[ad#ad-1]
遠足の前日
はワクワクして眠れない小学生はこの世界にどれくらいいるだろう?
そして、そのうちの何人が寝過ごして心に傷を負っただろう?
僕の母親はそんなかわいそうな子供の一人だった。
彼女は修学旅行でそれをやらかしたらしい。
なぜ祖父と祖母は母親のことを起こしてやらなかったのだろう?と、その話を思い出すたびにいつも疑問に思う。
人は寝過ごすことによって、一生消えないような深い傷を負うのだということを身を以て学ばせたかったのだろうか?
うん。そうだ。それが祖父母の教育方針の一環だったんだろう。痛みを通して人生の教訓を学ばせることが。
僕はその話を知っているからこそ、寝過ごすことには人一倍の恐怖をおぼえている。
だからこそ、ここへ来る時にはあえて睡眠をとらなかったのだ。
寝過ごすくらいなら睡眠時間を削って、意識が朦朧としても、僕は苗場へ行く!
そんな決意で臨んだ前夜祭。
そのせいもあってか、一日目におきたのは12時前だった。
っていうか、昨日寝たのかなり遅かったしなぁ..。

関西のふたり。
フジロック二日目。
正確には今日からアーティストのライブが始まるのだが、前夜祭から参加するフジロッカーたちにしてみたら今日は二日目でもある。
窓の外には仮設トイレが立ち並び、その向こう側では来場者たちが途切れることなく入場ゲートへ流れていくのが見えた。
時間的にライブは始まっているのだろう。こうして遅くに起きて来るとなんだか損をした気分になる。
ボヤボヤする頭を抱えて僕は身支度を済ませると外に出た。まずは行かなければならない場所があった。

これってトリミングしないと意味ないよね。いや、写真の撮り方が問題だったのか..??!!
去年のフジロックから「バスカーストップ」という名の来場者が飛び入りで参加できるステージが、かつてオレンジコートがあった場所にできたのだ。
このステージでもアーティストたちがライブをするのだが、来場者は事前に予約すれば転換の時間にパフォーマンスをすることができる。
これでも僕は世界一周の最中はバスカー(路上パフォーマー)として日銭を稼いで来た。
バスカーストップ初年度はギターの弾き語りでステージに上がり、自分のオリジナル曲を披露したのだが、今年も同じことをするほど僕はアホじゃない。
そう。僕はこのためにディジュリドゥを持って来たのだ!!!
地味に練習を重ねたこの一年間。
サーキュレーションブリージング(循環呼吸法)はとっくの昔に体得済みだし、自分のリズム、グルーヴみたいなものもある。
曲は持っていないけど、即興で一曲ぶんくらいなら吹ける自身が僕にはあった。
いいか。これはお客さんをノせるだとか金を稼ぐだとかそいうことじゃない。
限りない自己満足の世界だ!
おれの歌(曲)を聞け〜〜〜!ってな感じのジャイアニズムをフジロックの会場というまたとない環境でぶちまけるのだ。
めっちゃ気持ちいいぜ?

