世界一周663日目(4/23)
6時にやって来たバスに僕は乗りこんだ。
グレイハイウドのスタッフの中には
柄が悪いヤツがいるという話(というか体験談)を耳にしていたので、
いつギターの持ち込みにストップがかかるのか少し心配していたが、
スタッフたちの反応はまるでない。
ギターくらいの持ち込みくらいで
追加料金をとろうだなんていうセコいヤツはいないみたいだ。
ここはアメリカ、コロンバス。
ヒッチハイクの成功率が低いらしいオハイオ州から
手っ取り早く脱出するために僕はバスに乗ることにしたのだ。
行き先はインディアナ州の州都であるインディアナポリスだ。
バスの中ではダウンロードした5分くらいの画像を数本見ていた。
今年の始めに西海岸から所持金0円で
アメリカ横断を達成した男の子の動画ブログで、
地元のヒッピーたちと一緒に貨物列車にタダ乗りする
「トレインホッピング」の映像は僕を楽しませてくれた。
こういう冒険をしてくれるヤツがいることを僕は嬉しく思う。
自分が知らないだけで、面白いヤツラはごまんといるのだ。
僕もそんなヤツらの一人になれたらいいと思う。
余談だけど、この「トレインホッピング」というイリーガルの移動方法で
が数年前にネットで販売されていたのを覚えている。
彼はアメリカ人だったかな?すごいよね。8年ってさ。
日本にいた頃だったかな?
その時は旅漫画に必ずトレインホッパーを登場させようと考えていた。
この旅の中で彼らに出会うことはできるのだろうか?
インディアナポリスまでの3時間はほとんど眠っていた。
移り変わる外の景色もほとんど見れていない。
グレイハウンドのバスの中にはトイレもあり、
Wi-Fiも飛んでいる(時間制限付きのようだが)。
アメリカに来る前は夜中に出発するだとか、
ダウンタウンの治安の悪い場所にあるだとか、
グレイハウンドについてはよくない噂を耳にしていたが、
実際に自分が利用してみると、ターミナルで夜を明かすこともできるし、
時間には正確だし、ターミナルの立地条件はむしろいいようにさえ思える。
ここ数年で状況が改善されたのだろうか?
事前に予約さえすれば格安でアメリカを移動することができる。
インディアナポリス
のバスターミナルの居心地の良さはコロンバスよりも
グレードが落ちたように感じた。
証明は薄暗く、椅子も網目状で、売店の品揃えも悪い。
コロンバスはあんなにサクサクだったWi-Fiも
ここでは一気に速度が落ちてしまった。
ベンチで寝ているバス待ちの乗客たちを横目に、
僕はさっさと街に出ることにした。
なんて言ったって、ここは州都だ。
もしかしたらバスキングでいいレスポンスを
得ることができるかもしれない!
だが、こんな平日から人々が外を歩き回っているわけはなかった。
街の中心にはビルが密集し、そのどれもがオフィスビルのようだ。
もちろんここにはおなじみのチェーン店があるのだが、
街はショッピングを楽しむような人たちが集まるようには思えなかった。
ひとまず腹ごしらえをするためにSUBWAYで
5ドルくらいのサンドイッチを食べた。
店内は空調がバッチし効いており、アホみたいに暑かった。
恰幅の良い女性店員さえも額に滲んだ汗を手の甲で拭っていたくらいだ。
僕はテーブル席について絵でも描こうかと思ったが、
12時前になると一気に店は込み始めた。
東南アジアを思い出せる空調具合もあり、
僕はSABWAYを退散することになった。
12時という時間はオフィス街の住人たちが
外に食事に出る時間帯でもある。
僕はバスキングに適した場所を探し始めた。
バックパックを背負ったまま、縫うようにしてビルの間を歩き回ったが、
ここにはバスキングに適した場所なんてないように思えた。
唯一路上演奏ができそうな記念碑のある街の中心地では
編み物をしたホームレスのおばちゃんが
スターバックスの前に陣取っていた。
僕はそんなおばちゃんと競うつもりは毛頭なく、
「お互い頑張ろうぜ」とニッコリ微笑んでエールを送った。
