「ホームステイは突然に」

世界一周669日目(4/29)

 

 

まだまだ

アメリカ北部は寒い。

寝る前に着込まなければ行けないし、
寒さで夜中に目を覚ますこともある。

 

 

日が昇りテントが太陽に照らされると
内部はじんわりと温かくなっていく。
朝7時くらいを過ぎた時間帯だろうか?

僕はこの時間に寝袋の中にいるのが好きだ。
車の走行音が徐々に多くなって行くのが分かる。
出勤の時間なのだろう。

 

 

ここはアメリカ、アイオワ・シティ

今日はいつもよりほんの少しだけ長く寝ていた。

 

 

 

テントの入り口を開けると、
朝日を反射をして川がきらきらと光っているのが見えた。
その上を鴨が気持ち良さそうに近くを泳いでいる。

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僕はのんびりと荷物をまとめ、
歩いてヒッチハイクポイントまで向かった。

今日の目的地は”Des Moines“という町
(これで「デモイン」と読む)

ヒッチハイクの情報はないが、アイオワ州の人々は
ヒッチハイカーに寛容らしい。今日も良い出会いがあるといい。

 

 

 

 

 

ハイウェイ直前の交差点で僕はボードを掲げた。

気持ちのいい朝だった。

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のんびりここで2時間くらいヒッチハイクしててもいいかな、

と思うが、やっぱそれはナシ。
2時間も待たされたらたまらない。

 

 

 

ニコニコしながらボードを掲げ、
出来る限りドライバーたちとコンタクトをとるように努める。

前評判通り、ドライバーたちのほとんどはレスポンスを返してくれた。

近くをパトカーが通った時は身構えたが
(と言ってもせいぜいボードを降ろすくらいなのだが)
パトカーは僕には全く注意を払っていないように見えた。

パトカーは交差点で危険な運転がないか15分ほどその場に留まると、
ハイウェイの中へと入っていった。

警察に注意をされないということは、
ここでのヒッチハイクがイリーガル(違法)ではないということ!
思う存分ヒッチハイクができる!

そうなるとテンションも上がる。
ドライバーたちとのコンタクトを楽しみながら親指を立て続けた。

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ヒッチハイク開始から1時間でデモイン行きの車が止まってくれた。

いつもありがとうございます。
順風満帆、やっぱり天気が良いといいヒッチができるね。

 

 

 

 

 

 

 

 

運転手

デールさんの第一印象は

「真面目で少しとっつきにくい人」

といった感じだった。

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リネンの白いシャツとコットンパンツ、BMW、
落ち着いた喋り方、あまり表情が変わらない。

だが、デールさんの職業が「建築家」だと分かると、
それを突破口に会話は弾むようになった。

うちの親父が(元)建築家なのだ。
今は工事現場のセキュリティ会社で働いているけど、
そろそろ退職、かな?

今までお疲れ様です。
我らが三兄弟を大学まで行かせてくれてありがとう。
退職後は第二の人生を楽しんでね。

と言いたいところだけど、ゴルフやり過ぎないように。
僕はそれだけが心配です。

 

 

 

デモインまでの2時間、
デールさんとのトークは途切れることなく続いた。

途中のサービスエリアでサンドイッチをごちそうになった。
ベジサンドイッチは僕の貴重な栄養源だ。

 

 

僕が漫画家であることを伝えると、
デールさんは興味をしめしてくれた。

そしてなんと

「うちに泊まっていってもいかないか?」

と申し出てくれた。

 

 

26日にpatagoniaスタッフ、カールの家で
シャワーを借りたのが最後だったから、今日で三日目か。

風呂なし生活の間隔としては短いが、
機会があればできるだけ体は洗っておきたい。

 

 

ヒッチハイクからまさかのホームステイ。旅は何があるか分からない。

デモインに到着した後、デールさんは用事があったため、
一旦別れることになった。

待ち合わせ場所と時間を決めてGmailのアドレスを交換しておいた。

ダウンタウン近くのオフィス街で降ろしてもらった後、
僕はマップアプリでスターバックスを見つけ出してそこへ向かった。

最近絵を描く時間がちゃんと取れていない。
こういう時間でペンタッチが変わってしまわないように、
しっかり手を動かしておきたい。

 

 

 

 

スターバックスまでの1kmほどの道のりを歩いていて思ったことは、
デモインの町は小綺麗な町だということだ。

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道にはごみひとつ落ちていない。

デモインだけでなく他の都市でもそうなのだが、
街の清掃に関してアメリカはかなりレベルが高いと思う。
ヨーロッパだと至る所にタバコの吸い殻が落ちていたりする。

また、街の規模に対して人口の少なさにも注意が向かった。

時刻は13時過ぎ。
この時間はビジネスマンたちは職場で働いているのだろうが、
昼下がりのオフィス街にはほとんど人影が見られなかった。

 

 

 

僕はスターバックスに着くと
一番安い”Fleshed Brewed Coffee”を注文した。

国によっては”Filtered coffee”という名前
だったりするから(一番安いやつがね)。
視力の弱い僕は名称が変わると少し困ったことになる。

もうシンプルに
「Today’s coffee(本日のコーヒー)」だとか
「Dripped coffee」とかでいいじゃないか。

しかも「スモール」サイズじゃなくて、
何で一番小さなサイズが「トール」サイズという名称なんだ?

