世界一周513日目(11/23)
東の空が
ぼんやり明るくなったころに
僕はベルベルテントの裏手にある砂丘を登った。
上の方から人の声がしたので、
傾斜30°の砂丘をガシガシ登って行ったのだが、
彼らは別のもっと傾斜がゆるやかな場所から
登って行ったらしい。
僕が一人で砂丘を登っている姿を見て、
昨日会ったスペイン人のカップルが
「ジャポ~~~~ン!」と叫んだ。
砂丘の中腹で僕は腰を下ろした。
じわりじわりと空が明るくなり、
朝日がサハラ砂漠を照らす。
朝、一番最初に目の前を照らす太陽の光。
一日のはじまり。
いっつもこれを見るたびに、
どこか心が現れた気持になる。
ベルベルテントでパンと数種類のジャム、
コーヒー、ミントティーの朝食をいただいて、
僕たちはホテルに戻ることにした。
「それじゃラクダは勝手にホテルに帰るから」
と手綱を話すハミット。
えっ?マジかよ?
そんなにラクダって賢いの?
キャンプから5分は他のツアー客の
足跡を辿っていた僕の白ラクダは、
すぐに道草を食べ始めた。
おいおい道草喰ってんじゃねーよ!
頭にターバンを巻いたハミットが戻って来て、
ようやくラクダは言うことを聞いた。
天気は快晴。
それでいて地面はほどよく湿気を含んでいる。
行きと帰りで違う砂漠を
見れるなんて贅沢じゃないか。
ラクダに乗りながらずっと砂漠を見ていた。
世界にはこんな景色もあるんだなって。
来るまでは乗り気じゃなかったけど、
ここへは来てよかったと思う。
ラクダを停めるとハミットは
僕をホテルの裏に呼んだ。
物置みたいな所から取り出して来たのは
ガラクタとも呼べそうな雑貨たちだった。
卵の形をした置物なんて、
誰が買うんだろうと考えてしまう。
「さて!どっちが本物のゆで卵でしょう?」
なんてやるのかな?
「ごめん、ちょっといらないかな?」
「フレンド!安いよ!
この灰皿に浮かんでる貝殻は本物なんだぜ!」
「ゴメン、いらないよ」
何度かこのやり取りが続くと、
ハミットは諦めてくれた。
ラクダ引きの仕事はそこまで儲からないらしい。
これが彼の臨時収入になるんだろうな。
何か良いものがあれば買ってもよかったんだけど、
卵の置物や重たい灰皿は、申し訳ないけどいらなかった。
その代わり、
ハミットに名刺を描いてプレゼントした。
「もし、僕が有名になったら売れるかもね!」
「何言ってんだよ?ここじゃ価値ないよ」
「ははは。そうかも(笑)」
昨日別のラクダ引き(彼もまたハミット)に
払ってしまった100ディルハムも返してもらえた。
次の街まで向かうバスが出る町まで
タクシーで送ってもらえた。
これもツアー代に含まれている。
なんだかんだ、80ユーロ分のツアーだったな。
「サハラ砂漠独り占めツアー」なんてね♪
雨の影響で一部の道路が
通れなくなってしまっているらしい。
バスターミナルへの道の途中で見た町で
大きな水たまりを見ることがあった。
ひとまず200ディルハム(2,665yen)の
マラケシュ行きのチケットを買った。
周りには欧米人のツアー客の姿もあった。
きっとみんなサハラ砂漠の
ツアーを終えてきたのだろう。
ギターを
貸してくれと言ってきた男の子ちは
まさかパキスタンとブータンの出身だった。
驚いた。
ってきりみんなアジア人の顔だと思っていたから。
ブータンのIDを持つ彼はフランスに
留学しているヤツで、
ルーツはネパールにあるとか言っていた。
ふーーん。
時間までは近くのカフェで
コーヒーをすすりながら作業をした。
こんなちっぽけな町のカフェでも
Wi-Fiが使えるなんて驚きだった。
後からさっきのブータンの彼らも
ここで昼ご飯を食べに来ていたのだが、
両替所を探しに行っているうちに
マラケシュ行きのチケットが
売り切れてしまったと言うのだ。
彼らはひとまず別の町へ行き、
そこからマラケシュに向かうらしい。
握手をして別れた。
もしかしたら路上でギター弾いているヤツが
いるかもしれないから、ソイツがおれだよ。
と僕は言った(だけど、結局彼らと再会することはなかった)
ギターを持っていると、どこでも人気者だ。
貸してくれと言ってきたおっちゃんは
タバコを加えてギターを構える姿が
なかなか様になっていた。
小さな息子二人が興味津々でお父さんの姿を見る。
なんだかいい瞬間に立ち会わせてもらったな♪
そろそろバスの時間だ。またね!
バスターミナルの前にちっぽけな
売店とも言えないようなシロモノのスペースがある。
そこで1ディルハムのクッキーが
買えたので大量に仕入れておいた。
近くから頭のクリンクリンの子供たちが寄って来て
僕に「お菓子をくれ!」とジェスチャーしてくる。
よしよし。1ディルハムくらいなら安いもんだ。ほら。
2人くらいにクッキーをあげた。
そのうちの一人が僕に何かを言った。
え?聞き取れたけど、
うん、もっかい言ってもらっていい?
「ファック・オフ!
ファック・オフ!」
「刹那の見切り」で
メタナイトをぶった切るくらいのスピードで
そのクソガキからあげたお菓子をひったくった。
もちろん笑顔でね♪
一瞬の出来事にクソガキは
何が起こったか理解するのに時間がかかっていた。
いやいや。なんでお菓子上げたのに、
ファックとか言われなアカンねん。
ビビって僕から距離を置くガキんちょを見ていると、
まぁ、菓子ぐらいいかなと思い直した。
笑顔で手招きしたのだが、
ガキんちょは小動物並みの
警戒心を抱いて寄って来なかった。
ハッ!そうかい。ならいいわ。
愛すべき人たちは今目の前にいる人たちだ。
僕は怒らない(ように勤めている)
笑顔は忘れない。
だけど、悪口を言われたら
お菓子をひったくるくらいはするさ。
頭をひっぱたくよりかはマシだろ?
荷物代を払いバスに乗り込んだ。
バスはなかなか走り出さなかった。
駆け込みの客が乗りそこなったのか、
バスターミナルを出る直前で何かわめいていた。
雨水のたまった道路をバスはゆっくり走った。
バスが前に進むと、
ディズニーランドのアトラクションみたいに水が波打った。
ヘッドライトが前方のバスを赤く照らした。
僕は久しぶりにiPodで椎名林檎を聴いて、
『セカンドアルバムいいな♪』と思った。
隣りのおっちゃんが親切だった。
斜め前に座っていた目の大きなモロッコ人の
女のコに変顔を披露すると、
「キャッキャ」と笑ってくれた。
深夜2時にバスは途中休憩を挟んだ。
窓から煙が見えたので最初は
バスが故障したのかと思っていたのだが、
煙の正体はケバブを焼く煙だった。
今回は寒さで眠れないなんてことはない。
相棒が持って来てくれたブランケットが
ちゃんと役に立っているからだ。
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些細なことも楽しめるようになったなーと思います。
世界を見るには1年や2年じゃ足りないと思うし、
全てを見る必要もないと思います。
自分の目に移る一瞬一瞬を愛おしく思えれば、
ハッピーじゃん?
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