「イクゾーくん、元気ですか?」

1月21日/オーストラリア、シドニー

 

 

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イクゾーくんのことを知ったのは、金丸文武さんのブログに彼のことが紹介されていたからだ

僕も人のことは言えないんだけど、バスキング(ストリートパフォーマンス)で世界を旅した(当時していた)金丸さんの影響を受けて、ギター歴わずか九ヶ月、持ち歌10曲でオーストラリアにやって来たイクゾーくん。彼のことを知ってから僕は彼のブログを最初っから全て読み通した。

常時金欠状態で、時には(いや毎回か)何かに悪態をつき、そのギャグセンスたるや、一読者として一気にイクゾーくんの世界観に取り憑かれてしまった。僕はキャラ立ちしている人を見ると、思わず漫画に描きたくなってしまう。

 

ノービザでオーストラリアに滞在できる三ヶ月のうち、最後の一ヶ月はシドニーに滞在していたイクゾーくん。そしてその滞在のほとんどを寝床としていたのが、このイクゾーハウスなのだ。ちなみに野宿旅の先駆者でもある金丸さんも彼と一緒にここで寝泊まりをしていた。

 

同じように現在進行形でバスキングで世界を旅するゾロさんのブログは、たまに読ませてもらう程度なんだけど、確かゾロさんがイクゾー・ハウスに来た回は読んだ気がする(てか、オーストラリア来て思ったんスけど、地元のバスカーに負けずに稼げるゾロさんの凄さがようやく分かりました!)

 

 

 

僕がこの「イクゾー・ハウスに」にやってきたのは、シドニーで一ヶ月奮闘したイクゾーくんに対する、なんて言うのかな?「お参り」みたいなものだったのだ。

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いや、昨日はマジですごかったよ。

「イクゾー・ハウス」の正確な場所なんて記されてなかったから、彼のブログの写真から位置を予想して探したんだからね。決め手となったのは橋の見えるアングルと観覧車かな?

まぁ、シドニーに来た目的ひとつは果たしたわけだ。僕はテントを片付けるとダウンタウンへと降りて行った。

 

 

 

 

 

 

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この日のシドニーは湿度が高く蒸し暑い日だった。僕はホームレスみたいな格好をしてオフィス街をウロついた。

トイレを借りたスポーツジムでTシャツを洗濯した時に石鹸とタッパーを置き忘れてしまった。やっぱ個室トイレじゃないといつ人が入ってくるかビクビクしてるんでダメだね。あーあ、せっかくかったオーガニックソープがぁ…。

 

 

 

それで僕は図書館に作業に向かった。

こんな暑いなかで動き回りたくなんてなかったからさ。

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図書館のWi-Fiで調べたのは「どこでシャワーが浴びられるか?」ということだった。

ニュージーランドだったら稼ぎもよかったし、ホステルに行けば400円くらいでシャワーが借りられたんだけど、ここだともうちょっとは高いんじゃないかな?

何軒かシャワーの浴びられる場所(市民プールとかそんなだ)がヒットしたんだけど、そこへ汗だくで歩いていくのも違う気がした。

 

 

夏のオーストラリア旅の課題は、どう体を清潔に保つかということだろう

野宿していて清潔もクソもないんだけど、湿度があるだけでこんなにも気持ち悪さを感じるだなんて思わなかったぜ。

 

 

 

それで僕がどうしたかと言うと、結局は図書館の個室トイレで体を拭って、頭も洗っておいた。

世界各地のシンクを見てきたけど、オーストラリアのシンクは頭を打っ込むには蛇口がかなり低い場所に設置されている。だから僕はうなじの方は洗うことができなかった。ちなみにイクゾーくんは朝方のデパートのトイレで頭を洗っていた。

 

いつものように洗濯したTシャツを濡れたまま来たんだけど、図書館はアホみたいに冷房が効いていたので僕は凍えてしまったね。最後の方にはタッチパネルを触る指の感覚がなくなってしまうほどだった。

そんな図書館から逃げるように外に出ると、「ムワッ」とした空気が一瞬にして僕を包んだ。

 

 

僕は一人で「ヴァンパイアゲーム」をすることにしてこの暑さを紛らわすことにした。僕はヴァンパイアで日陰から出たら僕の体はダメージを負ってしまう、とかいう設定だ。いいんだよ。漫画家はこういうくだらない妄想をしても。

それでうまいこと日陰を歩きながら、僕はシドニーの街を歩いてみた。時間帯のせいもあったろうけど、感じたのはこの街が「ビジネスの街」のように思えたことだった。

スーツを来た人間が無表情に街を行き交っていた。もちろん繁華街もあるんだけど、僕にはここがバスキングに向かないような街に思えてしかたがなかった。

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はうぁっ!ついつい新しいペンを買ってしまった!

