世界一周697日目(5/27)
アップタウン
からワシントン・パークへの道は
山の麓から頂上へ行くような地形になている。
バックパックを背負ったまま登ると汗をかく。
ましてやテントを張っている場所までは
急な階段を登らなければならないので、
ホームレスもここをあめり寝床には選ばない。
だからよそ者の僕にとってはここは最高のキャンプスポットなのだ。
ポートランド滞在13日目。
ちゃんとバイバイせずにここを去ることはできないだろう。
いつものようにフレッド・マイヤーで身支度をする。
ここにバックパックを背負って入っても、
それは珍しい光景じゃない。
さっきも書いたようにこの街にはホームレスが多いからだ。
格好は旅行者と比べると、薄汚く、犬を連れているヤツもいる。
僕はいつも出入り口付近のレジでスタンバって要る店員のおじさんに
「グッモーニン♪」と爽やかに挨拶をする。
69セントのドーナッツとベーグルを買って、
そのまま三階の個室トイレで身支度を済ませると、
「90分ルール」を意識して日記を一本書き上げる。
Wi-Fiはあるのだが、速度がそこまで早くないので、
ブログのアップはできない。
この街でブログをアップするなら
マクドナルドかスターバックスかカフェにいくのがいいだろう。
いつもと変わらない一日。
長くひとつの街に留まると生活のサイクルができてくる。
9時になると
僕はポートランド州立大学へ行くことにした。
漫画が完成したのでそれをスキャンするのだ。
タダでスキャンできるこの環境も今のうちに利用しておかないと。
ポートランド州立大学のライブラリーのスタッフは
前回とは違うお兄さんだった。
中華系のお兄さんはスキャンのやり方をよく分かっておらず、
「うちではできないよ」なんて泣き言を言う始末だ。
僕は辛抱強く
「この間もここでスキャンしていただいたんですよ?」
と諭してなんとかUSBにデータをスキャンデータを移した。
スキャンを終えて外に出ると丁度講義が終ったようで、
外には学生たちが出歩いていた。
日本のように行き過ぎたお洒落なんてせず、
ほとんどの学生はシンプルな服装をしている。
デイパックを背負ったハーフパンツの学生のTシャツが
少しすり上がってしまっているのを見ると、
どこか幼さみたいなのを感じる。
緑の多いキャンパスの木陰のベンチに腰を下ろすと、
僕はバックパックからブランケットを取り出し、
インド人が電車で移動する時みたいにブランケットを
体全体にかけ、座ったままの体勢で目を閉じた。
涼しい風が僕の周りを流れる。
学生たちがお喋りする声を聞くと大学時代をほんの少しだけ思い出した。
できることなら横になって眠りたいが、
セキュリティにこずかれるだろうな。
1時間ちょっとの昼寝から目覚めると、
そのままノードストームの前へバスキングをしに向かった。
人通りの多い12時から15時くらいが路上演奏にぴったしの時間だ。
ノードストーム前にある広場では
何かイベントが開かれるらしく、何台かのテントが立っていた。
路上演奏を始めた頃は3時間以上やることもあったが、
今は1時間~2時間といったところだ。
喉に負荷をかけ過ぎて別の日に歌えなくなってもしょうがないし、
自分のオリジナルの曲全てと3曲ほどのカバーで終えてしまう。
すれ違う人の中に何人かの顔見知りもいれば、
僕に興味を持って話しかけてくれた人に似顔絵を描く場合もある。
アガリは16ドル。今日もありがとう。
バスキング
を終えバスに乗った。
ダウンタウンから橋を渡り、
“Portland cider house“の前で降りる。
ゆうこと待ち合わせをしてその店に入ろうと思ったが、
どこか雰囲気が違うとゆうこは言った。
少し高めの値段背体、洒落た内装。
そんな感じの店だった。
僕たちは別の店を探すことにした。
プラプラと歩き、気になった店でサイダーとサラダを注文した。
ボブカットの赤い口紅のお尻の綺麗な店員は、
まるで仕事が演技とでも言うかのような立ち振る舞いだった。
どうしてここの人たちはそこまで
自分にすんなりと溶け込めるのだろうか?と関心してしまうことが多い。
「自信あるよねぇ」とゆうこは言った。
出て来たサイダーはビールよりもアルコール度数が高かった。
すぐに酔いが回ってしまった僕はトイレに駆け込む羽目になった。
下戸の僕の頭に浮かんだのは
「吐(と)学」
という哲学だった。
いかにスマートにヴォミット(吐く)するか?