僕は入場ゲートをくぐると、グリーエリアを抜け、ホワイトステージを横切り、アヴァロンをスルーして、ヘブンステージを横目に、オレンジカフェまで直行した。
オレンジカフェには多くの飲食店が立ち並び、百人以上収容できる巨大なテントが立っている。
僕は迷うことなくバスカーストップの受付に向かい、暇そうにしていたサングラスのお兄さんに尋ねた。
「あの〜〜..、バスカーストップでパフォーマンスしたいんですけど..、予約ってまだできますか?」
すげえめんどくさそうな顔をして、お兄さんは手帳のページを繰る。
ロルバンの小さなリングノートにはお兄さんの手書きで予約者の名前が書かれていた。Macとかにデータを打ち込むとかそういうんじゃないのだ。すげー雑な感じなのだ!たぶん、その汚い文字はお兄さんしか読めないだろうな。
「えっと..、今日っスか?」
「いや、明日の13時とか大丈夫ですか?」
できれば、一緒にボランティアに参加するヤツらにも見に来て欲しい。だからパフォーマンスは今日ではなく、余裕を持って明日のお昼過ぎにすることにした。
お兄さんは手帳に書かれた名前ときちんとプリントされたアーティストのタイムテーブルを見比べると、間延びした声で「大丈夫っスよ」と言った。
すでに予約で半分は埋まってしまったらしい。バスカーストップに出場したいのであれば、初日に予約するしかない。
「それで、ギター使いますか?」
「えっと、僕、去年も出たんですけど、今年はディジュリドゥで行こうかなって」
「あーーー..、覚えてますよ。お兄さんのこと。
それで、ディジュは持って来たんすか?」
「はい!持って来ました!」
僕は即答する。
予約を済ませると、そこには今日僕がパフォーマンスをするもんだと思ってわざわざオレンジカフェまで来てくれたとびーがいた。
どうやら彼は昨日はほとんど寝てないらしい。睡眠時間を削ってまで僕のライブを見に来てくれただなんて…、今日やらなかったことに対してちょっとだけ申し訳ない気がした。
宣伝部長!みんなにline飛ばしてくだされ!
バスカーストップで出場登録を済ませてしまったので、本日のボランティア活動のはじまる18時までは何もすることがなくなってしまった。
相変わらず、僕はキャリアと契約していないため、携帯電話を持っていない。
そのため、会場内にいても他のボランティア仲間たちと連絡をとる手立てがない。はぐれてしまったら、よっぽどのことがない限り、僕は誰とも会うことはないのだ。
だから休憩時間の僕はお一人様フジロッカーってわけだ。

特にすることもなく、元来た道を戻り、適当に食べ物をつまみながらグリーンエリアまで戻った。
そこではグループ魂が下ネタ満載のライブを繰り広げており、僕は芝生に座ると、ケタケタ笑いながら2曲ほどライブを聴いた。
阿部サダヲが険しい顔をして下ネタを叫び、最前列にいる観客たちは嬉しそうにコール・アンド・レスポンスに応える。
こんな真昼間の昼下がりから堂々と下ネタを叫ぶのは考えようによっては、とても幸せなことなんじゃないかな、とさえ思ったくらいだ。
だって、それだけ平和ってことじゃないか。ここは厳格な宗教の規律のある国でもなければ、ガムの吐き捨てで高額な罰金が与えられるどこかの潔癖症のアジアの小国でもない。
この会場には実に様々な人間がいるのだ。
仲間と連れ立って、ステージ前の芝生にキャンプ用のテーブルを置き、ビールやワインを飲みながら音楽を聴くような人たちもいれば、家族でやって来た人もいる。そして僕のように、あてもなく一人で会場をプラプラする寂しいヤツだっているわけだ。
自分にとってどうでもいいようなライブを、ぽつんと一人で見ているというのは、言うまでもなく寂しいことである。
僕はそのまま誰かいやしないかと、本部まで戻ってみることにした。
ボランティア本部にいるのは日中の「デイ・シフト」で活動するメンバーたちだ。
夜に活動するナイト班に比べ、みな健全そうな顔をしているし、ナイトとデイの間には交流というものがほとんどないので(だってそもそも活動時間が違うんだもん)、そこにいる人たちは心なしかよそよそしく見える。きっと向こうも僕のことを同じように思っているのだろう。
本部テントでもやることがなくなってしまった僕は急に眠気を覚えた。
一度、明岳寮まで戻って昼寝でもしようかと考えたが、なんだかそれももったいないような気がした。
僕は一度入場ゲートを抜け、向かったのはピラミッドガーデンだった。

