「君に届け!!!」

世界一周271日目(3/26)

 

昨日と同じ時間に
集合し、メインガートに出ると
空には雲ひとつ浮かんでいないことが分かった。

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6時前の空には月が浮かんでおり、
やがてやって来る朝日が
綺麗に見れるのだということを
僕たちに教えてくれていた。

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昨日はなかったガート脇の
チャイ売りから5ルピー払って、
チャイをすすった。

やがて朝が来る。
ガンジスリバー、バラナシ。

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何度も言う。

朝日は美しい。

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その朝日に照らされたガンジス川を見ていると、
汚い印象を全く受けなかった。
むしろ想像よりも綺麗に思えた。

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僕は荷物のことがあったので、
先にユウイチさんたちに
沐浴してもらうことにした。

みんなのカメラを引き受け、
僕はガンジス川に入っていく
彼らを写真に収めた。

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ポージングが秀逸なユウダイくん。

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手足が長いのっぽの彼は
変なポーズさえ決めていなければ
インド人のように見えたことだろう。

 

 

そして、僕もTシャツを抜いで
ガンジス川に入ろうとした。

一段一段とガートの階段を下りていく。
急く気持ちに足取りも速い。

水面までのラスト2段目にさしかかった瞬間、
お笑い番組でよくやるアレのように
僕はガートの階段に生えた藻のぬめりで
ガンジス川に向かってコケた。

ガイドブックには決して書いてないだろう。

ガートには藻が生えている!

 

 

想像していた以上にガンジス川は温かかった。
そして不思議なことに汚いという気持ちが
全くしなかった。

朝日に照らされた
このシチュエーションだからかもしれない。

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周りには沐浴をするインド人や
頭を洗うインド人が15人くらいいた。

そこからは僕は両手を合わせ
頭のてっぺんまで3回ガンジス川に潜った。

顔を上げたままクロールで
船が繋がれている7メートル先まで泳いでみる。

後ろの方ではみんなテンションが上がっており、
ユウダイくんにいたっては、
持って来たシャンプーで頭を洗っている。
髪型がスネ夫か明日のジョーみたいになっていた。

 

 

船を繋いでいる縄の辺りまで
泳いで来た時に思ったことは

『自分が流されている』

ということだ。

ここ川なんだっけ…。
あれ?
泳いでも思ったように進まないぞ?

それに、呼吸が苦しい。
やっぱタバコ吸ってるせいで
肺活量が落ちてるのかもしれないー、
溺れる!!!?

とっさにクロールから平泳ぎに切り替えた。
水を飲まないように顔を上げて泳ぐ。

ガートの流され端まで周りにいたインド人は
必死の形相の僕を見て笑っていた。

ガンジス川をなめてたぜ…!!!

 

 

同じ宿に泊まっている朝日を見に来ていた
トモミさんがカメラを引き受けてくれたので、
僕は思いっきり沐浴を楽しむことができた。

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いやぁ。満足満足♪

 

 

 

ユウイチさんが何か
納得できない様な顔で言った。

「これって、ガンガーを背景にしたら
ガンジス川って分からなくないか?」

 

確かに!!!

そこからガートが見渡せる隣りのガートに移り、
ユウイチさんとユウダイくんは
2回目の撮影会を始めたのだが、
僕はさっきの沐浴で満足してしまったので
ガートの階段に腰掛け
彼らがはっちゃける姿を眺めていた。

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持っていたミネラルウォーターで口をすすぎ、
宿に戻ってシャワーを浴びる。歯磨きも忘れない。

これでガンジス川の水が
体内に入ることは防げただろう。

今のところ体調になんの変化も見られない。
ガンジス川入水後、
体調の変化が表れるのは約2日らしい。

確信とは言えないまでも、
体調が悪くなるなんてちっとも思わなかった。

いつものように宿で朝食をいただいて、
僕は漫画製作にでかけた。

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サンタナには「聖(セイント)お兄さん」がいます。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しく見つけたカフェは
少し暗かったが、
漫画を描けないほどではなかった。

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あとは背景を描いてベタを塗って、
消しゴムを描ければ完成だ!

