「8時間…」

世界一周671日目(5/1)

 

 

「ハロー??

誰かいるのかい?」

テントの外から誰かが声をかけてきた。やばい警備員か??!!

急いで上体を起こした。

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近くで働いているのだろう。

半袖のボタンシャツにコットンパンツといった出で立ちの
肥満傾向にあるおじさんが
「ここで寝てはだめだよ」と声をかけてきた。

僕は寝込みを襲われたようなものなので、
うまく英語が喋れなかったが
「すぐに出て行きます!」
といった意味のことをなんとか口にした。

おじさんはテントの中から出て来たのが
アジア人のホームレスだったこと(しかも外国人だったこと)に
驚いた様子で、それならいいんだよ、
とあまり怒っているような印象はなかった。

 

 

ここはアメリカ、オマハの町

 

 

 

 

連日のようにヒッチハイクをしてデンバーを目指している。

ヒッチハイクができそうなポイントまで夜中に歩いて
距離を稼ぐのが僕のスタイルだ。

 

 

昨日は町の中心地からハイウェイの入り口まで10kmもあった。

7kmをナイトハイクして、
公園とも言えないような芝生にテントを張ったのだ。

撤収作業をしていると、また別のビジネスマンから声がかかった。
細身の長身で頭の禿げた白髪頭。どこか真面目で固い印象を持つ
区役所に勤めていそうなタイプの人間だった。
今度のビジネスマンは怒っているようにも見えた。

もとよりこの町には滞在するつもりはない。

「すぐ出発しますから」と言うと、
ビジネスマンはどこかに行ってしまった。

さてと、そろそろ行きますか。

 

 

 

 

 

残りの3kmを歩いてハイウェイの入り口まで向かった。

最近発見したことは、
ハイウェイの直前にはガソリンスタンドがある
ということだった。

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考えてみたら長距離を走る車に対して需要があるのは
当然のように思える。

だが、ガソリンスタンドは僕にとっては
「峠の茶屋」みたいな存在だ。

そこではトイレや食糧が手に入るからだ。

トイレを済ませ、いつものようにコーヒーとクッキーを買った。

 

 

 

レジの店員はインド人顔で、
僕に「どこ出身だい?」と聞いてきた。

僕が「ジャパンだ」と言うと、
「コンニチハ~!アリガトゴザイマ~ス♪」と日本語を口にしてくれた。
彼は日本で暮らしたことがあるようだった。

海外で外国人の喋る日本語を聞くとどこか嬉しい気持ちになる。

店員は僕に「グッドラック!」と言ってくれた。

ヒッチハイクの成功が祈られた。

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それが功を制してか
ヒッチハイク開始わずか10分で車が停まってくれた。

運転手はジニという女性で韓国出身だった。

高校生の時に渡米してきたようだ。娘さんがいるらしい。

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ジニさんの行き先はオマハの郊外とも言えないような街の端だったが、
まずは郊外に出ることが優先だと僕には思われた。

お礼を言ってハイウェイの入り口で降ろしてもらった。
今日もいいヒッチハイクができそうだ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間が

経過した時、

 

 

『あのファースト・テイクは一体何だったんだ??!』

と僕は何度も頭をひねった。

 

 

終いには雨まで振り出し、僕は途方にくれた。

ヒッチハイクをしている場所は長い坂の途中にある。
車の停まるスペースも十分にある。

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だが、道自体が東方面と西方面の真逆の方向に別れているため、
車の半分以上は逆方向にへ向かうものだった。

僕はハイウェイの直前まで行ってみたのだが、
そこにはヒッチハイクを禁止する標識が立っていた。

ポジションとしてはヒッチハイクに最適なポジションだった。
これはヒッチハイカーを殺すために立てられているに違いない。

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僕は警察が怖かったので、道を戻り、
また東行きと西行きの車が通る坂道の中腹でヒッチハイクを再開していた。

それがこの2時間の僕のヒッチハイク内容だった。

レスポンスはいい。だが、車が止まらない。
いたずらに時間だけが過ぎて行く。

 

 

ダメもとでヒッチハイク禁止の標識ギリギリまで近づいて、
西行きだけの車にしぼって僕はヒッチハイクをすることにした。

 

 

そして、ようやく一台の車が止まってくれた。

「ここから1時間ほどしか行かないけど」

と運転手のお兄さんは言ったが、
その1時間がどれほど重要な意味を持つだろうか?