あれもややっこしい。
他ではどこも「small」なんだから、
スターバックスも同じでいいじゃないか?

まぁ、ちょっとリッチなコーヒーが
ここのお店の売りだからしょうがないか。

 

 

僕は発音が上手くできていなかったせいで、
危うく4ドル以上もするフラペチーノを買わされそうになりながらも、
僕は一番安いコーヒーにありつくと、
充電をしながらテーブルで絵を描いた。

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最近更新してないだけで、描いてますから!

 

 

もっとまとまった時間が欲しい。

描いているとますますそう思う。
できることなら毎日少なくとも5~6時間は描いていたい。

2時間の作業じゃ全然物足りないまま
デールさんとの待ち合わせの時間になった。

スターバックスにいる間にデールさんからメールが来ていた。
奥さんはかなり僕に興味を持ってくれているようだ。

 

 

 

 

 

 

待ち合わせ

場所にしたバーの前でデールさんに車で迎えに来てもらうと、
僕たちはそのままデールさんの家には向かわずに
施設に預けている飼い犬のウーフを迎えに行った。

街の中心地から来るまで10分ほど行った場所に飼い犬を預ける
保育園のような施設があった。

受付にはこの施設で買われている黒いゴールデンレトリバーがおり、
園内に入ると尻尾を振って僕たちを迎えてくれた。

 

 

職員がウーフを連れて来た瞬間に僕は思わずぎょっとした。

犬種は分からないが、
僕は今までにこんな巨大な犬を見たことがなかった。

毛むくじゃらで、少し臭う。

怖がらせないように膝をついてウーフと目線を合わせると、
顔を舐められた。とりあえずウーフとは友好関係を築けそうだ。

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これ、なんて犬種なんすかね?

 

 

 

ウーフが引き渡される時に「fifteen」という単語が聞き取れた。

預けるのに15ドルもかかるのだろうか?
僕は「毎日ウーフを預けているんですか?」とデールさんい訊ねると、
デールさんは「そうだよ」とことも無さげに応えた。

薄々感じていたが、デールさんってひょっとして、

けっこうな
お金持ちなんじゃないだろうか?

 

 

 

 

 

座席を倒して広くしたスペースにウーフを乗せ、
僕はデールさんのお宅へとおじゃますることになった。

デールさんの住んでいる地区には
似た様なデザインの家々が立ち並んでいた。

家の前には整理された道路と芝生。映画で観たアメリカの家並みだった。

映画の中で観ると、これらの家に住むことはあたりまえのように思えたが、
直にこの目で見て思うのは、ここで暮らす人たちは
かなりの収入があるということだ。

生活にゆとりが生まれるくらいの収入がなければ
ここにあるような家には住めないだろう。

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デールさんの家に入ると、そこにはデールさんの息子がいた。

まるで養子として新しく家庭にやってきた子供気持ちだな
と僕は思った。

僕は簡単に自己紹介を済ませ、
デールさんがヒッチハイクでデモインまで
連れて来てくれたことでお礼を言った。

デールさんの息子はそこまでフレンドリーというわけではなく、
『ああそうですか』と自分の部屋へと戻って行った
(ちなみに彼は夕食の時間も自分の部屋に引きこもっていた。
獣医大で勉強しているそうだ)

 

 

 

家にはウーフ以外にも三匹の小型犬がいた。

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僕の姿を見ると最初は吠えてきたのだが、
先ほどと同じように身をかがめ、手の臭いを嗅がせると、
だんだんと静かになっていった。

 

 

 

バックパックを置かせてもらうと、
僕はいくつかの衣類を洗濯機にかけてもらい、
シャワーを浴びさせてもらうことにした。

シャワーは二階の寝室に組み込まれるようにして、
家のサイズには合っていないような大きさだった。

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ここを左に曲がったところにあるのです。

 

 