それがこの哲学の主題だ。
もうリバースすること自体が最低に格好悪い状態なので、
いかにそのダメージを軽減し、
スマートに便所まで行くのかが重要なのだ。
一番いいのは一緒に飲んでいる人に悟られないこと。
最低はその場で吐くことだろう。
「あ、ゴメン!ちょっとトイレ行ってくるね☆」
と足早にトイレへ向かう。
往復すること数回。
そう言えば昼ご飯食べてなかったな。空きっ腹に酒はよくないな…。
「次飲む時はちゃんと食べてきてね」
そうゆうこは言った。
むぅ…。
口直しに”BEN&JERRY’S”というアイスクリーム屋で
僕たちはアイスを食べることにした。
ソルト・アンド・ストローと同じく、
ポートランドに数件あるらしいのだが、
ここでの値段は同じくせいに
味自体ははごく普通のアイスクリームだった。
頼んだマンゴー味はどこかエグ味があり、
アルコールのボディブローを喰らった僕の胃には少々キツかった。
店の前ではアコーディオン弾きが夕方にあった
メロウな曲を演奏している。いい演奏なのにケースには
ほんの数枚のコインと1ドル札しか入っていない。
僕たちがアイスを食べている間に、
彼は諦めてアコーディオンをケースに戻し、どこかへ去って行った。
「それで、今日はどうするの?」
「わかんない」
「ローレスハーストだったら
近くだけど」
「うむ。じゃあそこで」
「代々木公園と井の頭公園を足して2で割った」
ようなローレルハースト・パークは静かで居心地のいい公園だ。
芝生の上にはピクニックをする若者たちや、
何かの催し物の練習をするグループなどがいた。
芝生の上の腰を下ろし、
僕はバックパックを背もたれにして足を伸ばした。
「明日アルバータ・ストリートでイベントあるよ?」
「それ行ってから出発するよ。もう他にイベントないよね?」
「う~ん。ないんじゃないかな?」
だんだんと空の色は濃くなり、
公園内にいる人たちの数も少なくなって行った。
「それじゃ、私帰るね」
「うん。それじゃまた明日」
誰もいなくなってから、僕は茂みにテントを張った。
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★ふぇーすぶっくぺーじ
★旅する雑貨屋”Drift”
☆ついったー
孤独好きな性格を守るのに、誰にも迷惑をかけて無い筈だ、という論理は逃げである。
孤独は闘い取る物だ、闘い取られていない孤独は、いつか人の心を蝕む。
- 春樹 -
>JOSANさん
う〜〜〜む。
完全な孤独ってなんなのか考えてしまいました。
無人島で誰とも接触せずに自給自足で暮らさないことには
孤独というのは実現できない気がします。
僕は割と一人で行動、というか旅をする時間が多いですが、
孤独と感じたことはあまりないです。
どこにいても誰かがいるし、誰かと関わり合いにならないなんてことは
ないからです。
だから「孤独」にも狭義と広義があるんでしょうね。
逆に孤独の対義語はなんだ?
「友達が沢山いる?」
別にいいや。僕は僕ですから♪
シミ君、村上春樹は「孤独」を1番感じるのは、大都会に居る時だと語って言います。
「孤独」の対義語は「愛」では、と春樹は説いて居ます。
>JOSANさん
確かに。
「愛」かもしれないです。
そして、大都会で孤独を感じるというのも
分かる気がします。
僕の実家は神奈川県の川崎市という
東京に隣接する町ですが、
孤独と言うか、みんな疲れたたそうな顔をしている印象ですね。
渇いているのかもしれない。