車での一時間は歩いてだと辿り着けない距離だ。
僕はお礼を言って車に乗り込んだ。

 

 

 

運転手のキーバン
僕と歳が2つか3つほどしか変わらなかった。

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鉄道会社で働いてるらしく、
彼もギターを持っているということだった。

楽器を持っているとシンパシーみたいなものを感じる時がある。
ミュージシャンじゃなくても僕たちは楽器を奏でることができるのだ。

 

 

「トレインホッパーで見たことありますか?」

「ああ、あるよ。
アイツらの面白いとこは、
列車を降りてまず一番最初に訊くことが
「ここはどこだ?」ってことなんだ。
アイツらは乗り込んだ列車が
どこに向かうかなんて分かってないんだよ」

 

 

貨物車に乗り込むトレインホッピング。

一度はやってみたいけど、あれは違法だし、
ヒッチハイクよりもリスクが高い。
映画「Into the wild」でも、主人公が鉄道員に見つかって
殴られるシーンがあった。

 

 

 

キーバンは他にもアメリカの銃の話もしてくれた。

「僕たちには全く必要のないものだ」

とキーバンは言った。

 

 

そうだ。

銃が日常生活において必要とされるシチュエーションなんて
ゼロに等しい。

僕はアメリカの銃社会に対してどこか
ビジネスの臭いみたいなのを感じているし、

実際にアメリカを旅をしてみると、
そこに暮らす人たちや生活ぶりから、
やはり銃は必要のないものだということを分かる。

 

 

キーバンは僕を降ろす前に、
サンドイッチとオレンジを一個買ってくれた。

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「ここがヒッチハイクには最適だよ」
と降ろしてもらった場所でムシャムシャと食事をとっていると、

 

食事の最中に車が停まってくれた

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ありえん…。

 

 

 

ダレンはこれから誰かを迎えに行くから
寄り道をしてもいいかい?と僕に尋ねた。

もちろん僕が断る理由がなかった。
こういう寄り道もヒッチハイクの楽しい所のひとつだ。

 

 

ダレンはアメリカ人特有の一方通行のマシンガントークを繰り広げた。
まくしたてるような喋りっぷりで、
ほとんど会話の内容を理解することができなかった。

 

 

「ネブラスカの連中は都市部のヤツらに比べれば
みんなフレンドリーさ!それに自然が豊かなんだ!
なぁカヤックとかラフティングはやったことあるかい?
あれは最高だよ!君も是非やってみるんだな!
あぁ、そうだ。もしよかったら、おれに10ドルくれないか?
それを20ドルに変えてやるよ?」

 

 

ダレンはスーパーの駐車場に車を停めて、
誰かがやって来るのを待った。

少し離れた場所に高校があり、
そこに通う弟だか息子だかを迎えに来たようだ。

ダレンは若い父親のようにも見えるし、
歳の離れた兄のようにも見える。

 

 

 

車はさっきヒッチハイクをした場所から
2マイルも離れていないガソリンスタンドに止まった。

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「ここなら長距離を走るトラックが乗せてくれると思うぜ?」

というダレンだったが、
僕はいつものようにハイウェイの入り口で
ヒッチハイクを再開することにした。

ダレンさん、楽しいヤツでしたよ。

 

 

 

 

 

 

ハイウェイの入り口はかなり小さく、
おまけにすぐ真横が工事中だった。

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車の進入しないように立てられたプラスチック製の
ドラム缶のようなものが邪魔だったので、
僕はそのドラム缶をふたつほどずらして
車が止まれるようなスペースを作った。