このエリアはフジロック内においてもかなりゆるいエリアで、来場者もほとんどいないのだ。
夜はチルアウト系の音楽がかかり、キャンドル・ジュンの装飾がきらめくおしゃれスポットにもなる。
僕はそこでリクライニングチェアを見つけると、かぶっていたヘッドバンドをはずし、アイマスクがわりにして目にかけた。
僕と同じようにリラックスしている来場者は他にもいたが、一人なのは僕だけだった。
ライブも見ないでピラミッドガーデンに昼寝しに来るって、まぁ、ある意味贅沢だよな。
エリア内にあるスピーカーからゆる〜〜〜〜い音楽が流れる。
いつのまにか僕は眠ってしまっていた。
雲の切れ間
から注がれる直射日光に焼かれて、僕は目が覚めた。
雨は降らなかったものの、雲の切れまから太陽が顔を覗かせ、ジリジリと僕を焼いたのだ。
新潟県の山あいの苗場スキー場といえど、
ここが同じ日本国内で、今は夏真っ盛りだということには違いない。
昼寝の続行が難しくなった僕は、諦めてリクライニングチェアから降りた。
時計を見ると1時間くらい眠っていたようだ。フジロックで昼寝なんて贅沢な時間だった。
[ad#ad-1]
そのまますぐに動けるわけでもなく、近くのカフェでコーヒーを飲んだ。
僕は外でコーヒーを飲むときは缶コーヒー以外はホットで飲む。(夏場にホットの缶コーヒーを見つけるのは難しいのだ)
アイスコーヒーはあまり好きじゃない。外で買うと氷が多すぎるし、僕は実に時間をかけてコーヒーを飲むので、アイスコーヒーをそのようにして飲んだ場合、時間が経つとコーヒーの味が溶けた氷によって薄れてしまう。
店の外に置いてあるベンチに座ろうとしたが、微妙に高いベンチだったため、僕はそこから降りて芝生に座りながらコーヒーを飲んだ。

ピラミッドガーデン内にある遊具では子供達が汗をかきながら元気いっぱいに遊んでいるのが見えた。
小さい頃、僕たちはどうしてあんなに遊ぶことに真剣にエネルギーを注ぐことができたんだろう?
まるでそれは、北欧の国々の人が意図的に日光浴をする姿を僕に彷彿させた。子供達は遊ぶことを通して栄養素的なものを体に蓄えようとしているみたいだ。
僕たちにとって遊びはなくてはならないものであり、ある意味で遊びは「学び」であったような気さえする。「子供は遊ぶのが仕事」だとはよく言ったもんだ。

コーヒーを飲みながら僕は何の気なしにゼットカードを広げて本日のタイムテーブルを眺めた。
「えーーーっと、今日のシフトは19時からで、集合時間は確か18時半だったな何か見れるライブあるかな〜?
…
..え?!
ウソ!?
マジかよっっっ!!!」
そのときにはじめて僕はthe HIATUSの名前を見つけたのである。
なんせボーカルの細美さんの曲を僕は高校生の時から聴いているくらい、熱心なリスナーだった。
ELLEGARDENの4枚目のアルバム”RIOT ON THE GRILL”を地元のCDショップで視聴した時に受けた衝撃を僕は今でも覚えている。
細美さんの歌い方を聴いた時、「なんて英語の発音がうまいんだ!」と僕は驚愕したものだ。
細美さんの英詞の歌い方は、日本人特有の巻き舌の発音ではなく、ネイティヴのそれに近いかっこいい英語の発音。しかも帰国子女でもないにもかかわらず(三ヶ月だけ仕事でアメリカに行っていたことはあるらしい)英語がペラぺラ。
「僕もこの人のように英語をしゃべりたい!」
そのような想いを抱いてからは(個人的な)英語の勉強へ対するモチベーションは保ったままだった。
僕はライブハウスに足を運ぶようなリスナーではなかったので、CDを買い揃え、熱心に聴くくらいだった。なんなら、今だってDim the Lights聴いてるよ!もち、CDで!
エルレガーデンのライブを初めて見たのは、アジアン・カンフー・ジェネレーションが主宰するナノムゲンフェスに出演した時くらいのものだ。僕がそのライブを観てからしばらくして、エルレは活動を休止した。
次に僕が細美さんのライブを見たのは、the HIATUSというバンド名が決まる前のパンクスプリングだったし、2011年のフジロックでもライブを見たのを覚えている。
そうか。6年ぶりのフジロックか。
ライブが始まるのはホワイトステージの17時から。
見れない時間じゃない。
コーヒーの空いた容器をお店の人に渡し(店の近くで飲食を済ませると代わりにごみを捨ててくれることが多い)
僕はホワイトステージへと向かった。

