世界一周735日目(7/4)
前日に
パッキングをちゃんと済ませておいた。
シャワーを浴びて汗をかいた体をさっぱりさせると、
僕は受付に鍵を返して外に出た。
ここはメキシコ、マサトランという海辺の町。
『もう一泊してもいいかな?』
という気にもなっていたが、
滞在を延長したところで昨日と同じように
ウダウダと過ごしてしまうのは自分でも分かっていた。
旅する実感が味わいたいのであれば移動することだ。
今日もヒッチハイクをしようと思う。
向かう先はグアダラファラという大きな街だ。
ひとまず僕は町外れまで出ることにした。
メキシコのローカルバスはどこに停まるのかも、
行き先がどこなのかもよくわからない。
そもそも自分の行きたい場所が曖昧なのだ。
だから僕は目的地までの直線上に出ることにした。
さすがにまっすぐ進むバスはあるだろうと思ったのだ。
そこまで行くのにはなかなか時間がかかった。
バックパックを背負って日差しの中を歩くとすぐに汗をかく。
見つけた果物やでフルーツを買い、
出てすぐのところでマンゴーにかぶりついた。
マンゴーのまるかじりは安くリッチな気分が味わえる方法だ。
歯で皮を剥くのにちょっとしたコツがいるけどね。
バス停らしき場所まで辿り着くとそこにはおばちゃんが二人いた。
「ペルミッソ(すいません)、
キエロ・イル~(I want to go…)」
と途中まで言って、マップアプリの自分の行きたい場所を示す。
なるべく目的地の近くにある
目立ちそうな建物を挙げると、より伝わる。
タイミングよくバスがやって来た。
おばちゃんはバスの運転手に
「このコここに行きたいんだって!このバス行くかしら?」
と訊いてくれる。なんとも頼もしい地元のおばちゃんたち。
二本目のバスで運良く目的地に近づくバスに乗ることができた。
運賃は7ペソほど(56yen)。
運転手にも自分が大体どこらへんで降りたいのかも伝えてある。
引き返す手間で運転手は僕に声をかけてくれた。
「グラシャス」とお礼を言って僕はバスを降りた。
ヒッチハイクができるであろう町外れまでは
そこからさらに歩かなければならなかった。
ハイウェイ直前で車もスピードに乗っている。
舗装されていない地面をスタンド・バイ・ミーみたいな気分で歩いた。
ヒッチハイクポイントの直前は工事中で車が渋滞していた。
そこを抜けるといくらかスムーズになるようなだった。
ヒッチハイクの追い風か?
僕はバス停近くのスペースを利用してヒッチハイクを開始した。
レスポンスは微妙だった。
工事現場を抜けたばかり車は確かにスピードが遅いのだが、
そのまま速度を上げて走り去っていってしまう。
もちろんここにはバスも停まるので、
バスが来た際にはそこをどかなければならない。
あっと言う間に一時間が過ぎた。
近くにある工場の門番は
「オートストップやるならガソリンスタンドだよ」と
僕にアドバイスをしてくれた。
僕はその助言を聞き入れ、ガソリンスタンドへと移動した。
だが、そのガソリンスタンド自体、
二方向からなる道路の合流地点に存在していた。
これから町へ向かう車と、町から出て行く車。
その両方がこのガソリンスタンドを利用していた。
停まっていたトラックに行き先を書いたードを見せるが、
運転手は困ったように手をヒラヒラさせた。
確かにメキシコでヒッチハイクをやる分には
ガソリンスタンドはひとつのポジションだ。
だが、ここはあまりにもヒッチハイクに向かなかった。
僕はすぐに見切りをつけてまた元のポジションへと戻った。
バスの邪魔になったこともあったので、
少し場所をずらしてヒッチハイクをしたのだが、
30分後には工事が終わり、やって来る車の速度もあがった。
レスポンスはさらに薄くなる。
手前のバス停で降りたおばちゃんが、僕に
「ヒッチハイクやるなら向こうよ」とアドバイスをくれた。
「ついてきなさい」と言うのでおばちゃんの後に続くと、
そこには小さなレストランがあった。
軽食をとる車がそこに停まるというのだ。
ひとつのレストランではトラックの運転手がランチをとっていた。
僕はコーラが無性に飲みたかった。
6ペソ(48yen)で通常より大きなサイズの瓶のコーラを
レストランで注文した。
飲みたい時に飲むコーラの美味さといったら。
瓶のコーラは成分が少し違うと聞く。
メキシコで飲むコーラはより美味しい、そんな気さえした。
僕が幸せそうにコーラを飲んでいると、
店のおばちゃんは僕にライスとトルティーヤを出してくれた。
お会計の際に「いくらですか?」と尋ねると、
「お金はいらないわ」とその分をサービスしてくれた。ありがたい…。
マジ?!あんなガキんちょがヒッチハイクしてるの??!!
ってタクシーか…。
コーラーというエネルギーを補給し、
僕はヒッチハイクを再開しようと思ったのだが、
そこのレストランもまたヒッチハイクに向かないポジションだった。
まず車が来るまで待っていなければならないポジションだったのだ。
仕方なしに近くでボードを掲げたが、やはり手応えはなかった。
バイクで走ってきたおっちゃんが
「水でも買いな」と僕に20ペソをくれた。ありがとうございます..。
そこでも30分ほど粘ってみたのだが、
どうやらここでヒッチハイクは無理な気がしてきた。
先ほどのレストランに再び戻り、コーラをまた飲んだ。
さきにお金を払い、そこを出る前にペットボトルの水を買おうとした。
「それじゃあ18ペソね」
『え?さっきコーラのお金払いましたよね?』
そのことを抗議しようか迷ったが、
さっきトルティーヤとライスをサービスしてくれたこと、
20ペソをもらったことを思い出して、
ありがとうとだけ言って僕はレストランを後にした。
メキシコで
ヒッチハイクをする場合、「0」か「100」だ。
アメリカのように途中まで乗せていってくれるというのは
ないように思える。
マサトランからグアダラファラまでは400kmもあることが分かった。
日本だとどこからどこまでの距離だ?