1時間ほど辺りをウロついていたのだが、
結局僕はいいポジションを見つけられないままでいた。
かろうじて見つけたCity Marketという名のフードコートの前で
僕はギターを構えた。
13時を過ぎると人通りもまばらになり、
なんだかこんなとこで唄っても誰も聴いていないように思えた。
野外での演奏なので、ギターの響き具合もいつもより短く感じるし、
張り上げて唄う声も届いているんだか分からない。
それでもポツポツとレスポンスが集まり、
1時間ほどの演奏で14ドルが集まった。
中にはギターケースの中にキムチの瓶を置いて行ってくれる人もいた。
野菜不足なのでこれはありがたく頂きます♪
ひとまずCity Marketを離れ、
スーパーマーケットに僕は足を運んだ。
そこでパンやバナナなどの食糧を買い、
ベンチに座って買ったばかりのバナナ・マフィンを食べた。
練習をしようとギターを取り出すと、
音を出すより早く警備員が登場して
「ここで演奏はしないでくれ」と釘をさされた。
アメリカではスーパーやマクドナルドの前でギターを弾くスタイルの
バスキングがあるらしい。
まぁ、あざとい感じですけどね。いつかはやってみたい。
食糧を手に入れた僕は、
引き続きバスキングができそうな場所を探したのだが、
やはりインディアナポリスの街にはバスキングに適した場所など
ないことが分かった。
夕方になると
ついに僕の足は限界を迎えた。
街の観光スポットでは消防士体験ができるようで、
どこかの町からバスに乗って大挙した、
胸にシールをつけた大人をよく見かけた。
僕はそんな彼らの中に混ざって疲れた足を休めた。
南アフリカで買ったトレッキング用の少し厚手の靴下を履いているのだが、
そのせいでブーツに当たるのだ。
足は締め付けられるように痛み、
バックパックを背負ったままずっと歩いているので、
足首が悲鳴を上げていた。付け加えるなら足の裏はマメだらけだ。
足を引きずるようにして僕は街の中心地を離れた。
街には川が流れていた。
僕はその川沿いを休み休みしながらヒッチハイクポイントまで歩いた。
意外にアメリカのヒッチハイクに関する情報は少ない。
そのため、いつもヒッチハイクをする前はマップアプリで
ハイウェイの入り口をリストアップし、
ヒッチハイクができそう場所に検討をつけておかなければならなかった。
川沿いを歩いていると、
ランニングをする人たちが多いことに気がついた。
その数は時間が経つごとに増え、
最後の方にはマラソン大会並みの人たちが川沿いを走るようになっていた。
いや、本当にマラソン大会が催されていたのかもしれない。
バックパックを背負った僕が川沿いを歩くのは明らかに邪魔だった。
ひとまずその場から退散し、ヒッチハイクポイントの下見に行った。
僕が検討をつけた一般道とハイウェイの合流地点では
車の止まるスペースがほとんどなかった。
僕は疲労感を覚えて、近くのベンチにへたれ込むと、
持っていた食糧をほとんど食べ尽してしまった。
ヨロヨロとカフェがありそうな場所へと歩いて行き、
SUBWEYを見つけた時には泣きそうになった。
情けない話、マクドナルドやSUBWEYくらいしか僕の逃げ場はないのだ。
ファストフードが体によくないのは分かっているのだが、
僕はここに逃げ込まざる得ない。
ずっと外にいたって何もできやしないのだ。
パソコンのキーボードを叩いて日記を書くことも、絵を描くさえも。
コーヒーだけ注文すると、僕は絵を描いた。
20時から22時半まで作業して、店員にお礼を言って店を出た。
インディアナポリスの街はオフィス街であり、
大学生の街でもあるようだった。
犯罪とは無縁の街のようにも思えた。
ハイウェイ脇の建物の裏は芝生になっており、僕はそこにテントを張った。
ハイウェイに近い場所にはほとんど人は来ない。
だんだん温かくなってくるのがクタクタの僕にとっての救いだった。
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