

ウトウト

していると、店員から

「注文しないのなら寝るな!」

と声がかかった。

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昨日あんなに優しくしてくれた店員たちは
シフトを終えて帰って行ったようだ。

僕は「もう店を出るから」と言って荷物をまとめると6時には外に出た。

 

 

ここはアメリカ、ウェスト・ヴァージニア州のどこか

 

 

 

 

昨日ここでトラックの運転手と僕は口約束をした。

彼は今日の朝ここを通り、コロンバスに向かうらしい。
同じ場所で待っていれば僕を車に乗せてくれると彼は言った。

 

 

僕は後悔していた。

 

 

 

彼は一体
何時に来るんだろう?

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「Morning」
がどの時間帯を指す言葉なのか全く分からなかった。

トラックの運転手の生活リズムなんてドライバーそれぞれだし、
中には早朝のことを言う人間もいるだろう。

だから僕はわざわざ日の登る前の6時から、
サービスエリアの出口で彼を待っていなければならなかった。

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コーヒーとクッキーを手に立ちながら貧乏揺すりをして待った。

 

 

『せめて6時から11時の間だろう。
い、いや、9時前には来るはずさ!』

そう見込みを立てて彼を待っていたのだが、
7時を過ぎると雨が降り出した。

 

 

最初はアウターを着たり、
バックパックにレインカバーをかけたりして待っていたのだが、
そのうち雨は本降りになり、僕はやむなくレストランに退却した。

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『彼はきっとここの売店に足を運ぶはずだ!』

そうトラックドライバーの行動パターンを読んで
入り口で待っていたのだが、一向に彼は現れなかった。

今いるサービスエリはの敷地はかなり広く、
中にはここにガソリンだけ入れて
そのまま出て行ってしまうトラックもあった。

そのようなトラックはカバーできないし、
そもそも昨日の約束がまだ有効なのかさえ僕には分からなかった。

仮に僕がここでコロンバス行きの車をつかまえることに成功したら、
彼との約束を反古にして車に乗っただろうし、
彼もバックパッカーとの口約束なんてなんの良心の呵責もなく
破ることができるだろう。

 

 

 

なんて薄っぺらい関係なんだ!
あぁ!浮気なんてしたくないよ!僕は君だけが好きなんだ!

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彼と合わせた拳を思い出した。

僕が信じられるのは去り際に交わしたその仕草だけだった。

 

 

 

外で寒さに凍えながら辛抱強く待った。

どうしても寒さに耐えきれなくなると店内に入り、コーヒーを買った。

 

 

外は雨からみぞれに変わり、あっと言う間に三時間が経過した。

今までで一番辛いヒッチハイクだということは間違いなかった。

一応「Columbus」と書いたボードもさりげなく置いておいたのだが、
誰一人として僕を車に乗せてくれることを申し出てくれる人間はいなかった。

ヒッチハイクはドライバーの親切心によるところが大きい。
ヒッチハイカーは自分一人じゃ何もできやしないのだ。

無力さを痛感する。雨のせいでどこにも行けはしない。

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ドライバーの一人が僕に1ドル札をくれた。

僕は礼を言ってそれを受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽が

顔をのぞかせたのは12時を過ぎてからだった。

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「太陽が出ればおれは無敵だ」

その瞬間急に僕は強気になれた。

ヒッチハイカーを封殺するには人間の手は要らない。
雨さえあればいい。

だが、その雨もどこかに行ってしまったのであれば、
もうこっちのもんだ!

 

 

コーヒーとクッキーを買い、
僕はついにサービスエリアから脱出することに成功した。

そのまま「WEST」と書かれた標識が立つ
ハイウェイの入り口まで歩いて行き、ヒッチハイクを開始した。

僕は勝ち気だった。

 

 

 

10分以内に車が止まった。

中から中年女性が顔を出した。
行き先を確認するとなんとコロンバスまで行くと言う。

だが彼女の顔には戸惑いが読み取れた。

 

 

「あなた…
gun
(銃)は持ってるの?」

「え…??!
あ、もちろん持ってないですよ!
ギターならありますけど」

「ふーん。あなた国籍は?」

「ジャパンです」

「ふむ…」

「いや、別に外国人は乗せずらいとかそういうのでしたら、
全然構わないです。
いや、それより止まっていただいてありがとうございました。
嬉しかったです」

「…いいわ。乗りなさい」

 

 

 

 

サラさんはシンシナティ在住の娘が三人いる女性だった。

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僕はオハイオ州はそのまま通り過ぎるつもりだったので、
その次の目的地に定めているインディアナポリス(インディアナ州)に近い
シンシナティまで乗せて行ってくれないかと頼んでみたのだが、
サラさんはそれを断った。

