3月4日/台湾、台南
台湾を出発するのは三月十八日だ。
台北から韓国へ行く。
なんでも26日までに地元に帰れば相棒のまおが僕に酒をごちそうしてくれるらしいので、韓国はトランジットのつもりで釜山からフェリーに乗って福岡に行ってしまおうと思う。
だから僕の帰国日は19日か20日といった感じになるんだろう。それまで西日本にはヤボ用もあるしね。
ということは
僕が台湾にいれる日数は
残り14日間ということになる。

マジで早く髪切りたい!
僕はこの二週間をどう過ごすのがベストなのか考えてみた。
旅の最後のテーマはバスキングだ。路上で漫画や似顔絵を描くことによってできるだけ沢山の人と話し、オーストラリアの時のようなケミストリーを起こしたい。それにバスキングで稼いだお金は僕の日本での新しい活動の資金になる。
まぁ、この間も書いたけれど、パソコンが欲しいのだ。MacBook Proね。
日本に帰ってからはデジタルで漫画を描いたり編集したりすることにもチャレンジしていきたいと思っている。
フリーランスの漫画家がどこまで生きていけるのか?取り入れられることはガンガン取り入れていった方がいい。
最初からうまくいかないのは当たり前。トライアンドエラー。ミスを重ねて修正すればいいだけのこと。スケートボーダーのトリックの練習のように。
「バスキング▷新生活への準備▷漫画」
がラストのテーマ。
今は似顔絵を描く時間が多いけど、日本に帰ったら漫画の執筆がメインになるはずだ。引き出しを増やすという意味において、この活動は無駄にはならないはずだ。

一体誰がこれを描いたんだろう?哀愁漂いすぎて思わず立ち止まったよね。ギャグかな?
今日は市民プールでシャワーを浴びた後はいつもの流れでスターバックスで作業タイム。少し早めに切り上げて文房具屋に足を運んだ。
ようやく文房具の質が上がってきたように思える。台湾は食事からファッション、コスメまで日本の影響を受けている。
やっとカートリッジ式の筆ペンに出会えるようになった。売られているのは中国製/台湾製のものから日本製まで。もちろん日本製は少し高いのだが、適当に〜三本をチョイスしてバスキングで使ってみることにした。
ニュージーランドのウェリントンから使ってきたPOSCAの筆ペンはそろそろインクがなくなってきたので主戦力からは外れてもらうことにした。10ドルもしたんだけど、今までの僕のバスキングを支えてくれた。お疲れ様。今度はかすれ感を出す時に力を貸してくれ。
新しい筆ペンを手に入れると僕は台南駅前へと向かった。
すぐにオーダーが入って調子が良さそうに思えたのだが、すぐに警察が登場し僕は場所を移らざる得なかった。



メカはむずい…。
他にバスキングができる場所はないものかと、台南の町で人が集まりそうな場所を探していたのだけれど、やはり見つからなかった。
この町で僕と同じようにバスキングをやっている元ヒッピーの笛吹きのアメリカ人のおっちゃんは「隣町に行くよ。そこならバスキングができるからね」と言って雑踏の中に紛れ込んで行った。
台南には何組かのバスカーがいる。
一人は僕で、もう一人はキーボード弾きのタカシさん。それに今書いた笛吹きのおっちゃん。地元の弾き語りのバスカーが二〜三人。
中でも一番稼いでいるのはアレックスという名の弾き語りバスカーだろう。ちゃんとライセンスまで持っているのだ。

弾き語りはすべて英語の曲オンリー。ハーモニカを何本も持っている。薄暗い地下道の中で譜面台を立てて歌っているのだ。歌う時間も確実に稼げる16時から19時。喋ってみると、とても気持ちのいい人なのだけれど、彼がそこにいる以上、他のバスカーにチャンスは回ってこないであろう。
よくよく考えてみると、台南駅はどちらかといえば地元の人間が多く行き交う場所だ。その人間がほぼ365日代わる代わるやってくるバスカーにコインや紙幣を与え続けるものだろうかと僕は疑問に思う。だんだんと慣れてきて、やがて見向きもしなくなるのかもしれない。そういう地元型のバスキングスポットのレスポンスが枯渇することはないのだろうか?いつかはなくなると言われている石油のようなものなのか?まぁ完全にはなくならないものなのかもなぁ。
僕は写真を撮らせてもらうときは必ずコインを入れているし、単純に『あ!いいな』と思ったら同じようにレスポンスしている。自分がバスカーだということもあり、ちょっとした挨拶みたいにとらえていることもあるけど。

エグイくらい稼いでいる…。

てかライセンスあったんんだ。
僕が地下道の外でタバコを吹かしながらどうしたものかとぼんやりしていると、昨日似顔絵を描いたカップルがやって来た。
渡されたのは僕の似顔絵だった。

水彩画用の厚手の紙に着色が施され、なんと額に入っていた。
なんだか『やられたな』と思った。こんなサプライズってありかよ?
僕は200台湾ドルくらいを渡そうと思ったのだけれど、彼らはお金を受け取ろうとしなかった。
いや、でも、昨日似顔絵のオーダーをくれて、さらにこんな素敵なものまで貰えるだなんて…。
二人は必死にGoogle翻訳を使って僕とコミュニケーションを取ろうとしてくれた。
「次はどこに行くの?」
「台北、かな?」
「いってらっしゃい!」

そう言われたときに、僕は今日この町を出て行くことに決めた。
二週間だなんてキリのいい時間じゃないか。台北でみっちりバスキングをしよう。
僕が今日の日まで台南にいたのは、きっと二人からこの絵をもらうためだったんだろう。
絵をくれたカップルと別れると、僕はすぐにバスのチケットを買った。深夜2時発。
それまでの時間、弾き語りのバスカー、アレックスと19時で交代し、一時間だけ歌うと、後からやってきたタカシにバトンタッチをした。
タカシさんは以前僕に100台湾ドルをくれただけでなく、今日は僕に今川焼きのようなお菓子の差し入れをくださった。そして決して僕からのお金は受け取ろうとしなかった。そこにプライドのようなものがあるように僕には感じた。
バスキングを切り上げると、僕はモスバーガーで時間をつぶした。
日本ではあまりみかけないモスバーガーも台湾にあったりする。店舗数はけっして多くはないが、そのどれもが24時間営業なのだ。掃除の時間で一階席に追いやられたりもするけど。

モスバーガーで日記を書いた後はセブンイレブンにWiFiを求めてハシゴした。
さぁてと、台南ともいよいよお別れだ!温かかったぜ!
さらば!

いつも楽しく読ませてもらっています。
台南で出会ったキーボード弾きのタカシさんという方は、かなり年齢のいった眼鏡をかけた青いパーカーを着た人でしょうか?俺も台湾に居た時に1週間程その方と同じ宿に泊まっていて親しくしていた時期があったので、元気にしておられるのか気になりました。
シミさんの文章も漫画もとても好きですよ。長い事楽しませてもらってましたがそろそろ帰国してしまうんですね。残りの旅も気をつけて楽しんで下さい。
>俺という旅人さん
タカシさんとお会いしたことがあるのですね!
物腰の柔らかないい方でした(そして欲がない)
カウンターカルチャー全盛期で活動していたこともあるらしくお話も面白かったです。
感想ありがとうございます。
これから本腰を入れて漫画の方も描いていきたいと思うので、
またよろしければ読みに来てください。
コメントありがとうございました♪