もしかしたら、他に巨大なバスタブみたいなものが
この家にはあるのかもしれない。

あまりアメリカの人は体を洗うということに対して、
熱心じゃないのかもしれない。
いや、日本が行き過ぎているだけか。

それでも体を洗えること自体、
今の僕にとってはご褒美でしかなかった。

体を清潔に保つことがきるのも先進国ならではだよな。

 

 

 

シャワーから出ると、寝室には
10年以上前に撮られたであろう昔に撮られた家族写真
が飾ってあるのが分かった。
そこには奥さんや息子さんたちが笑顔で写っていた。

シャワーを浴びてグラミチのハーフパンツに履き替えると、
僕はリビングのテーブルの上でnudie jeansの修繕に取りかかった。

前回シカゴでpatagoniaの修理職員たちに
股の部分を補強してもらったのだが、
時間の関係もあって別の小さな穴は修理できずにいた。

バックパックから裁縫セットを取り出し、
ポケット付近に空いた小さな穴に裏側からパッチを当てた。

 

 

 

ジーンズを修理していると、デールさんの奥さんが帰ってきた。

奥さんも建築家だというから驚きだ。

そして先ほど僕が寝室で見た家族写真の中にいる奥さんとは違っていた。
というのもデールさんは離婚した経験を持っていた

小柄でケタケタと笑うデールさんの奥さんは、
突如ホームステイすることになった僕を温かく迎えてくれた。

 

 

 

デールさんの家には僕以外にも
ベネズエラ人のカップルがホームステイしていた。

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二人とも英語よりスペイン語で会話をしたのだが、
奥さんはスペイン語を流暢に扱った。

キッチンではポンポンと会話が行き交い、笑い声が耐えない。
楽しそうな日常の一コマを見ていると
デールさん一家は素敵な家族だと思う。

アメリカは離婚率が多いとどこかで聞いたことがあった。
だけどそう感じさせないのだ。

時々アメリカ人と話していると
「離婚して…」とか「前の妻が」とかそのようなワードを耳にする。

日本にいるとそれは人間関係が
うまくいかなくなってしまった果ての結末のように感じるが、

デールさん一家を見ていると
「やっと自分の探していた人に巡り会えた」
そんな肯定的な印象さえ受けるのだ。

そうか家族の絆は重力を越えるんだったよな。

でも子供のこと考えたら離婚はよくないけどね。

 

 

奥さんが作ってくれた夕食をみんなで囲んで食べている時に、
僕はまたひとつ小さな夢が叶ったような気がした

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「留学」

というのは僕の大学生の頃の夢のひとつだった。

海外でホームステイするというのは
高校生の時に漠然と頭に浮かんだことのひとつだった。

「受験に失敗したら海外の大学に行く」
なんて大口を叩いたことさえあった。

 

 

そして大学生の頃、
一度だけ留学センターに足を運んだことがあった。

留学に関する説明を受け、海外で学ぶのにどれだけお金がかかるかを知り、
僕はこの夢が叶う可能性がかなり低いことを理解した。

両親に「留学したい」と想いを告げても、
明確な動機を持っていなかったため、
彼らを説得することができなかった。
ただ僕は日本の外に出てみたかったのだ。

僕の夢は潰えたように思われた。

 

 

 

 

 

「こんな風にホームステイすることは
僕の夢のひとつだったんです。ありがとうございます。
またひとつ夢が叶いました」

 

 

食事が終ると、僕はそんな風にみんなにお礼を言った。

デールさんの奥さんは「それはよかったわ♪」と言って
「よかったらもっとここにいてもいいのよ?」とさえ言ってくれた。

あれ?今日確か僕はヒッチハイクして、
デモインまで連れてきてもらっただけじゃなかったっけ?

出会いに感謝するしかない。
僕ができるのは感謝の気持ちを口に出すだけだった。

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夕食後一段落すると「ギターを弾いて」とお願いされ、
僕は二曲披露した。

その場にいたみんなは真面目に僕の演奏を聴いてくた。
「よかった」とさえ言ってくれた。

それがどこかむずかゆかった。

 

 

その後、奥さんが買っている
オウムやフトアゴトカゲが披露された。

オウムは恥ずかしがり屋なのか、
奥さんが頑張って喋らせようとしても一言も言葉を発さなかった。

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そのようにして夜のひと時は過ぎていった。

楽しいな。

こういう時は日記なんて書かなくていい。

僕は今、この瞬間を楽しめばいいんだ。

 

 

 

 

23時に就寝時間となった。

奥さんはソファにブランケットを用意してくれた。

お礼を言って、「Good night」と言う。

 

 

あぁ、明日にはここを出るのか。

だけど僕はここを出て次の町へ行くことを決めている。

 

 

急ぐわけじゃない。

何かが僕に「先に進め」とせかすのだ。

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