「タンザン鉄道の旅」

世界一周608日目(2/27)

 

 

ダーバン

・ホテルの前で
朝のコーヒーWi-Fiにありついたあと、
僕はパッキングを済ませた。

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まぁ、こんな感じで、僕もみなさんに混じって
iPhoneをいじくってるわけです。

 

 

 

10時過ぎにはチェックアウトを済ませ、
駅まで続く一本道まで出てそこからバスに乗り込んだ。

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タザーラ・ステーションに着くことろには、
nudie jeansもTシャツも汗でぐっしょりしていた。

だが、駅構内はひんやりと涼しく、
よく冷えたセブン・アップを喉に流し込むと
気分も大分すっきりした。

思わず自撮りしちゃうくらいだ。
うん。なんだか痩せたな。いい感じだぞ。

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ここはタンザニア、ダルエスサラーム

これから僕は24時間かけて、
マラウィとの国境に近いムベヤという町まで向かう。

 

 

 

駅でたまたまエジプトでも会ったことのある
ヨウくんと再会した。

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彼はこの前までウガンダで僕と一緒だった
医大生のガクくんとつい先日まで一緒にいたのだという。
アフリカ旅はこういう再会が珍しくない。

ヨウくんは日本から来た友達と再会し、
これから二人でザンビアへ向かうらしい。

列車は同じだったが、彼らの目的地のルカサまでは
なんと二泊三日もかかるのだとか。

 

 

涼しい構内で軽くお喋りをしながら、
アコースティックギターの簡単なスケールの弾き方や、
ボブ・マーリーの「リデンプションソング」を
ヨウくんから教わったりした。

 

 

 

 

ヨウくんが荷物番をしに待合室に戻って行くと、
今度は彼の友達らしき男の子が出て来た。

僕はニッコリと「あ、どうも!」と挨拶をしたのだが、

「なんだ?!アイツ」という彼のよそよそしさからは

 

 

僕は日本を思い出した。

 

 

 

そうだ。

今でこそ、日本の外では見ず知らずの人から
声をかけられるのが当たり前になっているが、
日本にいたころは、そんなことはほとんどなかった。

あぁ、日本って意外と寂しい国なんだなと
僕は少し哀しい気持になった。

 

 

再びヨウくんが戻って来て、そのことを話すと、
彼は今体調が優れないのだと僕に説明してくれた。

と言うのも、ここに来る前は真冬の北海道にいたらしい。
そりゃ真逆の環境に来たら体調もおかしくなるよね。

 

 

「いや~、でもアイツ、
普段からあんなヤツっすよ?」

「あー…。そう」

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こういうの見ると親近感湧く(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

タンザン

鉄道は遅れることなく駅にやって来た。

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僕たちのチケットは一等車のものだったので
(外国人はそれしか買えないみたいなのだ)地元の人間よりも
早くプラットフォームに入ることができた。

小さな厚紙に手書きの文字が書かれているような
簡素なチケットを見せて、車両の中に入る。

チケットを見せるとスタッフのお姉さんがすぐに
僕のコンパートメントを教えてくれた。

 

 

 

コンパートメントの中には向かい合った座席が二つと
その上に同じ幅のベッドが一つづつ備え付けてあった。

まだ僕の他には同室の乗客は来ていなかった。
どこかこの空間が自分だけのもののように思えた。

窓が少し壊れているのか全開はしなかったが、
開けた窓の隙間からは涼しい風が吹き込んできた。

窓枠に肘をかけて風に当たりながらこれから走る線路の先を眺める。

これから鉄道の旅が始めるのだ。
そう考えるとワクワクせずにはいられなかった。

僕はサブバッグから相棒がくれたハーモニカを気持よく吹き鳴らした。

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しばらくするとアジア人が
同じコンパートメントに入って来た。

レインカバーをかけたバックパック、
服装はタンクトップにハーフパンツ。

ジーンズにブーツを履いている僕なんかより遥かに涼しそうだ。

それでも彼はここにやって来たばかりなのだろう。
かなり暑そうにしていた。

 

 

