「救命胴衣はケツの下に敷け」

世界一周817日目(9/24)

 

 

「ヨウスケ・シミズ?」

その言葉を聞いて僕は飛び起きた。

 

 

 

うおっ!今何時だ??!!もう5時半じゃねえか!15分遅刻してるぅぅぅ!!!!!

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メキシコシティでまおりさんにいただいたお猿のポソレ。
パナマまでやって来ましたよ♪旅猿です。

 

 

僕は慌てて洗濯物を取込んでパッキングを完了させた。
同室の人間たちも朝早く出発のようでベッドのへりに腰掛けて
傍観してやがる。
くっそ!見せ物じゃねぇんだぞ!

 

 

 

ここはパナマシティ

いよいよこれから
カリブ海の渡ってコロンビアを目指す船旅が幕を開ける!

 

 

 

 

 

外に出るとパラパラと小雨が振っていた。

僕は車のドアを開けると可能な限り申し訳なさそうな顔をして
デイヴィッドと妹さんに謝った。でもこの暗さじゃ見えていないだろう。

車はかなり高級そうな車で運転席と助手席の後ろには
モニターがついているワゴン車だった。

まだこれから他の人もピックアップするとのことだったので、
僕はギターを抱えて一番後ろの席に転がりこんだ。

 

 

車が走り出して1分後に気がついた。

 

 

 

 

『あ…、
パタゴニアのパンツ
干しっぱなしだ..』

 

 

お気に入りのパタゴニアのパンツ。あぁ、5ヶ月間ありがとう。

 

 

っていうか二枚買って
二枚とも置き忘れるって..。

メキシコでも置き忘れたんだよね。
君のことは忘れないよ(涙)

 

 

そして僕の持ちパンツはとうとう一枚になってしまった。
けっこうヤバい状況だと思う。

ノーパンでしのがなくちゃいけない時があるぞ!こりゃあっ!

 

 

 

 

 

車の中ではずっとウトウトしていた。

途中、デイヴィッドの家に寄り、
そこで新たに3人ほど乗り込んで来た。

今回は彼らの私用の移動に僕も連れて行ってもらうのだ。
もちろんお金は払う。

三人とも顔なじみなのか車の移動中は楽しそうに
ぺちゃくちゃとお喋りをしていたが、
スペイン語なので何を言っているかさっぱりだ。
寝れなくても僕はひたすら目を閉じた。

 

 

 

道は途中からクネクネとカーブが連続する道になった。
細い道で両脇には中南米らしいジャングルが広がっている。

すぐに気持ち悪くなったので僕はシートに横になった。
幸い胃には何も入っていない。今日でプチ断食3日目だ。
多分ここで吐いたら出てくる物はハチミツとバナナと胃液くらいだと思う。
だんだんと空腹感に馴れてきたような気もする。

 

 

走りだして2時間ほどたったころに検問があった。
そこで20ドルを支払わされた。

これは他のツアー会社でも聞いていた通りだ。
半年前のブログにはこのような情報は出てなかった。
これはクナ族に対する入域料らしい。

てか取りすぎだろ。

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20ドル…。なんか領収書みたいなのもらえたけどさぁ。高くね?

 

 

そのまま車はウネウネと何回もカーブを曲がり続け、
8時過ぎにはカルティに到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

カルティ

は本当に小さい港だった。
ここからコロンビアへ向かうボートが出るのかかなり不安だった。

デイヴィッドに約束通り25ドルを支払った。
彼とはここでお別れだ。
ちなみにここまでかかった費用は45ドル。マジで高い。

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バックパックを背負うと、
次に向かうのったのは近くのクナ族のオフィス。
そこで今度は2ドルの入港料を支払う

一体このクナ族ってヤツらはど
れだけ金をむしりとっていくのだろう?

 

 

 

デイヴィッドと妹はボート乗り場で
カプルガナ行きのボートがあるか船着き場で訊いてくれた。
だがボートは朝しかないことが分かった。

デイヴィッドの妹は「私たちと一緒まで来る?」と僕に訊いて来た。

僕としてもこんな何もない辺鄙な場所で一泊過ごすよりも、
少しでも先に進みたかった。
見れる景色が多いほどこの船旅を楽しめるだろう。

 

 

話に聞いていた通り乗り込んだのは
20人ほど乗れば満員になってしまうような小型船だ。

救命胴衣を着用するように言われた。
荷物は船の一番前の部分に乗せられる。

ほとんどの荷物はごみ袋のようなビニール袋で覆われていた。
僕はそんなの持っていないので、レインカバーをかけるだけだ。
サブバッグを膝の上に乗せ、ギターは抱えるようにして持った。

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あぁ、いよいよ船旅が始まるんだな。

 

 

しばらくすると船のエンジンがかかり、ゆっくりとボートは岸を離れた。
船旅の始まりってのはいつだってワクワクする。

最初は振動も少なかった。
走り始めてすぐにガソリンの補給をしだすマイペースさに、
僕もまったりとした気持ちになる。まあ、今日は行けるとこまで行こう。

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海に浮かぶガソリンスタンド。

 

