「トンゾォヴィット!!!(Tons of it!!!)」

世界一周668日目(4/28)

 

 

整備

された公園だったので、
清掃員に叩き起こされるんじゃないかと心配していたが、

ダウンタウンから7kmも離れた場所にある公園だ。
8時に起床しても誰もここに来ることはなかった。

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ここはアメリカ、アラバマ州、マディソン

今僕はコロラド州のデンバーに向けて移動している。
今日もヒッチハイクだ。

 

 

 

テントを畳み終え、
ヒッチハイクポイントまでの残りの数キロを歩いた。

郊外は緑で溢れていた。
静かで何もないけどとても健康的な印象を受ける。

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ハイウェイの前にあるガソリンスタンドでトイレを済まし、
いつものようにコーヒーと朝食代わりの菓子パンを買った。

ヒッチハイク用のカードボード(段ボール)を持っていなかったので、
店主に「ヒッチハイクに使う段ボールをいただけませんか?」
と訊ねてみた。

店主は僕の言わんとしていることを理解してはくれず、
「金が欲しいのか?」と訊き返されてしまった。
バックパッカーとホームレスってほんと紙一重だ。

店主は頭にターバンを巻いてサングラスを額に一つ、
もう一つを目にかけ、そして亀仙人のような髭を蓄えた男だった。

僕は声のトーンを落として「Thanks!」と言い、
できるだけ紳士的にその場を立ち去った。

だが、きっと彼の目には小汚いホームレスが去って行ったようにしか
見えないだろう。

 

 

 

 

目的地はアイオ・ワシティという町

シカゴの南側にいるというギャングを避けるために
北部を迂回するような形でヒッチハイクをしてきた。
これでアイオ・ワシティまで行ければ元の針路に戻れたことになる。

今回もヒッチハイクに関する情報はなかった。
旅をしてみると分かるのだが
意外にアメリカ国内のヒッチハイクの情報はない。

僕はヒッチハイクに最適そうなポジションをマップアプリから割り出し、
実際に自分の身を以てそこがヒッチハイクに適した場所か
そうでないのかを確かめることにしている。

 

 

僕が狙いを定めた場所は交通量の多い場所で、
近くでは道路工事が行われていた。

僕は貴重なA4番のコピーを用紙を二枚貼付けてそこに
「Iowa city」と書いた。

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薄い紙は段ボールと違い、風に煽われてしまうため、
両手で張るようにして掲げなければならなかった。

バスが止まるスペースを利用してヒッチハイクをしたのだが、

15分ほどでパトカーが止り
「ここでヒッチハイクをしてはいけない」
と警告を受けてしまった。

強めの口調だった。

やむなく僕は別のヒッチハイクポイントを探さなければならなかった。

次のハイウェイの入り口まで1kmを歩いた。
ハイウェイを沿うようにして、工事中の降下したを歩いた。

 

 

 

次のポイントはヒッチハイクに適した場所とは言えなかった。

近くにはガソリンスタンドがあり、
ハイウェイ直前の信号で車は完全に停止する時もあるのだが、
車がヒッチハイカーのために止まるスペースはそこにはなかった。

ガソリンスタンドに止まった車全てが
アイオワ・シティに向かう車とも限らない。

またしも僕は次なるヒッチハイクポイントを
探さなければならなかった。

 

 

 

次のポイントはそこから2km離れた場所だった。

ビュンビュンとハイウェイを走る車を横目に
「くそっ!」と悪態をつきながら2kmを歩く。
すぐにじわりじわりと背中に汗をかくようになった。

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最初のヒッチハイクポイントまで10km、そしてさらに3kmだ。

ここまで歩くと、足首が悲鳴を上げだした。歩調ものろくなる。

ヒッチハイカーの「ハイカー」は歩くことを意味しているのだろう。
これはバックカントリースキーにルールが定まっていないように、
バックパッカーもヒッチハイカーもかなり自由度の利く
アウトドア・アクティヴィティのひとつだと思っている。
僕はそんな風に今旅をしているのだ。

 

 

 

 

 

やっとの思いでヒッチハイクポイントまで辿り着いた。

近くにあったガソリンスタンドで頭でも洗おうと思ったが、
今はまだ一台も車に乗れていない。

今はヒッチハイクを続けよう。

 

 

ドライバーの良心に依存するヒッチハイク。
車がなければなにもできないのがヒッチハイカーだ。

次なるポジションも、車が止まってくれるかどうかはかなり微妙だった。

行き先も違うし、車の止まるスペースもほとんどない。

 

 