僕は日本人宿以外の場所で旅先で出会った初対面の人間が
日本人であったとしても、確信が持てないのでとりあえず
「ハロー」と声をかけることにしている。

彼も「ハロー」と声を返してくれた。
声のトーンからもさっきの日本人の男の子なんかよりも
よっぽどフレンドリーだった。

彼の手には緑色のパスポートが握られていた。

 

 

 

 

「Where are you from?」

と僕は彼がどこの国から来たのか訊ねてみた。

 

 

「ああ、サウス・コリア(韓国)だよ」

と彼は答えた。

 

 

荷物を座席の下に入れると、
彼は持っていた食べ物を僕に分けてくれた。

僕は絶賛ダイエット中だったので、「いいよ」と断ったのに
彼は「いいんだ。いいんだ。安いから!」
とまるで世話焼きおせっかいのおばさんのように
僕にサモサを分けてくれた。

旅先で出会う韓国人はいいヤツしかいないというのが僕の持論だ♪

あ~、韓国も行ってみたいなぁ。

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彼と一言二言話しているうちに、列車はゆっくりと走り始めた。

 

 

お互い一人旅をしているということで話は弾んだ。

ソンジュンは英語がかなり流暢で、
1年6ヶ月もの期間、世界を旅しているらしい。

彼の目的地はルサカであり、
隣りのコンパートメントのヨウくんたちと同じだった。

 

 

ソンジュンは南アフリカまで行って韓国に帰るらしい。

もちろん彼は兵役を終らせて旅に出ていた。
そして僕と同じ年齢だった。

 

 

その話するとソンジュンは
兵役に就いていたころの写真を見せてくれた。

今よりも体が締まり、筋肉質に見えた。

 

 

「そう言えば、
韓国のサッカー選手はオリンピックで優勝とかしない限り、
兵役が免除にはならないんだってね。
なかなか大変だよね。やっぱ他の若い人たちも
兵役が好きじゃないの?」

「うん。まぁね。
でも、僕は兵役に行ってよかったけどね。
色々勉強になるよ」

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列車旅って好き♪

 

 

僕はそんなに多くの韓国人に会ったわけではないが、
初めて「兵役に行ってよかった」という韓国人に会った。

話ていても、母国愛が人一倍強いだとか、
右翼側だとかそんな感じは一切しなかった。

ただ、兵役という国が作ったルールの良い側面を
十分に理解しているという感じだった。

 

 

 

 

話していると何度か列車のスタッフのお姉さんが
何度かコンパートメントを訪れ切符を確認したり、行き先を訊いたり、
壊れた窓に枝のつっかえ棒をしてくれたりしてくれた。

少しクセのある英語でペラペラと喋るので、
僕は何を言っているのか分からなかったが、
ソンジュンはきっちり理解して、それに答えていた。

 

 

「もしかして、
フィリピンとかで語学学校行ったりした?」

「うん?いや、行ってないよ。
あれは人によるからね。僕は旅しながら英語を身につけたんだ」

「マジで??!!
おれと一緒じゃん!
ってかおれより喋れるし!」

 

 

旅の期間も同じくらいで、
それに英語の接し方も僕と似ている彼に親近感が湧いた。

 

 

 

 

 

だが、彼と僕に違うとこは彼には

“フィアンセ”

がいるということだった。

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う、羨ましいっっっ!!!

 

 

ソンジュンの彼女は3つほど歳上で
ソウルで教師として働いているらしい。

出会ったのは七ヶ月前のシンガポールで、
彼が南米を旅した時や、ドバイに訪れた際に、
わざわざ韓国から会いに来るほどの熱愛っぷりだった。

 

 

 

「奇跡的なくらいに素敵な女性なんだ♪」

ソンジュンはサブバッグから手帳を取り出した。
それは彼女が一ヶ月に渡って書いた
交換日記的ラブレター」だった。

手帳自体はページ数の少ない小さなサイズのものだったが、
中には手書きの文字が罫線に沿ってかわいらしく書き込まれており、
女のコらしいシールが貼ってあった。

この純情ロマンスに僕は吐血する勢いだった。

 

 

「は、はうっ…!!!
これマジで歳上なの?超カワイイじゃん!!!」

「”カワイイ”?
あ、その言葉知っているよ。カワイイでしょ?」

 

 

 

 

話していると分かってきたのが、
ソンジュンの男子力の高さだった。

今でこそ目の前でだらしない休日のお父さんのようになっているが、
趣味は料理で大学では社会科学を専攻している。
将来は国のために働きたいと考えている誠実な韓国人男子!

