「イギリスの手前の街」

世界一周470日目(10/11)

 

 

早起きするつもりが

すっかりソファの
寝心地の良さにやられてしまった。

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今日はいよいよヒッチハイクで
イギリスに入国する予定だ。

10時前に目を覚ました僕はパッキングを済ませて、
自室のベッドで毛布に包まって寝ている
テバスチャンに声をかけた。

 

 

「テバスチャン、おれ、
もう行くね。ありがとう」

 

 

眠たそうな目をこすって、
テバスチャンが起き上がる。

僕は腕を広げた。

感謝の気持ちとお別れのハグだ。

 

 

「僕たちは人とハグする時には
三回やるんだよ」

 

 

テバスチャンはそう言った。

確かあれはトルコだったと思う。

親しい間柄の友達が挨拶する時のように
こめかみ付近でキスする仕草と音を鳴らすのは。

そんな風にして右、左、右と交互にハグした。

家の出口前までテバスチャンは
僕のことを見送ってくれた。

またここにも遊びに来れる友達が
できたような気がする。

 

 

昨日も
「クリスマスカードを送るよ。次はいつ来る?」
なんて訊かれて、

正直なんて言えばいいのか分からなかった。

前へ前へ、次の国からまた別の次の国へ。

そういう風にして僕は一方通行に旅をしている。

通り過ぎていった国のほとんどは、
もう二度と訪れることのない国かもしれない。
いつまでも旅人でいるわけにはいかないから。

 

 

 

「また機会があったらね♪」

 

 

僕が言えるのはそれくらいだ。

せめてもの救いは、僕たちは
インターネットでほんの少し
繋がれるということくらいだろうか。

ささやかな出会いに感謝して、別れに少し寂しくなる。

そうやって僕はまた旅を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

エディンバラの街からバスに乗って
ハイウェイ近くの郊外の村だか町だかに出るつもりだ。

テバスチャンの家のWi-FiでGoogleマップの
ルート検索機能を使い、どこからバスに乗るか
しっかり調べておいたつもりだったのだが、

実際にバス乗り場へ行ってみると、
バスは途中までしかいかないと書かれていた。

こういうこともあるのだろうか?

 

 

町の中心地まで歩き、
そこから郊外に出るバスの乗り場を見つけた。

バス停で5ポンド札を持っていると、
近くにいたおっちゃんが
「バスはお釣りが出ないから気をつけなよ」
と注意してくれた。

急いで小銭入れを取り出したが、
ギリギリ小銭が足りない!

えっ!どーすんのどっかで両替できないの??!!と
あたふたしていると、
おっちゃんがスマートに僕の手のひらに
足りない分の20ペンスくらいを置いてくれた。

マジでささいなことだよ。

でもさぁ、こういうことしてもらうと、
朝から優しい気持ちになれるよなぁ。

 

 

 

 

やってきたバスに僕は乗り込んだ。

もうエディンバラともお別れだ。

バスはエディンバラの新市街と旧市街を結ぶ
大きな橋を渡り、周りの景色はあっという間に
のどかな自然の風景に変わった。

 

 

 

僕はダンケイスという
小さな町の少し手前のラウンドバウト付近で降りた。

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マップで確認するよりも、
実際にラウンドバウトを目の前にしてみると
車が止まれなさそうだった。

少し先の道まで歩いてみることに。

 

 

ヒッチハイクで大事なのは、
車の速度と止まれるスペースだと思う。

行き先は国境を越えたすぐにある
Carlisle(カーライル)という町だ。

ギターケースにしまっておいた段ボールに
行き先を書いてヒッチハイクを開始した。

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スコットランドはヒッチハイクにそこそこ寛容らしい。

ちなみにイギリスのレートは
「Bad to Good」でかなり悪いらしいのだが、
それはもしかしてスコットランド国内の
話なんじゃないか?