その甲斐もあってか30分もすると車が止まってくれた。
数マイル先までしかいかないとは言うが、
僕はお礼を言って車に乗せてもらうことにした。

 

 

運転手のジェイムスの車の中には
銃のようなドリルが置いてあった。

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ハンドルを握る腕にはなんのデザインかは分からないが
タトゥーが入っているのが見えた。

僕は一瞬ビビッたのだが、彼が人を襲うような人間には思えなかった。
ドリルはきっと仕事で使うのだろう。

ジェイムスには5歳の娘がいるらしく、
後部座席にはチャイルドシートが備え付けてあった。

またジェイムスの趣味はカヤックやアイス・フィッシンングらしく、
腕の刺青は氷に穴をあけるドリルのデザインだったのだ。
よほど釣りが好きなのだろう。

車を15分ほど走らせた場所で僕は降ろしてもらった。
ネブラスカ州に住む人たちは旅人に対して
心が開けているのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思ったのだ。僕は。

 

 

 

 

 

 

 

確かにどこの都市でも
ヒッチハイクで抜け出すのには時間がかかることが多い。

反対に郊外であれば意外にみんな親切で
車に乗せてくれることが多いのだが…

 

 

ここで何時間待っただろう?

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車の交通量は少なく、
おまけにヒッチハイク禁止の標識まで立ってやがる。

警察が近くを通りそうな気配はないが、
もし見つかったら警告を受けることは間違いないだろう。

まるでこの標識が効果を発揮しているように、
僕は車を捕まえられずにいた。

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周りにはなにもなかった。

ここで夜を明かすとなった場合を頭の中でシュミレーショトする。

ペットボトルの水ももう残り少ないのも気がかりだ。

前回と同じようにギターの練習をしながらヒッチハイクを試みたものの、
みんなはニコニコと笑ってはくれたが、
車が停まってくれることはなかった。

目的地にしている”North Plattes“が遠過ぎるのだろうか?

 

 

 

夕暮れになり、止まったトラックが
「君を乗せてあげることはできないけど」と言って
ペットボトルの水を二本僕に投げてよこしてくれた。

僕はそのうち一本を一気飲みし、またヒッチハイクを再開した。

 

 

ヒッチハイクを何回もしてきたが、
こうして何時間も待っていなければならないのは本当にキツイ。

考えてみたら今日朝10時からヒッチハイク始めたよな…。

今18時か。

うそ…、おれ、

 

 

8時間も
ヒッチハイク
してるのかよ…???

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諦めかけたころにトラックが止まってくれた。

近くの”York(ヨーク)“という町まで行くとのことだった。

 

 

運転手のジャスティンはかなり訛りのある英語を喋った。

僕が何度もお礼を言うと
「ノープロブレム」と言って黙々と運転を続けた。

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あまり会話も弾むことなく、僕は外の景色を見ていた。

ネブラスカ州のハイウェイの周りは平たく、
視界を遮る様な山は存在しない。

どこまでも続く畑に水を撒くための
車輪のついた装置がところどこに見える。

 

 

 

何もない場所を見ると

『ここで暮らすことになったらどうしよう?』

と想像することがある。

自分たちの食糧を作って行くこと、それに対して憧れることもあるが、
ここまで広大な敷地で一人暮らして行かなければならないとしたら、
様々な不便が生じるに違いない。

もちろんここで働く人は別の場所に家を持っているのだろうが、
僕はここにあるどこまでも続く大地を見ると不安になるのだ。

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サンクス…。

 

 

ヨークの町のハイウェイ手前には
ガソリンスタンドやファストフード店やカフェなどが乱立していた。

僕はいつものようにマクドナルドで閉店時間まで作業し、
ガソリンスタンドの裏手にある芝生にテントを張った。

マップを見るとオマハから120kmしか進んでいなかった。

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