一番細い背景の線を描き始めた。

カフェにはすいており、
ほとんどお客さんは来なかった。

 

 

シバ・カフェを探していた
アジアン・フェイスの
英語を喋る女のコが入ってきたので、
シバ・ゲストハウスの場所を教えてあげた。

4時間くらいかけて背景を描き終え、
ベタのふち塗りを始めようとしたその時だった。

 

 

 

「Are you cartoonist?」

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韓国人の女のコが興奮気味に訊いてきた。
な、なんだ!!?逆ナンか!!!

僕は嬉しい気持ちを抑え、

 

「Yes. what?」

『そうです。
今僕は漫画を
描いているところです。

別に君になんて
興味ありませんよ?』

とハルキチックに
声のトーンを抑えてそっけなく応えた。

女のコは何か言いたげにして
のどの奥までセリフが出かかっていたが、
その場から去っていった。

なんだよ?単に珍しかっただけか。
もうちょっとオープンマインドで
お喋りした方がよかったかな…。

 

5分くらいすると
再びその女のコが戻ってきた。

 

「Can you speak english well?」

「まぁ…ちょっとなら」

「これなんだけど。
意味分かる?」

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と言って見せられた
スマートフォンの画面には
ハングル文字とその訳が
画面を半分にして表示されている。

 

「えっ?何?どーいうこと?」

「私ね、手紙を日本語で書きたいの」

 

ははーん。理解できたぞ。
Google翻訳やアプリだと文書がおかしいから、
チェックして欲しい。そういうことだね。

アプリで翻訳したらしい手紙は
日本人の僕が見ても理解できない箇所があった。

 

 

「う~ん…
最初から意味が分からないなぁ。
ここのセンテンスってどういう意味なの?」

女のコはハングル文字の固まりごとに
指を差して英語で説明するが、
僕はハングル文字なんて読めない。

しかたがないので
センテンスごとの英語訳を彼女に喋ってもらい、
僕がそれを日本語に訳して
紙に書き出すという翻訳作業が始まった。

誰に手紙を書くのか?
どんな想いをこの手紙に込めているのか?

彼女の口から聞くいて翻訳していくうちに、
これがラブレターだということが分かってきた。

 

 

 

ソニョン(それが彼女の名前だった)の話はこうだ。

一人旅をするソニョンはインドで
韓国人が集まるような宿を探していた。
日本人宿があるようにバラナシには
いくつか韓国人宿がある。

そこでたまたま入った
「久美子ゲストハウス」で
オーナーの久美子さんに騙されたというのだ。

「韓国人の子たちって
泊まっていますか?」

「ああ泊まってるよ。入んな」

と。

 

実際は韓国人は一人も泊まっておらず、
ソニョンは日本人と中国人しかいない
久美子ゲストハウスで
疎外感を味わっていた。

そこで彼女に優しくしてくれたのが
「ヒロ」という日本人の男性だった。

二人でプージャーでキャンドルを灯した花を
ガンジス川に流し、
二人とも幸せになるように願ったらしい。

ロマンチックなシチュエーションだ。

 

 

ソニョンの一途な気持ちが伝わってくる。

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彼女には彼女の旅があり、
せっかくバラナシで出会ったヒロと
別れなくてはならない。

そこでいつかの再会を願う彼女の気持ちが
手紙には綴られていた。

物語を作ることを仕事とする漫画家として
僕は真剣に手紙の翻訳に取り組んだ。

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どうすれば恋する女のコの気持ちを
文章にして表すことができるだろうか?

ソニョンの英語をそのまま訳してしまうと
感情の籠った文章にはならない。

あえてぶつ切りにしたり、
日本人なら意味が汲み取れるように
意訳したり工夫を凝らした。

このヒロという人物は
どんな人なんだろう?大学生くらいかなぁ?