おかぁ~~~さ~~~ん!
なんでおれに料理教えてくれなかったの~~~???

 

 

 

いや、なんだか分かってきたよ。

うん。料理ね。料理。

マジで大事。生きていく上にも。

 

 

女のコに
モテるためにも!

 

 

 

 

「ははは。
シミはアーティスティックじゃないか?
僕はそんなことできないよ?」

「いや、違うんだ。
違うんだよ。ソンジュン…」

「あ、そうだ。
よかったら僕と彼女の似顔絵描いてくれないかな?」

「え?いいけど?」

 

 

 

ノートの一ページに絵を描いて欲しいとのことだったが、
僕は俄然乗り気になってきた。

だが揺れる列車の中では
なかなか思うように線が引けなかった。

20分か30分おきに列車が駅に止まると、
その隙を利用して絵を描いた。

停車時間もせいぜい2~3分なので、
全くと言っていいほど作業がすすまない!

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そうこう

しているうちに、列車は自然保護区に入った。

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ここで野性の動物たちが見れるという話を聞いていた。
ここでキリンも見れるらしいのだ。

僕はキリンがどうしても見たかったのだが、

見かけたのはインパラやゾウや猿だった。

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そして列車がまたどかの駅に停車すると
またイラストの続きに取りかかった。

 

 

「だ~~~!くそぅ!もう発進するのかよ!」

「ははは。いいんだよ。そんなに頑張らなくたって?」

「いや、おれは漫画家だからさ!
気合いが入っちゃうんだよね!」

 

 

と言うよりか、今目の前にいるヤツを楽しませたい。
それが僕の原動力だった。

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でき上がった似顔絵を見て
ソンジュンはかなり喜んでくれた。

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マジ、あの短時間で描き上げたおれ、よくやった!

 

 

 

 

 

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綺麗な夕日に息を飲んで、

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そしてだんだん藍くなっていく空に、感傷的な気分になる。

 

 

 

 

 

ソンジュンはイラストのお礼に
スプライトやらドリンクを買ってくれたばかりか、
夕飯まで僕とシェアしてくれた。

 

 

「二人くらいが丁度いいよ。」

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その一言にこの
男の器のデカさを感じた。

 

 

 

そうだよな。
「みんなで食べると美味しいね」
って心の豊かさだもんな。

そりゃいい彼女できるぜ!

 

 

 

 

 

21時を過ぎると
同室のタンザニア人(?)が二人帰ってきた。

席は早いもの順だったため、
体の大きな二人は僕たちの上段に寝ることになった。

大きな体をしんどそうに二段ベッドの上に上げるのを見ると、
少し申し訳ない気持になったりもした。

 

 

 

開けっぱなしになった窓から夜風が入ってきたため、
僕はブランケットをかぶって眠った。

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やっぱ鉄道の旅は面白いです。

この他にも「テーブルに物を置いていると盗まれる!」と何回も注意されたり、

隣りのコンパートメントの欧米人が列車の屋根に登ってチケット代に近い罰金を払わされたり、

暑くって自分もジーンズ腰まで下ろしてだらけていたり、

列車が止まった時に食べ物を買ったり

などと小さなエピソードが沢山あります。
日記にはまとまらなかったかな?

まぁ、いいや。今日も読んでくれてありがとう♪

おれは思うよ。隣りの国が嫌いになりそうだったら
その国を旅をしてみればいいんじゃないかって。

嫌日感情なんて一握りの人間のデマゴーゴスだし、
そんなのにつき合うのはナンセンス。勝手にしてればって感じ。

やっぱラブだよ。ピースだよ。おれらは個人で向き合うべきだよ。
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