僕がホワイトステージに着くころには、 バックホーンがライブをしている最中だった。
どうやら始まったばかりらしい。
前の方でハイエイタスのステージが見たかった僕は、バックホーンのライブで体を揺らすファンの間にスルスルとまぎれて行った。
思えば、6年前も同じようにしてライブを見たことを思い出す。その時演奏してたのは誰だったけけ?
ライブというのは聴く人間のスタイルによって体感も違ってくる。後ろの方でゆったりして聴くこともできれば、最前列で肉体的に音楽を聴くことだってできるのだ。
どういうことかっていうと、バックホーンのように長く活動しているバンドが演奏する際に最前列にいるのは熱心なファンであることが多い。場合によっては全曲暗唱できるくらいの熱心なファンもいる。だいたいそのような人間はばっちしライブTシャツを着て来るもんだ。
だけど、この時はバンドTを来たファンの姿はほとんど見られなかった。
バックホーンはバンドの中でも”雨バンド”として認知されているようで、彼らが野外で演奏するときにはしょっちゅう雨が降るらしい。この時もそうだった。
雨の中、音楽に合わせて体を揺らしていると、履いていたジーンズはあっという間にぐちょぐちょになった。
ジーンズほど野外フェスに向かないウェアはないなと思う。それが100パーセントの晴れ予報だったらいいかもしれないけれど、苗場で行われるフジロックでは雨が降らないことの方が多い。
つまり、雨は降るものとして備えなければならないのだ。