僕はそこで2時間をいたずらに過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一台車が

止まってくれたが、
「ここはヒッチハイクに適さないわよ」と忠告を受けただけだった。

14時前になり、僕はやけになって、
ハイウェイを少し入った場所でヒッチハイクをすることにした。

通常のハイウェイよりもワンランク規模が下がると、
炉端には車が停まるのに十分なスペースがある場合がある。

それまでの僕は先ほど警察に警告を受けて及び腰になっていたが、
実際にその場に立ってみると、成功するはずがない!
という強気な気持ちになってきた。

これで失敗すれば今度は10km先まで歩かなければならない。
もしくは…、町の中心地まで戻ってバスに乗るかだろう。

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30分で車が停まってくれた。

 

 

ドライバーの女性はかなりツンツンした人で、会話も弾まず、
僕は助手席で背筋を伸ばして行儀よくしている他なかった。

キャスリーンさん(運転している中年女性の名前だ)は

「ヒッチハイクは危険なんだから」

「あんな場所で停まるわけない!」

と僕のことを非難しつつも、
10km先の別のヒッチハイクポイントまで僕を乗せて行ってくれた。

歩かなければならないはずだった10km。
僕としてはかなりありがたかった。

 

 

 

車を降ろしてもらった場所は車はほとんど通らなかったが、
なぜだか僕はこのままヒッチハイクがうまくいくイメージしか
思い浮かばなかった。

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そしてヒッチハイクの面白いところは、

ファースト・ライドが上手く行くと
途端にそれ以降の成功率が高まる

ということだった。

 

 

 

 

次の車はわずか15分で止まってくれた。

アウディの車を運転するパットさん
「ここよろりももう少し先の方がヒッチハイクには最適よ」
と僕を車に乗せてくれた。

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車を降りる前にコーヒーと
マカロニサラダとクッキーを僕に買ってくれた。

そういう差し入れ的な物もかなり嬉しい。

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ハイウェイは

アイオワ・シティに向けて一直線に伸びていた。

あとはここを通る車が止まってくれるかどうかだった。

ひとまず僕は先ほどパットさんに頂いた食事をとろうと、
バックパックに腰掛けて行き先を書いたボードだけを立てかけておいた。

 

 

ここの交通量も極端に少ない場所だったが、
僕がやる気無さげにやって来た車に向かって手を振ると、
なんと一台目でいきなり止まってくれたのだ。驚きだ。

僕はひとまず荷物をおいて10m先に停車しているワゴン車にかけよった。

中には黒人のおじさんが一人乗っていた。

 

 

「ありがとうございます!
アイオワ・シティ方面まで行きますか?」

「ああ、アイオワ・シティだろ?行くよ」

 

 

おじいさんはさらっと言って退けた。

僕は「ちょっと待っててください!」と言い残し荷物をまとめた。

食事の最中だったので地味に時間がかかった。
こういう時に何かを壊したり、置き忘れたりするものだ。

僕は「焦るな!焦るな!」と口に出して、荷物をまとめた。
この逆転劇に顔はニヤけっぱなしだった。

そして振り向くと、

 

 

 

停まっていたはずの車の姿は
そこにはなかった。

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あれ…??!!

 

 

発進する時の音すら僕には聞こえなかった。

「狐に化かされる」というのはこのことだろう。

あまりにアイオワ・シティ行きの車を求め過ぎたせいで
幻覚でも見たのかもしれない。

 

 

僕は食事の続きをとることにした。

やる気無さげにバックパックに座ったまま親指を立てると
地味に車は停まってくれるということが分かった。

長いこと車が捕まらずに疲弊したように見えるからではないだろうか?

 

 

そして僕が荷物をまとめている隙に次の車も発進してしまった。

食事を終えた僕はいつものスタイルでヒッチハイクを再開した。
コピー用紙は手の汗を吸い取って握った部分がふやけてしまっていた。

 

 

 

 

 

本日三台目

の車もすぐに停まっていた。

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乗っていたのはおじいさんで
すぐ隣町のリッジウェイという場所まで向かうらしい。

この際乗れればどこへだってでもいい。
僕は1マイルでも先に進みたかった。

トム・コリンズというのがおじいさんの名前らしかった。
なんだかカクテルの名前みたいだ。
おじいさんのジョークなのかもしれない。

トムさんは毎日午後三時に足を悪くして
入院している奥さんのお見舞い
をしているそうだった。

 

 

「それでいつ奥さんは退院するんですか?」

「いや、もうずっと病院さ」

 

 

そう言うトムさんは寂しげに見えた。

「お気の毒に..」僕にはそういうことしかできなかった。

 

 

ヒッチハイクをしていると、
その人の人生の一部を垣間見ることが出来る。

それはほんの一部なんだけど、
僕は彼らの人生に想像を巡らせることができるのだ。

 

 

 

 

 

降ろしてもらったリッジウェイは
まるでハイウェイの途中にある「陸の孤島」とでも言えるような
ポツンとした場所にあった。

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あるのはハイウェイのみ。

もちろん車は速度を上げて走っているので、
止まってくれる確率は下がる。

周りには何もなさ過ぎて逆に笑えた。

僕ができるのは行き先を書いた紙を掲げて
馬鹿みたいにニコニコするだけだ。

 

 

 

20分後に車が止まってくれた。

信じられるかい?