それでもコロンバスまで一発で行けることはありがたかった。

最初はそれなりに会話も弾んでいたのだが、
最後の方には疲れが溜まっていたせいもあり、
僕はついつい眠ってしまっていた。

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14時には

コロンバスの郊外に到着した。

「TARGET」という名前の大型スーパーの近くで僕は降ろしてもらい、
サラさんにはお礼を言って見送った。

ここまで来れた自分を労うように、
「ターゲット」で大判のクッキーを二枚買ってすぐに食べ切った。

「ターゲット」には無料のWi-Fiがあった。

僕はそれを使い、ダウンタウンまでの行き方を調べた。

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近くのバス停に行き、バスを待っていたのだが、

バスは来る気配を見せない。

「School Bus」と書かれた黄色のバスは沢山走っているのだが、
一体どれがダウンタウンに向かうバスなのか僕にはよく分からなかった。

 

 

20分ほど風に吹かれながら待っていたのだが、
とうとう僕は業を煮やして途中まで歩くことに決めた。
今日はこれ以上何かを待ちたくはなかった。

それに歩くことが必ずしも悪いことばかりではなかった。

最初の1kmはしんどかったが、
住宅地には可愛いアメリカの家々が立ち並んでいた。

僕は気に入った家を写真に収めて歩き続けた。

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曇りだったけどね。

 

 

 

だが4km歩くと、
さすがに何かを呪いたい気持ちになってきた。

視線も足下に行き、完璧に歩くことだけに集中するようになっていた。

なんとかバスの乗り換え場まで辿り着き、
ダウンタウンに向かうバスを待っていたのだが、
バスは相変わらず姿を見せなかった。

というか、乗るべき番号のバスが姿を見せないのだ。
一体どうなっているんだ?!

 

 

バス停で立ち貧乏揺すりをしながら待っていると、
後ろにあったバーガー屋のドライブスルーに止まった車の中から
女性が僕を呼んだ。

「あなたホームレス?」そう彼女が訊くので
「バックパッカーです」と答えておいた。

 

 

「それで今日泊まる場所はあるの?」

「え?いや、あの~、公園?っすか?」

「これ、あなたにあげるわ」

 

 

そう言って彼女が僕に渡したのは
ホームレス支援の物資が詰まった袋だった。

中には歯ブラシや靴下、リップクリームや食糧。
誰かが作ったであろう用途の分からない縫い物(それにイラスト)
それと5ドル札が入っていた。

 

 

アメリカを旅していると、このように何かしらをもらうことが多い。

『アメリカ横断を応援してもらっているのだ』
と開き直ることにして、僕は有り難く頂くことにした。

いや、マジでありがとうございます。助かりますぅ…。

 

 

 

バスが来ないので、近くのガソリンスタンドで
トイレを借りた際にバスのことを訊いてみると、
30分に一本しかこないとのことだった。

 

 

だが、僕はさっきまで30分以上待っていたのだ。

 

 

バスの止まる場所には時刻表というものが存在しない。

いかに日本がきめ細かいサービスを提供しているのかが分かる。
こっちではアバウト過ぎるもんなぁ..。

本日何杯目かはわらないが、
後ろのバーガー屋で僕はまたもやコーヒーを注文すると
バスが来るまでの30分をつぶした。

そして30分を過ぎてやって来たバスに乗り込むと、
僕はダウンタウンへと向かった。

 

 

 

 

 

コロンバス

のダウンタウンは哀しいほどに人気のない場所だった。

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これなら郊外のショッピングモールや住宅地の方がまだ暖味があった。

先ほど4kmを歩いた僕の足は限界を迎えており、
足を引きずって向かった先は都市型キャンパーのシェルター(避難所)である
マクドナルドだった。

どこの町に行ってもマクドナルドなんて、
虚しい気持ちにもなるが他に行く所がないのだ。

日中のほとんどを外で過ごす僕にとって、
フランチャイズ店に助けられていることは認めなければならないだろう。

そしてまたも注文するのはコーヒー。
それに1ドルちょっとのワップを注文して僕はテーブルについた。

 

 

次の町に向かう方歩を調べていて見つけたのは
「WANDERU」というバスチケットの比較サイトだった。

見つけたのはグレイハウンドのものだったが、
コロンバスからインディアナポリスまで3時間の距離なのにもかかわらず、
わずか17ドル。

僕はすぐにこのチケットを購入した。

 

 

23時の閉店までマクドナルドで作業し、
店を出るとバスターミナルまで向かった。

夜の町には当然のことながら全く人が出歩いてはいなかった。

人がいる場所と言えばバーくらいだろう。

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グレイハウンドのバスターミナルは
想像以上に居心地のいい場所だった。

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無料のWi-Fiが手に入り、充電まですることができるのだ。

僕はテーブル席でブログの連投をし、
ギターの練習なんてしながら時間をつぶした。

一睡もせずに朝6時を待っていたため、
ここでも何杯かコーヒーを飲むことになった。

だってリフィル(おかわり)がたったの50セントなんだぜ?
そりゃさ、おかわりするだろう?

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