「ちなみに日本では一度もヒッチハイクしたことありません」

世界一周670日目(4/30)

 

 

デールさん

にはヒッチハイクポイントまで車で送ってもらった。

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デモインの町もヒッチハイクに関する情報はあまりなく、
前日デールさんと一緒になって
GPSマップとGoogleストリートビューを見ながら、
どこかがヒッチハイクに最適な場所か探したのだ。

僕が検討をつけたのは
ショッピングモール付近のハイウェイへの合流点だった
車に乗らないと行けないような場所だ。
送ってもらえてかなり助かった。

別れ際にハグをしてデールさんとは別れた。
デールさんは「Safe travel」と言って僕に5ドルをくれた。

 

 

ここはアメリカ、アイオワ州、デモイン。
向かうはネブラスカ州、オマハ

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ヒッチハイクを開始する前に
近くのガソリンスタンドでコーヒーとクッキーを買った。

デールさんの家ではシリアルやパンなどをいただいて
朝食を済ませていたのだが、この二つがないと
僕は一日を始めることができないのだ。

気持ち的に落ち着かない。
タバコよりもタチが悪いような気がする。

きっと今、僕の体重は増加傾向にあるに違いない。
南米はごはんが美味しそうなのでますます痩せる気がしない。

 

 

ガソリンスタンドの前でコーヒータイムをとると、
ようやく僕はヒッチハイクを開始した。

時刻は10時。まぁ、こんなもんだ。

ポカポカと温かく、交通量もそれなりにある。
これならすぐに車も捕まるだろう。

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そこから

1時間半以上

時間が経って、
笑顔はひきつるようになった。

 

 

交通量は多すぎず、少なすぎず、
ドライバーからのレスポンスもある。
車が停まるスペースだってある。

それなのに止まってくれないのは一体全体どうしてなのだ??!

あぁ~、なんで
「今日デモインを出発します」なんて言ってしまったのだろう?
今日もデールさんの家に泊まらせもらえばよかったじゃないか…。

 

 

パトカーが見えたので、
カードボードをふせてiPhoneをいじくっている体を装った。

ふと後ろを振り返ると、車が停まっている。

あれ?

パトカーじゃないぞ?

 

 

 

 

 

「おう!全然進まねえけどな!
よかったら乗せていってやるぜ?」

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ガタイのいいピアスと刺青のお兄さんと、
助手席に座ったタンクトップのおっちゃんが
止まってくれた車には乗っていた。

ハードロックが好きそうな外見。
ちょっと近づきがたい印象を持った彼らだったが、
ヒッチハイクに重要なのはファースト・テイクだ。
僕はお礼を言って車に乗り込んだ。

ヒッチハイクをする上で危険があることは承知しているが、
彼らの話ぶりから僕は『彼らなら大丈夫だ!』
と確信に近いものを得たのだ。

 

 

 

デンの運転する車は後部座席のドアがなかったために、
助手席のシートを倒してそこから滑り込むように
席に着かなければならなかった。

床一面にビールの空き缶やら、お菓子の袋や、
よく分からい工具が散乱しており、
僕はバックパックを膝の上に抱えるようにして乗り込んだ。

助手席に座ったデニスも実はヒッチハイカーらしく、
どのような内容かは分からないがアメリカ国内を旅しているらしい。
デンの友達のようだった。
たまたまデニスがいる近くを運転していたようだ。

車の中でデンはマルボロを一本僕にくれた。
僕は先ほどガソリンスタンドで飲んだコーヒーの空きカップを
ギターケースの中に入れていたのでそれを灰皿代わりしてタバコを吸った。

そうして僕はデモインの街を抜け出したのだ。

 

 

「ここにトラックがとまるからな。
もしダメだったらうちに泊まってもいいぜ?
まぁ、今日の夕方にここにまた立ち寄るから、
お前がここに立ってるようだったらうちに泊めてやるよ」

