「ウェルカム、ヤングマン!」

世界一周664日目(4/24)

 

 

寝床

としては申し分ない場所だった。

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テントを立てたのはよくわからない建物の裏の芝生だったのだが、
向かいにはマンションのようなものが建っていた。

住人か清掃のおじさんにモーニングコールをかけられるかもしれなない
と思っていたが、全くのスルーだった。
8時過ぎに目を覚まし、そこから撤収した。

 

 

 

ここはアメリカ、インディアナポリス
これから向かうはいよいよ

シカゴだ。

 

 

 

一応、ハイウェイへ続く道でボードを掲げてみたのだが、
車の速度が速いことと車の止まるスペースがないことを考えると
ここでのヒッチハイクの成功率はかなり低いことが経験から分かった。

すぐに見切りをつけて、
僕は別のハイウェイへの入り口に向かうことにした。

 

 

一晩寝ると足はいくらか回復するのだが、相変らず足は痛んだ。

普段よりゆっくりと歩き、
なんとかヒッチハイクポイントの近くまで辿り着くと、
近くにあったガソリンスタンドでコーヒーとクッキーを買った。

朝食代わりのコーヒーとクッキーは一日を始める上での
一種の儀式のようなものになっていた。

これがないとどうも朝が始まった気がしないのだ。

これがないとどうも気が落ち着かない。あれ?これって中毒??

 

 

 

食事を済ませると気分は大分スッキリした。

天気のせいもある。こんないい天気の下でヒッチハイクするのが
どこか楽しくもあった。

自分でもよく分からないのだが、なぜかとても優しい気持ちになれた。

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それに呼応するように15分で車が止まってくれた。

しかもシカゴ行きだ。

 

 

助手席からお腹の大きい笑顔の女性が降りてきて、後部座席に移った。

助手席に乗って分かったことは
後ろにベビーシートに座ったカワイイ女のコがいたということだった。

 

 

ネイソンさんと奥さんは病院で働いているらしいが、
実に面白い経歴を持った家族だった。

ネイソンさんは大学で数学を専攻したのものの、中退。
その後バンド活動を経て大学に入り直し、今は病院で働いているらしい。

奥さんはバレエをやっていたらしく、美人な方だった。

どちらもアウトドアが好きらしき、
ネイソンさんは山、奥さんは海が好きという真逆の趣向を持っており、
ネイソンさんはユタ州に5日間のキャンプに行った話を聞かせてくれた。

奥さんはメキシコをサーフトリップしたことがあるらしい。

 

 

ネイソンさんたちとの会話は実に面白いものだった。

ネイソンさんが旅好き、アウトドア好きということもあるのだが、
関心のある分野が似通っていると会話も自然と弾んで行く。

僕が新しいライフスタイルに興味があるのだと言うと、
ネイソンさんたちは今年から自分たちで野菜を作り始め、
来年にはニワトリも飼う計画なのだと言う。

物を大事にするスタンスも僕と似ており、
アウトドアメーカーのpatagoniaが好きなのだと言うと
嬉しそうに聞いてくれた。

 

 

驚いたのが、
ネイソンさんも奥さんも大家族の出身だと言うことだった。
奥さんに至っては9人兄妹。

ちなみにうちの親父は5人兄妹、母親は三姉妹の長女。
そして僕は三兄弟の長男。

家族が賑やかなのは好きだ。自分の生まれ育った環境から、
僕も家族を持てたら三人は子供が欲しいと思う。

奥さんは今現在妊娠しているということだった。男の子だそうだ。

 

 

「一番先が女のコで、二番目が男の子っていいですね♪
僕も歳上のお姉さんが欲しかったなぁって時々思う時がありますよ」

僕はそう口にした。

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ネイソンさんたちは途中のガソリンスタンドで
僕にサンドイッチをごちそうしてくれた。

「ヘルシーとは言えないけどね」
と冗談めかして言うネイソンさんだったが、
僕としては非常に有り難いことこの上なかった。

残り少ないお金で無理矢理旅を続けているようなものなのだ。
マジで助かります。ヘルプミーのヘルプになってます!

 

 

テーブルにサンドイッチを頬張ると、
ネイソンさんたちがお祈りしている姿に僕は気がついた。

すぐに一口を飲み干し、
「すいません」と家族のお祈りが終るまで待った。

お祈りの文句の中に
「シミに安全な旅を続けさせてください」
という一言が嬉しかった。

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久しぶりに名刺描いた。「波」

 

 

 

サービスエリアを後にし、
ネイソンさんが誰かの電話に音声メッセージを残しているのが分かった。

 

 

「今、ヒッチハイカーを車に乗せていてね、
シミという日本人の漫画家なんだ。
それで、突然のお願いで申し訳ないんだけど、
彼に泊まる場所を用意してあげれないかな?」

 

 

僕はそれになんて応えたらいいのか分からなかった。

どこか電話を盗み聞きしているような気がした僕は
「ありがとうございます」も言えずに写真を整理するフリをした。

まだまだネイティヴの英語は聞き取れないことが多いけど、
あそこで僕はちゃんとお礼を言うべきだったのだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネイソンさん

にはシカゴの中心地から20km離れた郊外で降ろしてもらった。

 

 

僕はついにシカゴにやって来たのだ。

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ひとまず僕は中心地がある方角に向かって歩き始めた。

降ろされたシカゴの郊外は
ムスリムの人たちが集まる地区のようだった。

「シュクラン(ありがとう)」という言葉の意味が分かると
僕は彼らに親しみさえ覚えた。

 

 

途中で見つけたマーケットにトイレを求めて入ると、
バックパックを背負った僕を見たおじいさんが突然

 

 

「Young man!
Welcome to Chicago」

と微笑んで言った。

 

 

その時、僕はシカゴの町に迎えられているような気さえした。

僕は黙々と中心地に向かって歩き始めた。

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や、なんでたっておれはこんなにも歩いているのだ??!!