今から向かうのはイギリス。
もしかしてここで3時間くらい
待つハメになるかもしれない…。

 

 

運転席からのレスポンスは今のところ好調。
みんなニコニコして僕の方を見ている。

たとえ止まってくれなくても、
ドライバーからのレスポンスは大事。

ヒッチハイクを続けるモチベーションにもなるし、
良いレスポンスをくれる人の割合が多ければ、
ヒッチハイクも成功しやすいように感じる。

 

 

あっー、親指下げられた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分くらいで

一台の車が止まってくれた。

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行き先はカーライルではなく、
その少し手前のウェックロイという町だった。

前に進めるだけでもありがたい!

僕は車に乗せてもらうことにした。

ドライバーのフィオナさんは犬を飼っているらしく、
ワゴン車の後ろには犬用のケージが置いてあった。

バックパックが後ろに乗せられなかったので、
膝の上に乗せて助手席に座った。

僕がチェコで盗難に遭う前のバックパックだったら、
重過ぎて拷問みたいになってたけど、
今の軽いバックパックだったら、なんてことない。

 

 

車の中ではフィオナさんの好きな古い音楽が流れる。

自己紹介を踏まえた会話が終わってしまうと
僕は外を流れる風景を見て旅情に浸った。

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なだらかな起伏のある草原に
顔の黒い羊たちがあちこちで草を食んでいる。

僕とフィオナさんとの間にそこまで会話はなかったが、
音楽は沈黙を埋めてくれた。

ドライブを気持ちよく思わせてくれるのは、
スコットランドの自然がそうさせてくれるからだろう。

 

 

「それじゃ、私はこっちに行くから。
ここで降りてもらうわね」

 

 

下ろしてもらった道は
車が止まれそうなスペースがあった。

お礼を言ってフィオナさんを見送った。

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さて、あと一台乗せてもらえれば
イギリス入国だ。

 

 

だが、物事はそう簡単に進まない。

 

 

向こうから来るやって来る車は少なく、
田舎の一本道をぶっ飛ばしてやって来る。

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いくら車が止まるスペースがあるからと言っても、
速度に乗った車がヒッチハイカーのために
止まるのは難しい。

運転席からのレスポンスはあったが、
止まってくれそうにない。

 

 

 

マップを確認すると、
僕が下ろされたのはウックロイの手間だった。

その先のホウィックまで行けば
もう少しヒッチハイクもやりやすいだろう。

そう考えて僕は道路沿いを
一人でスタスタ歩き出した。

長い距離を歩いても負担が少ないのも、
前まで僕が背負っていたバックパックを考えたら
ありえなかった。

なんせバックパックだけで23kgもあったからね。
スケボーとかもってたし(笑)。

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ホウィックの町の入り口で
フィッシュ・アンド・チップスの
お店を見つけた。

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イギリスと言えばこの名前が
始めの方に浮かぶのではないだろうか?

単体ではそれぞれ食べたことはあったが、
僕は両方セットでは食べたことがなかった。

お店に入り値段を訊いてみると
5.9ポンド(1,017yen)。

まぁ、現地の人からしてみたら
600円くらいの感覚なんだろうなぁ…。

 

 

どうしようか悩んでいると、
お店のおっちゃんが陽気に声をかけてきた。

 

 

「ヒッチハイクしてるんだろ?
ウチのフィッシュ・アンド・チップスを食べれば、
もう元気モリモリよ!
ダンスしてヒッチハイクすりゃあ、
なぁに、すぐに車が捕まるさ!」

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そうだな…。

なによりこのおっちゃんの
セールストークがよかった。
ゲン担ぎの意味で僕は食べてみりることにした。

そんなノリのいいおっちゃんを写真に撮ろうとすると、
おっちゃんは「写真に撮られるのが嫌いなんだ」と
顔を手で隠した。

まぁ、そういうことなら仕方ない。
いいセールスだったのに…、残念。

 

 

ベンチに腰掛けて買ったばかりの
フィッシュ・アンド・チップスを紙袋から取り出した。

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揚げ物に揚げ物。

コレステロールにコレステロール。
The キング・オブ・ジャンクフード。

一体誰がこの組み合わせを考えたのだろう?

まぁ、いいさ!できたてできたて!

 

 

 

あれ…???

