▷野宿と海

 

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「野宿しようぜ!」

 

そう友達のこうたつから
Facebookのメッセンジャーで電話がかかってきたのは

夜10時半。

 

 

 

「え?どこで?」

「まぁ、とりあえずさ、江ノ島来てよ!」

「い、嫌だよ..」

「そんなぁ〜!もうこんなことできるチャンスないよ?おれらと夏の思い出作ろうぜ?」

 

 

こうたつはご機嫌で僕を口説いてきた。

何もそのはず。彼はついさっきまでBUMP OF CHICKINのライブを観てきたところなのだ。ビデオ通話に切り替えると画面の向こう側ではジョッキグラスが写り込んだ。

 

 

いやいや。ちょっと考えてみてほしい。

君はライブが終わって楽しくってそのノリで野宿しちゃうんだろうけど、僕はどうよ?

絶望的に金欠で家に引きこもってたいのに(ただでさえ最近はちょっとウツ気味だったんだ)、わざわざ野宿するために江ノ島まで行くのかい?

おれはアホかなんかか!!??

 

 

 

「え〜〜〜!来なよ!今からだったら終電間に合うからさ。わかった!おれが交通費とその他もろもろ出すからさ。な?」

その一言に心が揺れた。

 

 

「う〜〜〜〜…。

わかった。行くよ」

 

 

 

 

よく考えてみたら、

こういうアホやろうって誘ってくれることは僕にとって救いなのかもしれない。

最近気分がふさぎ込んでいたからこそ、僕をそこから引っ張りあげてくれる誰かがいてくれるということは幸せななんだろうな。

僕は気持ちを切り替えて、すぐに準備を済ませると地元の新百合ケ丘から片瀬江ノ島駅まで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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江ノ島に到着したころには夜は一層深まっていた。

こうたつたちはまだ集合場所には来ていなかった。

 

何の気なしにiPadでWiFiを探してみると、そこには「Odakyu free WiFi」名前のWiFiが無料開放されていることがわかった。さすが観光地!

僕はそれを頼りにこうたつと連絡を取った。

 

 

 

 

24時を過ぎた頃に江ノ島で野宿するアホ4人が集結した。

そのうち一人は今日の野宿のために、中古のテントを買ったという。

 

 

そして、まさかの発起人のこうたつはテントを持っていなかった。

大きめのデイパックの中には遊び道具しか入っていなさそうだ。肩からはビニール袋に入った靴箱のようなものを持っていた。ツアーグッズである猫のぬいぐるみだった。うん。思わず買いたくなるような良いライブだったんだろうね♪

 

 

 

 

「で、今日の野宿、どうするか決めてあるの?」

「いや、全然」

「は、ははは..。」

僕は呆れながらに笑う。わざわざ野宿するために遠路はるばる江ノ島の海までやって来た自分に対しても。

 

 

 

 

 

 

 

駅から5分も歩かない海岸の砂浜の上に僕たちはひとまず腰を下ろした。

こうたつはバッグからレジャーシートを取り出して砂の上に引いた。

 

 

今日野宿するメンバーはこうたつと僕の他に2人

一人は同い年ののりくん。彼はドンキホーテで買ったという三千円のスピーカーでBGMを流してくれた。そういう雰囲気を盛り上げるグッズはマジ大事!

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もう一人は21歳の男、ジャスティン

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ちなみに外国人ではない。

 

 

彼の服装といったらそれはヒドイものだった。

マリン・テイストの太めのボーダーTシャツにショートパンツ、そしてスニーカー。首にはスカーフを巻いてまいており(他の二人にめっちゃツっこまれてた)、手には大学生が教科書を入れるのに使うような黒いビニールバッグを持っていた。明らかに野宿する服装じゃない!

そんなご機嫌なメンバーで僕たちは酒を飲みながらくだらない話や青い話を続けた。

 

 

 

 

 

 

ビーチには僕たち以外の人間もいた

同じように車座を作って酒を飲んでいるグループが30メートルほど離れた場所にいた。

二人組の外国人が海岸線をチルアウトしながら僕たちの前を歩き去った。

男女のグループが花火を持ってキャピキャピと追いかけっこをしていた。

みんなそれぞれに夏の海を楽しんでいた。

日本の海はとても平和で、誰も僕たちの邪魔をする人間はいなかった。

ここには口うるさい警察官もいなければ、発狂するドランカーもいない。目の座ったホームレスだっていない。

旅の中でそういう人間を目の当たりにしてきた僕は、日本の海がいかに平和であるか感心してしまった。みんな最低限のプライバシーみたいなのを守っているのだ。

 

 

 

 

 

最初は江ノ島の海で野宿だなんてと思っていたが実際に夜の海にやってくると、そこがとても気持ちのいい場所であることがわかった。

 

 

江ノ島の海。海岸線に続く山のシルエット。灯台の明かり。波の音。夜風は気持ち良く、寒さは感じない。

バカな話をして笑合う友達。彼らと飲む安酒。コンビニで買えるつまみの適度な塩加減。

 

 

あぁ、僕はいつか、今みたいなシチュエーションを漫画で描いてみたい。

いや、いつか必ず僕はこれを漫画に描くだろうな。

 

 

 

 

のりくんは買ったばかりのテントを立てて入ったっきり出てこなくなった。きっと中が快適なんだろう。

こうたつはバッグを枕にしてレジャーシートの上にそのまま寝てしまった。何枚か重ね着をしているから別に寒くはないのだろう。

ジャスティンはーー..、

限りなく全裸に近い格好で一心不乱に砂浜に穴を掘っていた。

まるでそれが自分に課せられた人生のテーマか何かであるように。

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愛すべきアホどもよ。

僕は君たちの幸せを願うぜ。

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ちなみに野宿を愛する方々のコミュニティ野宿野郎ってのがあるらしい。

いつかは僕も参加してみたい笑。

 


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