デンはそう申し出てくれた。僕はお礼を言って二人とは別れた。

最近車を降ろしてもらう際に
「ヒッチハイクの思い出に写真を撮っていい?」
とドライバーたちに訊ねるようになったのだが、
意外にみんなノリノリだ。

デンとデニスもノリノリで僕の要望に応えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降ろして

もらったのは、
デモインから20kmほど離れた郊外の
ハイウェイ沿いのガソリンスタンドだった。

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「西へ」

 

 

 

交通量はぐっと減り、アメリカの田舎的な空気が漂っていた。

僕はガソリンスタンドでトイレを済ませると、
その場ではヒッチハイクをせずにハイウェイの入り口へと歩いて行った。

ガソリンスタンドでヒッチハイクをするのもひとつの手だが、
ここに停まる車が全て西行きとは限らないからだ。

それならば、確実に西に向かう車が通る場所に立っていた方がいい。

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交通量が極端に少ない場所だけあって、
時折やってくる車とのコミュニケーションはとりやすかった。

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運転席の人の表情もよく見える。

「あら、こんなとこでヒッチハイカーよ。頑張ってね」
と面白がっているように見える。

もちろん彼らがどんなことを思っているのあかは分からないのだが、
こんな僕でも彼らの話の種くらいにはなれたと思うと
嬉しい気持ちにさえなるのだ。

僕にとってヒッチハイクは一種のパフォーマンスのひとつでもある。
だからレスポンスがあると、
それをやっている実感のようなものが得られるのだ。

 

 

だがレスポンスがあれども車はなかなか止まってくれなかった。
ボードを掲げてニコニコする時間よりも待っている時間の方が長い。

ここでぼお~っとしているこの時間を
何かに使えないだろうかと僕は考えた。

 

 

そこで僕はギターの練習をして車を待つことにした。

今までヒッチハイクをする際は、僕は極力その場所に立ち、
時にはバックパッカーであることをアピールするために
バックパックを背負ったままヒッチハイクをすることはあった。

だがギターを弾きながらヒッチハイクすることはなかった。

車が止まってくれたとしても、
ギターケースにしまう時間がもどかしいし、
ギターを弾きながらヒッチハイクするヤツを
ドライバーたちはどう思うかなんて分からなかったからだ。

僕はどちらかと言えば硬派なヒッチハイカーだった。

 

 

物は試しだ。

僕は新曲の練習がてら、ギターを抱えて
ヒッチハイクしてみることにした。

一体どんなレスポンスが返ってくるのだろうか?

 

 

そして僕はすぐにこの

ギターを構えてヒッチハイクする

というアホみたいなヒッチハイクが

地味に効果を発揮する

ことを実感した。

 

 

 

明らかに先ほどよりも
レスポンスが多いのだ。

ドライバーからしてみれば、
彼(というか僕)が一体何者なのかは分からない。

ヒッチハイカーに見えるけど、ミュージシャン?
一応手には行き先の書かれたカードボードを持っている。
だが、ホーボーやホームレスのような胡散臭さは感じられない。

 

 

「あはは、頑張れよ~」

声は聞こえないが、手を振ってくれたり
親指を立ててくれるレスポンスから、
言葉が伝わってくるような気さえする。

 

 

 

 

 

そうして40分ほどして止まってくれたのは
ショーンさんという人だった。

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どちらかと言えば無口なショーンさんとの会話はほとんど弾まなかった。
カーステレオからはカントリーミュージックがかかり、
ダッシュボードにはケースには入れられていないCDの束があった。

ハイウェイ沿いには広大な畑がどこまでも続いており、
その何もなさが、無口なショーンさんと絶妙にマッチしていた。

先ほどの場所から一時間ほど車に乗せてもらい、
僕はどこか分からない場所で車を降りた。

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僕は再びギターを構えたヒッチハイクを開始した。

すると面白いことに、15分で車が止まってくれた。

行き先はここからほんの数マイル先だったが、
僕はお礼を言って車に乗り込んだ。

 

 