 

 

だが、ボートが加速するにつれて振動が来るようになった

そこまで水しぶきがかかることはなかったが
尻に衝撃がくる。
たまらず僕は救命胴衣を脱いで尻の下に敷いた。

救命胴衣は海に投げ出された時に体が浮くような素材でできている。
いわば最高のクッションだ。

事故を起こした時になったらその時着用すればいい。

今大事なのは一刻も早くこの尻に加わる衝撃を和らげることだ。

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ONE PIECEっぽい。

 

 

 

 

しばらくすると雨が降って来た。

どこかの村でボートは停泊した。
雨が振っていると波が荒れるので、ここで休憩を挟むと言うのだ。

ボートの中で待つか、それとも村に立ち寄るか訊かれたが、
僕は村を覗いてみることにした。

旅の中で動くチャンスがあったら留まらずに体を動かした方がいい。
それに何か発見があるかもしれないからだ。

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そこには藁葺きの家々が立ち並んでいた。

一番大きな建物の中には火がくべられ、料理が作られていた。
デイヴィッドの妹がスープがもらえるということを教えてくれた。

クナ族のおばちゃんがニコニコしながらおかゆのようなスープと
甘酒のようなトロトロの液体の入ったコップを渡してくれた。

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あぁ…、火あったけぇな。

 

 

プチ断食と言っても流動食のようなものは口にしていいと思う。
って別に食事をどうするかは自分の判断なので、
僕はありがたぁくこれらの食事をいただいた。

ほんのり塩味。野菜やチキンも入っている。
弱った胃にはベストな食事だった。

 

 

耳を澄ますとどこからともなく鉄琴の音が聞こえた

その音が旅情を掻き立てる。
今いるここはカリブ海でそこに浮かぶサンブラス諸島のちっぽけな島で、
そして今僕はクナ族の出してくれたおかゆを食べている。

最初はどうなるかと思ったけど、ボートを選んでよかったな。

そう思った。

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カリブ海にぽっかり浮かぶトイレ。

 

 

 

 

雨脚が弱まったところでボートは再び出発することになった。

濡れた救命胴衣をさっきと同じようにクッションに代わりにした。
後ろを振り返ったらここまで一緒にきたデイヴィッドの友達たちも
同じようにしていた。やはりみんなケツが痛いのだ。

 

 

雨の後の波は高くなっていた。
波にぶつかると船が浮く。胃がふわっとした感じになり、
次の瞬間には体に「ガンッ!」と衝撃が走る。

水しぶきがビシャビシャとかかり、
乗客たちは横長のビニールシートで必死になって水をよけている。

もうパンツなんて
とうの昔にグショグショだ。

この船旅のために今はサンダル、速乾性のパンツを身につけている。
いつも移動の時に身につけているジーンズとブーツはバックパックの中だ。

雨の後の航海はなかなかにハードだったが、
僕は遊園地のアトラクションにでも乗ってるような気分だった
こんな経験早々できるわけじゃない。

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左上のピンクが出発した港「カルティ」
黄色が目的地のコロンビア。「カプルガナ」。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて

波も収まり、船はどこかの島に停まった。

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そこでデイヴィッドの彼女が乗り換えの船のことを尋ねてくれた。

このままトゥピレという島まで行けば
もしかしたらプエルト・バルディアまで行くボートに
乗れるかもしれないと言うのだ。

 

 

彼女たちは途中の島で降りて行った。

話していて分かったのだが、
彼女たちはヨガのスクールのアシスタントだったのだ。
アルゼンチン人の彼氏が講師らしい。
彼女たちの降りた島はどこかリゾートのような感じがした。

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バイバイ!ここまでありがとう!

 

 

 

ここから僕一人になって船旅は続いた。

15分ほどでトゥピレに到着した。
ここまで5時間ほどの船旅でかかった費用は35ドル

おっ!このままの調子で行けば旅行会社のツアーなんかよりも
全然安く済みそうだ!

乗り換えもジャストタイミングで
プエルト・バルディアの船が停まっていた。いいぞ!

 

 

 

次に乗った船は先ほどのものよりも大きく、
シートにはクッションが敷かれていた。

乗客も少なく、先ほどのものよりも安定した走行だった。

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船は途中どこかの島までガソリンを運んだり、
乗客の乗り降りがあったりと少し遠回りの気もしたが、
これもローカルボートの一つの楽しみだと思う。

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なんだ。やっぱこうなる流れだったんだな。最高じゃん。

 

 

 

 

 

 

2時間もしてプエルト・バルディアへと到着した。

船を降りて僕は運転手のおっちゃんに料金を尋ねた。
デイヴィッドの妹の話によると30ドルらしい。

 

 

「んあ?80ドルだよ?」

「はっ??」

んなことがあってたまるか!
だってカルティから5時間離れたトゥルピで35ドルだぞ!どう見てもそれよりも近ぇじゃねえか!

っていうかそんな金払ったら大打撃だよ!

