「そこそこの物」

世界一周270日目(3/25)

 

ドミトリーの
二段ベッドの上で、
僕はアラームを止めて準備した。

パタゴニアの水着とユニクロの黒いVネック。
一応サブバッグも持っていくか。

 

「おはよ~…」
「おはようございます」

3階からユウイチさんが降りてきた。

「あれ?ユウダイくんは?」
「まだ寝てますね。起こしますか?」

 

僕は同じユウダイくんの体を
ゆすって起こそうとしたたのだが、
「ふっ…」と鼻笑いされた。

「コイツ…
起こそうとしたら
鼻笑いしてきました!」

ためらうことなく
ユウダイくんのケツに
カンチョーをかます
ユウイチさん。

ユウダイくんのおしりが
「ピクっ!」と動いた(笑)

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5:30になり、宿のドアを開けてもらう。

向かう先はガンジス川。
目的は沐浴だ。

フレンズ・ゲストハウスに
泊まっている大学生の男の子(ごめん、名前訊いてないや)
合流して太陽の昇っていない空の下、
薄暗い路地を抜けてメイン・ガートを目指した。

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昨日までの僕は
かなりためらっていた。

製作中の漫画もまだ終わってなかったし、
一段落ついたらガンジス川で
沐浴しようと思っていた。

思っていただけで、結局は
沐浴なんてしなかったかもしれない。

ちなみに、4年前に訪れた時も
ガンジス川に沐浴どころか、
つま先すらつけていなかった。

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ガンジス川は汚さで有名だ。

ここでは沐浴だけでなく、
体を洗ったり洗濯だってする。

汚水を流すし、
死体を流すことでも有名だ。

コレラ菌が生きられない
くらい汚い川らしい。

ガンジス川に入った人の
3人に2人は
なんらかの症状を発症する
とも聞いた。

病院送りになった旅人もいるとかいないとか。

そんな話を聞いていたら、
沐浴する木なんて失せてしまうよね。

病院送りにされたらギャグどころじゃ
済まないんじゃないか。

僕はビビっていた。

 

 

そんな時、
前日サンタナ・バラナシにやって来た
アウトドア大好きのバイカー、
京都にお住まいのユウイチさん

インドを旅して一ヶ月の
(ちょっと天然)大学生、ユウダイくん

今日の朝、沐浴に行こうと話しているのを
共同スペースで話しているのを耳にした。

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これはチャンスだ!

 

他の人と一緒に沐浴した方が楽しいだろうし、
荷物とかも交代で見ててもらえるから安全だ。
それに一人だと写真が撮れないしね。

僕は二人に同行させてもらうことにした。

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「え~っと…」

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うっすらと空に溶け込む雲。
えっ?曇りっすか!!?

いやいや、きっとこれから素晴らしい朝日が
ガンジス川を照らすに違いない。

僕たちはメイン・ガートから
少し離れたガートで階段に座って朝日を待っていた。

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この朝日が顔を出す前の微妙な時間が好き。

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僕は持って来たギターで
Caravanの「Love and Free World」と
奥田民生の「さすらい」を唄った。

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さぁ、朝日とともに沐浴をするだけだ!

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だが、いつまで経っても
朝日は顔を見せない。

心なしか寒い。

時刻は6:30を過ぎた。
とっくに朝日が見えてもいい時間帯だ。

気づいた時には
雨が降り出した。

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バラナシでも雨が降るんだ…。

 

 

「どうする?」

「これ、寒いんじゃね?」

「よし!明日で!」

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もう、昇ちゃったね…

 

 

四人の日本男児たちは、
ガンジス川を目の前にして
沐浴することなくチャイを飲んで
各々の宿に引き上げた。

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「いやぁ~、
マジ気持ちよかったよね!」

朝食の時間にユウイチさんが誇らしげに言う。

「嘘でしょ?」

一発でバレる。

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雨が降った
ということはいくらか湿度が
上がったということだろう。
これなら漫画の細い線も引けるるだろう。

漫画製作の道具を持って
向かったのはおなじみの
シバ・ゲストハウスの最上階にあるレストラン。

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お客さんがほとんど来ないので
ヒマな従業員が僕の邪魔をするけど、
今はここしかないんだ。

 

 

さっそくテーブルにつこうとすると、
シバ・ゲストハウスのオーナーが
たまたまそこにいて僕に言った。

「お前さ、長い時間居過ぎなんだよ。
ここのテーブルを使え」

よく分からないけど、テーブル指定。

やれやれ。出入り禁止になる前に
さっさと漫画を完成させなくちゃなぁ。

 

 

従業員に絡まれないように
イヤホンで音楽を聴いて自分の作業に集中した。

下っ端従業員の男の子がテーブルを揺らした時は、
舌打ちを鳴らして鋭く睨んで威嚇した。

今日の僕はかなりピリピリしていたと思う。

耳から脳内に流れ込む
Foster the Peopleが僕のテンションを
上げてくれたことが救いだった。

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少し早めの17時に今日の作業を終了した。

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残すは背景とベタのみ。
明日根性で頑張れば終わるかなぁ?