 

 

「これがヒロ」

と言って見せられた写真には色黒の男性。

「37歳でタブラを習いに
バラナシに2ヶ月滞在してるの」

 

「さ、37!!?2ヶ月!!?
えっと、ソニョン今いくつ?」

「23よ」

「…」

「韓国の女のコはね、
年上の人をリスペクトするの。
だから歳の差なんて関係ないよ!」

 

にしても年上過ぎやしませんか?

これがミュージシャンならまだしも、
沈没気味にグダグダと
滞在している人だったら嫌だなぁ。

自分のイメージとかなり離れた人物だったので、
ちょっと複雑な気持ちになった。

 

そして正直に白状すると、
このさっぱりした性格のソニョンとの間に
ロマンスが生まれるんじゃないかと
心のどこかで期待していたが、

彼女の心はヒロにしか
向いていないということが、
まさに「韓国ドラマ」のそれだった。

 

 

 

 

僕は翻訳を終え、
Wi-Fiが使えるカフェに移動することにした。

手書きの文字では読みにくいと思ったので、
メールで文書を送ることにしたのだ。
それなら清書もずっと楽だろう。

 

「じゃあシバ・カフェに行こうよ」

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そう言えばさっき
他の女のコにシバカフェの場所教えたなぁ。

 

 

「ここ?」

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案内されたのは、
さっき別の女のコに教えた道と
まるっきし反対方向にあるカフェ。

あちゃ~…
きっとあのコ
「日本人に騙された!」
とか言っているよ~。

ま、いいか(笑)

 

 

「ここは私が払うから。何がいい?」

「ん~、じゃあシナモンロール」

注文をして、Wi-Fiのパスワードをゲットすると
僕はソニョンのスマートフォンにメールを送った。

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彼女はそれを
夕日に染まるガンジス川の写真のポストカードに
下描きもせずにボールペンで直接書いていった。

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「あ、これ使う?」

漫画製作で使っている
修正ペンを彼女に差し出す。

 

「あ!ありがとう」

受け取った修正ペンのキャップを
歯で外すソニョン。
そういうラフっぽさが韓国女子だよな(笑)。

バイト時代、午前中に母親と一緒に
韓国ドラマを見てたからよく分かる。

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僕は彼女が手紙を書き終わるまでの間、
タバコをすったり、持って来た短編集を読んだり、
店内にいる犬と戯れたりして時間をつぶした。

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ソニョンが手紙を書き終わり、
僕は最終チェックすることになった。

ソニョンは小さい「っ」
「な/れ/わ」を間違えて書いていた。

 

 

「もう!なんてわかりずらいの!
「つ」なんてどっちでもいいじゃない!」

「いや、この「っ」は
破裂音みたいなものなんだよ。
「タッチ」とか「バッグ」とかみたいにさ」

間違えた箇所を全て修正し終わると、
彼女はテーブルの上に100ルピー札を二枚置いた。

 

「これ、今回のお礼」

「いや、いいよ。
女のコからお金はもらわない主義なんだ。
それにこっちも友達に話すいいネタができたよ」

「そう…。
じゃあ、ありがとね♪」

 

そう言って彼女は
一刻も早く手紙を渡したいようで、
すぐにシバカフェの外へ出て行った。

僕は彼女の後ろ姿を写真に撮ろうと
カメラを持って外に出たが、
彼女はあっという間に雑踏の中へ消えていった。

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僕はまだしばらくバラナシにいるつもりだ。

一瞬ヒロさんの姿を見に行こうかと思ったが、
そんな野暮なことはしない方が
いいとすぐに考え直した。

ここで僕が持ってる
ソニョンの物語は終わってしまった。

続きは僕たちが想像するしかない。

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★世界一周ブログランキングに参戦しております。

英語のレベルはそこそこでも、
セリフ回しなんかはけっこういい線いってと思います。

あれで男心を掴むことができたのか!!?
自分で書いておいてなんですが、
僕だったら落ちてますね。

手紙を拙い日本語で書いたり、
英語で書いたりした方が気持ちが伝わるんじゃないの?

そのような意見もあるかもしれませんが、
手書きの手紙もらったら、
ほら?やっぱ嬉しいよね。

にしてもソニョン可愛かったなぁ~…。

 

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