「ウォーホルさん」

世界一周401日目(8/3)

 

10時に目覚めると

僕は製作にとりかかった。

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スイス、チューリッヒ滞在3日目。

 

 

DJをやっているサミュエルは
ロビン・フッドをもじった名義で

「ROBIN MOOD(ロビンムード)

という名前で音楽活動をやっている。

そのロゴを描くことが今日の僕の予定だ。

 

 

テーブルに置いてあったお菓子を
ちょっと失敬して漫画の原稿用紙に下描きをしていく。

昨日の夜にサミュエルと
どんなロゴがいいか少し話しておいた。

ハートマークの中に「ROBIN MOOD」の文字。

ロビンフッドっぽく弓矢を描いて欲しいそうだ。

それだけだと物足りないので、
僕なりにアレンジしたロゴを書いていく。

 

 

 

はっきし言って
こういうのは上手くない。

でも、自分の力量に
落ち込んでいても良い物は描けない。

楽しんでやること。自分の味が出れば良い。

 

 

定規は使わない。

今の所の僕のスタイルがそれだから。

フリーハンドだからこそ出せるその人の味。

線のゆがみや、その人のクセ、
僕の下手さが逆に強みになる。

 

 

 

 

お昼を過ぎるとサミュエルが起きて来た。

前日と同じようにフルーツとナッツと
ヨーグルトとココアパウダーを混ぜた
ヘルシーフードをいただく。

少し、お喋りした後、僕はまた作業に移った。

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そんな中で一人の日本人の男性
サミュエルの家にへとやって来た。

風貌は50代くらいだろうか?

眼鏡をかけ、白髪の多い髪。

ドットがプリントされた白いシャツと
くるぶし上までロールアップしたデニム。
そして足下は黒い靴。

がまるでアンディー・ウォーホルみたいだな。

僕の初対面の印象はそんな感じだった。

 

 

 

サミュエルが僕のことをその人に紹介する。

それに合わせて、
「あ、どうもこんにちは」と軽く挨拶をしたのだが、
その人は「あ、どうも」とでもいうように
僕に対してあまり興味を持っていないように感じた。

 

 

二三言会話をして僕は作業を再開する。

まぁ、無理に関わる必要はない。

僕はたまたまサミュエルの家に転がり込んだ
居候に過ぎないのだから。

 

 

 

「キョウモ、
ダンスシニイキマショウ!」

 

ストリート・パレードのパーティーは
まだ一部のスイス人の間で続いているのだろうか?

サミュエルはいっつもクラブに
行っているような気がする。

 

 

今日中にロゴを完成させたいんだよと
僕はサミュエルの誘いを断った。

サミュエルの友達の日本人の方(ウォーホルみたいな人だ)は
サミュエルと一緒に行かずに、部屋に残った。

どうしたんだろ?

 

 

「サミュエルと一緒に
行かないんですか?」

「ああ、
もうクラブは十分だよ」

 

 

ウォーホルさんはサミュエルの持っている
日本の漫画「ウルトラヘヴン」のページを
パラパラとめくる。

僕はiPhoneで「Sound Cloud」という
アプリケーションをインストールしており、
それで「ROBIN MOOD」の編集した音楽をかけていた。

部屋にはけっこういいスピーカーがある。

 

 

「音楽替えていい?」

ウォーホルさんが尋ねる。

 

 

 

スピーカーから流れてきたのはギターのジャズだった。

 

 

「今、これを練習しているんだよねぇ」

とボソリと呟く。

 

 

プレイヤーの名前を訊いてみても、
聴いたことのないものばかりだった。

ケニー・バレルジョー・パスと言ったもの。

 

 

ジャズギタリストで僕が知っているのと言ったら
ウェス・モンゴメリーくらいだよ。

そう僕が言うと
「アイツは天才だよ。
あれはアイツにしか弾けないね」と
ウォーホルさんは言った。

 

 

 

 

 

 

「今の日本って面白い?」

 

 

会話の始まりはそんな質問からだった。

 

 

「さぁ?
東京はもうカオスって感じですよ。
僕としては都心じゃなくて
そこから離れたところに興味がありますね。
相棒の故郷は愛媛のとある島なんですよ」

「愛媛ってどこだっけ?愛知?」

 

 

 

だんだんと会話が弾んでくる。

 

 

話はウォーホルさんの生きた歴史に及ぶ。

聴かせてもらった話は
トランス・ミュージックの誕生と
その時代を生きたアーティスト、
ウォーホルさんの人生について。

 

 

 

「ツヨシがいたころは
ゴキゲンだったよね~♪」

 

 

ウォーホルさんは
「ゴキゲン」という言葉を使った。

なんだかそれがずいぶんしっくりきていた。

そういう時代だったんだと思う。

 

 

「今はもう、
何もやっちゃだめって感じがするよね。
70年代、80年代は
そんな雰囲気全然なかったよ。
みんな理解があった」

 

 

ウォーホルさんはヒッピー全盛期に
お金をろくすっぽ持たずにヨーロッパへと出て来た。

日本で音楽をやっていたそうで、
時にはバンド活動をやったり、
時には友達の友達の家へ転がり込んだり、
時にはウェイターとして働いたり。

旅をするように生きている。

そしてここでは書けないような
過激な話もいっぱい聴かせてくれた。

 

 

ウォーホルさんは長いこと
ヨーロッパで暮らしているそうだ。
ごくたまに日本に帰ることがあるらしい。

イタリア人とオーストリア人の奥さんがいたそうで、
つまり、結婚暦が二回ある。

お子さんが4人おり、
2年前から娘さんとチューリッヒで
暮らしているそうだ。

 

 

そして驚きなのが、
スイスでは共同経営者と一緒に
ラーメン屋さんをやっていた
ということだ。
(残念ながらそのラーメン屋さんは今はもうない)

 

 

 

 

話は僕がウォーホルさんの
話を聴かせてもらう形だった。

僕としてはロゴ製作の作業中に
面白い話を聞かせてもらってとてもありがたかった。

単運作業になるとくだらないことしか
考えないからね(笑)

 

 

 

 

ウォーホルさんが来る前から書き続け、
7時間でロゴが完成した。

7時間??!!