 

 

 

揚げたての白身魚の下には、
しなびたチップスが敷き詰められている

あー…、
だからさっきのおっちゃん
写真に写りたがらなかったのか…。

都合のいいこと言っておいて、
チップスは適当だなぁ。

お店のロスを出さないようにするのも
立派な営業だけどね。

 

 

最後のヒッチハイクへと、
そういう気持ちで根性で
フィッシュ・アンド・チップスを完食した。

 

 

そして完食後の自己嫌悪といったら…。

もたれる胃袋、なんだか体が重く感じる。

 

 

『もう二度と
フィッシュ・アンド・チップスなんて
喰わねえ..』

僕はそう誓った。

 

なんであんなんが有名なんだよ???
理解できん…。

 

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カーライルへと続く一本道で
ヒッチハイクを開始した。

時刻は16時。

もう日も傾いて、車が少ない。

さっきの調子のいいおっちゃんが
言われらようにダンスをしてヒッチハイクしたのだが、
レスポンスはニコニコ笑うくらい。

無表情で中指立てて来るヤツの
気持ちも分からなくもない…。

だってこんなキレのない小躍りして、
ヘラヘラしたヒッチハイカーなんて視界に入ったら
気分を害する人間も、中にはいるだろう。

 

 

 

「ブロォォォォオ….」

一台の車が止まった。

 

 

「お、おおーーーー!!!
ありがとうございます!」

「よぉどこまで行くんだ?」

「え?どこまでって、
ここですよー」

「ブロォオオオオオオ…」

「えっ!!??
ちょ、まって!待って~~~~~!!!!」

 

 

急にアクセルを踏み込んで離れていく車。
「ヒャッヒャッヒャ!」と笑い声が聞こえる。

って、
まさかのヒッチハイク詐欺!

 

 

いやー、こんな手の込んだ
からかいかたもあるんだなぁと
思わず感心してしまったよ。

同じ場所で1時間ヒッチハイクをやってみたのだが、
最後の方はめっきり車が少なくなってしまい、
僕はカーライルへ行くのを諦めた。

まぁ、時間はあるさ。

 

 

 

 

国境前の町ということで
ここからカーライル行きのバスが
出ていることが分かった。

ウィックロイの町は
ほんとうにちっぽけな町だった。

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町の標識にはハイキングをしている
人間のシルエットがあったので、
ここはそういう町なのかもしれない。

 

 

 

 

時間を持て余した僕が行く先はもちろんサブウェイだ。

小さな町だというのに、
深夜2時まで営業している。

コーヒーを一杯だけ注文して、
イギリスの旅の日程を立てたり、
日記を書いたりした。

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以前「カエルダッシュ」で出て来た漫画は
この時描いたもの。
モモコさんのイメージは「なんとなく」です笑。

 

 

 

店内でWi-Fiが使えることになっていたのだが、
どういうわけだか使えない。

困ったな、バスのチケットは
手配して起きたかったんだけど…。

イギリスの移動はヒッチハイクではなく、
バスで行こうと思う。

 

 

「megabus」
という格安バス会社で
事前にネット予約をすれば
5ポンド以下で移動できるのだ。

だが、その価格でバスの座席を
予約するには最短でも5日前には
予約をしなければならない。

今回はかっちしルートの決まった旅になる。
まぁ、それもありか。

 

 

スタッフのお姉さんは、
テザリングで僕にネットを使わせてくれた。
ありがとう。

 

 

 

 

23時か。そろそろ寝床探しにでも行くか。

近くに大きな公園あったしな。

お姉さんにお礼を言ってサブウェイを引き上げた。

夜のウィックロイの町には小さなクラブがあり、
こんな寒い中、腕や脚をむき出しにした
セクシーな女のコたちの姿を見かけたが、
僕には彼女たちがバカにしか見えない。

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ってか寒くねえの!!??

 

 

 

 

公園の隅でテントを張った。

まさか地面から伝わる冷えで寝れないとは思わなかった。

ここはそのくらい寒い。

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1ポンドが100円だったらいいのにと
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最近身につけた特技は「現地人価格に慣れる」です。

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