「今日は警察署で眠ります」

▷ペルー、ピウラ

 

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「ポリシア!ポリシア呼んでください!」

そう僕は店員に行った。僕のサブバッグを置き引きしていった犯人二人の姿は一瞬で見えなくなってしまった。

しばらくして警察がやって来きた。僕は警察署に連れて行かれることになった。

 

 

頼みの綱は店内に設置された監視カメラだと僕は思った。

またしばらくすると英語の喋れる女性警官がやって来た。彼女は「私、そんなに英語が喋れないから」と言ったが、彼女には想像力が圧倒的に足りなかった。僕は何度も盗難の状況を説明しなければならなかった。

それでもその女性警官は終始Google翻訳に頼ろうとするし、「犯人がここにいないんなら、捕まえることはできないわよ」と言った。マジ使えない。

僕は地団駄を踏んだ。彼女に当たっても何も事態は進展しないのに…。ちなみに彼女がした「仕事と呼べること」はポリスレポートを発行したことくらいだった。

 

僕はサブバッグの中にほとんどの貴重品を入れていた。それがバックパッカーとしての生命線だった。手持ちのお金はポケットの財布に入った25ドルのみ。数時間前におろしたペルーの通過もサブバッグに入れていたままだった。

『マジ終わった…』僕はそう思った。

 

幸か不幸か警察署のWi-Fiはサクサクだった。まず僕はクレジットカードのストップ&再発行をかけ、親に送金を頼み、そして近況をSNSにポストした。こういう時に誰かに声をかけてもらうことがどれほど大切か。みんな、マジでありがとう。

 

この日は警察署に泊まることになった

割り当てられたベッドに眠ろうとすると、事情を知らない別の警察が「おいおい変なヤツがいるぞ!」と僕を部屋から追い出した。

この日僕が寝たのは廊下におかれた二台のベンチの上に敷かれたマットの上。初老の夜番の警察共が音量のデカいのテレビをずっと見ていた。

この国でも警察の仕事は、そこらへんの小さな売店で一日中暇そうにしているおっさんたちとなんら変わらないだろう。
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翌日6:30に起こされた。ベンチに座って項垂れる。失った貴重品の重みがズシリと胸にのしかかった。

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だが、いつまでもこのままでいるわけにもいかなかった。このあとどうするのかは自分で分かっている。

どこかで同じような被害に遭った人のブログを読んでいた。リマに行けば日本大使館がある。そこでパスポートが再発行できる。現金はパスポートがあれば送金してもらえる。リマには日本人宿がある。そこに事情を説明すれば支払いを待ってもらえるだろう。

 

 

ピウラの警察署のツーリスト向けの部署はデパートの迷子センターのようになっていた。そこにはエクアドルの出国スタンプを押されなかったフランス人の女のコが二人いた。彼女たちも警察の理解力のなさに腹を立てていた。彼女たちはバスで再び国境へと戻されることになった。

 

対する僕がまずやったことは、ウェスタン・ユニオンで送金されたUSドルを受け取ることだった。

通常ならパスポートがなけば送金は受け取れないことにっているが、警察の口利きもあり、iPhoneに撮った写真を提示して送金を受け取ることができた。810ドル。約10万円。すぐにブーツの中に300ドル分を隠した。

 

そして100ドル分を両替してリマ行きのバスチケットを買った。90ソル。三千円ちょっとだ。

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バスの時間までは再び警察署で過ごすことになった。

ウィリアムという警官は優しく、僕によくしてくれた。シャワーも浴させてくれたし、昼ごはんもおごってくれた。なんだよ?このツンデレ。ありがとうウィリアムさん。超暇そうにしてテレビ観ながら「ははは」って笑ってたけど。

お礼に似顔絵を描いた。(っていうか向こうがリクエストきてきたんだけど)

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警察に置き引きの犯人を捕まえる気配は一切見られなかった。ガソリンスタンド併設のカフェの監視カメラを調べるそぶりさえ見せなかった。僕は諦めた。もう、やるしかねーだろ。こんなとこで負けてられっかよ。

 

 

バスターミナルまでは警察が送ってくれた。

バスターミナルの入り口でバナナチップスを一袋買ってバスに乗り込んだ。

17:00にバスはリマに向け走り出した。覚えていることは「ジュラシックワールド」を観たことと、晩飯が出されたこと、そして窓の外にはずっと荒野が続いてたことだ。

『これで宿に着く前に襲われたら完璧ギャグだな』

僕はそう思った。

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4 件のコメント

  •  おやおや、災難でしたね。

    私もキトのバスでスリに遭いましたが、被害は60ドル程度でした。チャリダーの友人はパタゴニアを南下中に荒っぽく襲われたそうですが、お気をつけて無事に帰国してください。聞いた話ですが、ヨハネスブルグで強盗に遭った旅行者が領事館に被害届とパスポートの再発行に行き、数日分の生活費を借りて宿に戻る途中に再び強盗にやられたそうです。まあ世界旅行中に何度かトラブルに遭っても円が昔のアルゼンチンペソみたいに暴落しなけりゃ数年後には笑える話になるでしょう。ちなみに強盗に襲われた友人はウシュアイアで指の骨折が完治した後にペルーで病に倒れて灰となって帰国したみたいです。彼のように親不孝をしないことを願っています。

    • >citydeさん

      コメントありがとうございます。

      二度ある事は三度あるとどなたかがおっしゃったように、旅にこの手のトラブルはつきものだと思います。 知っていれば防げたこともあるだろうし、知っていても不可抗力的に被害に遭うこともある。

      旅も残りわずかなので、無事に帰国したいと思います。

      あー、それにしても
      iPhone4Sをアップグレードしたら逆に不便になったのには頭を抱えさせられます。

  • すごく文章が良くなったように思います。
    キヌア という食品がとっても体にいいみたいですが、
    南米ではよく食べられているんですか?

    • >あっきーさん

      あ!それ食べた、というか飲んだかも!
      盗難に遭う前ですけど、メルカドで「胃に優しい」っていう、鼻水みたいにドロドロした半透明の液体を漢方みたいに苦いお茶といっしょに飲みました。それかな?

      文章の感じはiPhoneからだと全然違うんですよ。感覚にしても書きごこちにしても。
      うまくなったのかなぁ…?
      お褒めの言葉ありがとうございます♪

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