ジョッシュと友達のネイソン、それに飼い犬のギズモ
トランクには釣り竿が入っていた。

ギズモは片方の目が潰れた犬で、
それがどこか漫画っぽささえ演出していた。

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なんだか、出会いにストーリーがある。
もっと話していれば、彼らのことがもっと知れたのになぁ、

ほんの30分も走らないでドライブは終わり、
僕は彼らにお礼を言っていつもと同じように
ハイウェイの入り口で降ろしてもらった。

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そしてここからがキツかった。

 

 

そこは

ほとんど
何もない場所

だったのだ。

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ヒッチハイクをしていると、
乗せてくれるドライバーの半分は
途中までしか行かないことが多い。

乗せてくれること自体がかなりありがたいので、
僕は車に乗せてもらうのだが、

彼らの目的地が小さな町で、降ろしてもらった場所が
今僕が立っているような何もない場所だと困ったことになる。

最悪、町まで歩いてバスに乗って次の町まで行くことになるだろう。

 

 

 

車はほとんど通らなかった。

おまけにさっきよりもレスポンスが薄くなったような気がする。

そりゃギターを構えてヒッチハイクしているからって、
全ての人が好印象を抱くわけじゃない。

 

 

ハイウェイの脇には畑が広がっていた。

こんな場所からを西に向かって走る車があるのだろうか?

 

 

そして二時間そこで僕は待った。

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「こ、来ねえ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レッカー車

が止まってくれた時は信じられなかった。

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通常、このような特殊な車が
止まってくれることなんてないからだ。

運転手のクリスさんは、若い頃バックパッカーをした経験があるらしく、
旅人に対して理解を持っていた。

 

 

クリスさんの目的地はサウス・ダコタらしい。

ここから6時間以上も運転は続くそうだ。

僕は一瞬この長距離ドライブのお供をさせてもらおうか悩んだが、
やはり今日の目的地に定めているオマハまで向かうことに決めた。

 

 

途中に止まったガソリンスタンドで
クリスさんは僕に20ドルをくれた。

僕はお礼を言ってガソリンスタンドで1.6ドルのコーヒーを買うと、
お釣りを返そうとした。

だが、クリスさんは
「とっておきな」と気前の良いことを言ってくれた。

それどころか車を降りる際に、さらに20ドルを僕にくれたのだ。

「そんな必要ないですって!」と言うが、
クリスさんは「いいんだとっておきな!」と同じセリフを口にした。

 

 

ここまで来るまでの間、
クリスさんとどんな内容の話していたかはよく覚えていない。

いつものように自己紹介を兼ねた旅の話だったり、
笑い話を混ぜた貧乏旅の話だったり、家族のことだったりそんなのだ。

先ほど2時間もまったこともあり、会話は弾んでいた。

 

 

 

NYを出てからほとんどお金が減っていない。

もちろんヒッチハイクと野宿をしているからなのだが、
ドライバーさんたちから「頑張れよ」とお金をもらうことが多いのだ。

これはアメリカ旅における文化なのかもしれない。

 

 

 

一方で、僕は今

「ヒッチハイクの文化」
を継承している自負

さえあった。

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70年代、アメリカで最盛期を迎えたヒッチハイクは
その後、衰退の一途を辿り、
今ではドライバーが見知らぬ人間を
車に乗せることさえ拒むようになった。

僕のヒッチハイクのスタイルは300kmほど離れた行き先を
カードボードに書き、親指を立てるスタンダードなスタイル。

この旅の中で時折ヒッチハイカーを見たが、
中にはボロボロのジャケットを着たホーボーや
ホームレスのような出で立ちの者もいた。

前回ミルウォーキーからマディソンに
僕を乗せてくれたデイヴィッドさんは、
マーケットの前でボードを構えている若者を見て、
「彼らはダメだね」と言ったのを思い出した。

自分のことは棚に上げているようだが、
ヒッチハイクは見た目も重要みたいだ。

 

 

そして僕は古き良き自体のアメリカの
ヒッチハイクの文化を引き継いでいるのだ。

この40ドルは次のヒッチハイカーへ繋げなくてはならないと思う。

いつか日本でアメリカからやって来たヒッチハイカーを見たら
間違いなく僕はこの仮を返すだろう。

いや、国籍なんて関係ないな。

ドライバーの好意に甘えるような行為だが、
毎回そこには出会いがあるし、僕はヒッチハイクが好きなのだ。

 

 

 

 

 

降ろして

もらった場所はオマハの直前だった。

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距離にして50kmほどくらいだろうか?