ジーンズが濡れて最初は気持ちが悪かったが、全体が満遍なく濡れてしまうと、あとは楽しむだけだった。
普段聴かないようなバンドでも、それがいい音であれば、リスナーたちにいい「ノリ」が生まれていれば、なんの問題もない。別に歌詞が聞き取れなくてもいいんのだ。
はっきし言って、ボーカルは声が出ていたようには僕には思えなかったけど、ハーフパンツを履いたベースの人のプレイはかなりかっこよかった。
熟練のバンドマンたちは客の煽り方を熟知している。
そうして1時間にも満たないライブが終わって、熱心なファンたちは掃けていった。
僕はその場に残り、前の方へと移動する。
最前列には、僕のように前のバンド(さっき聴いていたバックホーンだ)から張り込んでいる熱心なファンたちが陣取っていたため(もちろんバンドTシャツを着ていた)、最前列に行くことはできなかった。
幸い、僕の前にいた人たちはそこまで身長が高くなかったのでステージはすっきりと見渡すことができた。
これから1時間、僕たちは待たなければならない。
この1時間はリスナーにとっては長い待ち時間かもしれないが、アーティストたちにとっては、自分たちの機材をセッティングする大事な時間だ。
前のバンドが使っていた楽器やアンプをそのまま使うわけにはいかないし、自分たちの演奏に適した音に合わせなければならない。
そしてそれをやるのはサポートのメンバーたちだ。
僕はあまり詳しくバンドの仕組みのことを知らないのだけれど、各バンドにはそれぞれサポートメンバーがいるにちがいない。彼らが責任を持ってアーティストに適した音を作りあげていくのだ。
ギターのサポートメンバーは背が高く、頭の片方はツーブロックなのに、反対側は挑発という奇抜なヘアスタイルの見るからにバンドマン的なお兄さんだった。
ドラムのサポートメンバーは頭にタオルを巻いた工事現場にいるような男性だった。
与えられた1時間という限られた時間内で彼らは着々と音を作って言った。
僕はステージ上で音の調整をしていくメンバーをじっと眺めていた。歳をとるとそういう風に時間をつぶすこともできるようになる。
どうやら転換はスムーズに終わったようだった。
敏感なファンが「お〜〜〜!」っと声を上げる。
なんとまだ17時ではないというのに、バンドメンバーがステージに上がり、リハーサルと称してファーストアルバムの”Silver Birch”を演奏してくれたのだ。
周りのリスナーは嬉しそうに手を上げる。中には一緒に歌いだすヤツだっている(正直、近くでこれをやられると音が混ざるので僕は好きじゃない)。
僕は歌詞を完全に暗記しているわけではないので、サビの部分だけ口パクで歌った。ステージ上からは一人一人の観客の顔は見えていないのかもしれない。だけど、僕は伝えたかったのだ。『自分もこの曲を歌えるくらいに聴き込んできたんですよ!』と。
リハーサルという名の一曲が終わると、メンバーたちは一度舞台裏へと戻って言った。
もしかしたら、裏では円陣を組んだりして気合いを入れ直しているのかもしれないな。
そうして、すぐにライブが始まった。
ボーカルの細美武士さんは今年で44歳になる。
その容姿はほとんど変わらない。彼はアスリート気質で動ける体作りをするために体を鍛えているといのはファンの中では有名な話だ。
新曲のMVなどで見る彼の姿もほとんど変化しない。ほんとうにじっくり、ゆっくりと歳をとっている印象だ。やっぱり歳をとっても動けるってすごいし、尊敬するよな。
だけど、モニターに細美さんの顔が映し出された時、そこに映された彼の顔はひどく歳をとったように見えた。
制作活動がうまくいっていないんじゃないか?何かショッキングな出来事でもあったんじゃないかってくらい、疲れた顔をしているように僕には見えたのだ。
むしろ、その横にいる他のメンバーたちの方が変わっていないような気がしたくらいだ。
ライブとCDの音源が違うのはわかってる。
だけど、僕はいまいちこのライブにピンとこなかった。
「うわ〜〜〜〜!やっぱライブは最高だぜ〜〜〜!」って心から思うことができなかったのだ。
ライブ特有の轟音もいまいち響かなかったし、やっぱりライブになると、歌い方は変わるもんだ。
僕はCDの音源を聴き込みすぎたのかもしれない。スタジオで歌う細美さんの声を好きになりすぎたのかもしれないな。
誰かが手を抜いているわけじゃないんだけど、僕にはいまいち刺さらなかった。
キーボードの伊澤一葉は、自分が演奏していない時になると、だらしなく足を前の椅子だか機材だかにかけていたのも気になってしまった。演奏していない間、暇なのはわかるけどさぁ〜〜..、もっとマシな待機の仕方はないのかしらね。だってステージに立つ以上、アーティストはエンターテイナーであるべきでしょ?
驚くべきはライブ中の細美さんだ。
僕には彼が歌っていくにつれて若返って行くように見えた。
Tシャツは汗で濡れている。それだけこのライブにエネルギーを注いでいるのがわかる。
あぁ、やっぱりこの人はライブを心から楽しんでいるんだ。
それがわかっただけでもいいよ。
もっと、音が欲しかったけどね。そればっかりは彼や他のメンバーだけの責任じゃない。僕には満足できなくても、他の観客たちは十分満足しているのかもしれない。
たまたまその場には、同じナイト班のクロがライブを観に来ていた。彼は一年前のフジロックもナイト班で、彼もまた細美さんの熱心なリスナーでもあった。
僕らはしばらく一緒に聴いていたのだけれど、僕は終盤にさしかかると、音響が気になって、前列から離脱することにした。
その途中で、「Radio」という曲が演奏されていた。
細美さんらしい歌詞で、落ち込んだ人間を励ましてくれるような優しい曲だ。
後ろの方で聴いている女の人が顔に手をやって泣いている姿を見た。
そうだ。
やっぱり、音楽の聴き方は人それぞれなのだ。
きっとこの曲には彼女の思い出が人一倍につまっているんだろうな。

PAの後ろの方で聴いてみたけど、やっぱり物足りなさしか感じなかった。
フジロックってこんなんだっけ?グリーンステージの方がもっといい音が出ているきがするけどな〜〜〜..。
また、どこかでライブ観たいけどね。
今日はありがとう。
僕とクロ
はそろそろシフトが始まるので、オアシスエリアにある本部へ戻ることにした。
もちろんその途中でグリーンエリアを横切ることになるわけだが、
そこには17時20分から演奏しているラッドウィンプスがライブをやっている最中だった。
ここ数年のラッドの知名度の上がり方には目を見張るものがある。一番デカかったタイアップは映画「君の名は」でテーマソングの「前前前世」を歌ったことだろう。ヒットチューンだったからね。
グリーンエリアは人で埋まっていた。
「おしゃかしゃま」の曲の最後のパートで突然にセッションが始まった。
それはCDの音源にはないところだった。
こんな大舞台でそれをやってのけるラッドのメンバーたち。そこには間違いなく「ライブ」があった。その場にいた人間しか、そのセッションを耳にすることはできないからだ。
っていうか、ギターもベースもマジで上手いんだって!
知名度だけでなく、実力的にもグリーンエリアでライブをやってのける、その度量というか力量は間違いなく彼らは持っている。
圧倒的なパフォーマンスを見て、僕はなぜか悔しい気持ちになった。