300kmで東京から名古屋だと聞いたことがある。
そんな長距離を進む人にそう簡単に会えるわけがないのだ。
僕は他にヒッチハイクにいい場所がないかと、
マサトランから離れていった。
1kmほど歩いた場所に小さな町があった。
ここもヒッチハイクには向かなさそうだった。
このシュールなキャラは..一体??
この楽器は..一体??
さらに進むと、ガソリンスタンドを見つけた。
そこそこに拾いガソリンスタンドにはなぜか遊具もあり、
芝生が生えた場所もあった。
ひとまず近くのコンビニで15ペソ(120yen)の果汁ジュースを買い、
一休みするとガソリンスタンドの入り口でヒッチハイクを再開した。
だが、ガソリンスタンドへは大型のトラックも入ってくる。
ここは長期戦だな。ゆっくり行こう。
もし今日ダメだったとしても、テントは張れるだろうし、
コンビニもトイレも近くにある。
なぁに焦らずともチャンスはくるさ。
そう気持ちを切り替えて木陰で昼寝をした。
30分くらい昼寝をすると
再び僕は向こうからやって来る車に対して親指を立てた。
ずっと日の下にいるので肌は焼けただろう。
一台の軽トラックに話しかけると、
250kmほど進んだ場所にある「テピック」まで行くと言う。
そうかまずはその町の名前を書くべきだったなと僕は思った。
僕はお願いしてその車に乗せてもらうことができた。
メキシコのヒッチハイクはガソリンスタンドで
ドライバーに直接交渉する。これだね。
余談だけど、二年前にメキシコでヒッチハイクした
「世界のどこかで会いましたよね?」のけーたさんは
「バスをヒッチハイクする」という方法をとっていた。
席が埋まっていない場合、バスの運転手が
自分の小遣い稼ぎとしてヒッチハイカーを拾うというのだ。
土地柄も関係するのだろうが、
僕の感想から言わせてもらえば、あれはまず止まらないだろう。
ヒッチハイクしている間に何台か行き先の書いた
大型のリムジンバスを見た。
もうガチガチのビジネス仕様ですね。逆にあれ止めるってすげーよ。
それともローカルバス狙いか?全然進まないよ?あれ?
ンベルトさん
とのドライブを楽しみながら僕はテピックの町へと向かった。
なんとかグアダラファラまではヒッチハイクで向かいたいと思う。
ヒッチハイクを開始したプエルト・ピニャースコからは
1000km以上離れていた。
これでかなりお金を浮かせることができただろう。
危険で無謀なことをしているように思われるかもしれないが、
旅をしている以上「100%の安全」なんてありえない。
宿に泊まっていても盗難に遭ってしまうこともある。
事前に調べて上で僕はヒッチハイクをしている。
ここへ来るまでの途中、どこかWi-Fiが入る場所で
メキシコのヒッチハイク情報を調べてみた。
アメリカやヨーロッパでお世話になった「Hitich wiki(ヒッチウィキ)」だ。
そこに貼付けられていたリンク先の旅情報にははこう書かれていた。
「メキシコに対するあなたのイメージは
きっとネガティヴなものでしょう。
ですが、メキシコでのヒッチハイクは
あなたに素晴らしい経験をもたらしてくれるはずです。
メキシコはあなたのことを待っていますよ♪」
もちろんそこには避けるべきエリアも書かれていた。
イメージと実感は違うので、
そこに足を運んでも何もトラブルに巻き込まれないだろうが、
リスクを減らすために危なさそうなエリアは避けたのだ。
チワワ州とか東のエリアの治安は悪いらしい。
そっちの方でメキシカン・マフィアが活動しているのかもしれない。
バハ・カリフォルニア側の西海岸は危なくないように思える。
今朝までいたマサトランの町などピースフルそのものだった。
人懐っこい運転手のンベルトさん。
僕はスペイン語はほとんど分からないけど、
時々冗談を言って笑いあった。
どこか海沿いの町を通過した時、
夕日に心を鷲掴みにされた。
『あぁ、旅してんな…』
助手席の窓から必死にiPhoneのシャッターを切った。
大陸と海の境界線。
海面に夕日のオレンジが反射する。
けっして同じ夕日はない。
行く先々で見る夕日。そのどれもが綺麗だ。
日が沈むまで車は走り、ンベルトさんには
テピックの町のガソリンスタンドで降ろしてもらった。
時刻は23時を回っていた。
ありがとうございます!
「オクソ(コンビニの名前だ)」で軽食をとり、
コンビニの前でラッキー・ストライクを吹かした。
煙草を一本吸い終わるとトイレで歯を磨いた。
そこら辺で暇そうにしているガソリンスッフに
「テントを張っていいか?」とジェスチャーを交えて尋ねる。
特に責任者に了承を求めるでもなく、
「オーケー、オーケー」と軽い返答が返ってくる。
ガソリンスタンドの裏には丁度良い芝生がしかれたテントを張るのに
いいポジションがあった。
そこには既にテントが二つ張られていた。
ははは。ガソリンスタンドのスタッフからしてみたら
「またかよ!」
って感じになるよね。そらそうか!
ちょっとだけテントのから距離を離し、自分のテントを立てた。
芝生の上は寝心地がよかった。
あぁ、今日もなんだかんだで車に乗せてもらえたな。
感謝の気持ちは忘れない。今日もありがとう。
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