世界一周715日目(6/14)
テントから
顔を出すと歩道が近くにあるのが分かった。
歩道と言っても茂みをつっきる砂の道で、
それはビーチへと続いている。
テントを立てた場所はポールと紐で仕切られた内側で、
隆起のある場所だ。
ビーチへ行く人間はここを通らないようになっている。
その歩道を通る人たちの頭が茂みの間から見えた。
誰も僕を叩き起こしにくる人間はいなかった。
僕はテントの中でジーンズの破れた部分に
パッチを当てることから始めた。
今日は日曜日だ。ゆっくり行こうじゃないか。
10時には片付けを始めた。
学生たちがビーチに集まっているのが見えた。
何かの授業だろうか?
ここはアメリカ、ベンチュラ。
大好きなアウトドアメーカー、patagoniaの一号店がある町。
ボタンシャツは明日修理してもらえるかもしれない。
そうスタッフのコウスケさんは言っていた。
修理職人さんは月曜日に出勤してくるからだ。
僕は今日一日は作業をすることにした。
あいかわらず日記は書きたまっている。
日記を書く時は、その日をスムーズに思い出すこともできれば、
手帳に書き記した活動記録を見なければ、
その日一日を再生できない時もある。
その日の出来事をその日のうちに書くことがベストだけど、
キャンプをしている僕にとってやっぱりそれは難しい。
数日滞在する町で一気に書き上げるしかないのだ。
10時半にはビーチからダウンタウンへと向かった。
まず僕は作業のできそうなカフェを探した。
ダウンタウンはメインストリートにいくつかの店が続いているだけの
規模の狭いのもので、そもそも店の数自体がそこまで多くはない。
見つけたタコス屋で2.5ドルのチップスを注文して、
充電をしながら日記を書いた。
Wi-Fiとコンセントがいっぺんに手に入ることは滅多にない。
どちらかひとつを選ばなければならない。
どうせ夜の時間はマクドナルドかなんかで時間をつぶすのだ。
それなら今は充電を優先しよう。
僕はこんなことを考えて作業場を選んでいる。
15時に
なると、僕はもう一度パタゴニアに行くことにした。
昨日ゴアテックス用の洗剤を借りたので、
それを返しにいこうと思ったのだ。
日曜日ということもあり、店は静かだった。
僕はお礼を言って洗剤を返すと、
スタッフのメアリーさんとお喋りをした。
僕がアメリカの次にメキシコに行くのだと話をすると
メアリーさんは、
「メキシコはとってもいいところよ♪」
とそう言った。
別のスタッフが
「いやいや、気をつけなきゃだめだぜ?」
と言う。
「ヒッチハイクとかキャンプは
さすがに無理ですよね?」
僕は冗談めかして訊ねた。
「そう?私はどこでもキャンプしてたけど?」
カリフォルニアをそのまま南下し国境を越えると、
そこは「バハ・カリフォルニア」と呼ばれるエリアになる。
ビーチ沿いの細長い地形で、安全でヒッチハイクも可能、
どこでもキャンプができるというのがメアリーさんの意見だった。
「ただし、ほんとうに何もないけどね」
「う~ん。それなら僕は
もうちょっとメキシコらしいメキシコが見たいので、
メイン・ランド(本土)の方に行きます」
スタッフとの、こういう話も僕は大好きだ。
メキシコはアメリカと面しているだけあって、
そこにサーフトリップをしに行ったことのあるスタッフが何人かいた。
今日は30分ほどで店を後にした。
近くに
「キング・バーガー」があることが分かった。
椅子の下にコンセントを見つけたので、
コーヒーとハンバーガーだけ注文して席についたのだが、
たぶん特別な形状のソケットでないと電気が通らない仕組みなのだろう。
ソケットを差し込んでも充電することはできなかった。
まぁ、仕方ない。
Wi-Fiも遅く、Facebookのアプリを開くだけでも
時間がかかってしまう。
いいさ。描くとしよう。
今現在、ふたつの依頼を受けている。
ひとつはマサトさんが出版するという電子書籍の表紙の作製だ。
こちらは既に何点かのラフを送っており、
マサトさんの返答を待っているところだ。
そしてもうひとつは、
ツバサさんから依頼された結婚式のウェルカムボードの作製だ。
この間サンタクルーズの画材屋で仕入れた紙や色鉛筆は
そのためのものだった。
「カエルダッシュ」は2014年に一年かけて夫婦で
世界一周をされたツバサさん、モモコさんの世界一周ブログだった。
そのトラブルに続きのドタバタ感とギャグセンスで
お茶の間の人気を博し、あれよあれよといまもなく、
ブログランキングもうなぎ上りで、
最後の方には一位に輝いたブログである。
僕はインドのバラナシで一度、
そしてクロアチアのドブロブニクで再会したことがある。
頼まれてもいないのに勝手に二人を漫画に描いて、
画像を送りつけたりもしたことがあって、
まぁ、よくしてもらっているわけです。
てか、いいかげんブログ更新してくださいよ?
今度の9月に結婚式をあげるそうだ。
ツバサさんから連絡がきたのはつい先日のことだった。
一度たりとも結婚式とやらに出席したことのないこの僕が
一体どんなウェルカムボードを作るのか?
頭の中にアイディアはあった。
っていうかそれしか僕は描けないだろうなって思っていた。
二人の旅路を絵にするのだ。
もちろん見ていて面白いと感じてもらえるような。
A4の安っぽいコピー用紙にラフを書いていった。
一本出来上がると、
それをFacebookのメッセンジャーで送った。
時差はあったが、ツバサさんからの返信は割と早く帰ってきた。
なんだかすっごいノリ気!
〆切はあと三ヶ月もあとだが、
依頼を受けたてから早く出来た方がいい!
バーガーキングの閉店時間の21時半まで作業をしていた。
余った時間は桟橋の見える海沿いのベンチで
ポロポロとギターを弾いて時間をつぶした。
一曲だけ拍手をもらえた。
火のついたポイがすごい早さで回転している。
離れた場所で誰かがパフォーマンスの練習を
しているのが分かった。
23時になると手頃な空き地にテントを張った。
何もなければ何もないですることがあるのだ。
これでいい。僕はこれでいいんだ。
これは絶対次に繋がる。何も無駄なことなんてない。
僕は描けばいいのだ。
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