 

 

僕は納得できなかったし、
「そんな金もってない!」とゴネた。

ここまで一緒に乗って来た現地人のおばちゃんは
財布から20ドル札を100ドル分取り出しごく自然に支払っていた。
いやいや。あなたがどこから来たのかは知りませんが、
いくらなんでも高過ぎっしょ。

 

 

「仕方ないな。じゃあ70ドルでいいよ」

「アホか!」

 

 

僕らがモメていると迷彩柄の服を来た警備員だか軍人がやって来た
僕は筆談でこの料金に対する不服をもし立てた。

迷彩服の男は「50ドル」だと言う。
国家権力を持つ人間がそう言うのだから..くそ..。

僕は渋々50ドルを支払った。

一応明日の移動にいくらかかるのかも訊いておいたが、
ここからコロンビア側のカプルガナまで
25ドルから30ドルかかるとかいいやがる。

おいおい。カプルガナってすぐそこだろ?
だからなんでそんなに金がかかるんだよ?

 

 

ここままでかかったお金は

①パナマシティ~カルティ45ドル
(20ドル:クナ族入域料/25ドル:車代)

②クナ族入域料2ドル

③カルティ~トゥルピ35ドル

④トゥルピ~プエルトバルディア50ドル

 

 

トータル132ドル

数ヶ月前のツアー会社の187ドルとほとんど変わらねーじゃん。

とりあえず今日の移動はここまでだ。
イミグレーションは16時までしか開いていないらしい。
現時刻で17時半。

 

 

 

 

僕はプエルト・バルディアで宿を探すことにした。

最初に道を尋ねたのは国境警備員みたいな迷彩服の男たちだった。
タチの悪いバカが一番厄介だ。

外国人をからかってそれで面白がっている。
謝った道を教えられたので、ムシして村の中心地へと向かった。

歩いてみると黒人が多いことに気がついた。

 

 

 

ここには何軒かホテルや宿があるようだが、
ここに住む人間はどこか頭がおかしいみたいだった

一件目の宿にはオーナーがいなかった。
ここに泊まっているヤツにオーナーの居場所を尋ねたが分からないと言う。
どういうわけだかソイツは宿泊料すら分かっていなかった。

他の宿は明らかにコストパフォーマンスの悪いものだった。
汚い狭い部屋で10ドルも取るのだ。
ここで泊まらざる得ないツーリストのことを知った上での値段設定だ。
タチが悪い。

 

 

それにそこで寝泊まりしているヤツらがどうも胡散臭かった。
バックパックを置いて外に出ようものなら
何か盗まれてしまいそうな気がした。

また宿の周辺ではどこかのカリブの国出身のヤツらが
10人くらいの小さなコミュニティを作って
テント泊のようなことをやっていた。
彼らの近くにテントを張るなんて論外だ。

シャワーはどうしているのか尋ねると彼らの一人が
「川に行くのさ!」と言った。なんだコイツら?

 

 

 

プエルト・バルディア自体はほんとうに小さい村だったので
10分もあれば歩けてしまうような場所だった。

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国境直前の村ということもあって、独特の雰囲気が漂っている。
ゆるいっちゃゆるい。

結局僕は村の端っこのほうでテントを張ることにしたのだ。

現在プチ断食3日目。口にしたものはハチミツと
途中で立ち寄ったクナ族の村でもらったスープのみ。
今は胃の調子を元に戻すためにあまり食事をとらないようにしている。

空腹はそこまで感じないのだが、
普段よりもイライラしやすくなっていた。

 

 

村の食堂でスープがないか探したが、どこにもスープを売る店はなかった。

どれも胃腸に負担をかけそうな揚げた肉と豆かコメ。
野菜なんてほとんどない。

いや、マジ、コイツらの食生活ってどうなってるんだろう?
誰も体のことなんて気遣ってないんじゃないか?

 

 

村のはじっこの方にある売店で
バナナを二本と4枚入りくらいのクッキーを二袋買った。
空腹感を感じるのは血統値が下がったからだ。
糖分は食べ過ぎなければ摂取してもオッケーってことにする!
黒糖とかがあれば言うことないんだけど、今はしょうがねーべ?

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テントを張るともう何もする気にはなれなかたっし、
こんな辺鄙なところで作業なんてできっこなかった。

起きていてもイライラするだけなので19時には寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜1時に雨が降り出した。

耐水機能なんてほとんど失われたテントの中には
みるみるうちに水が入り込んで来た。

雨が止むのを待っていたが、
僕はすぐ近くの食堂の屋根の下に非難することを決めた。
10mくらいの距離を何度か往復して荷物とテントを移動させた。

 

 

 

この時ばかりはボート・トリップを選んだことを非常に後悔した。

 

 

 

164ドル払ってサクっとコロンビアのメデジンまで行ってしまった方が
断然安くて快適だと思う。

そしておれが思い描いていた船旅はあったのだろうか?
てかなんでおれこんなに惨めなの?

あぁ…。マジでキツい..。

 

 

野良犬の姿が見えた。
だが僕という先客が屋根の下にはいたためか、
しょぼくれて雨の中を去って行った。

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