 

 

 

タバコをふかしながら、
外のベンチに腰掛け、
相棒から送られてきたLINEの
メッセージを確認する。

帰国後に企画している
「旅する雑貨屋 Drift」

知り合いのデザイナーさんに
お店のロゴを描いてもらういう話だった。

デザインしてもらったロゴで
ショップカードやステッカーを作る予定だ。

漫画のような手描きではなく
パソコンソフトを使った絵は僕には描けない。
イラストレーターのようなソフトも持っていない。

新米のデザイナー、友人価格ということで
デザイン料は10,000円。

 

 

1万かぁ…。
この値段はけっして高いわけじゃない。
むしろ安いのだがー…、

僕はついつい
『高い』と思ってしまうのだ。

長期で世界を旅される方は
自分の名刺を持っていることがある。

ショップカードもやり方によっては
もっと安くできるかもしれない。

 

 

そんなアイデアを
ぽそっと相棒に呟くと。相棒は

「大事なのはお金じゃない。
(おれらとデザイナー)お互いのためにもなる」

そしてこう言った。

「前から言おうと思ってたんだけど、
その貧乏性直した方がいいよ」

 

 

ここで僕は一瞬「ムッ」として、
そしてすぐに冷静になって考えた。

25年生きてきた俺の人生の中で、
身の回りにある物は
「そこそこ」の物
しかない。

必ず「安い」ことが前提で
何かを手に入れてきた気がする。

現に今使っているドイターのバックパックも
「安くて容量の多いもの」
という購買基準に基づいていた。

機能的にはなにも不便はないんだけど、
デザインがカッコよかったり、
機能的なバックパックを見ると
どうも目移りしてしまう。

寝袋なんかもプロモンテの安くて最軽量の型。
外で使うと寒過ぎて寝られない。

あぁ、もう少し高いのを
買ってもよかったかもしれないな。

よくそう思う。

 

 

そんなのばかりなのだ。
僕の身の回りにあるものは。

初めて買ったパソコンも
プロバイダーと契約すれば
タダでもらえる台湾製の
とても小さなノートパソコン。

キーボードが小さ過ぎたし、
ちっとも愛着が湧かなかった。

 

 

この後も僕はこんな購買を繰り返すのか?

「そこそこ」の家を買うなり借りるなりして、
「不便だけど安いし」と言い訳するのか?

大切な誰かへのプレゼントも
買える範囲の「そこそこ」の物を
買ってしまうのか?

 

お金を使うことは
ダメージのように感じてしまうのだ。

ゲームのヒットポイントが減っていくように。

 

 

僕には物を買うセンスがない。

変にケチって「そこそこ」の物を買う。

そんな購買を25年生きてきた
人生の中で繰り返してきた。

 

 

対して、相棒は
物を見るセンスがあった。

相棒の部屋には
僕は持っていない「良い物」が
いくつもあった。

決して物に囲まれているとか
そういう意味じゃない。

気分次第で捨ててしまう様な
テキトーな物はほとんどないということだ。

そんな相棒が羨ましく感じ。
自分の価値観を否定されたようで少しヘコんだ。

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相棒だから言ってくれるんだよな…。

とりあえず、LINEで
「ありがとう」とお礼を言って
僕は宿に引き上げた。

 

しばらくの間僕は考えていた。

僕たちは今まで信じていた何かを変えるよりかは、
維持・保守へと走ってしまいがちだ。

だけど、変えていかなくちゃならない。

「責任のある購買」

そんな言葉が頭の片隅に
いつまでも残っていた。

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自分の抱えるモヤモヤを他の人とシェアできて、
僕は頭を整理することができたと思います。

こういうのも日本人宿ならではだよなと。
話を聞いてくれた方々。ありがとうございました。

僕は安い物に走りがちです。
確かにお金は節約できるかもしれない。
だけど、何か別の所で損をしていたのだとも思います。

お金の使い方を深く考えさせられた一日でした。

ガンガーには入らなかったけどね(笑)

 

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