ハイキング開始15分で足が痛い見始めた。

自分でもなんて無謀なことをしているのだと後悔した。
中心地まで20kmもあるのだ。
どれだけ歩けばいいのか分かってるのか?

僕は痛む足を引きずって、ひたすら足下を見ながら歩いた。
前を見ながら歩くと精神的な負荷が大きくなるからだ。

 

 

歩いている最中に今日の目的地をシカゴ・オヘア国際空港に変えた。

今日はそこで空港泊をしよう。く、空港まで…

 

 

だが空港はマップアプリを見る限りでは

7km以上はある。

マジで泣きそうだ。なんでおれは今ここを歩いているのだ?!

 

 

都市型キャンパーのトレイルは
コンクリートで舗装された道だ

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あぁ、ブーツ履いて旅するなら
トレッキングブーツにするべきだった…。

ブーツを履いて旅することに憧れがあった僕は
バルセロナのnudie jeans,のコンセプトストアーで
大枚を叩いてブーツを買ったのだが、
これはどう見てもタウンユースのものだった。

いや、今タウンを歩いているのか…、

うぐ…マジで足がもげそうだ…。

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3km歩いた場所にcostco(コストコ)を発見して、
嬉しくなって駆け寄ったのだが、
そこには家具屋日曜大工品のようなものしか売っていなかった。

砂漠でオアシスの蜃気楼を見たような気分を味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

がっかり

して再び歩き出した僕が見つけたのは

「guitar center」

と書かれた楽器店だった。

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そんなデカデカと「ギター」と言う単語を掲げている
その楽器店に僕は吸い込まれるように入店した。

店内にはギターはもちろんのこと、
他にもキーボードやらドラムまでもが並んでいた。

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カウンターで荷物を預かってもらい、
僕が向かったのはアコースティックギターのブース。

中は室温が調整してあり、少しだけひんやりした。

店員なのか生徒だか分からない二人が、
店のギターを弾いてレッスンみたいなことをしていた。

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僕は気になったギターを値段なんて関係なしに
片っ端から試奏していった。

どんなに値が張るギターであったとしても、

試奏する分にはタダだ

20万円以上するMartinのギターと
3万円のEpiphonのギターの音の違いがよく分からない。

楽器店特有の「店内では綺麗に聴こえるマジック」に酔いながら
僕は試奏を楽しんだ。

 

 

 

帰り際にひととおり店内を見渡して見つけたのが
足に装着する小型のシンバルだった。

値段は14ドル。

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僕はこれと同じシンバルをスイスの首都ベルンで見たことがある。

ベルンはバスキングにフレンドリーな町で、
沢山のバスカー見た。

夕方のアーケードでボブ・マーリーを演っていたバスカーが
まさにこれと同じ物を持っていた。

僕は前々からこのシンバルを欲しいと思っていたのだが、
まさかこんな場所にあるなんて!

ここまで歩いて来たのには意味があったのか!

 

 

今後もバスキングする機会は多くはないだろうがあると思う。

このシンバルがあれば僕のバスキングはもっと彩りを増す。
きっと見ている人を楽しませることができるだろう。

店のギターを使ってこのシンバルも試して鳴らしてみたのだが、
アコースティックギターとの相性は抜群だった。

ドラムが加わったような気分だった。

クレジットカードで支払いを済ませて僕は満足して店を出た。

 

 

すぐ近くにあった「ターゲット」という
大型スーパーの中にあるカフェで
僕はWi-Fiにありつきながらコーヒーをすすった。

お店の女のコはホームレスまがいの僕にかなりフレンドリーだった。
惜しみない笑顔を振り撒ける人を僕は素敵だと思う。

 

 

20時を過ぎると僕は「ターゲット」を後にした。
空港までは39分で辿り着ける道のりだった。

 

 

 

 

 

 

 

外に出ると

雨が降り出していた。

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僕は雨具を羽織り、バックパックにカバーをすると、
iPhoneにダウンロードしたYouTubeの音楽を聴きながら歩き出した。

最初は青葉市子の「機会仕掛乃宇宙」「いきのこりぼくら」、
そして坂口恭平の「オトナの!」のライブ映像。

鬱を経験した坂口さんだからこそ、
「Train-Train」と「魔子よ 魔子よ」の歌詞には説得力があった。

交通量の多い道路沿いにはほとんど人がいないので、
大声で僕もシャウトしながら空港までを歩くことができた。

 

 

 

 

オヘア国際空港の内部で僕が出歩ける場所は限られていた。

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三フロアあるうちの安めそうなのはベンチのある三階だけのようだ。
ターミナルが他にもあるようだが、
僕はターミナル2を今日の寝床に決めた。

1時を過ぎて空港内に人が少なくなると、トイレで髪を洗い、
ベンチに付属されているコンセントで充電しながら時間をつぶした。

 

 

黒人のお兄さんがどこからともなくフラフラやってきて
「金をくれないか?」と僕に尋ねた。

僕は困った顔をして微笑んだ。

 

 

「金があったらここには泊まらないよ?」

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