ハイウェイの入り口付近にはSABUWETもあり、
ここでヒッチハイクが失敗した場合の避難所まで用意されていた。

だが、僕は今日中にオマハまで行ける自信しかなかった。

日本と比べると日が出ている時間も長い。
ヒッチハイカーには有り難い国だなここは。

 

 

途中で止まってくれた軽トラックのおっちゃんは
車に乗せられない(行き先が違う)代わりに、
僕によく冷えた瓶ビールをプレゼントしてくれた。

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「サ〜〜〜ンクス!!!」

 

 

僕はビールを飲まずにバックパックのボトルホルダーに入れ、
ヒッチハイクを再開した。

ここでも1時間半以上待ったが、
止まってくれた車はまるで僕を迎えにきてくれたように登場した。

 

 

 

ケイシーが止まってくれた理由は

まったく同じバックパックを私も持っていたから

だった。

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僕が使っているのはOSPREYの68Lの”Kestrel”という型だ。

ケイシーはこれを背負って
アパレーション・トレイルを3ヶ月で
仲間と共にスルーハイク(踏破)した
そうだ。

車に乗せてくれたお返しに僕は先ほどもらった瓶ビールを
ケイシーに渡した。

 

 

ケイシーによると、オマハの町には
「世界一の動物園」があるらしい。

だが、町から少し離れているらしく、
ケイシーは「ヒッチハイクで行くのもありかもね」
と冗談めかして言った。

 

 

ケイシーにはダウタウンで降ろしてもらった。

時刻は19時。こちらはまだ夕方の時間帯だ。

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ひとまず

僕はオマハの町を歩いてみることにした。

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なんか可愛い雑貨も売ってました。
デカかったけど…。
タイダイTはかっちょよかったな。

 

 

 

ここにはいくつものアンティークショップがあった。

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Village Vanguardのようなシュールな雑貨を売るお店から、
昔のアメリカの看板やレコードを売るようなお店だ。

だが、それら以外にこれと言って中心地で見るものはなかった。

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ダウンタウンには作業場にできるような24時まで営業している店はなく、
その分お洒落なバーやレストランが立ち並んでいた。

夜になるとバスカーが二組ほど現れ、
利益の食い合いのような立ち位置でパフォーマンスをしていた。

僕も少し離れた場所でバスキングをしてみたのだが、
レスポンスはいいとは言えなかった。

バスキングをすることは認められているが、
自己紹介が書かれたボードを出すのはいけないらしい。

何もすることがなくなってしまった僕は
2kmほど離れた大学の近くにあるマクドナルドへ行ってみることにした。

 

 

 

 

マクドナルドに到着したのが22時過ぎ。
23時になると店を追い出された。

自分でもなんでこんなにしんどい思いまでして
マクドナルドに来たのか分からなかった。
ここでしたことを言えばスプライトをオーダーして
メールやSNSをチェックするくらいだった。

 

 

 

 

ヒッチハイクのできそうな場所は10kmも離れていた。

今回もまたナイトハイクだった。

3kmを過ぎた所からだんだんと足が痛くなり始め、
指が革靴に当たり、歩くことが苦痛になってくる。

はぁ、こんなに歩くんなら
トレッキング用のブーツを履くべきだった…。

それでも
「ブーツを履きながら旅をする」ことに対する憧れが拭いきれずに、
僕は足を痛めつけながら7kmをナイト・ハイクした。

 

 

寝床にしようとしていた公園まで辿り着く気力がなく、
途中の駐車場の脇にある芝生にテントを張った。

ヒッチハイカーもさ、楽じゃないんだよ?

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