間に休憩みたいなものもはさんだけど、
iPhoneのホームボタンを押すと
「17:26」とかなっているのには驚いた。

時間ってぶっとぶんだ。

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「じゃあ、ビールでも飲みに行く?」

分かってらっしゃる!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの売店で缶ビールを買い、
公園のベンチでタバコを吹かしす
日本人二人。

少し肌寒い夕暮れ時のチューリッヒ。

今日が日曜日ということもあり、
まわりに人は全然いなかった。

僕が帰り際にお菓子を買っているのを見て、
ウォーホルさんが声をかけた。

 

 

「うちで味噌汁飲んでく?」

 

 

な、なにぃぃぃぃぃ~~~~~~!!!!!

MI SO SHI RU !!!!

 

 

 

 

「ありがたく行かせていただきます」

 

 

 

 

ウォーホールさんが自作した
スタイリッシュな3万円の自転車を
Penny Boardに乗って追いかけること7分。

サミュエルの家の近くに
ウォーホルさんのご自宅はあった。

 

 

「今日は娘はクラブ行って朝方まで帰って来ないと思うから」

と行って上がらせてもらったご自宅は
まさにアーティストの家。

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リビングに大きなステレオ・スピーカーが
2台設定されており、MacのiTunesからジャズが流れた。

壁にはウォーホルさんが取った
白黒の写真が何枚も額縁に入れられて飾ってある。

部屋の隅にはエレキギターから
アコースティックまでギターが
5本たてかけられていた。

 

 

「悪いね。何もなくて」

「いやいや!
ここに来れただけで満足ですよ!
音がすげえ…」

「そう?ただのステレオだけど」

 

 

キッチンにも小さなスピーカーが
テーブルの上に2台乗っていた。

声が反響するキッチンで、
「だって、ここで音楽聴きたいだろ?」
とウォーホルさんは嬉しそうに言った。

 

 

惜しげも無く2003年の
ボルドーワインを二つのグラスに注ぐ。

さっき缶ビールを飲んだばかりだったが、
11年前のワインはスッとして飲みやすかった。

 

 

もともとラーメン屋さんを
やってらっしゃっただけあって、
キッチンに立つウォーホルさんの姿は
さっきまでの姿とは違って見えた。

ネギを切る音がとてもリズミカルだ。

 

 

「ネギひとつにしても選ぶんだ。
だって良い物が食べたいだろ?」

 

 

「これしかなくてごめんな」と
ウォーホルさんは口にしたが、
出された味噌汁は僕の体にじんわりと染み込んだ。

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一緒に出された白米も
笑ってしまうくらいに美味しかった。

 

 

「やっぱり、
僕は日本人なんだなぁ
って思います」

「味噌もすげえ美味しいだろ?」

「はい!」

 

 

アルコールが入っていなければ
ごはん3杯おかわりできただろう。

それじゃそろそろ帰りますという時に
僕には予感があった。

 

 

 

やべっ…吐くかも…。

 

 

 

「す、スイマセン、
ちょっと飲み過ぎました。
15分だけここで
横にならせて下さい」

「ああ。いいよ。
きっと旅の疲れが
たまってるんだろうね」

いや、飲み過ぎです。

 

 

他の人にとってみたら
なんてことない量のお酒でも、
僕にとっては十分過ぎるくらいだ。

たぶん今の状態は電車や
エスカレーターの振動で吐ける一歩手前。

 

 

 

ソファに横にならせてもらった。

ウォーホルさんは
青葉市子の曲をステレオでかけてくれた。

透明な歌声が酔った体に心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついた時には僕はソファの上で寝ていた。

体には毛布がかけられていた。

時刻は深夜2時過ぎ。

やべぇ、15分どころか2時間も寝ちゃった!

 

 

ウォーホルさんも自分のベッドで寝ていた。

起こすのも悪かったので、
「ありがとうございました」と小声でお礼を言って
僕はPennyをプッシュしてサミュエルの家まで戻った。

 

 

 

 

しばらくしてサミュエルも帰ってきた。

ロゴを見て嬉しそうにしている。

お金を払うと言うので、
僕は「up to you(君次第)で大丈夫よ。
10でも30でもいいよ」と言った。

 

 

「アリガトウゴザイマス♪」

 

 

そう言ってサミュエルから
手渡されたのは100フラン札。

生まれて初めて自分の絵が売れた。

 

 

クラブ疲れで眠って先に眠ってしまった
サミュエルをよそに、僕はひとり作業台の前に座って
アメリカンスピリットをふかしながら
その100フラン札を眺めた。

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今日は本当は作業日だったんだけどなーと考えていても、
素敵な出会いがある。
なんだか旅ってほんと不思議です。何回も言ってるけどね。

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