活動は
お弁当を食べた後に始まった。
ここで会場内のどこのごみ箱に張り付くかで、その後の休憩時間のライブで見れるものが変わってくる。
ごみ箱があるのは何も飲食店が集中するオアシスエリアだけではない。活動しながらライブが観れるグリーンエリア内のごみ箱もあれば、キャンプサイト利用者や駐車場エリアのごみをひたすらに捌く場外エリアだってあるのだ!
そりゃ、言ってしまえば、みんなライブが観たいに決まっている。
もちろん僕だってそうだ。
そして今夜のグリーンエリアのトリはゴリラズじゃあないか!これだけは僕もゆずれない!
それで、どうやってごみ箱の配置を決めるのかというと、希望を言い合って不公平にならないように決めることもあれば、じゃんけんで潔く決まる場合だってある。
この日は班のリーダーによる配置だったが、幸いにも僕がいたのはグリーンエリアの”THE XX”からのシフトじゃないか!
それだったらライブを観ながら活動して、休憩時間はゴリラズだ〜〜〜!
そんなわけで、さっそくグリーンエリアのごみ箱に入る。
場所は自分がペイントした「3番」と呼ばれる場所。
ごみを捨てに来る人たちには「これ、僕が描いた絵なんですよ!」なんてアピールしたかったが、夜の時間じゃ絵はよく見えないし、みんなTHE XXのライブに釘付けだ。ごみを捨てに来る人もそこまでいなかった。
僕は彼らの音楽をほとんど聴いたことがなかったので、「ふ〜〜〜ん..」という感じでお客さんからのごみをさばくことを楽しんでいた気がする。
休憩時間になると、僕はすぐにTシャツと雨具を着替え(活動以外の時間はボランティアTシャツは着ちゃだめだのだ)ソッコーでグリーンエリアへと戻った。
活動が終わって、またすぐにライブが観れるだなんて贅沢すぎるぜ!
時間になるとボーカルのデーモン・アルバーンがステージに上がり観客たちの歓声が上がった。

ほんとうなら、僕は前の方へ駆けていって、むちゃくちゃに踊りながらライブを楽しみたかったが、スタッフをやっているとそうもいかない。
なんせ僕には次のシフトがあるのだ。
休憩時間は1時間半という微妙な長さで、ゴリラズのライブを最後まで見ることはできない。
グリーンエリアの通路で見やすい場所を陣取ると僕は、ただ、その場に伝ってゴリラズのライブを聴いているだけだった。
でも、かっこよかったな。夜のグリーンエリアの照明は幻想的な雰囲気を演出していた。なんだか映画のワンシーンみたいだったな。
名曲の「クリント・イーストウッド」を聴くことなく、僕は再び本部へ戻った。
今度のシフトはオアシスエリア内にあるごみ箱だ。前夜祭に比べて、人は増えたように思えた。
あとは明け方6時まで、間に休憩を挟んだシフトをするだけだ。
昨日と同じように体を揺らし、流れて来る音を楽しんでいた。
休憩時間中にはこれでもかっていうくらい飲食店で暴飲暴食の限りを尽くした
ーーーーような気がする笑。
ちなみに以下の写真がこの日一日で僕が弁当以外に食べたものだ。

一発目にアイス&ドーナッツ。

間髪入れずにビール&混ぜご飯!

えっと、15時ごろに場外のホットドッグかな?

休憩時間はインドカレー!(実は前日も同じ店で食べた)
[ad#ad-1]
コメントを残す