 

 

 

 

そう。僕もこの街でバスキングをしようと思ったのだ。

まずはフィールドワークから。自分の足で歩き、どこがパフォーマンスをするのにいい場所か探っていく。

歩いている最中にベロボーにうまいギター弾きなんかがいたけど、バスカーそのものは多いようには感じなかった。

 

二時間も歩き回っていると、だんだん僕はこの街にうんざりしてきた。もはや観光地には興味がないので、オペラハウスはまた次回。

 

それでもウールワース(スーパーマーケット)に行ったついでにタウンホールの近くの地下道でギターを弾いてみることにした。湿度と緊張で顔からは汗が滴り落ち落ちていた。

歌っている最中にホームレスのおばさんはめちゃくちゃ顔をしかめて「シャラップ!」って言ってきたのには苦笑を禁じざるえなかったな。だってそこにいるホームレスのほうが 僕よりも稼いでいたわけだから。

そして、三曲もやらないでセキュリティにストップされた。

 

 

 

 

再び地上に出るて歩いていると、僕はちょうどいい通りを見つけた。

既にそこではインストのバスカーが麗しい音をアンプから出してパフォーマンスをしていたんだけど、僕は絵もあるからね。適当な場所で路上漫画屋を始めた。

まぁ、何人かの人が足を止めてくれたり、イラストが一枚売れたりしたんだけど、似顔絵のオーダーまではいかなかった。

 

 

 

 

 

『あーーーー、レスポンス冷てえなぁ…』

そう思っていると、面白いヤツが僕に声をかけてきた。

 

 

17歳のハミンは韓国人と日本人のハーフだったが、日本に住んでいた期間が長かったせいで日本語が喋れた。シドニーには五年前から家族と一緒に暮らしているらしい。

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最初彼は自分のことをピアニストだと言った。

それから話していると、「ゲームはやりますか?」という質問になって、そこから彼という人間の面白さが分かってきた。僕はこんなぶっ飛んだヤツに会うのは初めてだったかもしれない。

 

 

「僕はプロゲーマーでもあるんですよ」

「え? どういうこと?」

「ゲームでお金を稼いでいます」

そう言ってハミンは僕のiPadを使いWi-Fiを拾って、自分のYouTubeのチャンネルを見せてくれた。そこにはアニソンをカバーしたピアノの演奏動画の他に、ゲームの実況中継の動画が何本もアップされていた。

 

 

「へぇ。それでどれくらい稼ぐの?」僕は何の気なしに尋ねてみた。

「むふふ♪知りたいですか?」ハミンはもったいつけたあと、「一週間でこれくらい」と、スケッチブックの裏に「$4000」と書いた。

 

 

「はっっっ!お前超すげえじゃん!今の僕の全財産をさらっと超えてやがる‼︎」

「だってそうですよ。僕はプロゲーマーなんですから?僕が一日に何時間ゲームやるか知ってます?」

「いや、知るわけないって」

「10時間やってます。10時間ピアノの練習して、10時間ゲーム。自由な時間が4時間しかありません。だから彼女もいないです。」

 

 

彼はピアニストの仕事は週に三日しかないのだという。

それ以外は毎日いきつけのネットカフェに行って夜の22時からよく時の8時までゲームをするのだとか。彼はその店ではVIP扱いで格安で居座れるのだとか。そのネットカフェで眠るらしい。

 

 

「それで、稼いだお金の半分はゲームに使いますね」

「はいっ⁈」

 

 

 

 

雨が降ってきたので僕たちは近くのショッピングモールに入り、僕はハミンの話を聞くことになった。

そのゲームというのが、アメリカで作られオンラインゲームでプレイヤーは世界中に800万人いるらしい。プレイヤー同士がバトルし、レベルとランクを上げていく内容なんだとか。それでハミンはその800万人いる参加者のなかでランキングが一位なんだとか。なるほど、そりゃYouTubeでも稼げるわけだ。

 

 

「そのゲームでライバルとかいないの?ランク二位のヤツとかは?」

「僕たちはチームを組んでいるんですよ。ランキング五位までは仲間です」

最初は強いヤツら同士がつるんでいるのかとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。

 

 

 

「ランク二位から五位までは僕の家族です♪」

 

 

毎日二時間家族でゲームをプレイする時間はあるらしい。内容は他のプレイヤー狩だ。家族のメンバーそれぞれに異名があり、ハミンはそのゲーム内で「首切り残(ざん)く」と呼ばれているんだかいないんだか。

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「こうね、後ろから隠れて殺すんですよ♪」『お前はどこの暗殺一家のメンバーだ!』

 

 

話を聞いていて僕が思ったことは、いったい誰がそのゲームをやろうとしているんだろう?他のプレーヤーはそのゲームの何に面白さを感じているのだろう?ということだった。

ゲームの世界内で武器や道具を売る、商人にもなれるらしいのだが、ハミンは彼らを殺して武器と金を略奪しているらしい。え?そんなことしていいの?

こうしてランキングが一位に四年間も君臨している人間がどんな風にゲームをプレイしているのかを知ると、僕としては絶対にそのゲームなんかやりたくないと思ってしまう。そもそもゲームすらやらねーしな。

 

ハミンはほんとうに楽しそうにそのオンラインゲームのことを話した。ゲームと結婚するんじゃないかってくらいだ。

 

 

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外に出るとまだ雨は降り続いていた。

僕たちはなんとなく文房具屋に入ったのだけれど、僕が画材を眺めている間にハミンはどこかへ消えてしまっていた。きっとゲームをやりにいったのかもしれない。一位を死守するために。

というかそもそもこの話自体が嘘だった、のかもしてない。

手がかりは彼の教えてくれたゲームの実況動画のみだ。

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物語シリーズ観たいなぁ…。てか上のはピアノの演奏動画だね。でもアカウントは同じか。

 

 

 

 
シドニーにあまり魅力を感じなかった僕は、そのまま電車に乗ってヒッチハイクポイントまで向かってしまうことにした。

8.6ドルで郊外行きの電車に乗り、ベタベタする体と共にさっさとシドニーから抜け出してしまった。

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