もう誰か仕組んでるんじゃないだろうか?
あまりに都合のいい展開だ。

 

 

 

乗っていたチャットさんはアジア人の留学生を受け入れているらしく、
ヒッチハイクにも理解があった。

目的地はアイオワ・シティの途中にある小さな村だったが、
僕がひとまずの目的地と定めている”Dubuque”(ダビューク)まで
送っていってくれると申し出てくれた。

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チャットさんにはちゃんと了承を得て写真を撮らせてもらった。ありがとうございます。

 

 

 

チャットさんとのお喋りの間、
運転している彼の姿を運転の邪魔をしないように
隠し撮りに近い形で写真を撮ったのだが、
チャットさんはそれに気づいていた。

「写真を撮る際は了承を得るのがマナーだろう?」と言われ、
思わず「光の加減を確認していただけです」と嘘をついてしまった。

あぁ、そうだよな。やっぱ訊ねるのがマナーだよなぁ。

僕は人に写真を撮っていいか訊ねるのが苦手だ。
だからついつい自然な姿で撮ろうとシャッター音の出るスピーカに
指を当てて消音し、シャッターを切ってしまうのだ。

今日はダビュークで一泊してもいいかなと思ったのだが、
チャットさんは僕を次なるヒッチハイクポイントまで
連れていってくれた。

 

 

 

 

こうなってしまってはヒッチハイクを続ける他ない。

地図を見てもそこがヒッチハイクのポイントだったのだが、
そこはリッジウェイと同じくハイウェイ沿いの微妙なポジションで、
車が停まるスペースはあれども、
スピードを出して走ってくる車が止まってくれるかは疑問だった。

ポイントの唯一の利点は小高い丘の上にあるため、
車がヒッチハイカーを確認して考える時間がいくらかある
ということだった。

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最終ラウンド

のゴングが鳴った。

 

 

日は傾き、あと二時間もすれば日が暮れるだろう。

ボード代わりにしているコピー用紙は
もうボロボロになっていた。

通り過ぎる車のほとんどはトラック。
トラックが止まることはほとんどない。

30分そこでがむしゃらにヒッチハイクを続けたが、
レスポンスはあれど車の量が少な過ぎた。

 

 

 

そして見覚えのある車が見えたなと思ったら、
なんと先ほど僕をここまで乗せてきてくれたチャットさんが
ピザと炭酸飲料を差し入れてくれたのだ

いやいや、どこまでよくしてくれるんだ!
これで僕がここで餓死する心配はなくなったぞ!

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腰を90°に折ってチャットさんには頭を下げた。

「ピザは温かいうちに喰え!」

とよく分からない格言を自分の中で作り、
ひとまずはピザを喰うことに没頭。

一枚まるごと食べると元気が湧いて来た。
これで車が捕まらないはずがない!

 

 

最後の車は反対車線からUターンするようにして止まってくれた。
しかも今度こそ行き先はアイオワ・シティ。
僕はもうほとんど泣く直前だった。

 

 

 

 

 

薬科大学で学ぶケイシーは僕と同い年だった。

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証券会社で働く同い年のフィアンセがいるとのことだたった。

ケイシーは友達と一緒にエクアドールに一ヶ月大学のプログラムで
滞在したことがあるらしく、エクアドールをオススメしてくれた。

車は畑を抜け、すぐにアイオワシティへと僕を運んだ。

 

 

ケイシーにはスターバックスの前で降ろしてもらった。

ここ、アイオワ・シティも大学生の町らしく、
今はテスト期間でスターバックスも
夜遅くまで開いているとのことだった。

僕は閉店の23時までそこで作業をしていた。

 

 

一番最後に店を出る際に、
ヒッチハイクで使えるカードボードがもえらないか、
店員の女の子に尋ねると「tons of it」と言ってくれた。
きっと「腐るほどあるわよ」という意味だろう。
今朝のガソリンスタンドの店主とは大違いだ。

それだけでなく、売れ残りのバナナとシナモンロールを
一箱僕に差し入れてくれた。

 

 

一体なんなんだ?アメリカ?

車が捕まらないと絶望感を味わう時もあるが、

それよりも
旅を応援してもらっている気持ちを味わうことが多い。

 

 

 

町の中心地から2kmほど離れた
川沿いの公園にテントを張った。

学生の町ということで、
ここは治安もよく安心して眠ることができた。

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